スチールホイール

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ファイル:KFZ1560.jpg
KFZ社製の純正供給向けチューブレスタイヤ用4穴スチールホイール。極一般的な鉄チンホイールは概ねこのような外見を呈する。

スチールホイール(Steelwheel)は、鉄鋼を用いて製造された自動車ホイール。通称『鉄チンホイール』(てっチンホイール)。

解説

ファイル:Nascarphx16.jpg
NASCAR用のスチールホイール
ファイル:1969 AMC SCRambler whel.jpg
1969年式 AMCSC/ランブラーのスチールホイール。マグナムスタイルと呼ばれる様式で、アメリカ車ではアルミホイールが普及する以前は様々なデザインのスチールホイールが製作された。
ファイル:Daihatsu Naked 005.JPG
ダイハツ・ネイキッド。「Naked」の言葉通り剥き出し(ありのまま)の素材感を表現するコンセプトに合わせ、特別にデザインされたスチールホイールが装着されている。

スチールホイールにはアルミホイールと比較して、以下のような特徴がある。

長所

短所

  • 重い - アルミニウム合金よりも比強度が低いため、同一強度に仕上げると重くなりやすい。
  • デザイン性に欠ける - スタイリッシュな形状に加工しづらい。ほとんどの場合くすんだ銀色か黒色で、ブレーキキャリパーオフセットによる凹凸と穴が数個開いている(原付バイク用のものは2本にまとまった支柱が3束ある形状)という無骨な見た目となる。このため市販乗用車の場合は、外側に樹脂製のカバー(ホイールキャップ、あるいはホイールカバー)か、樹脂製または金属製のセンターオーナメント(センターハブキャップ)を取り付けているケースがある。マッスルカーに分類されるアメリカ車やその影響を受けた日本のドレスアップカーでは、クロームメッキされた金属製のホイールカバーや、トリムリングと呼ばれるリムの部分のみを装飾する部品も好んで用いられる。

よくある誤解

「重い」「デザイン性に欠ける」という短所は「全てのスチールホイールに当てはまるとは限らない」ことに留意するべきである。

重量
鋼は疲労限度があるのに対しアルミニウム合金には限度がなく、繰り返される応力により止め処なく強度低下するため、用途によっては使用期間が想定を超えることを考慮し予め予備強度を確保する必要がある。自動車メーカー純正アルミホイールの多くは全体に肉厚を増して予備強度を確保するので一概にスチールホイールの方が重くなるとはいえない。Honda公式サイトのFAQによると、フリード(標準ピュアガソリン車)の場合14インチ鉄(タイヤ185/70R14)で7.1kg、15インチ(185/65R14)の場合、鉄7.9kg・アルミ8.3kgと同サイズで比べてもアルミの方が重いと言う結果になっている[1]
デザイン性
マルチスポーク形状などデザインを重視したスチールホイールが全くない訳ではなく、自動車やカー用品を販売する側の事情(上級グレード車を売りたい、あるいは(高額商品である)アルミホイールを売りたいなど)などもあって純正・社外品ともに普及が進んでいないという側面がある。ホイールそのものにデザインを施したスチールホイール(スタイルド・スチールホイール)を純正で採用する車種(例:トヨタ・RAV4およびダイハツ・テリオスキッド、2代目以降のスズキ・ジムニーなどのSUV系、2代目トヨタ・カルディナ(一部)および9代目トヨタ・カローラセダン(ただし法人向けの「Xアシスタパッケージ」のみ)などの小型普通乗用車系、ダイハツ・ネイキッドスズキ・ハスラーなどの軽乗用車系)も存在する[2]

スチールホイールの利用状況

ファイル:Osaka Auto Messe 2014 (104) TRIAL - Toyota 86 (ZN6).JPG
トヨタ・86「RC」。このグレードは趣味性の高い車種でありながら、ノーマルの状態ではホイールキャップなしのスチールホイールが装着されている。他のグレードとは違い写真のように購入後カスタムすることが前提の「素材」と割り切った商品であるからである。
ファイル:The frontview of Toyota Esquire (R80G) ver.BATMAN 75th.JPG
トヨタ・エスクァイアバットマン仕様カスタムカー。デザインコンセプト(例えば「無骨さ」や「ワル」な雰囲気を出したい場合)によっては、カスタムカーであってもあえてスチールホイールを使用することがある。

その性質上、ホイールの外観を重視せず低コストで済ませたい車両に使われることが多いため、原付バイク、タクシー教習車営業車バストラック、農業・産業機械、パトカーなどでよく目にされる。かつては覆面パトカーの目印ともされたが、近年では新車にアルミホイールが標準装着されていることが多く、次第にこの法則は当てはまらなくなってきている。また趣味性の高い車種であってもカスタム用の素材と割り切って装備を簡略化し価格を抑えたグレードが存在することがあり、そのような場合にもスチールホイールが使用されることがある[3]。ホイールに全くこだわりが無いドライバーの多くは安価で入手できるスチールホイールを購入することが多い(破損・盗難などでホイール交換を強いられた場合や履き替え用(スタッドレスタイヤなど)など)。しかし2010年代以降は車種(特に軒並みホイールを大径化(小さくても16インチ)したDセグメント以上の車種)によってはスチールホイールの純正設定が無く[4]、アルミホイールしか選択できない(もしくは極端に選択肢や入手経路が限られる)場合もある。

