スピリタス
スピリタス (spirytus) とは、ポーランドを原産地とするウォッカ。
2011年時点で、アルコール度数世界最高の酒として知られる。飲用可能な無水アルコールを別とすれば、過去のアルコール度数史上最高の酒類は、1920年代-1930年代にかけてエストニアの酒類専売公社が販売していたジャガイモ原料でアルコール度数96度の蒸留酒であった。
「スピリタス」は英語読みを片仮名表記したもので、ポーランド語の発声に近い片仮名表記は「スピリトゥス」。ポーランド語ではspirytus rektyfikowany(スピリトゥス・レクティフィコヴァニ: 精製アルコール)という。ポーランド語のspirytusは酒精、つまりエタノールを意味し、広義には蒸留酒全般のこと(ウォッカも同じ)。
概要
穀物とジャガイモを主原料として70回以上の蒸留を繰り返すことにより、95-96度という高アルコール度数に仕上げられた、世界最高純度のスピリッツである。このため、喫飲中は喫煙を含めて火気厳禁である。また、水との共沸混合物となっていることから、蒸留でこれ以上の純度に精製することは不可能である。
ポーランド国内には複数のブランドがある[1]が、日本ではポルモス・ワルシャワ社製でミリオン商事株式会社が輸入している緑色キャップの瓶のもの(ラベル名はSPIRYTUS REKTYFIKOWANY RECTIFIED SPIRIT)がよく見られる。
味は、初めに刺すような痛みと強烈な焦熱感があるが、それを過ぎると甘く感じる。それまでの飲酒や味覚の嗜好によっては、最初から甘く感じることもある。一般的にはカクテルのベースにされることが多い。原産国のポーランドではウォッカとは別の種類の製品であり、狩人が携帯して森で手に入る水を混ぜて飲むほか、家庭で消毒薬として戸棚に常備する、チェリーなどの果実を漬け込んでナレフカなどの果実酒を造るのにも使用され、その果実酒も炭酸水などで割って日本のサワーや梅酒ソーダのようにして飲む。ポーランドでは、スピリタスをそのまま飲む習慣はない。
北米では、この度数の飲用アルコールの販売が禁止されている州は珍しくない。
消防法上の扱い
消防法では、エタノールなど「一分子を構成する炭素の原子の数が一個から三個までの飽和一価アルコール」を「アルコール類」として第四類危険物としている[2]。スピリタスはアルコール濃度が60%を上回っているため、「組成等を勘案して総務省令で定めるもの」[3]には当たらず、消防法上の危険物に分類される[4]。
そのため、日本国内で流通するスピリタスの容器には、容量が500mlを超える場合[5]「第四類アルコール類(引火性液体) 危険等級II 水溶性」「火気厳禁」といった表記が必要となる[6]。
ポーランド文学に現れるスピリタス
アダム・ミツキェヴィチ作の長編叙事詩『パン・タデウシュ』にスピリタス(スピリトゥス)が登場する。主人公の村がロシア軍に急襲・占拠された際、兵士をスピリタスで酔わせ、住民蜂起によるロシア軍の駆逐につなげた(「第九之書」血戦)。
脚注
- ↑ 例えば、ディスティラルニア・ソビエスキ社製グダインスキ・スピリタスやポルモス・ウォッカ製造所"ヴラティスラバ"(ポルモス・ブロツワフ)社製スピリタス96%、95%など。
- ↑ 消防法別表第一 第十三号
- ↑ 消防法別表第一 第十三号但書、危険物の規制に関する規則第一条の三第4号
- ↑ アルコール類判断フローチャート (PDF) 、総務省消防庁、2016年12月23日閲覧。
- ↑ 500ml以下の場合は、危険物の規制に関する規則第44条第2項により緩和されている。
- ↑ 危険物の規制に関する政令第29条第2項、危険物の規制に関する規則第44条
関連項目
- 中性スピリッツ
- スーパーフリー事件 - 2003年に発覚した事件。スピリタスを基酒とした高アルコール度数カクテルを女性に飲ませることで泥酔させ、輪姦が行われた事件。スピリタスの名が世間に広まるようになった。この事件後もスピリタスをカプセル剤にしたものを女性に飲ませることで泥酔させてからの強姦事件が発生している。