国際音声記号

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国際音声記号
IPA in IPA.svg
国際音声記号による「IPA」(言語は現代米国英語)。
類型: 音声記号 (アルファベット様)
言語: あらゆる言語の表音的ないしは音素的表記に用いることを目的としている。
時期: 1888年 - 現在
親の文字体系:
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。

国際音声記号 (こくさいおんせいきごう、: Alphabet phonétique international (API), : International Phonetic Alphabet (IPA) : IPA:aɪphiːeɪ)

あらゆる言語音声を文字で表記すべく、国際音声学会が定めた音声記号

国際音声字母(こくさいおんせいじぼ)、国際音標文字(こくさいおんぴょうもじ)とも言う。


文字一覧表

子音(肺臓気流)

子音のうち、肺臓気流によって作られる音声を表す文字。

唇音 舌頂音 舌背音 咽喉音
両唇音 唇歯音 歯音 歯茎音 後部歯茎音 そり舌音 硬口蓋音 軟口蓋音 口蓋垂音 咽頭音 喉頭蓋音 声門音
破裂音 p b t d ʈ ɖ c ɟ k ɡ q ɢ   ʡ ʔ
鼻音   m   ɱ   n   ɳ   ɲ   ŋ   ɴ
ふるえ音   ʙ       r   *       ʀ   *
はじき音   ⱱ̟     ɾ   ɽ   ɟ̆   ɢ̆   *
摩擦音 ɸ β f v θ ð s z ʃ ʒ ʂ ʐ ç ʝ x ɣ χ ʁ ħ ʕ ʜ ʢ h ɦ
接近音   β̞   ʋ   ɹ   ɻ   j   ɰ      
側面音 摩擦音 ɬ ɮ * * * * * *    
接近音   l   ɭ   ʎ   ʟ   ʟ̠
はじき音   ɺ   ɭ̆   ʎ̮   ʟ̆    

IPAの表に、喉頭蓋音、側面はじき音を足したもの。記号が2つ並んでいるものは、右が有声音、左が無声音。網掛けは調音が不可能と考えられる部分。「*」は正式な記号が決まっていないものだが、補助記号を用いて表記できるものもある。

その他の記号
ɕ ʑ 歯茎硬口蓋摩擦音
ɧ 無声後部歯茎軟口蓋摩擦音
ɫ 軟口蓋歯茎側面接近音
ɥ 両唇硬口蓋接近音
ʍ w 両唇軟口蓋接近音
破擦音
両唇音 唇歯音 歯音 歯茎音 歯茎側面音 後部歯茎音 そり舌音 歯茎硬口蓋音 硬口蓋音 軟口蓋音 口蓋垂音
無声音 p͡ɸ p̪͡f t͡θ t͡s t͡ɬ t͡ʃ ʈ͡ʂ t͡ɕ c͡ç k͡x q͡χ
有声音 b͡β b̪͡v d͡ð d͡z d͡ɮ d͡ʒ ɖ͡ʐ d͡ʑ ɟ͡ʝ ɡ͡ɣ ɢ͡ʁ
二重調音
k͡p ɡ͡b 両唇軟口蓋破裂音
ŋ͡m 両唇軟口蓋鼻音

子音(非肺臓気流)

子音のうち、非肺臓気流によって作られる音声を表す文字。

吸着音
ʘ 両唇
ǀ
ǃ (後部)歯茎
ǂ 硬口蓋歯茎
ǁ 歯茎側面
入破音
ɓ 両唇
ɗ̪
ɗ 歯茎
そり舌
ʄ 硬口蓋
ɠ 軟口蓋
ʛ 口蓋垂
放出音
両唇
t̪ʼ
歯茎
ʈʼ そり舌
硬口蓋
軟口蓋
口蓋垂
歯茎摩擦

母音

母音を表す文字。 記号が2つ並んでいるものは、右が円唇、左が非円唇

前舌 中舌 後舌
i y ɨ ʉ ɯ u
ɪ ʏ ɪ̈ ʊ̈ ɯ̽ ʊ
半狭 e ø ɘ ɵ ɤ o
ø̞ ə ɤ̞
半広 ɛ œ ɜ ɞ ʌ ɔ
æ   ɐ
a ɶ ä ɑ ɒ

