関節肢

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昆虫。Coxa:基節、Trochanter:転節、Femur:腿節、Tibia:脛節、Tarsus:跗節

関節肢(かんせつし)とは、昆虫などの節足動物に見られる数個の関節化したによって構成されているの構造であり、「節足動物」の名の由来となっている。そのため、時にこれを節足(せっそく)という場合もあるが、生物学的用語ではない。

それぞれの節はクチクラによって構成され、各節間が関節膜によってつなげられて一方の節が他方の節にはまり込む構造となっており、一方の関節が伸びると他方の関節が閉じられて分解しないようになっている。また、股関節は関節丘(ピボット)と呼ばれるクチクラ性の突起を支点として屈折させることが可能である。

形態

節足動物各群に見られる付属肢は、基本的には関節のある円柱形で先が細くなった構造であるが、非常に変異が多い。これは、運動、摂食など、動物の生活に直結する部分であるため、その形態が環境や生態への適応の上で重要だからである。

付属肢の形態は、大きくはエラ状のものと歩脚状のものに分かれる。前者は偏平で遊泳などに向き、後者は棒状で体を支えるのに向く。歩脚の場合はそれぞれの節はほぼ円筒形で(偏平な場合もあるが)、関節部では、一方の端の切り口の円筒の内側に次の節(先端側)の端が入っていて、それが柔らかな皮でつながったようになっている。二つの節の端の切り口は、それが描く円弧の両端でかみ合うようにつながっている。したがって、この関節は、この一対のかみ合わせを結ぶ線に垂直な面の上での折り曲げる運動が可能である。言い換えれば、一つの関節は、普通は一つの平面上でしか動かない。したがって、歩脚にある複数の関節は、それぞれ運動する向きが異なっていて、全体でさまざまな方向に動けるようになっているのが普通である。

単枝型と二叉型

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甲殻類の二叉型付属肢
en = 内肢、ex = 外肢、ep = 外葉

六脚類鋏角類多足類に属するほとんどの節足動物は、付属肢の付け根に枝はなく、これは単枝型付属肢と呼んでいる。 多くの甲殻類の付属肢は、基本的には内肢と外肢という二つの枝を持つものであり、二叉型付属肢と呼ばれる。しかし、甲殻類を代表する群とも言える軟甲綱のものは、内肢と外肢のうちどちらか一方(主に内肢)だけが発達して、外見上は単枝状に見えるものが多い。カニやエビなど十脚類の成体に見かける、外肢のない5対の胸肢がその代表例である。また、三葉虫を初め、カンブリア紀のほとんどの節足動物の付属肢は、鰭状の外肢と歩脚状の内肢からなる二叉型である。

節足動物の付属肢は、いずれも二叉型の起源を持つだと思われる、従って、多くの節足動物に見かける単枝型付属肢も元々二叉型であり、進化の過程で外肢が退化し、内肢の部分のみを残った結果と見なされる。

また、外肢と内肢の他にも、外葉(exite、epipod)と内葉(endite)として名付けられた附属体も存在する。カニエビなど、十脚類の背甲の中に潜んでいた羽毛状の鰓が、外葉に由来する部分である[1]

関節の名称と数

関節肢のうち、内肢の基部から先端までの節には以下の名称が与えられる。甲殻類の場合、関節の名はヒト上肢骨の名称を採用する。それ以外の節足動物(鋏角類多足類六脚類)の場合は、下肢骨の名称を採用する。採用した式は分類によってやや異なり、下記の分類の中でも例外的に式が異なる下位分類群も存在する。節足動物の内肢の関節数は、原始的な10節以上の多数節から7節まで特化したと思われる[2]。また、1つの関節が二次的に複数の関節に分かれた場合もあり、昆虫の跗節がその一例である。

底節 coxa・基節 basis・座節 ischium・長節 merus・腕節 carpus・前節 propodus・指節 dactylus
基節 coxa・転節 trochanter・腿節 femur・膝節 patella・脛節 tibia・蹠節 metatarsus(pretarsus)・跗節 tarsus
基節 coxa・転節 trochanter・前腿節 prefemur・腿節 femur・脛節 tibia・跗節 tarsus
基節 coxa・転節 trochanter・腿節 femur・脛節 tibia・跗節 tarsus

関連項目

脚注

参考文献