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− | + | ニュース,意見,特集など,大衆が関心をもつ情報を提供する日刊や週刊などの定期刊行物([[マス・メディア]])。[[号外]]も含まれる。ただし題字があって表紙がないものをさし,表紙がある[[雑誌]]と区別される。[[広告]]もしばしば掲載される。 | |
− | + | 現代の新聞のさきがけとされるものは,古代ローマの壁新聞[[アクタ・ディウルナ]]と,中世末にドイツの[[アウクスブルク]]の豪商[[フッガー家]]が配布した手書きの回報である。イングランドでは,戦争や災害,公的な慶事の話題は時事報道の本や小冊子で伝えられた。1513年の[[フロッドンの戦い]]でのイングランド勝利を目撃したという記事が最古の例である。1600~20年に,[[活字]]で[[印刷]]された定期的新聞がドイツ,イタリア,ネーデルラントで現れた。外国の雑誌記事を集めた「コラント」は,アムステルダムで 1620年に発行され,英語・フランス語にも翻訳された。同じ頃江戸時代の日本では[[瓦版]]が発行された。イギリスでは「コラント」が 1621年にロンドンで刊行され,1640年代に時事解説本が新聞のかたちをとりはじめた。最初の日刊紙は『デーリー・クーラント』(1702~35)であるが,[[議会]]は 1771年まで議事の報道を認めなかった。『[[ロンドン・タイムズ]]』(1785)と『オブザーバー』(1791)が相次いで創刊され,高級紙のモデルとなった。ドイツでは,[[三十年戦争]](1618~48)の影響で新聞の発刊が遅れた。当時のヨーロッパでは[[検閲]]が行なわれたが,1766年スウェーデンで[[報道の自由]]が初めて法律で認められた。フランス最初の日刊紙は『ジュルナル・ド・パリ』(1771)で,第2次世界大戦まで続いた『[[ジュールナル・デ・デバ]]』も 1789年に創刊された。アメリカ合衆国で最初の新聞『パブリック・オカレンシズ』(1690)はボストンで創刊されたが,まもなく植民地総督によって禁止された。1704年,週刊の『ボストン・ニューズレター』が,1719年『ボストン・ガゼット』が創刊された。イギリスの植民地で最初に発行された独立した新聞は『ニュー・イングランド・クーラント』(1721)とされる。1735年中傷記事を掲載したとして逮捕された新聞発行人[[ジョン・ピーター・ゼンガー]]が,事実に基づく批判であったと認められて無罪になった([[ゼンガー事件]])。報道の自由はやがて[[アメリカ合衆国憲法]]の修正第1条(1791)で保障された([[言論の自由]])。 | |
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− | + | 19世紀初頭,発行部数は 5000部以下が普通であったが,自動植字,高速印刷,通信,輸送の技術革新によって大量出版が可能になり,英米の新聞が読者拡大と値下げの先鞭をつけた。『ロンドン・タイムズ』は 1815年の 5000部(1部 7ペンス)から19世紀半ばには 5万部(同 5ペンス)へと部数を伸ばした。1833年,最初の 1ペニー紙として『サン』がニューヨークで創刊された。1835年『[[ニューヨーク・ヘラルド]]』が創刊され,幅広い報道や娯楽性の重視など,近代的な新聞編集を方向づけた。女性の権利擁護と[[奴隷制廃止運動]]を推進した[[ホレス・グリーリー]]は,独立系の『ニューヨーク・トリビューン』(1841)を創刊した。1851年同じく独立系の『[[ニューヨーク・タイムズ]]』が創刊された。19世紀半ばのアメリカでは日刊紙が 400,週刊紙が 3000刊行されていた。ニューヨークでは [[AP]]の前身が組織され(1848),ロンドンではポール・J.ロイターが新聞社向けの海外報道サービスを開始した(1858。[[ロイター]])。