フェンダーミラー

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フェンダーミラーとは、自動車部品のひとつで、運転者が後方及び後側方を確認するためのミラーバックミラー。法令では「後写鏡」と定める)のうち、車外ボンネットの前方端に装着されるもの(同・「車体外後写鏡」に含まれる)に対する呼称。通常は、左右1対で装着されている。

歴史

ファイル:1997 Toyota Century 01.jpg
2017年まで伝統的にフェンダーミラーを採用し続けたトヨタ・センチュリー[1]

かつて日本では、法令(道路運送車両法第44条(後写鏡等))により、ボンネット付きの車両にはフェンダーミラーと決められていた[1]。例外的に、ボンネットのないキャブオーバー車だけはドアミラーも認められていた。日本における多くの市販車はフェンダーミラーで、特に乗用車はフェンダーミラーのみとなっていた。

一方その当時、アメリカ合衆国などではドアミラーが主流となっていた。フェンダーミラーを義務づけている日本の法律は、日本国外の自動車メーカーにとっては非関税障壁となっており、規制緩和が求められていた[1]

1983年(昭和58年)に規制が撤廃されると、世界的には稀であり、デザイン上も好まれず[1]、製造コストもかかるフェンダーミラーは急速に減少した。現在ではドアミラーが主流となり、一般の乗用車においてフェンダーミラーのオプション設定はごく少数になった[1]。又、初代日産・レパードのパルサー販売仕様車であるレパードTR-X(TR-Xはトライエックスの略。)にはワイパー付きフェンダーミラーが装着されていたが、ドアミラー仕様車が登場した後こちらも装備から消滅している。なお、タクシー営業用のセダンは、トヨタ・クラウンセダン/クラウンコンフォート/コンフォートにフェンダーミラーの設定があったが、これらは2017年12月までに生産完了した[1][2]。 2017年からタクシー専用車として登場したトヨタ・ジャパンタクシーはフェンダーミラー専用車である。

日本においては、自動車のオーナーがドアミラー車を改造してフェンダーミラーを取り付けること自体は合法だが[1]、実際には数十万円もののコストがかかるため現実的ではなく[1]、そうした改造例は多くない。

役割

ファイル:TOYOTA JPN TAXI TMS2017 001.jpg
2018年8月現在、日本車で唯一全車フェンダーミラーが標準装備のトヨタ・ジャパンタクシー
ファイル:Eastern-Crownsedan.JPG
日本のタクシーではフェンダーミラーが主流である(トヨタ・クラウンセダン)
ファイル:Mitsubishi Mirage Van 001.JPG
ドアミラーとフェンダーミラーを両方装着した車の例:三菱・ミラージュバン

ドアミラーとの比較

トラックバンなどのボンネットをもたないキャブオーバー型では、ドアミラーでも距離としては大きな差は生じない。

しかし、ボンネットのある車では、安全性の確保の観点から、フェンダーミラーはドアミラーよりも有効だともいわれる[1]

フェンダーミラーはドアミラーに比べてより前方に位置しており、ドライバーにとっては目の移動や頭のひねり角度が少なく、視線の移動を素早く行え、疲労も少ない[1]。その一方で、ミラーが離れるため相対的に鏡像は小さく見える。またフェンダー側面からドア側面にかけての視界も確保され、死角が少なく、車幅・車長感覚の補助という効果もある。空力的に有利で、レーシングカーにもフェンダーミラーを採用するチームが見られる。

一方で、鏡面の電動調整機能がない場合は、鏡面の調整を行うのに手間がかかること、鏡体取りつけ金具の先端が突起物になってしまうというデメリットが生じる。

使用分野

現在、日本においてはタクシーや公用車・役員車などに使われている。上記理由以外に、ドアミラーでは、運転手が後部座席の乗員と偶然に目が合うような状況が発生し、後部座席を覗き見しているかのように見えて不快感を与えるという問題が発生する[1]。タクシー用車両では、助手席側を確認する行為が、助手席乗員が運転手から見られているように感じること、トヨタ・センチュリーやクラウンセダンなど公用車などでは、後方乗員から、運転手が助手席と会話しているように見られる、または、聞き耳を立てているように見られることなどの理由により、ドアミラーが選択肢として可能である現在でもフェンダーミラーが主流となっている。

パトロールカーでは、三菱・GTO(中期型)を初のドアミラーパトカーとして導入して以降(覆面パトカーを除いた場合)、フェンダーミラーではなくドアミラーにするケースが増え現在はドアミラーが一般化している。教習車にしても、ドアミラーしか設定のない車種が増え、教習車の世代交代も進んだため、おおむね1990年代には普通免許(AT限定免許含む)の教習車に限っていえば、ほとんどがドアミラーになっている。

その他のフェンダーミラー

日本で販売されているSUVミニバンなどには、後方確認のためのドアミラーに加えて、助手席側フェンダー部分に前側方確認のための小型フェンダーミラーが装備されることがある。これは、国土交通省の定める「直前側方視界基準」に準拠するものである(サイドアンダーミラー)。

また、時期的にもフェンダーミラー車からの乗り換えが多かった7代目スカイラインには、ドアミラー車の視覚違和感を軽減する目的で、運転席側をドアミラー、助手席側をフェンダーミラーとした、珍しいアシンメトリーミラーがオプション設定されていた(それぞれの形状は至って普通)。

限定販売車・オーテック・ザガートステルビオは、フェンダーミラーをボディに内蔵するという、特異な構造を採用している。フェンダーミラーのデザイン性を高めようという趣旨であるが、結果としてデザイン的評価は高いとはいえない。

各国の表現

部品名としては「英語: outer rear view mirror(アウター リアビューミラー = 外部後写鏡)」が一般的で、これ自体に取り付け位置を示す意味はない。アメリカ英語ではドアミラー。イギリス英語ではウィングミラー(wing mirror[3]。その機能からサイド・ビュー・ミラー(side-view mirror)ともいわれ、原則的に日本でいう「ドアミラー」と「フェンダーミラー」の区別はされていない。

脚注

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 原川真太郎 (2011年3月6日). “フェンダーミラー車はどこへ? 優れた安全性も「絶滅寸前」に”. msn産経ニュース. 産業経済新聞社 (マイクロソフト). オリジナル2011年3月9日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110309073435/http://sankei.jp.msn.com/life/news/110306/trd11030618010011-n1.htm . 2013閲覧. 
  2. 。2014年廃止の日産・セドリック営業車は2009年のマイナーチェンジでフェンダー形状が変わり、構造上フェンダーミラーが装着不可能になった。
  3. 英国英語では、フェンダーのことを Wing と表現する。

関連項目

en:Wing mirror