ビバップ
ビバップ (bebop) は、1940年代に成立したとされる、ジャズの一形態。スウィングを継承するか、反発から生じたかの違いはあっても、モダン・ジャズの起源はこの音楽にあるというのが、最も一般的な見解である。仮名表記によって、ビー・バップ、ビ・バップなどとも記される。
Contents
概要
マンネリ化したスウィング・ジャズに飽きた、あるいは、本来の即興演奏が好きなジャズの演奏家たちが、ライヴハウスや演奏主体の飲食店の閉店後に、ジャム・セッションをしていて、そこから発展し生まれたとされる。
最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿った形でありながらも、自由な即興演奏[1](アドリブ、インプロヴィゼーション)を順番に行う形式が主となる。基本的には、コード構成音や音階に忠実にアドリブ演奏しながらも、テーマのメロディーの原型をとどめないくらい、デフォルメされた演奏となっていった。そのため、上下に音がとび、鋭い演奏が多い反面、長いアドリブのために、アドリブ自体が主体になってしまう側面があった。原曲からかけ離れたり、複雑化し、ライブごとにできが大きく異なるといった現象も起こった。また、スウィングのように楽しむための音楽、ダンスのための音楽から、当事者にとっては演奏することが目的となった音楽、聞く側にとっては聴くだけの音楽になってしまったとの批判もあった。
ビバップの音楽理論
ビバップの時代には、チャーリー・パーカー[2]やディジー・ガレスピーらにより和声が極限まで拡張されることとなった。具体的には原曲のコード進行を、さまざまな代理和音を用いてリハーモナイズしたり、頻繁な内部転調を行う、あるいはテンションノートが積極的に用いられるなどである(和声の理論的には、後期ロマン派音楽に極めて近似しているとされる)。このようにしてビバップの演奏では調性が希薄になり、調性そのものの崩壊寸前まで至った。
コードの進行がフレーズから聞き取れるようなフレーズづくりもビバップの特徴である[3]。
しかしこのスタイルは、1950年代終わりごろには、誰がやっても同じようなアドリブになってしまう状況に陥り、行き詰まった。フリー・ジャズはこの行き詰まりを打破するべく生まれたジャンルのひとつである。
代表的なアーティスト
- チャーリー・パーカー (1920-1955):サックス
- ディジー・ガレスピー:トランペット
- セロニアス・モンク:ピアノ
- カーリー・ラッセル:ベース
- バディ・リッチ:ドラムス
- クリフォード・ブラウン (1923-1950)
- チャーリー・クリスチャン:ギター
- マイルス・デイヴィス
- ジョン・コルトレーン:サックス
- ファッツ・ナヴァロ (1923-1950)
- レイ・ブラウン
- マックス・ローチ:ドラムス
- デクスター・ゴードン
- ジェームス・ムーディー
- ケニー・クラーク
- ソニー・クラーク
- ソニー・スティット
- ソニー・ロリンズ
- バド・パウエル (1924-1966):ピアノ
- ジョン・ルイス (1920-2001)
- ミルト・ジャクソン:ヴィブラフォン
- タッド・ダメロン (1917-1965)
- ジーン・アモンズ (1925-1974)
- J・J・ジョンソン:トロンボーン
- デューク・ジョーダン
- ロイ・ヘインズ:ドラムス
- フィリー・ジョー・ジョーンズ:ドラムス
脚注
- ↑ http://music.stackexchange.com/.../what-improvisational-tech...
- ↑ http://www.aaregistry.org/.../saxophonist-charlie-bird-parker-develo...
- ↑ 限定進行音(3度音や7度音、それにテンションノートなど、次に鳴らすべき音が調性システム上決まっている音のこと)の解決をきちんと守るなど。
参考文献
- 細川周平、後藤雅洋、村井康司、寺島靖国、小川隆夫、加藤総夫、柳沢てつや、北里義之、大村幸則、瀧口秀之、西島多恵子、山下泰司、黒田京子、桜井圭介、上野俊哉、米田栄、田辺秀樹、高橋順一、川竹英克、田村和紀夫、大宅緒、高見一樹、島原裕司、柴俊一 『新版 ジャズを放つ』 洋泉社、1997年。ISBN 4896912500。
関連項目
- ファンキー・ジャズ(ソウル・ジャズ)
- フリー・ジャズ
- オーネット・コールマン
- ハード・バップ