ニューヨークの[[ジョーゼフ・ピュリッツァー]](『イブニング・ワールド』)と[[ウィリアム・ランドルフ・ハースト]](『ニューヨーク・ジャーナル』)の競争は,1890年代にスキャンダル記事の氾濫([[イエロー・ジャーナリズム]])とそれへの反発を招いた。一方,西ヨーロッパでは多数の新聞が政治・文学的な[[機関紙]]になった。イギリスの[[アルフレッド・ハームズワース・ノースクリフ]]は 1896年に全国紙『[[デーリー・メール]]』を創刊し,発行部数を増やすために大幅に値下げし,収入の大半を広告で得た。ノースクリフはまた初のタブロイド版『[[デーリー・ミラー]]』を 1903年に導入した。アメリカで最初のタブロイド版は『ニューヨーク・デーリー・ニュース』(1919)でセックスとスキャンダル記事を売り物にした。20世紀初頭,アメリカの新聞発行紙数は頂点に達した(日刊紙 2000以上,週刊紙 1万4000以上)。1920~30年代も競争が続き,複数紙に配給される[[コラムニスト]]やできあいの特集の利用が増え,まんがや[[クロスワードパズル]]などの娯楽が発達した。最初の新聞チェーンが[[エドワード・ウィリス・スクリップス]]により 1890年代に組織され,アメリカの日刊紙の半数が約 10の大新聞チェーンに支配されるようになった。20世紀後半には世界中で統合と合併がみられた。 | |
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− | + | 日本では幕末に最初の民間新聞『[[海外新聞]]』が創刊され,慶応4(1868)年には本格的な『[[中外新聞]]』が発行,明治になって最初の日刊紙『横浜毎日新聞』([[東京横浜毎日新聞]]),『[[東京日日新聞]]』『[[郵便報知新聞]]』など,のちの有力紙が相次いで創刊された。 | |
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− | [[ | + | 通商,民族,宗教などの利益団体向けに編集された新聞も多数存在する。2004年現在,アメリカでは 1486紙,イギリスでは 109紙,ドイツでは 347紙,フランスでは 101紙,ロシアでは 250紙,日本では 108紙の日刊紙が発行された。国際的なニュースの多くは,ロイター,AP,[[UPI]],[[AFP]]といった[[通信社]]を通じて配給される。([[ジャーナリズム]]) |
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2018/9/1/ (土) 08:30時点における最新版
新聞(しんぶん)
ニュース,意見,特集など,大衆が関心をもつ情報を提供する日刊や週刊などの定期刊行物(マス・メディア)。号外も含まれる。ただし題字があって表紙がないものをさし,表紙がある雑誌と区別される。広告もしばしば掲載される。
現代の新聞のさきがけとされるものは,古代ローマの壁新聞アクタ・ディウルナと,中世末にドイツのアウクスブルクの豪商フッガー家が配布した手書きの回報である。イングランドでは,戦争や災害,公的な慶事の話題は時事報道の本や小冊子で伝えられた。1513年のフロッドンの戦いでのイングランド勝利を目撃したという記事が最古の例である。1600~20年に,活字で印刷された定期的新聞がドイツ,イタリア,ネーデルラントで現れた。外国の雑誌記事を集めた「コラント」は,アムステルダムで 1620年に発行され,英語・フランス語にも翻訳された。同じ頃江戸時代の日本では瓦版が発行された。イギリスでは「コラント」が 1621年にロンドンで刊行され,1640年代に時事解説本が新聞のかたちをとりはじめた。最初の日刊紙は『デーリー・クーラント』(1702~35)であるが,議会は 1771年まで議事の報道を認めなかった。『ロンドン・タイムズ』(1785)と『オブザーバー』(1791)が相次いで創刊され,高級紙のモデルとなった。ドイツでは,三十年戦争(1618~48)の影響で新聞の発刊が遅れた。当時のヨーロッパでは検閲が行なわれたが,1766年スウェーデンで報道の自由が初めて法律で認められた。