ユーロスター・イタリア
ユーロスター・イタリア (Treni Eurostar Italia, ES*) は、イタリアを走る高速列車。かつてはイタリア国鉄 (Ferrovie dello Stato)、現在は民営会社であるトレニタリアが運行する。イタリア語ではエウロスタルやエウロスターと発音する。
概要
イタリアに存在する高速新線(TAV)を最高速度250-300 km/hで走行する列車・車両の総称で、当初はペンドリーノと呼ばれていた。英仏間を結ぶユーロスターよりも歴史は古い。運行開始当初は、先頭車の形状が日本の新幹線0系電車を彷彿とさせる振り子式車両であるETR450が使用されていた。ディレッティシマ区間を中心に、主要都市から地方都市までくまなく路線網がある。
ペンドリーノからユーロスターと名称が変わった1996年頃には一等車、二等車ともに飲み物や軽食のサービスがあったが、現在茶菓のサービスは、一等車のみのサービスとなっている。また一等車では新聞を無料で配布もしている。
2001年頃までは自由席も連結されていたが、現在では全車全席指定席となっている。座席等級は一等車と二等車の2等級であり、一等車と二等車の間に挟まれる形で、座席が予約制の食堂車が連結される。
トーマス・クックなどの鉄道時刻表では「ES」の表記がされており、他の列車と区別されている。
ETR500デビュー当初、ユーロスターの名称を巡り英仏間を結ぶユーロスターと対立したが、結局イタリア側が譲歩してユーロスターの前に「イタリア」を冠し現在の名称となった。
2008年12月のミラノ・ボローニャ間高速新線開業に伴い、トリノ・ミラノおよびヴェネツィア・パドヴァからボローニャ、フィレンツェ、ローマを経てナポリに至るイタリアの回廊区間を走行する列車にはユーロスター・イタリア アルタ・ヴェロチタ(Eurostar Italia Alta Velocità,トーマス・クック時刻表では「AV」と表記される)の名前が与えられ、後述する改装済み車両がその運用へ充当されるようになった。この列車には従来のユーロスター・イタリアよりも高額の専用料金が設定されており、高速新線上では最高300km/h での営業運転を実施している。
アルタ・ヴェロチタの中にはミラノ・ローマ間をノンストップで結ぶ列車も日数往復あり、それらはAV FAST(アルタ・ヴェロチタ・ファスト)という通称で呼ばれている。2009年12月にはボローニャ・フィレンツェ間の高速新線も開業し、これによってミラノからローマに至る高速新線がほぼ完成したため、AV FASTでは約600kmある同区間を2時間59分で結ぶことが可能となった(フィレンツェ・ボローニャ停車の列車では3時間30分)。
その他、インターシティ(Intercity,都市間特急)で用いられる客車をかつてユーロスター・イタリアで用いられていた機関車(ETR500の第一世代)で挟んだ編成もあり、これはインターシティよりも高額の料金が設定されたユーロスター・シティ(Eurostar-city,トーマス・クック時刻表での表記は「ESc」)の名称にて、ミラノ-ヴェネツィア間等で運行されている。
車両
1988年にイタリアのフィアット(現在鉄道車輌部門はフランス・アルストム社と統合された)が開発した振り子式で動力分散方式(電車)のETR450が投入されてから、ETR460・470・480と後継の振り子式車両が続々と登場している。1996年にはそれまでの動力分散方式ではなく、振り子機構もなくし、フランスのTGVや、ドイツのICE車両であるICE1同様、両端の電気機関車の間に客車を挟んだ動力集中方式(機関車方式)のETR500が投入され、イタリアでも最高速度300 km/hでの営業運転が実現した。なお、この車両はイタリアの工業デザイナー、ピニンファリーナが手掛けたことでも知られている。
2008年から内外装のリニューアルが行われている。改装後の車体外装は赤をベースとしてシルバーグレーのツートンカラーを組み合わせた鮮やかなカラーリングとなり、Frecciarossa(フレッチャロッサ、赤い矢の意)の愛称が与えられた。
なおFrecciarossa(フレッチャロッサ)に関しては、2015年6月14日より、ミラノ、ローマ間で、動力分散方式の新型車両ETR400使用による、Frecciarossa1000(フレッチャロッサ1000)の営業運転が開始されている。開発・製造はアンサルド・ブレーダ社と、ボンバルディア社。車両デザインは、ピニンファリーナ、ジウジアーロと並んで有名な、イタリアのカロッツェリア=インダストリアルデザイナーのベルトーネが担当。新型車両の営業最高速度は360km/hで、非浮上式(粘着式)鉄道としては世界最速となる。これに伴って、ミラノ、ローマ間の所要時間も、最短2時間20分に短縮される[1][2]。