特殊相対性理論
特殊相対性理論(とくしゅそうたいせいりろん、独: Spezielle Relativitätstheorie、英: Special relativity)とは、慣性運動する観測者が電磁気学的現象および力学的現象をどのように観測するかを記述する、物理学上の理論である。アルベルト・アインシュタインが1905年に発表した論文[1]に端を発する。特殊相対論と呼ばれる事もある。
Contents
特殊相対性理論に至るまでの背景
ニュートン力学とガリレイの相対性原理
ニュートンは力学を記述するに当たって以下のような、いわゆる「絶対時間と絶対空間」を仮定した(ニュートン力学)。
「 |
| 」 |
つまり時間と空間はそこにある物体の存在や運動に何ら影響を受けないと仮定したのである[2]。これは我々が抱いている時間や空間に対する漠然とした感覚を明確化したものであった[2]。
ニュートン力学の一つの帰結として、すべての慣性座標系が本質的に等価であり、同一点上にある2つの慣性座標系 A = (t, x)、B = (t′, x′) が
(t′, x′) = (t, x − v t)
という変換(ガリレイ変換)によって結ばれる事が示されている。ここで t, x は慣性系Aにおける時刻と位置であり、t′, x′ は慣性系Bにおける時刻と位置であり、v はAから見たBの速度である。
ニュートン力学においてすべての慣性座標系は本質的に等価なものであるので、ニュートン力学においては空間に対して「絶対的に静止している座標系」といった概念は意味をなさず、あくまで「慣性系Aが慣性系Bに対して相対的に静止している」という概念のみが意味を持つ。このことから、力学の法則はすべての慣性座標系で同一であることが結論付けられ、この事実を ガリレイの相対性原理 (Galilean invariance) と呼ぶ。
電磁気学や光学との齟齬
一方、19世紀後半になると、当時知られていた電磁気学に関する基礎方程式がマクスウェル方程式として整備された。
そしてマクスウェル方程式を解くことにより、電磁波の速度を計算したところ、これが光の速度 c と一致したため、光の正体は電磁波であると考えられるようになった(そしてそれは正しかった)。
光学の分野でも光の回折を説明するため、光を波だとみなす波動説が広まり、光を伝えるための媒質であるエーテルで宇宙が満たされているという仮説がホイヘンスにより提案された(これは後に特殊相対性理論により否定される)。
こうした知見から、マクスウェル方程式はエーテルに対して静止している理想的な座標系[注 1][注 2]において電磁気学を記述する方程式とみなされたが、エーテルに対して運動する基準系から見た電磁気現象についての理解は未だ不充分であった。
今日の目から見ると、これは電磁気学とニュートン力学の間に明確な齟齬があった事に起因する。
まず、マクスウェル方程式はガリレイ変換の下で不変ではない。すなわち、ある慣性系でマクスウェル方程式が成り立つものとすると、そこからガリレイ変換で移った別の基準系ではマクスウェル方程式は成り立たず、別の変形された方程式が成り立つことになるのである。実際、ヘルツはこの変形された方程式を運動座標系における電磁場の振る舞いを表す方程式として提案した[4][5]が、Wilson や Röntgen–Eichenwald の実験によって否定された[6][7][8]。
またエーテルの存在を仮定することは、エーテルに対して静止している「絶対静止系」が存在する事を意味するが[注 2]、前述のようにニュートン力学におけるガリレイの相対性原理は「絶対静止系」のようなものを認めておらず、これは「静止座標系」を認めずガリレイの相対性原理を前提とするニュートン力学の描像とは明確な齟齬をきたしていた。
両者の齟齬が特に先鋭化したのは、光の速度に関する解釈である。ガリレイの相対性原理を前提とした場合、光の速度は慣性系に依存するはず[9]であるので、光の速度を異なる慣性系で計測すれば、マクスウェル方程式が成立するただ一つの「静止基準系」を見つけることができるはずである。この発想からマイケルソン・モーリーの実験が行われたが、後述のようにどれもが「静止基準系」であるかのような結果が得られてしまった。
以上のように、特殊相対性理論以前の物理学はガリレイの相対性原理を認める立場と絶対静止系を認める立場が混然としていたが、両者には上述したような矛盾があるので、どちらかを修正もしくは放棄する必要がある。特殊相対性理論以前の理論であるエーテル仮説は、「エーテルに対する静止系」という絶対静止系を採用する代わりにガリレイの相対性原理を放棄する立場にたっていたのである[9]。
マイケルソン・モーリーの実験
しかしながらその後、エーテル仮説に対する重大な反証が得られた(マイケルソン・モーリーの実験、Michelson–Morley experiment[10])。エーテル仮説が正しいとすれば、地球はその公転によりエーテルに対して動いているので、地球上では公転方向に「エーテルの風」が感じられ、その影響により公転方向とそれ以外では光の速度が異なるはずであるが、実験によりそのような速度差は生じず、エーテルの風の風速はほぼ0であることが結論付けられたのである。
これをうけてヘルツ、フィッツジェラルド、ローレンツ、ポアンカレなど[11][8]がいくつかの理論を提唱したが、いずれもエーテル仮説の域を出ず、既存のエーテル仮説にアド・ホックな仮定を加えることで整合性を捕ろうとするものだった。
例えばローレンツのエーテル理論では運動する物体が「エーテルの風」を受けて収縮する(フィッツジェラルド=ローレンツ収縮[12][注 3])をフィッツジェラルドと独立に提案し、これが原因で、マイケルソン・モーリーの実験の実験では「エーテルの風」の効果がキャンセルされたのだと説明し、収縮度合いを記述した変換式(ローレンツ変換、Lorentz transformation[注 4])を定式化したが、検証可能性を欠いていた[注 5]。またローレンツとポアンカレは時間の流れが観測者によって異なるとするとする「局所時間」という相対性理論の萌芽ともいうべき考えを提案し[注 6]、Wilson や Röntgen–Eichenwald の実験に合致する電磁場の方程式を導出した[14]。
彼らはアインシュタインの重要な先駆者であり、彼らの理論は数式上は相対性理論のそれと一致している。しかし彼らの理論はあくまでエーテル仮説に基づいており、エーテル仮説の立場をとらない相対性理論とはその物理的解釈が根本的に異なり、下記のような大きな不満が残るものであった。
特殊相対性理論の基礎
こうしたローレンツやポアンカレ等の成果とはほぼ独立にアインシュタインは自身の論文[16]において特殊相対性理論を確立した。
指導原理
特殊相対性理論では、エーテルの存在を仮定せず、代わりに理論の基盤として以下の二つの原理を採用した[17][18]
- 光速度不変の原理:真空における光の速度 c はどの慣性座標系でも同一である [注 9]
- 相対性原理:全ての慣性座標系は等価である
光速度原理は前述したマイケルソン・モーリーの実験の結果から帰結される。実際、この実験の結果によれば、地球から見た光速度は季節によらず同一であった。地球の運動方向や速度は季節によって異なるので、この実験の結果は、光速度が系の運動方向や速度によらないことを意味し、これはすなわちどの慣性系からみても光速度が不変である事を強く示唆しているのである[18]。
一方、相対性原理はガリレイの相対性原理を緩和したもので、全ての慣性座標系が等価であることは仮定するが、慣性座標系の間の変換則がガリレイ変換であるとは仮定しない。
この原理は、光速度不変の原理から示唆される。光速度不変の原理によれば、どの慣性座標系でも同一であるのだから、絶対静止座標系のような「特別な」座標系は存在せず、全ての慣性座標系は等価であると思われるのである[18]。
エーテル仮説は、エーテルによる「絶対静止座標系」が存在するという仮定を採用し、全ての慣性系は等価であるというガリレイの相対性原理を捨て去ったものであった。
それに対し特殊相対性理論では、ガリレイの相対性原理を緩和した相対性原理を仮定し、代わりに「絶対静止座標」とその基盤であるエーテル仮定とを放棄したのである[18]。
なお、相対性原理理論の成果はそれまでのニュートン力学と次の意味で両立していなければならない
- 慣性座標系間の変換則は非相対論的極限 vc → 0 においてガリレイ変換に漸近する。ここで v は2つの慣性座標系間の速度で、c は真空中の光速度である[18]。
なおアインシュタインは特殊相対性理論の構築において前述した指導原理のみならず、空間の等質性や等方性を暗に仮定していた事をのちに認めている。
予備的考察
以上の指導原理をもとに、2つの慣性系の間の変換則を導く。まずはそのための準備として、変換則がどのようなものでなければならないかについて考察する。
以下、c を光の速度とし、計算を簡単にするため、時間の単位として時刻 t のかわりに ct を用いることとする。ct の単位は距離の単位と一致するので、これは時間と距離に同一の単位を用いた事を意味する。
今、慣性運動する2人の観測者(すなわち何ら外力のかかっていない観測者)A、Bがある一点ですれ違ったとする。
A の慣性系における位置と時刻を表す座標系を (ct,x) とし、B の慣性系における位置と時刻を表す座標系を (ct′,x′) とする。なお、両者の座標系で同一の光速度 c を用いることができるのは、光速度不変の原理による。
ここで注意しなければならないのは、2つの慣性系における時刻 ct、ct′ が同一であるとは仮定していない事である。すなわちここで、ニュートン力学の前提であった絶対時間の概念が放棄されているのである[19]。
必要なら位置と時刻の起点を取り直すことで、A、B がすれ違った位置と時刻がどちらの座標系でも0であるとしてよい。
このとき、これら2つの座標系の間の変換則をテイラー展開したものを考えると、何らかの定数ベクトル テンプレート:Vec と行列Λとを用いて
- [math]\left(\begin{array}{l}ct'\\\boldsymbol{x}'\end{array}\right)=\vec{b}+\Lambda\cdot\left(\begin{array}{l}ct\\\boldsymbol{x}\end{array}\right)+[/math](二次以上の項)
と表記できる。
しかし A、B がすれ違った位置と時刻がどちらの座標系でも0であるとしたことから、テンプレート:Vec = 0でなければならない。
また二次以上の項もゼロでなければならない。なぜなら、もし二次以上の項があるのであれば、B の系で外力が加わっていないにも関わらず、B は A に対して加速度運動していることについてなってしまうからである[19]。
よって
- [math]\left(\begin{array}{l}ct'\\\boldsymbol{x}'\end{array}\right)=\Lambda\cdot\left(\begin{array}{l}ct\\\boldsymbol{x}\end{array}\right)[/math]
と線形変換でなければならない。
すなわち、特殊相対性理論は4次元のベクトル空間で記述され、慣性系はそのベクトル空間の基底であり、慣性系の間の変換は線形写像である事がわかる。
世界間隔
前述した考察により、特殊相対性理論では時空間は4次元のベクトル空間で記述される事がわかった。このベクトル空間の点を世界点と呼ぶ[20]。
慣性座標系から見てある時刻 t1 に(3次元空間上の) x1 を光が通過し、この光が時刻 t2 秒後に位置 x2 まで伝播したとする。光速度は c であったので、これは
- [math]\frac{|\boldsymbol x_1-\boldsymbol x_2|}{|t_1-t_2|}=c[/math]
すなわち、
- [math]c^2(t_1-t_2)^2-|\boldsymbol x_1-\boldsymbol x_2|^2=0[/math]
である事を意味する[20]。
世界点 1 と世界点 2 の間に定義される量
- [math]s_{12}=[c^2(t_1-t_2)^2-|\boldsymbol x_1-\boldsymbol x_2|^2]^{1/2}[/math]
を世界間隔[20]もしくは世界距離と呼ぶことにすると、ある慣性系において s122 = 0 が成り立つならば、他の任意の慣性系でも s′122 = 0 が成り立つことになる。よって、微小世界間隔
- [math]\mathrm{d}s^2=c^2(\mathrm dt)^2-|\mathrm{d}\boldsymbol{x}|^2, \mathrm{d}s'^2=c^2(\mathrm dt')^2-|\mathrm{d}\boldsymbol{x'}|^2[/math]
は同次微少量であることから
- [math]\mathrm{d}s^2=a\mathrm{d}s'^2[/math]
という関係式が成り立つはずである。ここで、時空の均質性からこの係数 a は慣性系間の相対速度の絶対値にのみ依存することが要請される[20]。三つの慣性系 K1, K2, K3 の間の相対速度を V12, V23, V31 などとすると、それぞれの慣性系における微小世界間隔 ds1, ds2, ds3 および係数 a(テンプレート:Mabs) についての関係式として
- [math]\begin{align}&\mathrm{d}s_1{}^2=a(|\boldsymbol V_{12}|)\mathrm{d}s_2^2,\mathrm{d}s_2{}^2=a(|\boldsymbol V_{23}|)\mathrm{d}s_3^2, \mathrm{d}s_3{}^2=a(|\boldsymbol V_{31}|)\mathrm{d}s_1^2\\ &\therefore a(|\boldsymbol V_{12}|)/a(|\boldsymbol V_{23}|)=a(|\boldsymbol V_{31}|)=a(|-\boldsymbol V_{12}-\boldsymbol V_{23}|)\end{align}[/math]