フランス最初の日刊紙は『ジュルナル・ド・パリ』(1771)で,第2次世界大戦まで続いた『ジュールナル・デ・デバ』も 1789年に創刊された。アメリカ合衆国で最初の新聞『パブリック・オカレンシズ』(1690)はボストンで創刊されたが,まもなく植民地総督によって禁止された。1704年,週刊の『ボストン・ニューズレター』が,1719年『ボストン・ガゼット』が創刊された。イギリスの植民地で最初に発行された独立した新聞は『ニュー・イングランド・クーラント』(1721)とされる。1735年中傷記事を掲載したとして逮捕された新聞発行人ジョン・ピーター・ゼンガーが,事実に基づく批判であったと認められて無罪になった(ゼンガー事件)。報道の自由はやがてアメリカ合衆国憲法の修正第1条(1791)で保障された(言論の自由)。
19世紀初頭,発行部数は 5000部以下が普通であったが,自動植字,高速印刷,通信,輸送の技術革新によって大量出版が可能になり,英米の新聞が読者拡大と値下げの先鞭をつけた。『ロンドン・タイムズ』は 1815年の 5000部(1部 7ペンス)から19世紀半ばには 5万部(同 5ペンス)へと部数を伸ばした。1833年,最初の 1ペニー紙として『サン』がニューヨークで創刊された。1835年『ニューヨーク・ヘラルド』が創刊され,幅広い報道や娯楽性の重視など,近代的な新聞編集を方向づけた。女性の権利擁護と奴隷制廃止運動を推進したホレス・グリーリーは,独立系の『ニューヨーク・トリビューン』(1841)を創刊した。1851年同じく独立系の『ニューヨーク・タイムズ』が創刊された。19世紀半ばのアメリカでは日刊紙が 400,週刊紙が 3000刊行されていた。ニューヨークでは APの前身が組織され(1848),ロンドンではポール・J.ロイターが新聞社向けの海外報道サービスを開始した(1858。ロイター)。ニューヨークのジョーゼフ・ピュリッツァー(『イブニング・ワールド』)とウィリアム・ランドルフ・ハースト(『ニューヨーク・ジャーナル』)の競争は,1890年代にスキャンダル記事の氾濫(イエロー・ジャーナリズム)とそれへの反発を招いた。一方,西ヨーロッパでは多数の新聞が政治・文学的な機関紙になった。イギリスのアルフレッド・ハームズワース・ノースクリフは 1896年に全国紙『デーリー・メール』を創刊し,発行部数を増やすために大幅に値下げし,収入の大半を広告で得た。ノースクリフはまた初のタブロイド版『デーリー・ミラー』を 1903年に導入した。アメリカで最初のタブロイド版は『ニューヨーク・デーリー・ニュース』(1919)でセックスとスキャンダル記事を売り物にした。20世紀初頭,アメリカの新聞発行紙数は頂点に達した(日刊紙 2000以上,週刊紙 1万4000以上)。1920~30年代も競争が続き,複数紙に配給されるコラムニストやできあいの特集の利用が増え,まんがやクロスワードパズルなどの娯楽が発達した。最初の新聞チェーンがエドワード・ウィリス・スクリップスにより 1890年代に組織され,アメリカの日刊紙の半数が約 10の大新聞チェーンに支配されるようになった。20世紀後半には世界中で統合と合併がみられた。
日本では幕末に最初の民間新聞『海外新聞』が創刊され,慶応4(1868)年には本格的な『中外新聞』が発行,明治になって最初の日刊紙『横浜毎日新聞』(東京横浜毎日新聞),『東京日日新聞』『郵便報知新聞』など,のちの有力紙が相次いで創刊された。
通商,民族,宗教などの利益団体向けに編集された新聞も多数存在する。2004年現在,アメリカでは 1486紙,イギリスでは 109紙,ドイツでは 347紙,フランスでは 101紙,ロシアでは 250紙,日本では 108紙の日刊紙が発行された。国際的なニュースの多くは,ロイター,AP,UPI,AFPといった通信社を通じて配給される。(ジャーナリズム)
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