「電磁テンソル」の版間の差分
ja>MomijiRoBot 細 (Bot: {{Template:Tensors → {{Tensors, Removed namespace in template ∵Check Wikipedia #1) |
細 (1版 をインポートしました) |
(相違点なし)
|
2018/12/22/ (土) 23:20時点における最新版
電磁テンソルとは、電磁場を相対性理論にもとづいた形式で記述したものである。以後、相対論と言えば、特に断りがなければ特殊相対性理論を指す。
定義
電磁場の強度(field strength) F は二階のテンソル
[math]F_{\mu\nu} = \partial_\mu A_\nu -\partial_\nu A_\mu[/math]
と定義される[1]。 A は相対論的な4元ベクトルの電磁ポテンシャル
[math]A^\mu = \left( \frac{\phi}{c}, \boldsymbol{A} \right),~ A_\mu =\eta_{\mu\nu} A^\nu = \left( \frac{\phi}{c}, -\boldsymbol{A} \right)[/math]
である[註 1]。 微分も相対論的な4元ベクトル
[math]\partial_\mu =\frac{\partial}{\partial x^\mu} = \left( \frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t}, \nabla \right)[/math]
である。
定義から電磁場テンソルは明らかに反対称テンソルである。従って独立成分は6つある。 これは3次元空間のベクトル場である電場の強度 E と磁束密度 B の各成分に対応する。 電場の強度と磁束密度は3次元空間の電磁ポテンシャルによって
[math]\boldsymbol{E} = -\nabla\phi -\frac{\partial\boldsymbol{A}}{\partial t}[/math]
[math]\boldsymbol{B} = \nabla\times\boldsymbol{A}[/math]
と表される。 あるいは各成分毎に
[math]E_j/c = -\partial_j A_0 +\partial_0 A_j = F_{0j}[/math]
[math]B_i \epsilon_{ijk} = -\partial_j A_k +\partial_k A_j = -F_{jk}[/math]
と書くことが出来る。 具体的には
[math](F_{01},F_{02},F_{03}) =(E_1/c,E_2/c,E_3/c)[/math]
[math](F_{23},F_{31},F_{12}) =(-B_1,-B_2,-B_3)[/math]
である。上付きの [math]F^{\mu\nu} =\eta^{\mu\rho}\eta^{\nu\sigma}F_{\rho\sigma}[/math] は
[math](F^{01},F^{02},F^{03}) =(-E_1/c,-E_2/c,-E_3/c)[/math]
[math](F^{23},F^{31},F^{12}) =(-B_1,-B_2,-B_3)[/math]
となる[註 1]。それぞれ行列の形で表せば
[math](F_{\mu\nu}) = \begin{bmatrix} 0 & E_1/c & E_2/c & E_3/c \\ -E_1/c & 0 & -B_3 & B_2 \\ -E_2/c & B_3 & 0 & -B_1 \\ -E_3/c & -B_2 & B_1 & 0 \\ \end{bmatrix},\ (F^{\mu\nu}) = \begin{bmatrix} 0 & -E_1/c & -E_2/c & -E_3/c \\ E_1/c & 0 & -B_3 & B_2 \\ E_2/c & B_3 & 0 & -B_1 \\ E_3/c & -B_2 & B_1 & 0 \\ \end{bmatrix}[/math]
となる。
媒質中の電磁場
媒質中での電磁場を表す電束密度 D と磁場の強度 H は二階のテンソル Gμν によって相対論的な形式で記述される。 それぞれの成分は具体的には
[math](G^{01},G^{02},G^{03})=(-cD_1,-cD_2,-cD_3)[/math]
[math](G^{23},G^{31},G^{12})=(-H_1,-H_2,-H_3)[/math]
である[2]。Gμν はサブ電磁テンソルとも呼ばれる。 サブ電磁テンソル G と電磁場の強度 F は
[math]G^{\mu\nu} = \frac{1}{\mu_0} F^{\mu\nu} - M^{\mu\nu}[/math]
と関係付けられる。ここで Mμν は磁化テンソルである。 その成分は誘電分極 P と磁化 M である。
[math](M^{01},M^{02},M^{03}) =(cP_1,cP_2,cP_3)[/math]
[math](M^{23},M^{31},M^{12}) =(-M_1,-M_2,-M_3)[/math]
行列の形で表せば
