ベクトル
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ベクトル(独: Vektor)またはベクター(英: vector)
ベクトルは ドイツ語: Vektor に由来し、ベクターは 英語: vector に由来する。物理学などの自然科学の領域ではベクトル、プログラミングなどコンピュータ関係ではベクターと表記される、という傾向が見られることもある。また、技術文書などではしばしばJIS規格に準拠する形で[1]、長音を除いたベクタという表記が用いられる。
vector は「運ぶ」を意味するラテン語: vehere に由来し、18世紀の天文学者によってはじめて使われた[2]。
ベクトルは通常の数(スカラー)と区別するために矢印を上に付けたり(例: [math]\vec{a},\ \vec{b}[/math])、太字で書いたりする(例: [math]\boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}[/math])が、分野によっては矢印も太字もせずに普通に書くこともある(主に解析学)。
ベクトル、あるいはベクターに関する記事と用法を以下に挙げる。
Contents
数理科学
数学
- ベクトル空間の元。線形性を持つ、すなわち和とスカラー倍を取る事ができる量。一般の(広い意味での)ベクトル。
- 幾何ベクトル(空間ベクトル) - 幾何学的空間における、大きさと向きを持った量。
- 数ベクトル - ある基底とそれに対する成分の組によって表わされたベクトル。
- 一階のテンソル - 線形性を持つ群が作用する空間(テンソル)のうち階数が 1 であるもの。群を行列で表示したとき、数ベクトルとして表現される。幾何ベクトルは、幾何的な回転操作に対してベクトルとして振る舞う。
- ベクトル積 - ベクトル同士の積の一種。演算子に × を用いるので、クロス積とも呼ばれる。また、外積に似た形式を持つので、ベクトルの外積とも呼ばれる。
物理
- 擬ベクトル - 回転に対する変換性は通常のベクトルと同じであるが、反転に対する変換性が異なる量。軸性ベクトルとも呼ばれる。
- ベクトル場 - 空間の各点があるベクトル量を持つような場。スピン 1 を持つ場。
- ベクトル解析 - ベクトルの演算記法を利用した解析学の方法。三次元空間または二次元空間上の問題を扱う際にしばしば利用され、電磁気学や流体力学など広い範囲で応用される。
- 4元ベクトル - 相対論的記述を必要とする分野で時間と空間、もしくはエネルギーと運動量をまとめてベクトルとして表示したもの。ローレンツ変換に対してベクトルとして振る舞う。
- ポインティング・ベクトル - 電磁場が持つエネルギーの流れの密度を表わすベクトル。電場と磁場のベクトル積として定義される。名前はこれを導入したジョン・ヘンリー・ポインティングに由来する。
- ベクトル粒子 - 場の量子論においてベクトル場で表されるような粒子。スピン統計定理より必ずボーズ粒子であり、ベクトルボソンとも呼ばれる。光子、ウィークボソン、グルーオンといったゲージ粒子や、ロー中間子など一部のメソン(ベクトルメソンと呼ばれる)が該当する。
コンピュータ
- 1次元の配列として表現されるデータ構造。数列#数列とベクトルも参照。
- ベクトル演算 - 並列計算の手法。ベクトル演算の対象となるデータ構造をベクトルと呼ぶ。
- ベクトル計算機 - ベクトル演算が可能な処理系を指す。
- ベクトル化 - ループ処理をベクトル演算に変換すること。ベクトル計算機に対する最適化の目的で用いられる。
- ベクタ形式 - コンピュータグラフィックスの形式。ベクターイメージ 2次元コンピュータグラフィックスをコンピュータ内部で表現するデータ画像の代表的な2つのうち1つ。
- 動きベクトル - 動画データの表現方法の一つ。フレーム間の移動量。
- C++におけるSTLの(1次元)動的配列コンテナ。
数理科学以外の用例
- 「空間における、大きさと向きを持った量」の意味から転じて一般的に、方向性、矛先などの意味でも使われる。例:好奇心のベクトルが伸びる。
- 三井生命保険の商標「ザ・ベクトル」、またマスコットキャラクター「ベクトルくん」
- セプティマ・ベクトル - 『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物。ホグワーツの教職員の一人。
脚注
- ↑ JIS Z8301:2008 付属書I(規定)数値・量記号・単位記号・式 G.6.2.2 英語の語尾に対応する長音符号の扱い b)表G.3より66/110ページJIS規格番号からJISを検索
- ↑ ダニエル・フライシュ; 河辺哲次訳 『物理のためのベクトルとテンソル』 岩波書店、2013年、1頁。ISBN 978-4-00-005965-7。