クロスオーバー (音楽)

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クロスオーバー(Crossover)とは、ジャンルの垣根を乗り越えて音楽性を融合させるスタイルを指す音楽用語。

ジャズのクロスオーバー

1970年代前半に流行した、電気楽器や電子楽器を取り入れたジャズの演奏スタイルの一種。

歴史

1960年代後半より、電気楽器やロック風な奏法を取り入れた新しい演奏スタイル、ジャズ・ロックやエレクトリック・ジャズが生まれ、マイルス・デイヴィスらの一部のミュージシャンによって、演奏スタイルの可能性拡大が試みられた。そして、シンセサイザーをはじめとする電子楽器の出現で、音色などの演奏表現も豊かになった。作品としてのジャズ演奏だけでなく、ポップミュージックやロックにも通じ相互に影響を受けた、ニューヨークロスアンゼルススタジオ・ミュージシャン達の中から、より混合された形で、ジャンルの垣根を乗り越えた「クロスオーバー」音楽が生み出されるようになった。

ストリングスブラスオーケストラとエレクトリック・ジャズのバンド演奏が巧みに絡み合うアレンジメントが重要な役割を持ち、1970年代には、デオダートボブ・ジェームスアレンジャーが脚光を浴びた。またこのジャンルの作品を多く制作していたのが、ブルーノートでも評判を得ていた名プロデューサークリード・テイラーの主宰するCTIレコードである。同レーベルでは、先に挙げたアレンジャー達自身のアルバムの他に、プレイヤーとして、70年代半ば以降ジョージ・ベンソンヒューバート・ロウズグローバー・ワシントン・ジュニアらがフュージョン作品を発表している。

同時期にチック・コリアハービー・ハンコックらも、自らのバンドでクロスオーバーの作品を発表している。ハンコックは、「ヘッド・ハンターズ」のようなファンク・リズムを取り入れたアルバムも制作した。

代表的なアルバム

ジャズ・クロスオーバーの主なアーティスト

ロックのクロスオーバー

ロックのクロスオーバーは、時代や音楽性ごとに細かく区分されている。代表的なものにブルース・ロックジャズ・ロックラテン・ロック、ファンク・ロックなどが挙げられる。

ロック1960年代に発展する過程で、ブルースを融合、クロス・オーバーさせたブルース・ロックが登場した。エリック・クラプトン[1]クリームやジミ・ヘンドリクス、フリートウッド・マック、ポール・バターフィールド、ジョン・メイオールなど、演奏能力に長けたバンドがブルース・ロック・ブームをまき起こした。サンタナはロックにラテンを融合することで、ラテン・ロックのアルバムを発表した。さらに、コロシアムやソフト・マシーン、ニュー・クリアスらジャズとロックを融合したジャズ・ロックや、ロックにクラシック音楽を取り入れたエマーソン、レイク&パーマー、イエスなどのプログレッシブ・ロックが発展していった。

また、インエクセスらのファンクとロックを融合したファンク・ロックも登場した。ロック分野におけるクロスオーバーの一つの現象が、パンクとヘヴィメタルを融合したニルヴァーナ(ナーヴァーナ)らのグランジと呼ばれるジャンルである。

1990年代に、ブームが冷めていたヘヴィメタルとヒップ・ホップファンクに代表される黒人音楽をクロスオーバーさせたジャンルで、ラップメタルファンクメタルその他のジャンルが生まれた。この動きは日本ではミクスチャー・ロックと呼ばれた。

クラシック音楽のクロスオーバー

1990年代から、クラシック音楽ポピュラー音楽がクロスオーバーしたサウンドのブームが始まっており、クラシカル・クロスオーバーと呼ばれている。このジャンルの基本的なアレンジは、オーケストラを生かしたポップス(ロックエレクトロニカ等を含む)系の演奏をバックに声楽を活かした旋律を歌うものが多い。

このジャンルの起爆剤となったのは、サラ・ブライトマンアンドレア・ボチェッリデュエットタイム・トゥ・セイ・グッバイ」(1996年)と見られている。この曲は全世界で2,500万枚以上を売り上げたとされ、このジャンルのスタンダードになった。また、これ以後追従する歌手が爆発的に増えることになった。増田いずみはこのジャンルをポップ・オペラ、またイル・ディーヴォはポペラと呼んでいる。音楽評論家の片桐卓也は、このジャンルの隆盛の背景として「クラシック界の中核を担う40、50歳代の音楽家は、若いころ、ごく自然にロックやポップスに親しんできた世代で、ポピュラー音楽を取り上げることに抵抗感のない人が多い」ことを挙げている[2]

日本でのクラシカル・クロスオーバーの人気も近年とくに高く、草分けとなった前述の増田を始め、ソプラニスタの岡本知高島倉学など多くの歌手が活動している。2005年に、本田美奈子.のアルバム『アメイジング・グレイス』が日本人歌手によるクラシック・アルバムとしては初めてオリコンチャートトップ10入り(7位)を果たし[3]秋川雅史の「千の風になって」が2007年のオリコン年間シングルチャートで第1位となった[4]ことなどはその象徴と言える。Ken Katayamaを始め、今までクラシックの世界で活躍してきたアーティストが独自の活動を始めている。 坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲に歌詞を書き下ろし、注目されている女優・シンガーソングライターのアンジェリカカノンYucca春花など若手歌手の活動も注目を集めるようになってきている。 女声5人のア・カペラ、アウラAuraによる『Aura/ヴィヴァルディ:四季[5]』の全曲録音は、声だけでクラシックの名曲『四季』を表現した作品として注目された。

また、ヴァイオリニストにして歌手というサラ・オレインも、クラシカル・クロスオーバーの担い手として注目されており、アルバム「セレステ」(2012年発売)はiTunesボーカル部門で1位を獲得している。

2017年ミスユニバース神奈川大会に、おいて、準グランプリに輝いた国立音楽大学声楽科卒業の野崎藍(本名:野崎愛)など、続々とデビューしている。

脚注

関連項目