バレンツ海
バレンツ海(バレンツかい、Barents Sea)は、北極海のヨーロッパ側の一部である。北西はスバールバル諸島、北東はゼムリャフランツァヨシファ、東はノヴァヤゼムリャ、南はスカンディナヴィア半島(コラ半島を含む)などに囲まれている。最南西部の大湾は白海と呼ばれる。オランダの探検家ウィレム・バレンツにちなんで命名された。東はカラ海、西はノルウェー海に繋がる。
概要
北極圏にあるが、暖流である北大西洋海流の影響がおよぶ海域に面したロシア領ムルマンスク(コラ半島)や、ノルウェー領ヴァードー(ヴァランゲル半島)は、冬でも海面が凍結しない不凍港である[1]。北部や東部、南部の白海付近などは冬季には氷結する。
1500年代、捕鯨や貿易、アジアへの北東航路開拓を目的に、オランダやイギリス、ロシアなどによる航海が行われるようになった。
第二次世界大戦では、援ソ輸送船団の主要な航路として、北極海の戦いの主戦場となった。船団を攻撃するナチス・ドイツの海軍や空軍と、連合国護衛部隊との間で激しい戦いが繰り広げられた。
冷戦時代以降も、ソビエト海軍(ロシア海軍)の北方艦隊やSLBM搭載原子力潜水艦と、それを警戒するNATO諸国の海軍にとって重要な海域となっている。海底には、1988年に事故を起こしたソ連の原潜「コムソモレツ」や、ソ連崩壊後にロシアが海洋投棄した放射性廃棄物が沈んでおり、汚染の懸念がある[2]。
2012年、日本の海洋研究開発機構は、バレンツ海の海氷の分布と日本の気象相関関係に着目、バレンツ海の海氷が少なく、メキシコ湾流の流軸が北の方向に大きくずれる年は、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧がそれぞれ発達しやすくなり、日本とユーラシア大陸がそれぞれ厳冬傾向になる可能性を導き出している[3]。
石油や天然ガスなど海底資源が豊富とされており、後述のとおり40年にわたって係争が続いた。
海域係争
1970年代よりソビエト連邦(現・ロシア)とノルウェーの間で大陸棚を巡る主張が食い違い、係争状態になっていた。2010年9月15日に係争海域の面積をほぼ二等分する形で境界線を引く「バレンツ海と北氷洋における海域画定と協力に関する条約」に調印し、終止符が打たれた[4]。