4元電流密度
4元電流密度(よんげんでんりゅうみつど、英語: four-current)とは、電荷密度と電流密度を相対論的な時空における4元ベクトルとして記述したものである。
4元電流密度はローレンツ変換の下でベクトルとして変換する4元ベクトルであり、時間成分は電荷密度 ρ、空間成分が電流密度 j であり
[math]j^\mu = (\rho c, \boldsymbol{j})[/math]
と書かれる。光速度 c により電荷密度の次元が電流密度の次元に換算される。
Contents
基礎方程式
[math]\partial_\mu j^\mu = 0[/math]
の形で書かれる。
4元電流密度は電磁場の源(ソース)でありマクスウェルの方程式
[math]\partial_\nu F^{\nu\mu} =\partial_\nu\partial^\nu A^\mu -\partial^\mu\partial_\nu A^\nu =-\mu_0 j^\mu[/math]
を満たす。ここで F は電磁場テンソル、A は電磁ポテンシャルである。また μ0 は磁気定数である。
また、4元電流密度は、電磁場からローレンツ力
[math]f_\mu = j^\nu F_{\nu\mu}[/math]
を受ける。
ラグランジュ形式
物質 X と電磁場 A が相互作用する系の作用積分は
[math]S_X[X] +S_A[A] +S_\text{int}[X,A][/math]
と書かれる。相互作用項 Sint は一般に
[math]S_\text{int}[X,A] =\frac{1}{c}\int j^\mu A_\mu(x) \sqrt{-g}\, d^4x[/math]
の形で書かれるため、4元電流密度は汎関数微分により
[math]j^\mu(x) =\frac{c}{\sqrt{-g}} \frac{\delta S_\text{int}[X,A]}{\delta A_\mu(x)}[/math]
と表される。
微視的に見ると4元電流密度は荷電粒子の集合であり、4元電流密度は粒子を記述する力学変数 X の関数として書かれる。粒子の系がどのように記述されるかによって、相互作用項の具体形は変化し、それに伴って4元電流密度の具体形も変化する。
古典粒子
古典的な粒子系を考えるとき、粒子はその位置によって記述される。4元電流密度は相対論的に取り扱われる量であり、粒子も相対論的な系を考える。 位置 Xi にある粒子が電荷 qi を帯びているとき、作用汎関数は
[math]\begin{aligned} S_\text{int}[X,A] &=\sum_i q_i \int \frac{dX_i^\mu}{d\lambda} A_\mu(X_i)\, d\lambda \\ &=\int \sum_i q_i \int d\lambda \left( \frac{dX_i^\mu}{d\lambda}\, \delta^4(X_i(\lambda)-x) \right) A_\mu(x)\, d^4x \\ \end{aligned}[/math]
で書かれる。したがって、この系の4元電流密度は
[math]j^\mu(x) =\sum_i \frac{q_ic}{\sqrt{-g}} \int \dot{X}_i^\mu(\lambda)\, \delta^4(X_i(\lambda)-x)\, d\lambda[/math]
である。
フェルミ粒子
量子論的なフェルミ粒子の系は、ディラック場 ψ で記述される。質量が m の自由なフェルミ粒子の運動項は
[math]S_\psi[\psi] =\int \left[ i\bar\psi \gamma^\mu\partial_\mu\psi(x) -m \bar\psi \psi(x) \right]\, d^4x[/math]
で与えられる。ここで γ はガンマ行列である。
フェルミ粒子と電磁場との相互作用は、ゲージ理論に基づいて、微分を共変微分へ置き換える最小結合の理論で記述される。 従って、フェルミ粒子の運動項と相互作用項は
[math]S_\psi[\psi] +S_\text{int}[\psi,A] =\int \left[ i\bar\psi \gamma^\mu(\partial_\mu-ie A_\mu Q)\psi(x) -m \bar\psi \psi(x) \right]\, d^4x[/math]
の形となる。ここで e は電磁相互作用の結合定数である電気素量である。また、Q はディラック場 ψ の U(1)em の下での変換性を表すチャージである。
従って相互作用項は
[math]S_\text{int}[\psi,A] =e \int \bar\psi Q\gamma^\mu\psi(x) A_\mu(x)\, d^4x[/math]
であり、4元電流密度は
[math]j^\mu(x) = e\bar\psi Q\gamma^\mu\psi(x)[/math]
となる。