[math](G^{\mu\nu}) = \begin{bmatrix} 0 & -cD_1 & -cD_2 & -cD_3 \\ cD_1 & 0 & -H_3 & H_2 \\ cD_2 & H_3 & 0 & -H_1 \\ cD_3 & -H_2 & H_1 & 0 \\ \end{bmatrix}[/math]
[math](M^{\mu\nu}) = \begin{bmatrix} 0 & cP_1 & cP_2 & cP_3 \\ -cP_1 & 0 & -M_3 & M_2 \\ -cP_2 & M_3 & 0 & -M_1 \\ -cP_3 & -M_2 & M_1 & 0 \\ \end{bmatrix}[/math]
である。
双対テンソル
完全反対称テンソル ε を用いれば、電磁場の強度 F に双対なテンソル
[math]\tilde{F}^{\mu\nu} =\frac{1}{2} \epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}F_{\rho\sigma}[/math]
が定義される。 具体的には
[math](\tilde{F}^{01},\tilde{F}^{02},\tilde{F}^{03}) =(F_{23},F_{31},F_{12}) =(-B_1,-B_2,-B_3)[/math]
[math](\tilde{F}^{23},\tilde{F}^{31},\tilde{F}^{12}) =(F_{01},F_{02},F_{03}) =(E_1/c,E_2/c,E_3/c)[/math]
であり、行列の形で表せば
[math](\tilde{F}^{\mu\nu}) = \begin{bmatrix} 0 & -B_1 & -B_2 & -B_3 \\ B_1 & 0 & E_3/c & -E_2/c \\ B_2 & -E_3/c & 0 & E_1/c \\ B_3 & E_2/c & -E_1/c & 0 \\ \end{bmatrix}[/math]
となる。
マクスウェルの方程式
電磁場テンソルによって、相対論的な形でマクスウェルの方程式を記述することができる。 定義からBianch恒等式
[math]\partial_\rho F_{\mu\nu} +\partial_\mu F_{\nu\rho} +\partial_\nu F_{\rho\mu} =0[/math]
が成り立つ。 完全反対称テンソルを用いれば
[math]\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}\partial_\rho F_{\mu\nu} =0[/math]
と表すことも出来る。 この式は添え字 σ=0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ
[math]\nabla\cdot \boldsymbol{B} =0[/math]
[math]\nabla\times \boldsymbol{E} +\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t} =\mathbf{0}[/math]
である。
真空中の電磁場の運動方程式は
[math]\partial_\mu F^{\mu\nu} =\mu_0 j^\nu[/math]
と表される。 ここで j は4元電流密度である。 この式は添え字 ν=0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ
[math]\nabla\cdot \boldsymbol{E} =\frac{\rho}{\epsilon_0}[/math]
[math]\nabla\times \boldsymbol{B} -\frac{1}{c^2} \frac{\partial\boldsymbol{E}}{\partial t} =\mu_0 \boldsymbol{j}[/math]
である。
媒質中の運動方程式
媒質中の運動方程式は
[math]\partial_\mu G^{\mu\nu} =j^\nu[/math]
と表される。 成分ごとにそれぞれ
[math]\nabla\cdot \boldsymbol{D} =\rho[/math]
[math]\nabla\times \boldsymbol{H} -\frac{\partial\boldsymbol{D}}{\partial t} =\boldsymbol{j}[/math]
である。
ローレンツ力
電磁テンソルは、荷電粒子に作用するローレンツ力を相対論的に記述した式の中に現れる。 電荷 q を持ち、相対論的な位置 z=(ct,r) を運動する荷電粒子に作用する相対論的なローレンツ力は以下のようになる。
[math]\dot{p}_\mu =q\dot{z}^\nu F_{\nu\mu}(z)[/math]
p は相対論的な運動量である。ドットは運動のパラメータによる微分である。
脚注
- ↑ ランダウ, リフシッツ 68頁
- ↑ ジャクソン 820頁
参考文献
- L.D.ランダウ, E.M.リフシッツ 『場の古典論』 東京図書〈理論物理学教程〉、1978年。ISBN 4-489-01161-X。
- J.D.ジャクソン 『電磁気学』 吉岡書店〈物理学叢書〉、2003年。ISBN 4-8427-0308-3。