エマソン・エレクトリック
エマソン・エレクトリック(Emerson Electric Co.)は、米国ミズーリ州セントルイスのファーガソンに本社を置く世界有数の多国籍企業である。
エマソンは、フォーチュン・グローバル500にランキングされる会社であり、産業分野、商業分野、一般顧客向けなどの幅広い市場に対してエンジニアリング・サービスを提供している、米国を代表するコングロマリット(複合企業)の1社である。60を超える独立した事業部隊が、独自の経営スタイルを保ちながらも、1つのアイデンティティーのもとに終結した集合体企業である。
2015年現在、約115,000人の従業員を有し、世界150カ国において事業を展開をしている。また、一株当たり配当が58年連続で増加し続けている数少ない上場企業のひとつ(2015年9月末現在)。
Contents
事業部門
エマソンの60を超える独立した事業部隊が提供する製品、ソリューション、サービスは、以下5つの事業分野のもと行われている。
プロセス・マネジメント事業
- プロセス・マネジメント事業(Emerson Process Management)は、プラントプロセス機器類、プロセスコントロールのためのソフトウェア及び各種システムを開発・製造・販売している。プラント能力を最大限に引き出すための精緻な制御と管理を可能とし、石油化学から薬品、食品、さらに電力業界まで広がっている。これらの計装機器類やDCSは、プラントで問題が発生する前にその兆候を発見しダウンタイムを最小限にとどめ、プラントのパフォーマンスを高める。
- 主要ブランド:Rosemount、Micro Motion、Fisher、DeltaV、Ovation、Daniel、Roxar、AMS Suite、TESCOM
- 日本では、日本エマソンのエマソン・プロセス・マネジメント事業本部、日本フイツシヤが、それぞれ国内に拠点をもって事業を展開している。
ネットワークパワー事業
- ネットワークパワー事業(Emerson Network Power)は、データセンター、通信ネットワーク及びミッションクリティカルなアプリケーションを支える安定した電源設備や精密空調に加え、2009年12月にTインフラ管理ソリューションの主要プロバイダーであるAvocent(アボセント)を買収したのを皮切りに、近年はデータセンター・インフラストラクチャ・マネジメント(DCIM)製品の開発・製造・販売も推進しております。また、2010年に買収したChloride社を通じて、データセンターだけでなく石油・ガス・化学・電力プラント向け産業用無停電電源装置を開発・製造・販売しております。無停電電源装置(UPS)、精密空調、分電盤(PDU)、無瞬断切換装置(スタティック・トランスファー・スイッチ: STS)、サーバラック、KVMスイッチ、インテリジェントラックPDU等が製品ラインアップとして挙げられる。
- 主要ブランド:Liebert、Asco Power Technologies、Avocent、Trellis、Chloride
- 日本では、日本エマソンのエマソン・ネットワークパワー事業部、アボセントジャパン株式会社が、それぞれ国内に拠点をもって事業を展開している。
冷凍空調制御事業
- 冷凍空調制御事業(Emerson Climate Technologies)は、業界をリードする製品とサービスを提供してきた。エマソンの技術は、住宅の空調機器をコントロールし、エネルギーとコストの節約に寄与してきた。また、スーパーマーケットに生鮮食品やアイスクリームをおくことを可能にしたのもエマソンの技術である。そこでは、冷凍機がデジタルコントロールされ、また、遠隔監視されている。スクロールコンプレッサー、気密端子、温度ヒューズなどが、製品ラインアップとして挙げられる。
- 主要ブランド:Copeland、Fusite、Therm-O-Disc
- 日本では、日本エマソンのエマソン・クライメイト・テクノロジーズ事業部、フューサイト事業部、サーモディスク事業部が、それぞれ国内に拠点をもって事業を展開している。
インダストリアル・オートメーション事業
- インダストリアル・オートメーション事業(Industrial Automation)は、多角化していく世界の産業に、集大成された製造のソリューションを提供している。風力発電用のコンポーネンツ、超音波溶着機、電磁弁、モーターや発電機などの回転機、インバータやサーボモーター、防爆製品など、多岐にわたる製品を開発・製造・販売している。
- 主要ブランド:Branson、Appleton、ASCO、Leroy Somer、Control Techniques、SSB