が得られるが、後者の左辺は V12, V23 の絶対値にのみ依存するのに対して右辺は向きにも依存するので、この関係式が成り立つのは a(テンプレート:Mabs) ≡ 1 のときのみである[20]。したがって、微小世界間隔はあらゆる慣性系間で保存されることになるので、有限の世界間隔についても慣性系間での保存量となる。
ミンコフスキー空間
世界距離の定義から、以下の内積風の二項演算子
- [math]\eta((ct,x,y,z),(ct',x',y',z'))=(ct)\cdot(ct')-xx'-yy'-zz'[/math]
を考えると、世界距離の二乗は η((ct,x,y,z),(ct,x,y,z)) に一致する。
このような二項演算子 η をミンコフスキー内積もしくはミンコフスキー計量と呼び、ミンコフスキー内積の定義されたベクトル空間をミンコフスキー空間と呼ぶ。ミンコフスキー空間上の点を世界点もしくは事象[21]と呼び、ミンコフスキー空間のベクトルは通常の3次元のベクトルと区別する為、4元ベクトルという[注 10]。なお、世界点 P は、P と原点 O とを結ぶ4元ベクトル [math]\overrightarrow{OP}[/math] と自然に同一視できるので、以下紛れがなければ世界点を4元ベクトルとして表現する。
特殊相対性理論は、時空間をミンコフスキー空間として記述する理論である。
4元ベクトル テンプレート:Vec に対し η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) が非負であれば
[math]\|\vec{a}\|=\sqrt{\eta(\vec{a},\vec{a})}[/math]
をミンコフスキー・ノルムといい、世界点 テンプレート:Vec、テンプレート:Vec に対し、η(テンプレート:Vec − テンプレート:Vec, テンプレート:Vec − テンプレート:Vec) が非負であれば η(テンプレート:Vec − テンプレート:Vec, テンプレート:Vec − テンプレート:Vec) の平方根を テンプレート:Vec、テンプレート:Vec の世界距離という。
なお、世界「距離」という名称ではあるが、
- 負の値や虚数も取りうる
- 0ベクトルでなくとも世界距離が0になることがある
といった点から数学的な距離の公理を満たさない。
また、||テンプレート:Vec|| は常に定義できるとは限らないばかりかミンコフスキー・ノルムが定義できる値に対しても三角不等式の逆向きの不等式
[math]\|\vec{a}+\vec{b}\|\ge\|\vec{a}\|+\|\vec{b}\|[/math]
が成り立つ事から、ミンコフスキー・ノルムも数学で通常使われるノルムの定義を満たさない。
符号と記法に関して
本項では、ミンコフスキー内積を
- [math]\eta((ct,x,y,z),(ct',x',y',z'))=(ct)\cdot(ct')-xx'-yy'-zz'[/math]
としたが、書籍によっては符号を逆にした
- [math]\eta((ct,x,y,z),(ct',x',y',z'))=-(ct)\cdot(ct')+xx'+yy'+zz'[/math]
をミンコフスキー内積としているものもあるので注意が必要である。
本項と同じ符号づけを時間的規約、本項とは反対の符号づけを空間的規約と呼んで両者を区別する。
また本項ではミンコフスキー内積を η で表したが、g で表したり、両者を混用したりするものもある。例えば佐藤 (1994)では、特殊相対性理論の場合は η を用いているのに一般相対性理論では g を用いている。またシュッツ (2010)ではミンコフスキー内積には g を用いているのにその行列表示は η で表している。
厳密な定義
V を n 次元実ベクトル空間とし、
- [math]\eta\colon V\times V\to\mathbb{R}[/math]
を V 上の対称二次形式とする。
このとき、V の基底 [math]\vec{e}_1,\ldots,\vec{e}_n[/math] と非負整数 p、q が存在し、
- [math]\begin{align}&\eta(\sum_\mu a^\mu\vec{e}_\mu,\sum_\nu b^\nu\vec{e}_\nu)\\&=a^1b^1+\cdots+a^pb^p-a^{p+1}b^{p+1}-\cdots-a^{p+q}b^{p+q}\end{align}[/math]
が成立する事が知られている。しかも p、q は (V, η) のみに依存し、基底 [math]\vec{e}_1,\ldots, \vec{e}_n[/math] には依存しない(シルヴェスターの慣性法則)。
p = 1、q = n − 1 となる二次形式 η をミンコフスキー計量と呼び、組 (V, η) を n次元ミンコフスキー空間という。
特殊相対性理論で用いるのは、次元nか4の場合なので、以下特に断りがない限り、n = 4とする。
ミンコフスキー空間の図示
空間方向の次元を2に落としたミンコフスキー空間を図示した。図では何らかの慣性系から見たミンコフスキー空間が描かれており、この慣性系に対して静止している観測者 (observer) が原点にいる。この観測系における座標の成分表示を (ct,x,y) とする。
この観測者にとっての時間軸 (ct,0,0) は図で「時間」と書かれた軸であり、この観測者にとって時間は時間軸にそって流れる。従って図の上方が未来であり、下方が過去である。観測者が慣性系に対して静止している事を仮定したので、時間が t 秒経つと、観測者のミンコフスキー空間上の位置は (ct,0,0) に移る。
一方、この観測者にとって現在にある世界点の集まり(すなわちこの観測者にとっての空間方向)は図の[現在]と書かれた平面であり、この観測者からみた空間方向の座標軸 (0, x, 0), (0, 0, y) が"空間"と書かれた二本の軸である。
世界距離の定義から、原点を通る光の軌跡は
- ct2 − x2 − y2 = 0
を満たす。この方程式を満たす世界点の集合は2つの円錐として描かれ、これを光円錐という。図の上にある逆さまの円錐が未来の光円錐 (future light cone) であり、図の下にある円錐が過去の光円錐 (past light cone) である。
原点を通る光の軌跡は、光円錐上にある直線である。観測者は光を使って物をみるので、過去の光円錐の上にある世界点が観測者に見える(もちろん、他の物体に遮られなければ)。
ミンコフスキー空間上の4元ベクトル テンプレート:Vec の終点が(未来もしくは過去の)光円錐の内側にあるとき テンプレート:Vec は時間的であるといい、終点が光円錐の外側にあるとき テンプレート:Vec は空間的であるといい、光円錐上にあるとき テンプレート:Vec は光的であるという。定義より明らかに、以下が成り立つ。
テンプレート:Vec が時間的、空間的、光的であるのは、η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) がそれぞれ正、負、0のときである。
光円錐上の点 テンプレート:Vec は η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) という座標系と無関係な値の符号で特徴づけられるので、4元ベクトルが時間的か、空間的か、光的かは原点を起点するどの慣性座標系からみても不変である事がわかる。特に、光円錐は原点を起点するどの慣性座標系からみても同一である。
慣性座標系の数学的特徴づけ
原点Oを通る観測者から見た慣性座標系を一つ固定すると、前述のようにその慣性系座標系における二つの位置ベクトル間のミンコフスキー内積は テンプレート:Equation box 1 と書ける。このような座標系で、
- [math]\vec{e}_0=\begin{pmatrix} 1\\0\\0\\0 \end{pmatrix}[/math]、[math]\vec{e}_1=\begin{pmatrix} 0\\1\\0\\0 \end{pmatrix}[/math]、[math]\vec{e}_2=\begin{pmatrix} 0\\0\\1\\0 \end{pmatrix}[/math]、[math]\vec{e}_3=\begin{pmatrix} 0\\0\\0\\1 \end{pmatrix}[/math]
と定義すると、テンプレート:Vec0、テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 はあきらかにミンコフスキー空間の基底であり、しかも テンプレート:Equation box 1 を満たす。
ユークリッド空間の類似からテンプレート:EquationNote式を満たす基底 テンプレート:Vec0、テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 を正規直交基底[22]と呼ぶ事にすると、慣性座標系から正規直交基底が1つ定まった事になる。テンプレート:Vec0 をこの基底の時間成分といい、テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 をこの基底の空間成分という。
逆にテンプレート:EquationNote式の意味で正規直交基底である テンプレート:Vec0、テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 を一つ任意に選び、この基底における座標の成分表示を (ct,x,y,z) と書くことにすると、ミンコフスキー内積がテンプレート:EquationNote式を満たすことを簡単に確認できる。
以上の議論から、原点にいる観測者の慣性座標系と正規直交基底は1対1に対応する事がわかる。従って以下両者を同一視する。
ただし、正規直交基底の中には、
- テンプレート:Vec0 が過去の方向を向いていたり
- テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 が左手系だったり
するものもあるので、このようなものは以下除外して考えるものとする[注 11]。
世界線、光速との比較
運動している質点がミンコフスキー空間内に描く軌跡を世界線と言う。
今、世界線が原点を通る直線となる質点があったとし、その直線の(4元)方向ベクトルを テンプレート:Vec とする(長さは問わない)。
この質点の運動を慣性座標系 テンプレート:Vec0、テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 にいる観測者 A が原点で眺めたする。
この慣性座標系における テンプレート:Vec の成分表示を (ct, x, y, z) とすると、3次元ベクトル (x/t, y/t, z/t) は A から見た質点の速度ベクトルであると解釈できる。
次に テンプレート:Vec の速度を光速と比較してみる。テンプレート:Vec の速度が光を下回る必要十分条件は、√x2 + y2 + z2t < c となることであるので、これを書き換えると、ct2 − x2 − y2 − z2 > 0 となる。ミンコフスキー計量の定義より、この式は η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) > 0 と慣性座標系によらない形で表現できる。
従って、η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) > 0 であれば、どの慣性系から見ても光速度を下回り、逆に η(テンプレート:Vec,テンプレート:Vec) < 0 であれば どの慣性系から見ても光速度を上回る。
前述のように η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) の正負によって、テンプレート:Vec を時間的もしくは空間的と呼ぶので、まとめると以下が結論づけられる。
- 方向ベクトル テンプレート:Vec が時間的 ⇔ 質点はどの慣性系から見ても光速を下回る
- 方向ベクトル テンプレート:Vec が空間的 ⇔ 質点はどの慣性系から見ても光速を上回る
- 方向ベクトル テンプレート:Vec が光的 ⇔ 質点はどの慣性系から見ても光速と等しい
最後のものは光速度不変の原理からの直接の帰結でもある。
なお、上の議論では、質点の世界線が直線である事を仮定したが、そうでない場合も原点での接線を テンプレート:Vec として同様の議論をする事で同じ結論が得られる。
ローレンツ変換
ローレンツ変換とは、ミンコフスキー空間 V 上の線形変換
- φ : V→V
でミンコフスキー計量を変えないもの、すなわち任意の4元ベクトル テンプレート:Vec、テンプレート:Vec に対し、
- [math]\eta(\varphi(\vec{a}),\varphi(\vec{b}))=\eta(\vec{a},\vec{b})[/math]
が成立するものの事である。
ユークリッド空間で内積を変えない線形変換は合同変換であるので、ローレンツ変換とは、ミンコフスキー空間における合同変換の対応物である。
ただし正規直交基底の場合と同様、ローレンツ変換にも
- 空間方向の向きを保たないもの
- 時間方向の向きを保たないもの
が存在するのでこのようなものは以下除外して考える[注 12]。
なお、空間方向の向き、時間方向の向きの両方を保つローレンツ変換を正規ローレンツ変換という事があるが[23]、本項では以下特に断りがない限り、単にローレンツ変換と言った正規ローレンツ変換をさすものとする。
ローレンツ変換 φ と4元ベクトル テンプレート:Vec を使って
- f(テンプレート:Vec) = φ(テンプレート:Vec) + テンプレート:Vec
の形に書ける変換をポアンカレ変換という。特殊相対性理論では、2人の観測者が原点で出会ったケースにおいてローレンツ変換に関して議論する事が多いが、これは出会った場所を原点に平行移動した上で議論しているという事なので、実質的にはポアンカレ変換に関する議論である事が多い。
ローレンツ変換の意義
4次元ミンコフスキー空間 (V,η) では、 次の定理が成立する事が知られている。 テンプレート:Math theorem この定理はユークリッド空間における2つの正規直交基底が直交変換により写りあう事の類似である。