補助記号

下に伸びた記号の場合、その上に置いても良い: 例) ŋ̊

ここでは、視認性のため拡大して表示する。

 ◌̥ 無声音
 ◌̬ 有声音
◌˭ 無気音
◌ʰ 有気音
 ◌̤ 息漏れ声
 ◌̰ 軋み声
 ◌̼ 舌唇音
 ◌̪ 歯音
 ◌̺ 舌尖音
 ◌̻ 舌端音
 ◌̆ はじき音
 ◌̹ 強めの円唇
 ◌̜ 弱めの円唇
 ◌̟ 前寄り
 ◌̠ 後寄り
 ◌˔ 上寄り
 ◌˕ 下寄り
 ◌̈ 中舌寄り
 ◌̽ 中央寄り
 ◌̘ 舌根前進
 ◌̙ 舌根後退
◌˞ R音性
◌ʷ 唇音化
◌ʲ 硬口蓋化
◌ˠ 軟口蓋化
◌ˤ 咽頭化
 ̃◌ 鼻音化
◌ⁿ 鼻腔開放
◌ˡ 側面開放
 ◌̚ 内破音(無開放)
 ◌̴ 軟口蓋化或は咽頭化
 ◌̩ 音節主音
 ◌̯ 音節副音

超分節要素

ˈ 第一ストレス
ˌ 第二ストレス
ː
ˑ 半長
 ̆ 超短
| 小さな切れ目(韻脚
大きな切れ目イントネーション
. 音節境界
連結(切れ目無し)

声調記号アクセント

平板
 ̋ ˥ 超高
 ́ ˦
 ̄ ˧
 ̀ ˨
 ̏ ˩ 超低
ダウンステップ
アップステップ
上下動
 ̌ ˩˥ 上昇
 ̂ ˥˩ 下降
 ᷄ ˧˥ 高上昇
 ᷇ ˥˧ 高下降
 ᷈ ˦˥˦ 昇降
全体的上昇
全体的下降

問題点と批判およびそれへの対応

国際音声記号が見慣れない多数の記号を使っていることは、当初からヘンリー・スウィートらによる批判があった[1]。また、いくつかの字形が類似していること(特に[a][ɑ]はフォントによっては見分けがつかなくなる)ことに対する批判もある。

破擦音は多くの言語で単独の音素であるのに、専用の文字を持たないことも批判されることがある。たとえばアメリカの人類学者・言語学者の使う音声記号(アメリカの音声記号)では破擦音のための専用の記号がある。

母音は基本母音を元にしているが、(第一次)基本母音が8個であるのをフランス語の影響によるものとして、半狭母音半広母音の中間の位置にある母音を持つ多数の言語が記述しにくいとする批判もある[2]。ただし、IPAの方針としては、対立がない場合は通常のラテン文字と同じ形([a,e,o]など)を使うことになっている。

IPAの表では、母音の高さを7段に分けているが、これほど細かい区別をする言語は存在しない。ひとつの言語で区別される高さは4段か、多くても5段だという[3]。前舌・中舌・奥舌の3種類の区分についても2種類に減らす案もあるが[4]、こちらは実際に3種類の区別が必要な言語が少数ながら存在するという[5]

ラテン文字を基盤としていることから、文字帝国主義の一類型であるラテン文字帝国主義を促進する効果があるとしてその中立性を批判する声がある。また調音点や調音器官と図形が対応する音素文字を支持するグループからは、IPAはそのような対応が恣意的であるため批判される。それ以外にも、音声の区切り方で、張唇と平唇を同じ非円唇にまとめているのはおかしいなどといった、どの音声をひとまとめにして記号で表記するかという、すべての表音文字に共通する批判もある。

これらに対しては、IPAに問題点があるにせよ、現実にはこれ以外に普及した共通の表音文字がなく、またIPAを使用しても音声表記、音素表記双方で致命的な問題点が生じることはないため、新しい音声の発見に応じた微修正は必要不可欠だが、IPA自体の廃棄や作り直しは必要ないという意見が主流派の言語学者の間でのコンセンサスである。

脚注

  1. Collins & Mees (1998) p.49
  2. チャオ(1980) pp.38-42
  3. Ladefoged & Maddieson (1996) pp.289-290
  4. Chomsky & Halle (1991) pp.304-305 では高さを3種類、前後を2種類しか認めない
  5. Ladefoged & Maddieson (1996) pp.290-291

参考文献

  • 国際音声学会編 『国際音声記号ガイドブック - 国際音声学会案内』 竹林滋・神山孝夫訳、大修館書店、2003年3月 ISBN 4-469-21277-6
  • ジェフリー・K・プラム、ウィリアム・A・ラデュサー 『世界音声記号辞典』 土田滋・福井玲・中川裕訳、三省堂、2003年5月 ISBN 4-385-10756-4
  • ユアン・レン・チャオ 『言語学入門―言語と記号システム―』 橋本萬太郎訳、岩波書店、1980年、38-42。
  • [1968] (1991) The Sound Pattern of English, paperback, The MIT Press. ISBN 026253097X. 
  • (1998) The Real Professor Higgins: The Life and Career of Daniel Jones. Mouton de Gruyter. ISBN 3110151243. 
  • (1996) The Sounds of the World's Languages. Blackwell Publishing. ISBN 9780631198154. 

外部リンク

子音
国際音声記号 - 子音


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