ゴロ
ゴロ(英: ground ball)とは、野球・クリケットで打者の打ったボールが地面をバウンドもしくは転がりながら進んでいくもの(球場が天然芝か人工芝かによって、その特徴は異なる)。
語源はゴロを表す英語 (grounder) が転じたとも、擬音語のゴロゴロが転じたとも言われる。
概説
新聞やテレビ放送時のテロップ表示などでは、ゴロの打球が守備側によって処理され、打者走者または塁上の走者のいずれかがアウトになった場合(英: ground out)、その打球を処理した野手の守備位置によって以下のように表記される。
- 投ゴロ(ピッチャーゴロ:投手が処理したゴロ)
- 捕ゴロ(キャッチャーゴロ:捕手が処理したゴロ)
- 一ゴロ(ファーストゴロ:一塁手が処理したゴロ)
- 二ゴロ(セカンドゴロ:二塁手が処理したゴロ)
- 三ゴロ(サードゴロ:三塁手が処理したゴロ)
- 遊ゴロ(ショートゴロ:遊撃手が処理したゴロ)
- 左ゴロ(レフトゴロ:左翼手が処理したゴロ)
- 中ゴロ(センターゴロ:中堅手が処理したゴロ)
- 右ゴロ(ライトゴロ:右翼手が処理したゴロ)
また、ある野手が打球を弾き(デフレクトと呼ばれる)、他の野手がカバーしてアウトにした場合、どこのゴロと表記されるかは各マスメディア次第である。
公認野球規則10.10では、「あるプレイでアウトが成立した場合、または失策がなければアウトにできたと思われる場合に、そのアウトが成立するまでに、またはその失策が生じるまでに、送球したり、打球あるいは送球をデフレクトした各野手に補殺を記録する。ただし、そのプレイでアウトが成立していなければデフレクトした野手に失策が記録されたであろうと記録員が判断した場合は、この限りではない」とされる。
外野ゴロ
ゴロの打球が外野に抜けた場合、打者が一塁に到達する前に外野手が一塁に送球して打者走者をアウトにした場合、及びフォースの状態となった走者が次塁に到達する前に当該塁に送球して走者をアウトにした場合を指して外野ゴロと呼ぶことがある。これは、内野手が内野ゴロを一塁に送球して打者走者をアウトにする動作と同じことを、外野手が外野フィールドで行っていると考えているためである。
プロ野球では打者走者が外野へのゴロでアウトになることは非常に少ないが、投手など打力が弱い打者の打席で外野手が前進守備をとっていた場合、ライトゴロが見られることがある。読売ジャイアンツの長野久義は、2013年に3回ライトゴロを成立させている[1]。走者がフォースのときに外野手がフライを落球した後にボールを転送して走者がフォースアウトになった場合などに、センターゴロやレフトゴロなどといった表現をされるケースは比較的多い。フォースの状態でない走者には進塁義務がないため、外野に飛んだゴロで次塁でタッチアウトになっても外野ゴロとはならず、安打が記録される(公認野球規則10.05(3)注2より)。
日本のプロ野球では、1987年6月16日の中日ドラゴンズ対阪神タイガース戦で中日の鈴木孝政が、センターゴロで一塁アウトになったことがある(補殺・北村照文中堅手、刺殺・ランディ・バース一塁手)。MLB では、2006年8月24日のデトロイト・タイガース対シカゴ・ホワイトソックス戦で、タイガースのショーン・ケイシーが、サードライナーを捕られたと思って走るのを一旦やめてレフトゴロになったことがある(補殺・ジョー・クリーディ三塁手およびパブロ・オズーナ左翼手、刺殺・ロス・グロード一塁手)。
戦前は用具の質が悪かったことで打球が飛ばなかったため、外野は前進守備の事が多く、外野ゴロも現在よりも多かった。
大沢啓二によると、東京六大学野球在籍時の1954年10月3日立教大学対東京大学戦で、レフトゴロを成立させたという[2]。
珍記録
- ゴロなし試合
- 1983年5月25日の中日ドラゴンズ対阪神タイガース戦で、中日の先発投手高橋三千丈は三振とフライだけで阪神の打者を打ち取った。3本のゴロのヒットを打たれたが、ゴロによるアウトが0の試合は現在までこの試合のみ。
