ロカビリー
ロカビリー(rockabilly)は、1950年代に誕生した音楽。ロッカビリー(Rock-A-Billy)とも呼ばれた。代表的なミュージシャンには、エルヴィス・プレスリーやカール・パーキンスらがいた。
Contents
歴史
1950年代初期のアメリカ南部、メンフィスなどの地域において、黒人音楽のブルースと、白人音楽のヒルビリーやカントリー、ブルーグラスが融合して生まれた。
白人歌手によりロカビリーが流行した時期は、1954年からの数年間である。1950年代当時のロカビリーは、ビル・ヘイリーと彼のコメッツやエルヴィス・プレスリー[1]らの人気シンガーがブームの牽引役だった。ウッドベースによるダイナミックなスラッピング奏法も1957年頃には、取り扱いの容易なエレキベースに取って代わり、ロカビリー人気は下降線をたどることになる。
さらにエルヴィス・プレスリーの徴兵、バディ・ホリーとエディ・コクランの相次ぐ死去[2]は、ロカビリー及びロックンロールに大きな打撃を与えた。1960年には既にロカビリーが演奏されることは減少し、ダンスもジルバやバップに代わってツイストがブームとなった。
更には1962年のビートルズのデビュー、彼らを中心とした1964年以降のブリティッシュ・インヴェイジョンは、ロカビリーやロックンロールを抽象的な「ロック」に変えた。なお、ロカビリーのダンスには、バップ(黒人ブルースマンなどが、床を'TAP'するより強く'BOP'した個人ダンス)やジルバ(リンディーホップのフラッシュダンサーをJitter bug”落ち着きのない虫”と呼んだという説がある。またフラッシュダンサーのバップをJitter bopと言う)、BOX、ツイストなどがある。
1960年代以降のロカビリー
1960年代前半のビートルズの登場により完全に廃れたロカビリーだったが、60年代末から70年代初頭には、シャナナが孤軍奮闘した。シャナナはウッドストック・フェスティバルにも出演していた。1970年代のパンク・ロックなど他のジャンルに影響を受け70年代末から80年代前半には、ストレイ・キャッツやロバート・ゴードン、タフ・ダーツ、シェイキン・スティーヴンス、ブラスターズらを中心にしたネオロカビリー(Neo Rockabilly)[3]のブームが訪れた。ネオロカビリーは短縮形で「ネオロカ」とも言う。またネオロカの流行にいち早く目をつけたクイーンが、「愛という名の欲望」(1980)を発売し、ビルボードの上位へ送りだしたりといった現象も見られた。
また、この頃からロンドンスタイルのロカビリーダンス、Jive(ジャイヴ、社交ダンスのそれとは異なる)が小さな流行になった。21世紀にはラスベガスのViva Las Vegasなど、世界的規模のイベントも開催され人気も根強くロカビリアン人口も少しずつ増加している。
日本のロカビリー
日本では1958年、カントリー・ミュージックのバンド「オールスターズ・ワゴン」に在籍していた平尾昌晃がソロ・デビューし、ミッキー・カーチス、山下敬二郎と共に「ロカビリー三人男」称され「日劇ウエスタンカーニバル」などに出演し「ロカビリー・ブーム」に発展した。和製プレスリーと称した佐々木功(現在はささきいさお)、かまやつひろしらもこの頃に登場している。だが、60年代後半にはグループサウンズ・ブームに押され、ロカビリーは退潮傾向となる。70年代にはキャロル、クールスなどが登場した。
1970年代後半から80年代初めには、ネオロカビリー及びオールディーズブームにより、50sファッションやコントラバスをスラップする音楽スタイルが見られた。90年代にも少数のロカビリーバンドが登場し、音楽のみならずフラットトップやダックテール(ロカビリーのヘアスタイル)、および50sアトミック・デザインの生活用品、バップとジルバ(ロカビリーのダンススタイル、ロンドンではイギリス式ジルバ、ジャイヴが流行)も小さなブームとなった。
2005年、湯川れい子・小野ヤスシ・高田文夫らにより、「全日本ロカビリー普及委員会」が発足。その会長にロカビリー・シンガーのビリー諸川が就任した。21世紀には女優の二階堂ふみが、ロカビリー・ファッションを取り入れたりしている。
音楽的特徴
ロカビリーに欠かせない音楽的、特に器楽の特徴として、1920年代から1930年代における黒人系スウィングバンド、とりわけベーシスト特有の奏法である「スラッピングベース奏法(スラップ奏法)」が挙げられる。 この奏法では、ウッドベース(コントラバス)の弦を指で引っ張りつつ滑離し、低音とネックに当たる「カチッ」という中高音をミックスさせた音を出し、更に手の平で弦をネックに叩きつけてパーカッション効果を出す。ギターにおいては、カントリーやロカビリー向けの奏法のひとつ、ギャロッピング奏法が用いられることが多い。
歌い方はしゃっくりするように語尾をしゃくりあげるヒーカップ唱法、吃音する(どもる)かのように口ごもって発音するマンブリング唱法、従来からのカントリー系の歌唱方法であるホンキートンク唱法がある。
ギターと言えば、エディ・コクランが用いたグレッチのエレクトリックギターや、ギブソン社のフルアコースティックギター(スコティ・ムーア)で、ベースはウッドベースを使用するイメージが強い。ホロー・ボディーのギター以外にも、カントリー用として開発されたテレキャスターもゆるがせにできないだろう。ちなみに、ジェームズ・バートンはミスター・テレキャスターの異名を持つ。
代表的なミュージシャン
- ロカビリー(1950年代後半中心)
- ビル・ヘイリー、エルヴィス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス、ジーン・ヴィンセント、エディ・コクラン、バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンス、ジョニー・キャッシュ、ジョニー・バーネット・トリオ、デイル・ホーキンス、ロニー・ホーキンス、ソニー・バージェス、カール・マン、ウォーレン・スミス、フランキー・フォード、フレディ・キャノン、ワンダ・ジャクソン、ジョニー・キッド(UK) など。
- ネオ・ロカビリー
派生ジャンル
- 代表的なアーティスト
- メテオス、ザ・クランプス、グアナ・バッツ、バット・モービル、ディメンテッド・アー・ゴー、フレンジー、タイガー・アーミー、リヴィング・エンド等。
脚注
参考文献
- Craig Morrison, 1998. Go Cat Go! Rockabilly Music and Its Makers (洋書)
- Rockabillyとは何か (国立情報学研究所CiNii内の論文)