前述のように、正規直交基底は慣性座標系と対応している。よって上の定理は、以下を意味する。
慣性座標系から別の慣性座標系への座標変換はローレンツ変換である。
ローレンツ変換の具体的な形
ローレンツ変換の具体的な形を求める為、まずは基底をより解析がしやすいものに置き換える。
基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の「空間部分」である テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の張るミンコフスキー空間上の部分空間を E とし、同様に基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の空間部分である テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の張るミンコフスキー空間上の部分空間を E′ とすると、これらはそれぞれの慣性座標系における空間方向を表している。
テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 を E 内で回転した別の正規直交基底に取り替えても、テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 と実質的に同じ慣性系を表しているとみなしてよい。
そこで (テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3), (テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) をそれぞれ E 内、E′ 内で回転することで、ローレンツ変換 φ の行列表示 Λ を簡単な形で表すことを試みる[注 13]。
E と E′ の共通部分 E∩E′ を U とすると、U は4次元ベクトル空間上の2つの3次元部分ベクトル空間の共通部分なので、U は2次元(以上)のベクトル空間である。
従って E 内で (テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) を回転することで、
- テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3∈U
としてよく、同様に E′ 内の回転により
- テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3∈U
とできる。最後に U 内で テンプレート:Vec'1, テンプレート:Vec'2 を回転することで、
- テンプレート:Vec2 = テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 = テンプレート:Vec3
としてよい。
これらの基底に対し、テンプレート:EquationNote式を満たすローレンツ変換 φ の行列表現を Λ = (Λμν)μν とする。
これはすなわち、
- [math](\vec{e}'_0, \vec{e}'_1, \vec{e}'_2, \vec{e}'_3)= (\vec{e}_0, \vec{e}_1, \vec{e}_2, \vec{e}_3)\Lambda[/math]
を満たすという事であり、これら2つの基底における座標の成分表示をそれぞれ (ct,x,y,z)、(ct',x',y',z')とすると テンプレート:NumBlk が成立するという事でもある。
テンプレート:Vec2 = テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3 = テンプレート:Vec3 であったので、ローレンツ変換の行列表示は、
- [math]\Lambda=\left(\begin{array}{cc|cc}*&&&\\&&&\\\hline&&1&\\&&&1\end{array}\right)[/math]
という形であり、ローレンツ変換がミンコフスキー空間における「回転」であったことを利用すれば、上の行列の(*)の部分が、
- [math]\left(\begin{array}{cc}\cosh\zeta&-\sinh\zeta\\-\sinh\zeta&\cosh\zeta\end{array}\right)[/math]
という形であることがわかる。これを導く厳密な方法はいくつかあるが、簡便な方法としては虚数単位 ι を用いて時間軸を τ = ιct と置く事で通常のユークリッド空間の回転とみなせる(ウィック回転)という事実を使うものがある。
最終的に2つの基底における座標の成分表示の関係テンプレート:EquationNote式は以下のように書ける事がわかる。 テンプレート:Math theorem
この値 ζ は正規直交基底の取り方に依存せず、ローレンツ変換 φ の固有値のみによって決まることが知られており、ζ を φ のラピディティという。なお、ζ は
- [math]\zeta=\operatorname{arccosh}(\eta(\vec{e}_0,\vec{e}'_0))[/math]
と具体的に求めることもできる。
ローレンツ変換の物理的解釈
慣性座標系 (ct,x,y,z) にいる観測者 A は、原点を通過した後、(ct,0,0,0) という直線(世界線)にそって進んでいく。
この様子を別の観測者 B の慣性座標系 (ct′,x′,y′,z′) で記述した式はテンプレート:EquationNote式に (x ,y, z) = (0, 0, 0) を代入した
- [math]\left(\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}ct\cosh\zeta\\-ct\sinh\zeta\\0\\0 \end{array}\right)[/math]
によって表現できる。この世界線の「傾き」
- [math]x/t=-c\tanh\zeta[/math]
は2人の観測者の相対速度と解釈できるので、観測者 A から見た観測者 B の相対速度を v とすると、
- [math]v=c\tanh\zeta[/math]
となる[注 14]。よって、
- [math]\cosh\zeta=\frac{1}{\sqrt{1-\tanh^2\zeta}}=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}[/math]
- [math]\sinh\zeta=\frac{\tanh\zeta}{\sqrt{1-\tanh^2\zeta}}=\frac{(v/c)}{\sqrt{1-(v/c)^2}}[/math]
である。そこでローレンツ因子 γ を
[math]\gamma=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}[/math]
と定義すると、最終的に以下が結論づけられる。 テンプレート:Math theorem
我々はテンプレート:EquationNote式やそれと同値なテンプレート:EquationNote式を導くとき、空間方向の座標変換をおこなった。これは別の見方をすると、ローレンツ変換から空間方向の回転成分を取り除いたものがテンプレート:EquationNote式やテンプレート:EquationNote式であるということである。
テンプレート:EquationNote式やテンプレート:EquationNote式のように書けるローレンツ変換、すなわち空間方向に回転しないローレンツ変換の事をローレンツ・ブーストと呼ぶ。
ガリレイの相対性原理と特殊相対性原理
ローレンツ変換の式テンプレート:EquationNote式において、v/c≈0 とすると、テンプレート:EquationNote式は、
- [math]\left(\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}ct\\x-vt\\y\\z\end{array}\right)[/math]
となり、ガリレイ変換に一致する。
すなわち、このことからニュートン力学近似とは、慣性座標系間の相対速度 v が光速 c と比べて十分小さい場合の理論であると言うことがいえる。
このことからニュートン力学はガリレイ変換に不変であるというガリレイの相対性原理は、特殊相対性理論では以下の形で成立していると考えられる
特殊相対性原理:全ての物理法則はローレンツ変換に対して不変でなければならない[24]
固有時
本節では光速を超えずに移動する観測者 A の感じる時間の長さ(観測者の固有時間)s が、A の世界線の(ミンコフスキー計量で図った)「長さ」に一致することを示す。
慣性系から見た時間
固有時間について述べる前に、まず慣性系から見た時間についての公式を与える。
テンプレート:Vec を世界点とし、(テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) を原点における慣性座標系とする。このとき、以下が成立する。
慣性座標系 (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) における テンプレート:Vec の起こる時刻は η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec0)である。
ただしここでいう「時間の長さ」は c 秒を1単位として数えた時間である。秒を単位とした時間の長さの場合は右辺を c で割る必要がある。
実際、(テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) における成分表示を (ct,x,y,z) とすると、テンプレート:Vec の起こる時刻は テンプレート:Vec を時間軸方向へ射影したものに一致するが、テンプレート:Vec を時間軸方向へ射影した値は η(テンプレート:Vec,テンプレート:Vec0) である。
直線的に動く場合の固有時間
本節では以下を示す。
時間的もしくは光的な4元ベクトル テンプレート:Vec に沿って原点から テンプレート:Vec の終点まで直線的に動く観測者の固有時間 s は テンプレート:Vec のミンコフスキー・ノルム [math]\|\vec{u}\|=\sqrt{\eta(\vec{u},\vec{u})}[/math] に一致する
なお、テンプレート:Vec が時間的もしくは光的な4元ベクトルであることから η(テンプレート:Vec, テンプレート:Vec) > 0 であるので、上式の平方根は意味を持つ。
ただしここでいう「時間の長さ」はc秒を1単位として数えた時間である。秒を単位とした時間の長さは
[math]\tau=s/c[/math]
である。
上の事実を示すため、O から テンプレート:Vec に沿って移動する観測者を考えると、この観測者の慣性座標系は、テンプレート:Vec0 = テンプレート:Vec||テンプレート:Vec|| を時間方向の単位(4元)ベクトルとする正規直交基底 (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) により表せる。
この座標系に前述の公式を適応すれば、この座標系で観測者が原点から テンプレート:Vec の終点まで世界線を移動するのにかかる固有時間は
[math]\eta(\vec{u},\vec{e}_0)=\|\vec{u}\| \eta(\vec{e}_0,\vec{e}_0)=\|\vec{u}\|[/math]
となり、最初の公式が示された。
上では観測者が原点を通る世界線に沿って移動する場合について述べたが、原点を通らない世界線に関しても、観測者が上を テンプレート:Vec から テンプレート:Vec まで直線的に動く間に
- [math]\|\vec{u}-\vec{w}\|[/math]
の固有時間が流れる事を同様の議論により証明できる。
一般の場合
本節では光速を超えずに移動する観測者 A の世界線 C が曲線である場合に対して A の固有時間を求める方法を述べる。
観測者 A の時空間上の位置 テンプレート:Vec が実数 r によってパラメトライズされて テンプレート:Vec = テンプレート:Vec(r) と書けているとすると、観測者が テンプレート:Vec(r0) から テンプレート:Vec(r0 + Δr) まで移動する間に、
- [math]\Delta s=\| \vec{x}(r_0+\Delta r)- \vec{x}(r_0) \|= \left\|\frac{\Delta\vec{x}}{\Delta r}\right\| \Delta r[/math]
の固有時間が流れることになる。したがって観測者 A が C に沿って動いた際に流れる固有時間 s は以下のように求まる:
[math]s=\int_\mathrm{C}\operatorname{d}s=\int_\mathrm{C}\left\|\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}r}\right\|\operatorname{d}r[/math]
これはユークリッド空間において曲線の長さを求める弧長積分のミンコフスキー空間版であるので、上の公式は、観測者 A の固有時間が A の描く世界線 C の「長さ」に一致することを意味している。
次に上で示した式を慣性座標で表す。A とは別の観測者 B が慣性運動しており、B の慣性座標系 (ct,x,y,z) における A の位置 テンプレート:Vec(r) が
- テンプレート:Vec(r) = (ct(r),x(r),y(r),z(r))
と書けていたとすると、以下が言える:
[math]\begin{align}\operatorname{d}s^2&=\left\|\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}r}\right\|^2\operatorname{d}r^2=\|\operatorname{d}\vec{x}\|^2\\&=c^2\operatorname{d}t^2-\operatorname{d}x^2-\operatorname{d}y^2-\operatorname{d}z^2\end{align}[/math]
