声門破裂音
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声門破裂音(せいもんはれつおん; 英: glottal plosive)あるいは声門閉鎖音(せいもんへいさおん; 英: glottal stop)とは子音の類型の一つ。閉じた声門が開放されて起こる破裂音(閉鎖音)。国際音声字母で[ʔ]と記述される。声門を完全に閉じた後、呼気とともに急に声門を開いたときに出る音。言い換えれば声門を閉じた状態からすかさず何らかの母音を発音すれば、子音部分がこの音となる[1]。咳をするときには特に強い声門破裂音が聞こえる。
声門を閉じたまま声帯を振動させることはできないので、理論的に有声の声門破裂音は存在しない。
特徴
- 気流の起こし手 - 肺臓からの呼気。
- 発声 - なし。便宜上、無声音に入れられることがあるが、無声音が声帯が開いているのとは異なり、調音点が声帯なので閉じている。聴覚印象からすると無声音である。
- 調音
言語例
以下は声門破裂音を音素としてもつ言語と、それを含む語の例。
- 音節頭にのみ声門破裂音素が立つもの
- ハワイ語 - ʻ で表される子音。ʻae 「はい」 / aʻe 「ムクロジ」 / ʻaʻe 「踏む」 のように明確に弁別機能をもつ。ほかポリネシアの言語には同様の声門破裂音をもつものが多い。
- タイ語 - อ่าง [ʔàaŋ] 「洗面器」
- 琉球語 - [ʔutu] 「音」
- 音節末にのみ声門閉鎖音素が立つもの
- その他
- アラビア語 - ハムザ(ء)で表される子音。أَبٌ [ʔab(ʊn)] 「父親」
- デンマーク語では stødと呼ばれる弁別性のある現象があり、これが声門閉鎖のような形で現れる場合がある。ånden [ˈʌnn̩] "breathing" に対する ånden [ˈʌnˀn̩] "the spirit" など。
なお、日本語(標準語)や英語を含む多くの言語は声門破裂音を音素としてはもたないが、こうした言語においても口語や方言あるいは話者によっては母音の前後などに声門破裂音が現れることは珍しくない。こうした場合の声門破裂音(閉鎖音)は通常話者によって意識されておらず、弁別の機能も担わないものである。
脚注
- ↑ 湯川 (1999:23).
参考文献
- 湯川恭敏 (1999).『言語学』ひつじ書房。ISBN 4-89476-113-0