- 日本では、日本エマソンのブランソン事業本部、コントロール・テクニクス/ルロア・ソマー事業、アップルトン事業部(旧EGS事業部)、日本アスコ株式会社が、それぞれ国内に拠点をもって事業を展開している。
コマーシャル&レジデンシャル ソリューション
- コマーシャル&レジデンシャル ソリューション(Emerson Commercial & Residential Solutions)は、主に三つの事業を展開している。ツール事業において、頑丈で信頼性の高い工具、ウェット/ドライクリーナー、 工具箱などを提供し、専門職の方や日曜大工愛好家の作業効率向上に貢献している。ストレージ事業において、革新的な住宅向け、ヘルスケア、フードサービス、商業用ストレージ(収納)システムにより、スペースの最大化、ワークフローの改善、生産性の向上を実現している。また、アプライアンス事業において、世界レベルの技術ソリューションであるディスポーザおよびホットウォーターディスペンサーにより、日常生活を快適にしている。
- 主要ブランド:RIDGID、InSinkErator、METRO、CLOSET MAID
- 日本では、日本エマソンのリッジ事業部が、国内に拠点をもって事業を展開している。また、一部のブランド・製品は指定輸入代理店を通じて国内販売をしている。
沿革
エマソンは米南北戦争の退役軍人であったJohn Wesley Emersonによって1890年に設立されたEmerson Electric Manufacturing を起源とする。Emerson Electric Manufacturingでは、スコットランド生まれのCharles MestonとAlexander Mestonの兄弟が所有していた特許を使用して電気モーターを製造していた。1892年には、電気扇風機を全米で初めて売り出すこととなった。その後、電気ミシンや電気歯科ドリル、電動工具などの製品へと広げていった。
第二次世界大戦中のエマソンは、スチュアート・サイミントンのリーダーシップのもと、世界最大級の空軍装備品メーカーとなった。1947年から50年にかけて、サイミントンはトルーマン政権下で初代の空軍長官となり、ベルリン封鎖における空輸作戦の実施や空軍士官学校の設立などに尽力した。1953年から1976年に米国ミズーリ州選出の上院議員となった。
1954年にW.R. "Buck" Personsが社長に就任。エマソンはPersonのリーダーシップのもと36社をM&Aし、ビジネス領域を広げていくこととなる。Personsが退任した1973年には、82の製造拠点、31,000人の従業員、そして8億ドルの売上に成長していた。
Charles F. Knight は、1973年から2000年の間CEOを勤め、1974年から2004年の間会長を勤めた。Knightの在籍期間は、厳格なコーポレートプランニングプロセスの策定、新製品や新技術の開発、買収や合弁、そして内部成長に注力をした。
Knightのあとを継ぎ、David N. Farrは2000年からCEOを、2004年から会長となった。
評価
- エマソンは、ミズーリ州に本社を置く公開会社の中で、最も売上が大きい
- 2015年、フォーチュン500(Fortune 500)において全米で120番目にランクイン[1]
- 2015年、フォーチュン・グローバル500(Fortune Global 500)において全世界で484番目にランクイン[2]
- 2015年、フォーチュン誌において 「世界で最も賞賛される企業」(World's Most Admired Companies)エレクトロニクス部門 で第5位にランクイン[3]
- エマソンの会長兼CEOであるDavid N. Farrは、Institutional Investor誌において、2008年から2年連続でBest CEO in America(電気機器/マルチ・インダストリー分野)を受賞[4]
- 2014年度の米国外売上高は58%であり、半分以上の売上げを米国外であげている[5]
- 一株当たり配当が58年連続増配を記録(2014年度9月期現在)[6]
特記事項
- Emersonを日本語で「エマーソン」と表記される場合があるが、正しくは「エマソン」である。
- 日本フイツシヤの表記は、「フィッシャー」ではなく「フイツシヤ」である。
- 2015年6月30日に、ネットワークパワー事業のスピンアウトおよびモータ、ドライブ、発電機、ストレージ事業の戦略的な代替ビジネスを模索する、事業ポートフォリオ再編が発表された。2016年9月末までに、事実上事業を縮小することになった。2014年9月期ベースの売上高は245億ドルだが、ポートフォリオ再編後は163億ドルになる見込み。[7]