4元速度と4元加速度
以上の議論では変数 r で世界線 C をパラメトライズしたが、物理学的に自然な値である秒を単位とした固有時 τ そのものを使って、テンプレート:Vec = テンプレート:Vec(τ) とパラメトライズするのが一般的である。
このようにパラメトライズしたとき、質点 テンプレート:Vec の4元速度 テンプレート:Vec と4元加速度 テンプレート:Vec を以下のように定義する:
- [math]\vec{u}=\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}\tau}[/math]、[math]\vec{a}=\frac{\operatorname{d}^2\vec{x}}{\operatorname{d}\tau^2}[/math]
すなわち、テンプレート:Vec のミンコフスキー空間上の位置の変化率を固有時間 τ で測ったものが4元速度で、4元速度の変化率を τ で測ったものが4元加速度である。
4元速度のミンコフスキー・ノルムは
- [math]\frac{1}{c}\left\|\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}\tau}\right\|=\frac{\| \operatorname{d}\vec{x} \| }{ \operatorname{d}s}=\frac{\operatorname{d}s}{\operatorname{d}s}=1[/math]
を満たす[25]。
このことから、4元速度は x の世界線の接線で長さが c であるものである事がわかる。
この事実は、ユークリッド空間の曲線を弧長で微分したときの長さが1になることと対応している。長さが1でなく c なのは時間の単位が c 秒でなく1秒だからである。
以上の事から4元速度のミンコフスキー・ノルムの2乗が定数 c2 なので、これを微分する事で
[math]\eta(\vec{u},\vec{a})=0[/math]
である事がわかる。すなわち4元速度と4元加速度は「直交」している[25]。
固有時間による慣性系の特徴付け
変分法を用いる事で、以下の事実を示せる
ミンコフスキー空間上の2つの世界点 テンプレート:Vec, テンプレート:Vec を結ぶ世界線(で光速度未満のもの)のうち、最も固有時間が長くなるのは、テンプレート:Vec と テンプレート:Vec を直線的に結ぶ世界線である
テンプレート:Vec から テンプレート:Vec へと直線的に動く観測者は慣性系にいることになるので、これは慣性運動している場合が最も固有時間が長くなる事を意味する。
固有時間が世界線の「長さ」であった事に着目すると、上述した事実は、ユークリッド空間上の二点を結ぶ最短線が直線であることに対応している事がわかる。なお、ユークリッド空間では「最短」であったはずの直線がミンコフスキー空間上では「最大」に変わっているのは、ミンコフスキーノルムの2乗 ct2 − x2 − y2 − z2 の空間部分がユークリッドノルムの2乗 x2 + y2 + z2 とは符号が反対である事に起因する。
特殊相対性理論における力学
ニュートン力学では、3次元空間のガリレイ変換に対して不変になるように理論が構築されている。
それに対し特殊相対性理論では、4次元時空間のローレンツ変換に対して不変になるように理論を構築する必要があるので、ニュートン力学の概念をそのまま用いることばかりできない。
本節では、ニュートン力学の諸概念を「4次元化」し、それがローレンツ変換(と平行移動)に対して不変になることを示すことで特殊相対性理論における力学を構築する。
以下、記法を簡単にするため、
[math](x^0,x^1,x^2,x^3):=(ct,x,y,z)[/math]
と書くことにする。
4元運動量
光速を超えないで運動する質点 テンプレート:Vec の世界線を
- テンプレート:Vec = テンプレート:Vec(τ)
と秒を単位とした固有時 τ でパラメトライズする。
このとき、質点 テンプレート:Vec の4元運動量を
- [math]\vec{p}=m\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}\tau}[/math]
と定義する。ここで m は質点 テンプレート:Vec の慣性座標における質量(静止質量と呼ぶ)である。すなわち、4元運動量は、4元速度に静止質量を掛けたものである。
4元運動量の物理学的意味を見るため、慣性座標系 (x0,x1,x2,x3) := (ct,x,y,z) を固定し、テンプレート:Vec をこの座標系に関して
- テンプレート:Vec = (p0,p1,p2,p3)
と成分表示する。
4元運動量の空間成分
i=1,2,3に対し、4元運動量の定義より、
- [math]p^i=m\frac{\operatorname{d}x^i}{\operatorname{d}\tau}=\frac{m\operatorname{d}x^i/\operatorname{d}t}{\operatorname{d}\tau/\operatorname{d}t}=\frac{mv^i}{\sqrt{1-(v/c)^2}}[/math]
である。ここで v = (v1, v2, v3) はこの慣性座標系における質点の速度ベクトルであり、v = |v|である。
vc → ∞ の極限においてこの値は mvi に漸近するので、4元運動量の空間部分 (p1,p2,p3) はニュートン力学の運動量 (mv1, mv2, mv3) をローレンツ変換で不変にしたものであるとみなす事ができる。
また、(p1, p2, p3) は質点の「見かけ上の重さ」[26]が
- [math]M=\frac{m}{\sqrt{1-(v/c)^2}}[/math]
である場合の運動量とみなすこともできる。
4元運動量の時間成分
4元運動量の時間成分 p0 に c を掛けたものをテイラー展開すると、
- [math]\begin{align}cp^0&=cm\frac{\operatorname{d}x^0}{\operatorname{d}\tau}=\frac{m\operatorname{d}x^0/\operatorname{d}t}{\operatorname{d}\tau/\operatorname{d}t}\\&=\frac{mc^2}{\sqrt{1-(v/c)^2}}=mc^2+\frac{mv^2}{2}+\ldots\end{align}[/math]
である。
第二項はニュートン力学における運動エネルギーであるので cp0 はエネルギーに相当していると考えられる。
従って第一項の
[math]E_0:=mc^2[/math]
もエネルギーを表していると解釈できる。この値は質点が例え慣性系に対して静止していて v = 0 であっても持つエネルギーであることから、この値を質点の静止質量エネルギーと呼ぶ。
また、質量欠損や核反応・対消滅から、質量を持つ物質は mc² のエネルギーを持つことが確かめられている。
エネルギーと運動量の関係
4元運動量のミンコフスキー・ノルムは
- [math]\left\|\frac{\operatorname{d}\vec{p}}{\operatorname{d}\tau}\right\|=m\left\|\frac{\operatorname{d}\vec{x}}{\operatorname{d}\tau}\right\|=m\frac{\| \operatorname{d}\vec{x} \|}{\operatorname{d}\tau}=m\frac{\operatorname{d}s}{\operatorname{d}\tau}=mc[/math]
である。一方、慣性座標系を1つ固定して4元運動量を成分表示したとき、前に示したように、E := cp0 はエネルギーを表し、p = (p1,p2,p3) は運動量に対応していた。運動量の大きさを p = |p| とすると、E と p は以下の関係式を満たす:
- [math](mc^2)^2=\|c\vec{p}\|^2=(cp^0)^2-|c\boldsymbol{p}|^2=E^2-(cp)^2[/math]
左辺は慣性系によらないので、E2 − (cp)2 は慣性系によらず一定値 (mc2)2 になることを意味する。
[math]p\lt \lt mc[/math]であれば、上の式は、
- [math]E=\sqrt{(mc^2)^2+(cp)^2}=mc^2+\frac{p^2}{2m}+\cdots[/math]
となり[27]、静止質量エネルギー mc2 を無視すれば、p22m が質点の運動エネルギーに相当するというニュートン力学の式に対応していることがわかる。
正の質量を持った質点は光速度以上になれない
光速で移動する有限のエネルギーを持った粒子を考える。この時、mγc² の γ が無限大に発散してしまうので、m = 0 でなければならない。この逆も成立するため、質量を持たずに有限のエネルギーを持つ物質は常に光速で走り続けねばならず、また光速で移動するエネルギーを持つ物質はすべて質量が0であることが分かる。
特殊相対性理論以前の解釈
特殊相対性理論以前の電磁気学において、J.J.トムソンやワルター・カウフマンによって電子の質量の速さ依存性が指摘されていた。それを説明する理論としてマックス・アブラハムは、電子の慣性質量の起源を全て電磁場に求めるという電磁質量概念 (Electromagnetic mass) を提唱したが、電子以外の物質の構成要素に対して一般化することができなかった[注 15]。
一方、特殊相対性理論はその物質の質量の速さ依存性についての一般的な説明と慣性質量とエネルギーに関する普遍的な関係を与える[注 16]。
運動方程式
すでに運動量の概念を4元ベクトル化したので、力の概念を4元ベクトル化した4元力 テンプレート:Vec が定義できれば、 ニュートンによる質点の運動方程式 f = dpdt をローレンツ変換に不変にした特殊相対性理論の運動方程式
- [math]\vec{f}=m\frac{\operatorname{d}\vec{p}}{\operatorname{d}t}[/math]
が定式化できる。
現在知られている4種類の力のうち、電磁気力、強い力、弱い力の3つは4元力として表現可能な事が知られている[30]。このうち電磁気力を4元力として表現する方法は後の節で述べる。
一方、重力は特殊相対性理論の範囲で4元ベクトル化しようとしてもローレンツ変換に対して不変にならないためうまくいかない[31]。重力を扱うには一般相対性理論が必要となる。
特殊相対性理論の帰結
ローレンツ収縮
以下話を簡単にするため時間1次元+空間1次元の計2次元の場合について述べるが一般の場合も同様である。
慣性系 (ct',x') に対して静止している剛体に対し、この慣性系 (ct′, x′) で測った剛体の長さをこの剛体の固有長さと呼ぶ。
今、固有長さ l の棒 L が慣性系 (ct′, x′) に対して静止しており、これを別の慣性系 (ct,x) から眺めたとする。
話を簡単にするため、2つの慣性系の原点はいずれも棒 L の1つの端点 O に一致しているものとする。
棒 L は慣性系 (ct′, x′) に対して静止しているので、棒の他方の端点が描く世界線 C は (ct′,l) と t′ でパラメトライズできる。
慣性系 (ct,x) における現在 (0,x) と世界線 C との交わりはローレンツ変換により
- [math]\left(\begin{array}{c}ct'\\\ell\\\end{array}\right)=\gamma\left(\begin{array}{c}c\cdot0+x\cdot(v/c)\\x-v\cdot0\\\end{array}\right)[/math]
なので、棒 L の長さは
[math]x=\ell/\gamma[/math]
となる。ここで γ < 1 はローレンツ因子 1√1 − (v/c)2 である。
このように、棒に対して運動している座標系からみると、棒の長さは割合 1γ だけ縮んで見える。この現象を ローレンツ収縮[32][33]もしくはフィッツジェラルド=ローレンツ収縮[34][35]という。
ローレンツ自身の解釈との違い
ローレンツ収縮は、アインシュタインが特殊相対性理論を提案する以前に、ローレンツとフィッツジェラルドが独立に提案したものである。
彼らの提案は数式上は特殊相対性理論のそれと同一であるが、彼らの理論はエーテル仮説を前提としており、物体は「エーテルの風」を受けて3次元空間内で実際に縮む[36]とするものであった。
それに対し特殊相対性理論では、ローレンツ収縮を4次元時空間において解釈したものであり、前述のように慣性系によって計っている場所が違う事が収縮の起こる原因である。
時間の伸び
観測者 A の秒を単位とした固有時間を τ = sc とし、A とは別の観測者 B が慣性運動しており、B の慣性座標系 (ct, x, y, z) における B の位置が、
- テンプレート:Vec(τ) = (ct(τ), x(τ), y(τ), z(τ))
と書けていたとすると、
- [math]\operatorname{d}s^2=c^2\operatorname{d}t^2-\operatorname{d}x^2-\operatorname{d}y^2-\operatorname{d}z^2[/math]
なので、
- [math]c^2\left(\frac{\operatorname{d}\tau}{\operatorname{d}t}\right)^2=\left(\frac{\operatorname{d}s}{\operatorname{d}t}\right)^2=c^2-\left(\frac{\operatorname{d}x}{\operatorname{d}t}\right)^2-\left(\frac{\operatorname{d}y}{\operatorname{d}t}\right)^2-\left(\frac{\operatorname{d}z}{\operatorname{d}t}\right)^2=c^2-v^2[/math]
