イチジク属

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イチジク属(イチジクぞく、学名Ficus)は、クワ科に含まれるである。ラテン語名からフィクス属英語的な読みではフィカス属ともいう[1]

約800種の植物が含まれる。木本またはつる植物で、暖帯から熱帯に分布する。傷をつけるとゴムを含む乳液が出る。

花序

共通の特徴は、その特殊な花序にある。イチジク無花果と言われるように、この仲間は、花が咲かずに唐突に果実を生じるように見える。もちろんそんな訳はないのであって、実際には果実に見えるものが花序なのである。

イチジク属の果実に見えるものは、その先端にへそがある。この部分には、狭いながらも内部への通路が開いている。果実状の部分の内部には空洞があり、内側の壁には柄を持った粒状の構造が密生している。これらはすべて花である。つまり、果実状の構造は、茎の先端に花が一面に並んだものを、茎の部分が広がって花の面を包んでしまったようなものである。このような花序を隠頭花序、あるいはイチジク型花序という。花そのものは単一の雄しべ又は雌しべのような単純な構造である。

この花序にはイチジクコバチという寄生バチが生活しており、花に産卵して、そこで生長する。成虫の一部が他の花へと移動する際に、花粉の媒介が行われる仕組みである。したがって、寄生バチは花を加害するが、受粉を助ける役割も果たすので、両者は相利共生の関係である。イチジク類は、その種ごとに、花粉媒介させるイチジクコバチの種が決まっている。

イチジクやイヌビワガジュマルなどは花序を枝先につけるが、アコウギランイヌビワでは、太い幹の樹皮から短い枝が出て、そこに花序がつく。一見すると、木の肌に直接果実が着いているように見える。このような花や果実のつき方を幹生花(幹生果)といい、温帯に生活するものから見れば奇妙であるが、熱帯の樹木には往々にして見られる姿である。

生態等

熱帯を中心に生育する種が多く、日本でも南西諸島に多い。日本に産する12種のうち、本土には5種あり、あとはそれ以南に産する。すべて樹木であるが、はい上がるつる植物になるものがある。

つる植物になるものは、日本ではイタビカズラオオイタビなどがある。低木になるのがイヌビワである。他のものは高木になる。本州南岸にアコウが自生するほかは、より南に生育する。

アコウ、ガジュマルなどは木の枝から空中に根(いわゆる気根)を出す。気根は伸長して地面に達すると、そのまま幹状に発達する。ガジュマルでは気根が自らの樹皮の表面を這い、幹と融合して奇妙な外観を呈するようになる。幹から離れた枝の部分から出た気根が地上に達すれば、複数の幹を持った樹木になってしまうこともある。カルカッタ植物園にあるベンガルボダイジュは、幹が500本もあるが、すべてひとつながりで、その差し渡しは300mにも及ぶ。ある意味では世界最大の樹木である[2]

また、これらの種では種子が鳥によって運ばれ、岩や他の樹木の上で発芽する場合もあり、その場合は、当初は着生植物として成長する。やがて根を地上に下ろして、普通の樹木となるが、絞め殺し植物というのは、それのさらに極端なものである。樹上で発芽し、気根を降ろして成長し、やがてもとの木の表面を自分の根で覆いつくし、最後にはその樹木を絞め殺し、自らは気根から発達した幹によって自立してしまうもので、熱帯のイチジク属に多くの例がある。沖縄でも、アコウやガジュマル等がアカギモクマオウヤシの仲間等に絞め殺しをかけている所を石灰岩地の森林や街路樹等で見かけることができる。

分類

ファイル:Ficus religiosa Bo.jpg
インドボダイジュ

熱帯に広く分布し、日本では南ほど種類が多い。以下に代表的なものを記す。

日本産

つる植物
低木
高木

日本国外産

イチジク以外に果嚢を食用とするものでは、カンテンイタビ(愛玉子(オーギョーチ、あいぎょくし)、台湾産)があり、日本に自生するイヌビワ、イタビカズラなども食用可能。

またインドゴムノキベンジャミンガジュマルなど観葉植物にされるものもある。観葉植物の原種は意外に高木になるものもある。例えば、インドゴムノキやベンガルボタイジュは30m、カシワバゴムノキは10mにもなる。

脚注・出典

  1. ラテン語 ficus (イチジク)の本来の発音は「フィークス」。英語読みは「ファイカス」。「フィカス」は日本だけの慣用読みということになる。
  2. 沼田(1972),p.16

参考文献

  • 沼田真、『植物たちの生』、(1972)、岩波書店(岩波新書)

外部リンク