- 5人内野シフトによるレフトゴロ併殺打
- 2009年6月14日の埼玉西武ライオンズ対広島東洋カープ戦の12回裏無死満塁時、守備の広島は左翼手を内野手の小窪哲也に交代して二塁ベース手前に守らせる5人内野シフトを敷く。結果、次打者(黒瀬春樹)が左翼手(小窪)正面へのゴロを打ち、記録上7-2-3という本塁併殺を成立させた。レフトゴロ自体もさることながら、ゴロによる左併殺打も極めて稀な事象である(なお、この場合の左翼手は、公認野球規則2.39より、左翼手でありながら内野手扱いとなるため、レフトゴロであっても外野ゴロではない)。
- 完全捕球が認められずレフトゴロ併殺打
- 2018年5月27日の阪神タイガース対読売ジャイアンツ戦の9回表1死満塁時、長野久義が左翼に大きな飛球を放った。犠牲フライには十分な飛距離だったが、阪神の左翼手・中谷将大が捕球から送球の流れの中で落球。左翼手(中谷)が捕球後、球を握り変える際に落球したかに思われたが審判は完全捕球とみなさず、ノーキャッチの判定を下した[3]。これによりフライが成立しなかったため、塁上の全ての走者はフォースの状態に置かれ、進塁義務が発生した。三塁走者(岡本)はホームインしたが、ボールは三塁に転送された後、二塁に転送。二塁走者(マギー)、一塁走者(亀井)は捕球後の落球と判断したのか、スタートを切っておらず、それぞれフォースアウトとなりゲームセット[4]。結果的に記録はレフトゴロとなり、7-5-4の併殺が成立した。判定を不服とした巨人の高橋由伸監督が約3分間、審判団に抗議したが、判定は覆らなかった。
- センターゴロ併殺打
- 2018年5月29日の東京ヤクルトスワローズ対千葉ロッテマリーンズ戦の9回1死一、二塁時、荒木貴裕が中堅に放ったライナーをロッテの中堅手・荻野貴司が前進して微妙なタイミングで捕球。ノーバウンドと判断した二塁走者(山田哲)、一塁走者(青木)の両走者はともに塁にとどまったが、ワンバウンドと判定されてボールは三塁、二塁と転送され、併殺が完成。この時、一塁審判がインプレーの動作をしていたが、二塁走者、三塁ベースコーチの視界には入らなかった。ヤクルトの小川淳司監督はラストプレーでリクエストを要求したものの、判定は覆らなかった。試合後、小川監督はこのプレーについて「しょうがないですね。審判のフォーメーションだからオレが言うことじゃないけど、二塁塁審が(捕球の)判定してくれないと(一塁塁審が判定)、ランナーはわからない」と振り返っている。
脚注
- ↑ “【巨人】長野-ロペスで3度目ライトゴロ”. 日刊スポーツ. (2013年10月2日) . 2018閲覧.
- ↑ 職業野球人 第1回 大沢啓二 スポーツニッポン、2007年4月15日付、2010年10月8日閲覧
- ↑ 公認野球規則2.15では、「捕球」の定義を「手がインフライトの打球、投球または送球を手またはグラブでしっかりと受け止め、かつ、それを確実につかむ行為であって、……野手がボールを受け止めた後、これに続く送球動作に移ってからボールを落とした場合は、捕球と判定される。要するに、野手がボールを手にした後、ボールを確実につかみ、かつ、意識してボールを手放したことが明らかであれば、これを落とした場合でも捕球と判定される。」としており、今回の中谷のプレーは一旦ボールを左手のグラブで受け止めた後、右手で送球しようとボールを持ち替えようとしたところを落球している。すなわち、この時、ボールを右手で確実につかめなかったと判断され、「捕球」とみなされなかった。
- ↑ もし中谷と同様のプレーを内野手が行っていた場合は、故意落球かインフィールドフライの規定が適用される可能性があり、その場合、打者の長野がアウトになるため、フォースの状態は解除され、進塁義務は発生せず、フォースアウトになることはなかった。