となる。よって
[math]\frac{\operatorname{d}\tau}{\operatorname{d}t}=\sqrt{1-(v/c)^2}[/math]
である。右辺はローレンツ因子 γ = 1√1 − (v/c)2 の逆数に等しい。
これを観測者 A の世界線 C に沿って積分すると
[math]\tau=\int_C \sqrt{1-(v(t)/c)^2} \operatorname{d}t[/math]
により、A の固有時間を求められる。ここで v(t) は時刻 t における A と B の相対速度である。
相対速度が光速を下回っている場合、積分内は常に1未満であるので、
τ < t
これはすなわち、慣性系でみたときの時間は固有時間よりも伸びる事を意味する。
特に観測者 A も慣性運動しているときは、相対速度 v は常に一定値であるので、
[math]\tau=t\sqrt{1-(v/c)^2} [/math]
の関係が導ける。
速度の合成則
観測者 A、B が慣性運動しており、さらに質点 C が運動しているとする(慣性運動とは限らない)。
観測者 A の座標系を (ct, x, y, z') とし、観測者 B の座標系を (ct', x', y', z') とし、A から見た B の相対速度の大きさを V とし、
- [math]\alpha=\sqrt{1-(V/c)^2}[/math]
をローレンツ因子の逆数とする。
必要ならミンコフスキー空間の原点を取り替えることで C が原点を通っているとしてよく、さらに C の運動方向は y軸、z軸と直交しているとし、y'軸、z'軸がy軸、z軸と一致しているとしても一般性を失わない。
観測者 A、B から見た C の速度をそれぞれ (vx,vy,vz)、(v′x,v′y,v′z) とするとき、B の座標系から A の座標系への速度変換則は、ローレンツ変換のテンプレート:EquationNote式より以下のようになる:
- [math]\begin{align}(v'_x,v'_y,v'_z)&=\frac{c(\operatorname{d}x'\operatorname{d}y',\operatorname{d}z')}{c\operatorname{d}t'}\\&=\frac{c((\operatorname{d}x-v\operatorname{d}t)/\alpha,\operatorname{d}y,\operatorname{d}z)}{(c\operatorname{d}t+(v/c)\operatorname{d}x)/\alpha}\\&=\frac{(v_x-V, v_y\alpha,v_z\alpha)}{1+ Vv_x/c^2}.\end{align}[/math]
因果律、同時性の相対性
本節では、質点の速度が光速を越えない限り、特殊相対性理論においても因果律が成り立つことを示す。
以下、とくに断りがない限り、質点、観測者の双方とも光速度以下であるものとする。
テンプレート:Vec, テンプレート:Vec をミンコフスキー空間上の2つの世界点とする。
テンプレート:Vec − テンプレート:Vec が未来の光円錐の内部にあるとき、テンプレート:Vec は テンプレート:Vec の因果的過去 (causally precede) といい、テンプレート:Vec < テンプレート:Vec と書く。
同様に テンプレート:Vec − テンプレート:Vec が未来の光円錐の内部もしくは未来の光円錐上にあるとき、テンプレート:Vec は テンプレート:Vec の年代的過去 (chronologically precede) といい、テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec と書く。
因果的過去は以下のように特長づけられる
ミンコフスキー空間上の点 テンプレート:Vec にある質点が光速未満(resp. 以下)で テンプレート:Vec に到達できる ⇔ テンプレート:Vec < テンプレート:Vec (resp. テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec)
よって特に以下が成立する:
テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec かつ テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec ⇒ テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec
従って「≦」は数学的な(半)順序の公理を満たす。
以下の事実は、質点の速度が光速を越えない限り座標系の取り替えで因果律が破綻しない事を意味している:
テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec かつ テンプレート:Vec ≠ テンプレート:Vec ⇔ 全ての慣性座標系で、テンプレート:Vec は テンプレート:Vec より時間的に後に起こる。
実際、どのような慣性座標系を選んでも、その時間軸 テンプレート:Vec0 は未来の光円錐内または未来の光円錐上にあるので、テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec であれば、テンプレート:Vec から テンプレート:Vec までに流れる時間 [math]\eta(\vec{y}-\vec{x},\vec{e}_0)[/math] は正である。
一方、テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec でも テンプレート:Vec ≦ テンプレート:Vec でもないとき、すなわち テンプレート:Vec − テンプレート:Vec が空間的なときはこのような関係は成り立たない。
テンプレート:Vec − テンプレート:Vec が空間的なとき、以下の3種類の慣性座標系が存在する
- テンプレート:Vec が テンプレート:Vec より後に起こる
- テンプレート:Vec と テンプレート:Vec が同時に起こる
- テンプレート:Vec が テンプレート:Vec より先に起こる
つまり空間的な関係にある2元 テンプレート:Vec、テンプレート:Vec の時間的な順序関係は慣性系に依存してしまう。
これはニュートン力学的な直観に反するが、テンプレート:Vec と テンプレート:Vec には因果関係がないので、どちらが先に起ころうとも因果律が破綻することはない[37]。
時計のパラドックス
今、ここに一組の双子がおり、二人は慣性運動しながら次第に離れているとする。
このとき兄から見ると、弟の時計は遅れてみえ、逆に弟から見ると兄の時計は遅れてみえる事が特殊相対性理論から帰結される。
これは一見奇妙に見えるため、時計のパラドックスと呼ばれることもあるが[38]、実は特に矛盾している訳ではない。なぜなら慣性運動している二人は二度と出会うことがないので、もう一度再会してどちらの時計が遅れているのかを確認するすべはないからである。
双子のパラドックス
では次の状況はどうだろうか。やはり一組の双子がいて、弟は慣性運動している。一方、兄はロケットに乗って遠方まで行き、その後ロケットで弟のもとに帰ってきたとする。前述のように弟からみれば兄の時計は遅れるはずで、兄の時計からみれば弟の時計は遅れるはずなので、ふたりが再会したときに矛盾が生じるはずである。
結論からいえば、特殊相対性理論から示されるのは、ロケットに乗った兄より慣性運動していた弟の方が再会時に時計が進んでいるという事である。すなわち再会時に兄が弟よりも若い[39]。
なぜならミンコフスキー空間上で、兄がロケットで飛び立ったときの世界点を テンプレート:Vec とし、兄が再び弟に再会したときの世界点を テンプレート:Vec とすると、テンプレート:Vec と テンプレート:Vec を結ぶ世界線のうち最も固有時間が長くなるのは慣性運動する世界線であることをすでに示したからである。従って慣性運動していた弟はロケットに乗った兄より多くの固有時間を費やした事になるのである[39]。
では逆に弟のほうが兄より若くなったとする主張のどこが間違っていたのかというと、我々が時間の縮みの公式を導いたとき、慣性系である事を仮定していたのであるが、兄の座標系はロケットが行きと帰りで向きを変える際加速度運動しているので慣性系ではない[39]。従って兄の座標系に対して単純に時間の縮みの公式を適応したのが間違いだったのである[39]。
ガレージのパラドックス
今、長さ l のハシゴ と奥行き L < l のガレージがあるとし、ハシゴは高速でガレージに近づいてきたとする。ガレージが静止してい見える慣性系から見ると、ハシゴがローレンツ収縮するので、ハシゴはガレージに入ってしまう。一方、ハシゴが静止して見える慣性系からみると、逆にガレージの方がローレンツ収縮してしまうので、ハシゴはガレージに入らないはずである。正しいのはどちらであろうか。
結論からいうと、どちらも正しく、ガレージの系から見た場合は、ハシゴはガレージに入るように見え、ハシゴの系から見るとハシゴはガレージに入らないように見える。すなわち、ハシゴの前端と後端に関する事象を区別して述べれば、ガレージの静止系ではハシゴの後端がガレージに入りきった後、ハシゴの前端がガレージの裏の壁にぶつかるのに対し、ハシゴの静止系ではハシゴがガレージに入り切らず、ハシゴの後端がガレージに入る前にハシゴの前端がガレージの裏壁にぶつかる[40]。ハシゴの前端がガレージの裏壁にぶつかる事象とハシゴの後端がガレージに入りきる事象には因果関係がないので、どちらが先に起こるのかは慣性系によって変化するのである。
テンソル代数の準備
先に進む前に、特殊相対性理論で頻繁に用いられるテンソル代数の知識について述べる。
アインシュタインの縮約記法
特殊相対性理論では、
- [math]\sum_\mu a^\mu b_\mu[/math]
のように上つきと下つきで同じ添え字(この場合はμ)が使われているときは、Σ記号を省略し、
- [math]a^\mu b_\mu[/math]
と書き表す慣用的な記法が用いられることが多い。この記法をアインシュタインの縮約記法という。
この縮約記法は行列の積や3項以上の場合にも同様に用いられ、例えば
- [math]\sum_{\kappa,\tau} a^\mu{}_\kappa b^\kappa{}_\tau c^\tau{}_\nu[/math]
は
- [math] a^\mu{}_\kappa b^\kappa{}_\tau c^\tau{}_\nu [/math]
と略す。
一方、たとえ2箇所の添え字が共通していても、
- [math] \sum_\mu a_\mu b_\mu [/math]、[math] \sum_\nu c^\nu d^\nu [/math]
のように添え字が両方下つき、もしくは両方上つきの場合はΣを省略しない。
双対基底
(V, η) を4次元ミンコフスキー空間とし、テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 を4次元ミンコフスキー空間 (V, η) 上の正規直交とは限らない基底とする。
このとき、以下の性質を満たす V の基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 が一意に存在する事が知られており、この基底を テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の双対基底という[注 17]。
- 任意の μ、ν = 0,…,3 に対し、[math]\eta(\vec{e}^\mu,\vec{e}_\nu)=\delta^\mu{}_{\nu}[/math]
ここで [math]\delta^\mu{}_{\nu}[/math] はクロネッカーのデルタである。
正規直交基底の場合は双対基底は非常に簡単に書くことができる:
- [math](\vec{e}^0,\vec{e}^1,\vec{e}^2,\vec{e}^3)=(\vec{e}_0,-\vec{e}_1,-\vec{e}_2,-\vec{e}_3)[/math]
上でも分かるように、双対基底は元の基底と空間方向の向きが反対である。
本項では正規直交の場合にしか双対基底の概念を用いないが、一般相対性理論を定式化する際には一般の基底に対する相対基底が必要となる為、以下基底は正規直交とは限らない場合について述べる。
双対基底はミンコフスキー計量の成分表示を使って具体的に求めることができる。
- ημν = η(テンプレート:Vecμ,テンプレート:Vecν )
とするとき、(ημν)μν の逆行列を ((η−1)μν)μν とすれば、
- [math]\vec{e}^\mu=(\eta^{-1})^{\mu\xi}\vec{e}_\xi[/math]
である。実際、
- [math]\eta(\vec{e}^\mu,\vec{e}_\nu)=(\eta^{-1})^{\mu\xi}\eta(\vec{e}_\xi ,\vec{e}_\nu)= (\eta^{-1})^{\mu\xi} \eta_{\xi\nu}=\delta^\mu{}_\nu[/math]
である。
双対基底の定義から、次が成立する。
テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の双対基底の双対基底は テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 自身である。
以下の議論では、「通常の」基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 を一組固定し、テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 をその双対基底とする。しかし上の定理でもわかるように、どちらの基底を「通常の」基底とみなし、どちらを双対基底とみなすのかは任意である。本項では、空間方向が右手系のものを通常の基底とみなし、左手系のものをその双対基底とみなすことにする。
