住民の呼称
住民の呼称(じゅうみんのこしょう)とは、ある一定の地域や自治体の住民である事や出身である事を指す言葉を用いる時の固有の呼び方を指す。英語ではdemonymと呼ぶ。日本語では族称(ぞくしょう)という訳語もあるが、決まった訳語は定まっていない。
各国語での事例
例えば英語では、Japan に住む人々のことを Japanese と呼ぶ。このような事例はヨーロッパ各国の言語で多く見られる。英語やフランス語では「~人」は頭文字を大書する。demonym という語の用例は1893年版のオックスフォード英語辞典で確認できるが、広く用いられるようになったのは1997年にメリアム・ウェブスターの編集者だったポール・ディクソンがLabels for Localsという本を出版してからのことである。
イタリア語においては、自治体の最小単位であるコムーネをはじめ、コムーネ内の各地域に対しても独自の呼び方が存在する。これは地域に対する所属意識を高めるのにも貢献している。例えば、ローマでは romano (ロマーノ)となり、全体を指す場合はその男性複数形の romani (ロマーニ)を使用する。外国に対しては、イギリス人は inglese、ドイツ人は tedesco などがある。また、イタリア語では住民の呼称は、そのままその地域の言語や方言の呼称となったり、地域の物を表すための形容詞にもなる。前述のロマーノは「ローマ方言」を指すし、ペコリーノ・ロマーノと言えば、ローマのペコリーノ(チーズ)を表す。
日本語での事例
demonym という語が広く用いられるようになってから日が浅いため、日本語では訳語も定まっていない。族称(ぞくしょう)という訳語も提案されているようである。日本語における住民の呼称は、自治体の場合は自治体名に「市民」や「県民」などを付けることがほとんどである。他に、東京生まれを指す「江戸っ子」、水戸生まれを指す「水戸っぽ」、北海道生まれを指す「道産子」などの言葉もあり、最近においては生活地域を表す「シロガネーゼ」などの言葉も発生している。しかし、これらは住民の呼称というよりは住民の気質や県民性を表した語であるとも考えられ、demonymに該当するかは今後の研究が待たれる。