また強度面から、貨物自動車においては車両重量および積載荷重に対する安全基準を満たしたJWL-T規格アルミホイールが純正品・社外品も含めてあまり種類が多くない[5]。こうした事情も含めてスチールホイールが積極的に利用され続けている。

純正装着品以外(社外品)においては、ハブボルト穴を複数開けて何種類かの異なるP.C.D.に対応できるようにしたマルチホールタイプが主流であり、降雪地帯でのスタッドレスタイヤ向けホイールとして量販店で販売されている。

モータースポーツにおいては、NASCARの車両に現在でもスチールホイールが用いられており[6]、NASCAR車両をイメージした社外品のスチールホイールも存在する。また「無骨さ」「ワルっぽさ」といったデザインコンセプト上の問題やジャンルにおけるカルチャーからあえてスチールホイールを使用するカスタムカーもないわけではない。

種類

ファイル:Lambretta Model D 123cc - close-up of rear wheel - 20080302.jpg
1950年代のイタリアスクーターランブレッタ・モデルDのスチールホイール。合わせホイールと呼ばれる形式で、日本の軽自動車もおおむねこれと類似した形状のスチールホイールを採用していた。

プレス加工により鋼板からディスクを成形し、これをリムフランジと溶接し製造する。またリムフランジ部とディスク部とを一体成形する工法もある。

チューブレスタイヤ用

リムフランジ内側に、ビードからの空気漏れをおさえる凸部分が形成されている。また、空気口は気密性バルブが取り付けられるよう、規格と精度が保たれている。

チューブタイヤ用

一体型の外観はチューブレスタイヤ用に似ているが、ビードシート部分の凸部分がないこと、空気口がチューブのバルブよりも大きい穴になっていることが異なっている。チューブレス用のバルブとタイヤを使用しても、チューブレスホイールとしての使用はできない。

合わせホイール

チューブタイヤ用のうち、合わせホイールと呼ばれるものは、左右のリムをボルトとナットなどで合体させる2ピース構造になっており、合わせ面へのチューブの噛み込みを防止するため、ゴム製のリングが使用される。リムが分割構造となっているため一般的なリム乗り越し型のタイヤチェンジャーは必要無く、特別な工具が無くてもタイヤの着脱(入替え)が簡単に行なえる。この特徴から戦場での整備が避けられない軍用車両にも多く用いられ、「コンバットホイール」と呼ばれることもある。

軽自動車では1950年代の360 cc規格期より多用された形式であり、1980年代初頭まで一部の550 cc規格車種も採用していた[7]オートバイではホンダ・モンキーを始めとする一部の原動機付自転車で現在も合わせホイールが採用されている。トラック用はリム止めのリングで片側のリムを抑えており、ここへチューブの挟みこみを防止するために、ゴム製のフラップが使用される。今日のスチールホイールと比較して製造に要する材料が少なく済み、ごく安価であることから黎明期の自動車で多用されたが、構造上組み合わせられるブレーキがドラムブレーキにほぼ限定されるため、ディスクブレーキの普及や車両の平均速度の高速化・積載重量の高荷重化などに伴い、現在製造販売される自動車からはほぼ完全に姿を消した。しかし、産業機械用のノーパンクタイヤには、現在でもこのホイールが使われている。

2ピースホイール・3ピースホイール

リムがスチール製かつハブがアルミ合金製のものや、ホイールディスクの代わりにスポークが使われた例がある。

脚注

  1. 共にHonda公式、2015年1月26日閲覧。
    ホイール重量に関して:クルマQ&A フリード「ホイールの重量を教えて。」
    タイヤサイズに関して:フリード標準車 性能 
  2. フルデザインスチールホイールの一例
  3. スバル・BRZ「R カスタマイズパッケージ」・・・本来趣味性の高い車種でありながらスチールホイール(それもキャップ無し)が装備されるのは、名前が示す通りこのグレードはユーザーがカスタムすることを前提とした「素材」であり、購入後各自で好みのホイールに交換することが前提となっているからである。この様な対処は同じくカスタムベース用である三菱・ランエボ「RS」(一部仕様を除く)日産・シルビア「スペックR・Type-B」などでも見ることができる。
  4. ・スチールホイールの設定がない、あるいは極端に限られるDセグメント以上に相当する車種の例(2016年10月24日、各社公式サイトより)
  5. 軽合金製ディスクホイールの技術基準では「専ら乗用の用に供する乗車定員10人以下の自動車(乗用車)を除く普通自動車、小型自動車及び軽自動車」には「トラック及びバス用軽合金製ディスクホイールの技術基準に適合したホイール(JWL-T規格)」が必要で、こうした車両のアルミホイールはJWL-T刻印が打刻されているものでなければ保安基準に適合せず、車検に通らない。ただし例外として最大積載量が500kg以下(ただし、平成26年1月以前の保安基準改正前までは最大積載量が200kg以下)の小型貨物自動車および軽貨物自動車の場合に限り、JWL-T刻印が打刻されていないアルミホイールであっても合法的に車検が通る場合もある(主に軽ボンネットバン軽トラック、総排気量1,500cc以下かつ最大積載量500kg以下の小型ライトバンなど)。
  6. 市販車両のものと異なり、高張力鋼を使用した非常に強度の高いホイールのため、一般的なアルミホイールよりもはるかに軽量である。
  7. 新規開発で合わせホイールを最後に採用した軽自動車は乗用では初代スズキ・セルボ(最上級グレードを除く)、商用では5代目ダイハツ・ハイゼット(全グレード)である。

関連項目

外部リンク