共変性と反変性
V の元 テンプレート:Vec を基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 で表す場合、テンプレート:Vec の各成分の添え字を
- [math]\vec{a}= a^\mu\vec{e}_\mu[/math]
のように上つきに書く(アインシュタインの縮約で表記)。一方、テンプレート:Vec を テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 の双対基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 を用いて表す場合、テンプレート:Vec の各成分の添え字を
- [math]\vec{a}= a_\mu\vec{e}^\mu[/math]
のように下つきに書く。
明らかに
- [math]a^\mu=\eta(\vec{a},\vec{e}^\mu)[/math]、
- [math]a_\mu=\eta(\vec{a},\vec{e}_\mu)[/math]
である。
また正規直交基底の場合は明らかに
- [math](a^0,a^1,a^2,a^3)=(a_0,-a_1,-a_2,-a_3)[/math]
が成立する。
V の2つの元 テンプレート:Vec、テンプレート:Vec のミンコフスキー内積をとるとき、一方を基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 で表し、他方をその双対基底で表すと、
- [math]\eta(\sum_\mu a^\mu\vec{e}_\mu, \sum_\nu b_\nu\vec{e}^\nu)=a^0b_0+a^1b_1+a^2b_2 +a^3b_3[/math]
と通常の内積のように書け、ミンコフスキー内積特有の符号の煩わしさから解放されるので便利である。
基底を一つ指定したとき、aμ は添え字 μ に対し反変、aμ は添え字 μ に対し共変であるという。
これらの名称は、基底を取り替えた際の成分の変化に由来する。
ミンコフスキー空間上にもう1組の基底 (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) を用意し、基底の間の座標変換が成分表示で
- テンプレート:Vecν = テンプレート:VecμΛμν
と書けていたとすると4元ベクトル テンプレート:Vec の反変成分 テンプレート:Vec = a′;νテンプレート:Vecν = aμテンプレート:Vecμ は、
- a′ ν = (Λ−1)νμ aμ
という関係になるので、ダッシュつきの座標系にうつるとき、基底とは反対に Λμν の逆行列で結ばれる。それゆえ、「反対の変化」、すなわち反変と呼ばれる。
基底の変更に対する共変成分の変化を見るため、双対基底が基底の変更でどのような影響を受けるか調べる。
- テンプレート:Vecν = テンプレート:VecμΓμν
とすると、
- [math]\delta^\mu{}_\nu=\eta(\vec{e}'^\mu,\vec{e}'_\nu)=\Gamma^\mu{}_\xi\Lambda^\kappa{}_\nu\eta(\vec{e}^\xi,\vec{e}_\kappa)[/math] [math]=\Gamma^\mu{}_\xi\Lambda^\kappa{}_\nu\delta^\xi{}_\kappa= \Gamma^\mu{}_\xi\Lambda^\xi{}_\nu[/math]
すなわち、Γμν は Λμν の逆行列 (Λ−1)μν であるので、双対基底は
- テンプレート:Vecν = テンプレート:Vecμ(Λ−1)μν
という変換規則に従うことがわかる。
よって4元ベクトル テンプレート:Vec の共変成分 テンプレート:Vec = a′νテンプレート:Vecν = aμテンプレート:Vecμ は、
- a′ν = Λνμ aμ
という関係になるので、ダッシュつきの座標系にうつるとき、基底と共通の行列に Λμν で結ばれる。それゆえ、「共通の変化」、すなわち共変と呼ばれる。
テンソル
本節ではテンソルに関する基本的な知識を紹介する。ただし本節での解説はミンコフスキー空間 V 上に限定したものであるので、一般の空間で成り立つとは限らない[注 17]。
n を自然数とする。写像 [math]T\colon V^n\to \mathbb{R}[/math] が以下の性質(多重線形性)を満たすとき、T をn次のテンソルという:
- V の任意の4元ベクトル テンプレート:Vecμν と任意の実数 kμν に対し、
- [math]\begin{align}&T(\sum_{\nu_1}k^{1}_{\nu_1}\vec{a}_{\nu_1}^{1},\ldots,\sum_{\nu_n}k^{n}_{\nu_n}\vec{a}_{\nu_n}^{n})\\&=\sum_{\nu_1,\ldots,\nu_n}k^{1}_{\nu_1}\cdots k^{n}_{\nu_n}T(\vec{a}_{\nu_1}^{1},\ldots,\vec{a}_{\nu_n}^{n})\end{align}[/math]
特殊相対性理論で重要なのは主に2次のテンソルであるので、以下2次のテンソルに話を限定するが、一般の場合も同様である。なお、2次のテンソルは数学で二次形式と呼ばれるものと同一である。
2次のテンソル T に対し、
- [math]T(\vec{a},\vec{b})= T(\vec{b},\vec{a}) [/math]
が全ての4元ベクトル テンプレート:Vec、テンプレート:Vec に対して成り立つとき、T を対称テンソルという。また
- [math]T(\vec{a},\vec{b})= -T(\vec{b},\vec{a}) [/math]
が全ての4元ベクトル テンプレート:Vec、テンプレート:Vec に対して成り立つとき、T を反対称テンソルという。
成分表示
T をミンコフスキー空間上の2次のテンソルとし、テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 をミンコフスキー空間の基底とし、テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 をその双対基底とする。
このとき、上述の基底や相対基底を使って T を4通りに成分表示する事が可能である:
- [math]\begin{align} T_{\mu\nu}&=T(\vec{e}_{\mu},\vec{e}_{\nu})\\ T^{\mu}{}_{\nu}&=T(\vec{e}^{\mu},\vec{e}_{\nu})\\ T_{\mu}{}^{\nu}&=T(\vec{e}_{\mu},\vec{e}^{\nu})\\ T^{\mu\nu}&=T(\vec{e}^{\mu},\vec{e}^{\nu}) \end{align}[/math]
4元ベクトル テンプレート:Vec, テンプレート:Vec を
- [math]\vec{a}=a^\mu\vec{e}_\mu=a_\mu\vec{e}^\mu[/math]
- [math]\vec{b}=b^\nu\vec{e}_\nu=b_\nu\vec{e}^\nu[/math]
と成分表示する(アインシュタインの縮約で表記)と、
[math]T(\vec{a},\vec{b})=T_{\mu\nu}a^\mu b^\nu =T^\mu{}_{\nu} a_\mu b^\nu =T_\mu{}^{\nu} a^\mu b_\nu =T^{\mu\nu} a_\mu b_\nu [/math]
が成立する。
上述の4通りに成分表示において、T は上付きの添え字に対し反変、下付きの添え字に対し共変であるという。
4元ベクトルの場合と同様、基底を別のものに取り替えたとき T の各成分は、反変の添え字に関しては基底変換行列の逆行列が、共変の添え字に関しては基底変換行列そのものが作用する。
例えば
- テンプレート:Vecν = テンプレート:VecμΛμν
とすると
- テンプレート:Vecν = テンプレート:Vecμ(Λ−1)μν
なので、ダッシュつきの基底に関する成分 T'μν は
- [math]T'^{\mu}{}_{\nu}=T(\vec{e}'^{\mu},\vec{e}'_{\nu})= T(\vec{e}^{\xi},\vec{e}_{\kappa}) (\Lambda^{-1})_\xi{}^\mu\Lambda ^\kappa{}_{\nu} = T^{\xi}{}_{\kappa}(\Lambda^{-1})_\xi{}^\mu\Lambda ^\kappa{}_{\nu} [/math]
と、上付きの添え字には反変、下付の添え字には共変に変化する。
ミンコフスキー計量の成分表示
ミンコフスキー計量 η も二次の対称テンソルであるので、上述のように成分表示できる。
基底が正規直交であれば、ミンコフスキー計量の成分表示は非常に簡単になり、
- [math](\eta_{\mu\nu})_{\mu\nu}=(\eta^{\mu\nu})_{\mu\nu}=\left(\begin{array}{cccc}1&&&\\&-1&&\\&&-1&\\&&&-1\end{array}\right),[/math]
- [math](\eta_{\mu}{}^{\nu})_{\mu\nu} =(\eta ^{\mu}{}_{\nu})_{\mu\nu}=\left(\begin{array}{cccc}1&&&\\&1&&\\&&1&\\&&&1\end{array}\right).[/math]
のように書くことができる。
2次のテンソルと線形写像
ミンコフスキー空間上の線形写像 f : V → V が与えられたとき、2次のテンソルを テンプレート:NumBlk と定義できる。
逆にミンコフスキー空間上の2次のテンソル T が任意に与えられたとき、テンプレート:EquationNote式を満たす線形写像 f が一意に存在する事が知られている。従って2次のテンソルと線形写像を自然に同一視できる。
2次のテンソル T に対応する線形写像は基底 テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3 を用いると、下記のように具体的に書き表す事もできる:
- [math]a^\mu\vec{e}_\mu\to T^\nu{}_\mu a^\mu\vec{e}_\nu.[/math]
テンソル場
ミンコフスキー空間上の各世界点 P にテンソル TP を割り振ったもの(すなわちミンコフスキー空間からテンソルの集合への写像 P ⤅ TP)をテンソル場という。
相対性理論でテンソル場は中核に位置する概念であり、電磁場を初めとして様々なものをテンソル場として表現する。
特殊相対性理論における電磁気学
本節では、電磁気学の基本的な概念や方程式を特殊相対性理論に合致する形に書き換える。
以下、慣性系
- [math](x^0,x^1,x^2,x^3),~x^0=ct[/math]
を1つ固定し、この慣性系において電磁気学を記述する。詳細は省くが、本節の記述は、他の慣性系で電磁気学を記述したものとローレンツ変換で移りあう事を確認できるので、特殊相対性理論に合致している。
なお、本項ではSI単位系を用いる場合に対して記述したが、Landau, Lifshitz (3rd ed.) (1971)などガウス単位系を用いている書籍における定義とは光速度 c のかかる位置が違うなどの差があるので注意が必要である[注 18]。
4元電流密度と連続の方程式
電荷密度 ρ と電流密度 j = (jx, jy, jz) を使って、4元電流密度を、
- [math](j^0,j^1,j^2,j^3)=(c\rho,j_x,j_y,j_z)[/math]
によって定義する。
すると連続の方程式
- [math]\frac{\partial\rho}{\partial t}+\nabla\cdot\boldsymbol{j}=0[/math]
は、4元電流密度と4元勾配 (4–gradient) (∂0, ∂1, ∂2, ∂3) を用いて
- [math]\partial_\nu j^\nu=0[/math]
と表現できる。ここで ∂ν は ∂∂xν の略記である。
電磁テンソル
真空の誘電率、透磁率をそれぞれ μ0, ε0 とすると、マクスウェル方程式により導かれる電磁波の速度 1√μ0ε0 が真空中の光速度と一致する事が実験・観測により確かめられたので、光の正体は電磁波であると考えられるようになった。この事実から、
- [math]c=\frac{1}{\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}}[/math]
である。
さらに電場 E = (Ex, Ey, Ez) と磁束密度 B = (Bx, By, Bz) を用いて電磁テンソルを
- [math](F^{\alpha\beta})_{\alpha\beta}=\begin{pmatrix} 0&-E_x/c&-E_y/c&-E_z/c\\ E_x/c&0&-B_z&B_y\\ E_y/c&B_z&0&-B_x\\ E_z/c&-B_y&B_x&0 \end{pmatrix}[/math]
により定義する。
電磁場を別の慣性系から見た場合、電場と磁束密度がそれぞれ E′ = (E′x, E′y, E′z) と B′ = (B′x, B′y, B′z) であったとし、これらから作った電磁テンソルを F′αβ とする。
F′αβ と Fαβ がローレンツ・ブーストテンプレート:EquationNote式で移りあう為の必要十分条件は、
- [math]\begin{align} (E'_x,B'_x)&=(E_x,B_x),\\ (E'_y,B'_y)&=\gamma(E_y- |\boldsymbol{v}| B_z,B_y+ |\boldsymbol{v}| E_z /c^2 ),\\ (E'_z,B'_z)&=\gamma(E_z+ |\boldsymbol{v}| B_y,B_z- |\boldsymbol{v}| E_y /c^2 ) \end{align}[/math]
が成立する事である事を簡単な計算で確認できる[41][42]。ここで v は2つの慣性系の間の相対速度で、γ = 1√1 − (|v|/c)2 はローレンツ因子である。
非相対論的極限 vc ≈ 0 では γ ≈ 1 なので、上述の条件式は、古典電磁気学で知られている慣性系間の変換公式 テンプレート:Equation box 1 に一致する。
よって電磁テンソルはローレンツ変換に対して共変であると結論づけられる。
相対性理論以前の解釈
特殊相対性理論以前のマックスウェル方程式の解釈には非対称性があった。
例えば磁石を固定されたコイルに近づけた場合は電磁誘導により電流が流れると解釈されるが、逆にコイルを固定された磁石に近づけ場合はローレンツ力で電子が動かされることにより電流が流れると解釈された。
今日的な視点から見れば、これら2つのケースは単なる慣性系の取り替えに過ぎないにも関わらず、両者の解釈が異なるのは不自然である。事実、流れる電流の量はどちらのケースであっても同一であり、磁石とコイルの相対速度だけで決まる。
このような非対称な解釈になったのは、当時は電場と磁束密度は完全に別概念であったことによる。テンプレート:EquationNote式も、今日の目から見ると電場と磁束密度を電磁テンソルという同一のテンソルとしてまとめるべき事を示唆しているように見えるが、当時はテンプレート:EquationNote式の第二項はあくまでも「仮想的な」電場や磁束密度の効果であるとみなされた。
上述したような理論の非対称性の解消に関心のあった[43]アインシュタインは、特殊相対性理論によりこの非対称性を解消した[16]。
マクスウェル方程式
電磁テンソルによる表現
すでに電磁テンソルがローレンツ変換に対して共変であることを示したので、マクスウェル方程式を電磁場テンソルで表せば、マクスウェル方程式もローレンツ変換に対して共変であることを示せる。
電磁テンソルと4元電流密度を使うとマクスウェル方程式の2式
- [math]\begin{align}\nabla\cdot\boldsymbol{E}&=\frac{\rho}{\epsilon_0}\\ \nabla\times\boldsymbol{B}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial\boldsymbol{E}}{\partial t}&=\mu_0\boldsymbol{j}\end{align}[/math]
はいずれも
- [math]\partial_{\alpha} F^{\alpha\beta}=\mu_0 j^{\beta}[/math]
と同一の形で表現でき、残りの2式
- [math]\begin{align}\nabla\cdot\boldsymbol{B}&=0\\ \frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t}+\nabla\times\boldsymbol{E}&=0\end{align}[/math]
はいずれも
- [math]\partial_\gamma F_{\alpha\beta}+\partial_\alpha F_{\beta\gamma}+\partial_\beta F_{\gamma\alpha}=0[/math](α, β, γ は相異なる)
と同一の形で表現できる。なお、リッチ計算の記法を用いると、上の式は
- [math]\partial_{[\alpha}F_{\beta\gamma]}=0[/math]
とも表記できる。
マクスウェル方程式は微分形式と外微分を用いると、さらに簡潔に表現できる事が知られているが、微分形式に関する予備知識を必要とするので本節では述べない。
4元ポテンシャルによる表現
電磁場には必ず以下の条件をみたす組 φ, A(電磁ポテンシャル)が存在する事が知られている テンプレート:Equation box 1
本節では、電磁ポテンシャルの4元ベクトル版である4元ポテンシャル
[math]\vec{A}=(A^0, A^1, A^2, A^3):=(\phi/c,\boldsymbol{A})[/math]
を用いる事で、マクスウェル方程式を表現する。なお、上で テンプレート:Vec を座標表示は (x0, x1, x2, x3) = (ct, x, y, z) に関するものであるので、時間軸を x0 = ct でなく t とした場合は時間成分を c で割る必要がある。
1つの電磁場に対しテンプレート:EquationNote式を満たす電磁ポテンシャルは一意ではない事が知られている。そこでローレンツ共変性を損ねない形で電磁ポテンシャルを制限するため、4元勾配を使った以下の条件(ローレンツ・ゲージ)を課す
[math]\frac{\partial A^\alpha}{\partial x^\alpha}=0[/math]
このとき、マクスウェル方程式は4元電流密度を用いて
[math]\Box\vec{A}=\mu_0\vec{j}[/math]
という一本の式で書き表せる。ここで
- [math]\Box=\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\frac{\partial^2}{\partial x^2}-\frac{\partial^2}{\partial y^2}-\frac{\partial^2}{\partial z^2}[/math]
はダランベルシアンである。
ローレンツ力と運動方程式
今、電荷 q を持った質点があるとし、この質点の4元速度を テンプレート:Vec とし、テンプレート:Vec の反変成分 (u0, u1, u2, u3) とする。
このとき、この質点が電磁場から受ける4元力を、電磁場テンソル Fαβ を用いて
[math]f^{\alpha}=qF^{\alpha\beta}u_{\beta}[/math]
によって定義すると、この4元力からできる質点の運動方程式は
- [math]\frac{\operatorname{d}p^{\alpha}}{\operatorname{d}\tau}=qF^{\alpha\beta}u_{\beta}[/math]
である。ここで pβ は質点の4元運動量の β 成分で、τ は質点の固有時間である。
上の運動方程式は α = 0,1,2,3 に対して定義されているが、4元運動量と4元速度の空間成分(の共変表現)p = (p1, p2, p3), v = (u1, u2, u3) に着目すると、電磁場テンソルの定義より、運動方程式の空間成分は
- 左辺の空間成分 [math]=\gamma\frac{\operatorname{d}\boldsymbol{p}}{\operatorname{d}t}[/math]
- 右辺の空間成分 [math]=\gamma q(\boldsymbol{E}+\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B})[/math]
となることがわかる。ここで γ はローレンツ因子 1√1 − (|v|/c)2 である。
すなわち相対論における運動方程式の空間成分は、ローレンツ力に関する運動方程式
- [math]\frac{\operatorname{d}\boldsymbol{p}}{\operatorname{d}t}=q(\boldsymbol{E}+\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B})[/math]
と完全に一致する。
運動方程式の時間成分に関しては、cp0 が質点のエネルギー E を表していた事に着目すると、
- 左辺の時間成分 [math]=\frac{\gamma}{c}\frac{\operatorname{d}E}{\operatorname{d}t}[/math]
- 右辺の時間成分 [math]=\frac{\gamma}{c}(q\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{v})[/math]
なので、下記の式が従う:
- [math]\frac{\operatorname{d}E}{\operatorname{d}t}=q\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{v}=q(\boldsymbol{E}+\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{B})\cdot\boldsymbol{v}[/math]
右辺は単位時間当たりに電磁場のローレンツ力が質点に対してした仕事なので、この式はローレンツ力による仕事がエネルギーに化ける事を意味している。すなわちこれは、エネルギー保存則にあたる式である[44]。
特殊相対性理論の実験的検証
特殊相対性理論は、次のような事象からも検証されている。
- 電場と磁場の統一理論としての特殊相対性理論の検証[注 19]
-
- 電流が流れる電線の周りに磁場が生じる。
- いわゆる時計の時刻の遅れの検証
-
- ハフェル–キーティング実験 (Hafele–Keating experiment)
- 航空機で運んだ原子時計と地上で静止したままの原子時計との間に発生するズレが理論と誤差の範囲で一致する[48]。なお、この実験における相対論効果は
- 特殊相対性理論における運動によるいわゆる時計の遅れ、
- 一般相対性理論における重力偏移によるいわゆる時計の遅れ、
- サニャック効果(Sagnac effect)
- の3つが複合して現れる[注 22]。
- 粒子の平均寿命の延長
- 宇宙線の衝突により発生する非常に寿命の短い粒子が、単純に光速度程度で移動したと考えても数百メートル程度しか移動できないはずであるのに、地上で観測することができる。また、粒子加速器で粒子を光速近くまで加速すると、崩壊するまでの寿命が延びる。なお、この寿命の延びは厳密に特殊相対性理論による予測に従う。
- 質量とエネルギーの等価性
- ほか
一般相対性理論へ
特殊相対性理論は重力のない状態での慣性系を取り扱った理論である。
後にアインシュタインは空間のゆがみとして重力場をも組み込んだ、より一般的な理論である一般相対性理論を発表した。この理論はニュートンの万有引力論を全面的に書き換えるものになった。
特殊相対性理論と一般相対性理論の2つの理論をあわせて相対性理論と呼ばれる。
脚注
注釈
- ↑ ローレンツはこのようなエーテルに対して静止している系のことをそのまま『静止している系』または『静止系』と呼んだ[3]。
- ↑ 2.0 2.1 ローレンツ–ポアンカレの理論ではその前提がはっきりと示されている広重 (1967, p. 72)。
- ↑ 特殊相対性理論では物体が実際に縮むという意味のフィッツジェラルド=ローレンツ収縮はしない。ローレンツの理論との混同を招き紛らわしいので特殊相対性理論では用いない方が良い用語である。
- ↑ この変換に対して最初にローレンツ変換という名称をあたえたのはポアンカレである[13]。
- ↑ ローレンツの理論では物体が実際に収縮するとみなすので、運動する物体が一律に収縮するならば、「長さ」の基準となるものさしさえも収縮してしまい、結果として収縮は観測されない為検証不能となる。一方、特殊相対性理論では実際に収縮するのではなく、同時である状態が座標系によって異なる(位置のみならず運動状態によっても同時性が異なる)ため収縮して観測されるとされる。特殊相対性理論においては普遍定数である光速をものさしとして「長さ」が再定義されており、上述した検証不能性の問題は生じない。
- ↑ ただし、ローレンツは局所時間をあくまで形式的なものだとした。
- ↑ ローレンツが提唱した時点ですでに楕円体に変形した電子の安定性についてマックス・アブラハムから批判が出ていた[15]。
- ↑ 実際、アインシュタインの理論を認めたローレンツはローレンツ電子論 (1973, p. 360) において『わたくしが誤った主な原因は、変数 t だけが真の時間と見なしうるのであって、わたくしの局所時 t' は補助的な数学的な量以上のものと見なしてはならないという観念を固守していたことである。それに反して、Einsteinの理論では t' は t と同じ役を果たす。』(t' はこの節における τ である)と述懐している。
- ↑ 前述のように光は電磁波であるので、これは電場や磁束密度にダランベルシアン [math]\Box_c[/math] を作用させるとどの慣性系でも 0 になるということである。これは現代から考えれば当たり前であるが、ヘルツは運動座標系においてはヘルツ項なるものが必要であると主張したりしており、当時は当たり前ではなかった。ヘルツ項については砂川 (1999)が詳しい。
- ↑ 本項ではシュッツ (2010)に従い、4元ベクトルは テンプレート:Vec のように矢印をつけて表し、通常の3元ベクトルは a のように太字で表した。しかしベクトルの表記は本によって異なり、前原 (1993)では4元ベクトルを太字で表している。
- ↑ 厳密にいうと我々はここで、
- ミンコフスキー空間の向きづけが事前に定められていること
- 2つの光円錐のうち1つを「未来」の光円錐であると事前に定められていること
- テンプレート:Vec0 が未来の光円錐内にあり、
- (テンプレート:Vec1、テンプレート:Vec2、テンプレート:Vec3) の向きがミンコフスキー空間の向きと一致するものだけを考えることにしたのである。
- ↑ 数学的に言えば、ローレンツ群 O(1,3) は空間方向の向きを保つか、時間方向の向きを保つかにより、4つの連結成分に分割されており、そのうち単位元を含む連結成分である制限ローレンツ群 SO+1,3) の元のみを考えるという事である。
- ↑ これは3次元空間上の回転Rにより、(テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) を (テンプレート:Vec0,R(テンプレート:Vec1), R(テンプレート:Vec2), R(テンプレート:Vec3)) に移し、(テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) にも同様の変換を施す事を意味する。なお、(テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) と (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) では用いる回転行列Rが異なってもよい。このような変換がミンコフスキー計量を保つ線形変換(従ってローレンツ変換)である事は簡単に確認できる。よってこれらの変換を施した後も (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) と (テンプレート:Vec0, テンプレート:Vec1, テンプレート:Vec2, テンプレート:Vec3) が正規直交基底であるという事実は保たれる。
- ↑ 符号が反転しているのは、vが観測者Aから見た観測者Bの相対速度であるのに対し、x/tは観測者Bから見た観測者Aの相対的だからである。なお、特殊相対性理論においても観測者の入れ替えで相対速度の符号が反転するという事実はローレンツ変換の逆変換に対して同様の議論をする事で確認できる。
- ↑ 質量の電磁気学的概念(電磁質量概念)の詳細とその発展については、ヤンマー (1977)第11章を参照。
- ↑ この関係はアインシュタインの論文『物体の慣性は、そのエネルギーの大きさに依存するか』[28]によって見出されたと言われる。ただし、この論文における E = mc² の導出は循環論法になっているといわれる[29]。
- ↑ 17.0 17.1 本項では(ミンコフスキー)計量により、ベクトル空間Vとその双対空間 V* が同一視できるケースのみを扱う。
- ↑ なお、特殊相対性理論の原論文{{#invoke:Footnotes | harvard_citation }}はCGSガウス単位系を用いている。
- ↑ アインシュタインは一般相対性理論においては重力と慣性力を統一(等価原理)し、さらに晩年は電磁力と重力の統一を目指した統一理論を研究していた。
- ↑ 当初はアインシュタインにより地球の極と赤道上の実験として提案されたが、メスバウアー効果の発見により、実験室に配置した円盤上で検証可能となった。
- ↑ 他にも検証不可能だと思われていた一般相対性理論の検証もメスバウアー効果の発見によって可能となった。たとえば、重力偏移によるいわゆる時計の遅れなどについても既に検証されている。パウンド–レブカ実験 (Pound–Rebka experiment) など。
- ↑ GPS(Global Positioning System ; 全地球測位システム)も同様にこの3つの効果が現れるため、その分補正を行なわなくてはならない[49]。
出典
- ↑ アインシュタイン 1905a.
- ↑ 2.0 2.1 2.2 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 後藤 1970, テンプレート:Page needed.
- ↑ 8.0 8.1 砂川 1999, テンプレート:Page needed.
- ↑ 9.0 9.1 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 16.0 16.1 アインシュタイン (1905a)及び『運動している物体の電気力学について』[50]
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 18.0 18.1 18.2 18.3 18.4 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 19.0 19.1 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 20.0 20.1 20.2 20.3 20.4 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 佐藤 1994, p. 15.
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 25.0 25.1 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑
- ↑
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 39.0 39.1 39.2 39.3 {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 前野昌弘 (2015年12月24日). “相対論2009年度第14回”. 物理Tips. 琉球大学. . 2016閲覧.
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ 当時の映像 - YouTube
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
- ↑ {{#invoke:Footnotes | harvard_core }}
参考文献
原論文
- A.Einstein (June 30, 1905). “Zur Elektrodynamik bewegter Körper [運動している物体の電気力学について]” (German) (PDF). Annalen der Physik (Leipzig) 322 (10): 891–921. Bibcode 1905AnP...322..891E. doi:10.1002/andp.19053221004. ISSN 0003-3804. OCLC 5854993 .
- A.Einstein (September 27, 1905). “Ist die Trägheit eines Körpers von seinem Energieinhalt abhängig? [物体の慣性は、そのエネルギーの大きさに依存するか]” (German) (PDF). Annalen der Physik (Leipzig) 323 (13): 639–641. Bibcode 1905AnP...323..639E. doi:10.1002/andp.19053231314. ISSN 0003-3804. OCLC 5854993 .
- Hertz, Heinrich (September 1890). “Über die Grundgleichungen der Electrodynamik für bewegte Körper [運動物体に対する電気力学の基本方程式について]” (PDF). Annalen der Physik (Leipzig) 277 (11): 369–399. doi:10.1002/andp.18902771102. ISSN 0003-3804. OCLC 5854993 .
全般
- 佐藤勝彦 『相対性理論』 長岡洋介・原康夫(編)、岩波書店〈岩波基礎物理シリーズ〉、1996-12-18。全国書誌番号:97049882。ISBN 4000079298。OCLC 675345203。
- シュッツ 『特殊相対論』 江里口良治・二間瀬敏史訳、丸善〈シュッツ 相対論入門〉、2010-12-11、第2版。全国書誌番号:21863153。ISBN 978-4621083109。OCLC 744209903。
- ランダウ 『場の古典論=電気力学,特殊および一般相対性理論=』 恒藤敏彦・広重徹訳、東京図書出版〈ランダウ=リフシッツ理論物理学教程〉、1978-10-30、原書第6版。全国書誌番号:79000237。ISBN 978-4489011610。OCLC 841897028。
- 本項執筆には英語第3版を参照した(最新は第4版)L.D. Landau Hamermesh, M.訳 (June 1971). The Classical Theory of Fields, 3rd, Course of theoretical physics, Oxford: Pergamon Press. ASIN B00JO9YQMG (Kindle). ISBN 978-0-08-016019-1. OCLC 473400139.
- 前原, 昭二 『線形代数と特殊相対論』 日本評論社、1993-07-01。全国書誌番号:93061332。ISBN 978-4535606067。OCLC 674230845。
- H.A.ローレンツ 『ローレンツ 電子論』 広重徹訳、1973年。
- M.ボルン 『アインシュタインの相対性原理』 瀬谷 正男訳、講談社、1971年。
- メラー 『相対性理論』 永田 恒夫, 伊藤 大介訳、みすず書房、1959年。
- 矢野, 健太郎 『アインシュタイン』 講談社〈講談社学術文庫〉、1991年。
- アインシュタイン 『相対論の意味』附:非対称場の相対論、矢野健太郎訳、岩波書店、1958年。
- 砂川, 重信 『理論電磁気学』 紀伊國屋書店、1999年、第3版。
- 砂川重信 『電磁気学』 岩波書店、1987(原著1977)、新装版。
- 後藤, 憲一 『詳解電磁気学演習』 山崎 修一郎、1970年。
- 広重, 徹「相対論はどこから生まれたか (PDF) 」 、『日本物理學會誌』第26巻第6号、日本物理学会、1971年6月5日、 380–388、 ISSN 0029-0181、 NAID 110002072547、 OCLC 834302891。(広重, 徹 『相対論の形成 −広重徹科学史論文集−』 西尾成子(編)、みすず書房、1980年。)
- ファインマン 『ファインマン物理学〈3〉電磁気学』 宮島 龍興訳、岩波書店、1986年。
- 遠藤, 雅守 『電磁気学 初めて学ぶ電磁場理論』 森北出版、2013年。
- 遠藤, 雅守 『史上最強図解 これならわかる! 電磁気学』 ナツメ社、2014年。
- 広重 徹 『物理学史Ⅱ』 培風館、1965年。全国書誌番号:68001733。ISBN 4563024066。
- 時刻合わせ、電磁波測距儀、いわゆる時計の遅れの実験について
- アインシュタイン 『相対性理論と量子力学の誕生』 谷川安孝, 中村誠太郎, 青木 昌三訳〈現代物理の世界〉、1972年。
- トニー・ジョーンズ 『原子時間を計る―300億分の1秒物語』 松浦 俊輔訳、青土社、2001年。
- 須田, 教明 『電磁波測距儀』 森北出版、1976年、改訂版。
- Michelson; Albert Abraham; Morley; Edward Williams (November 1887). “On the Relative Motion of the Earth and the Luminiferous Ether” (PDF). American Journal of Science. Series 3 34 (203): 333–345. doi:10.2475/ajs.s3-34.203.333. ISSN 0002-9599. OCLC 643884995 .
- 岩間, 司 (2011) (PDF). 電波時計のしくみ. 通信ソサエティマガジン. 夏号. 電子情報通信学会. pp. 4–5 .
その他参照
- 『理科年表』 国立天文台、2012年、平成25年版。
- 恒藤 敏彦 『弾性体と流体』 岩波書店〈物理入門コース 8〉、1983-09-14。全国書誌番号:84005992。ISBN 4000076485。
- マックス・ヤンマー 『質量の起源』 大槻 義彦, 葉田野 義和, 斉藤 威訳、講談社、1977年。
- Lorentz, Hendrik Antoon (1895). Versuch einer Theorie der electrischen und optischen Erscheinungen in bewegten Körpern [運動する物体における電磁的・光学的現象を理論化する試み]. Leiden: E. J. Brill.(ウィキソース).
- Lorentz, Hendrik Antoon (1904). Electromagnetic phenomena in a system moving with any velocity smaller than that of light [光速以下の速度で運動する系における電磁現象]. 6. Royal Netherlands Academy of Arts and Sciences.(ウィキソース). 809–831.
- H. Poincaré (23 July 1905). Sur la dynamique de l'électron [電子の動力学について]. 21. - ウィキソース. 129–176.
- Albert Einstein (1920). The principle of relativity; original papers, Meghnad Saha, Satyendranath Bose (translate). OCLC 6308161.
- H. J. Hay; J. P. Schiffer; T. E. Cranshaw; P. A. Egelstaff (15 February 1960). “Measurement of the Red Shift in an Accelerated System Using the Mössbauer Effect in Fe57”. Phys. Rev. Lett. (Harwell, England: Atomic Energy Research Establishment) 4 (4): 165–166. doi:10.1103/PhysRevLett.4.165 .
関連項目
関連人物
外部リンク
- Translation:The Sagnac Effect: An Experimentum Crucis in Favor of the Aether?. - ウィキソース.
- テンプレート:Britannica
テンプレート:相対性理論
テンプレート:アルベルト・アインシュタイン