水槽の脳
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水槽の脳(すいそうののう、brain in a vat)とは、「あなたが体験しているこの世界は、実は水槽に浮かんだ脳が見ているバーチャルリアリティなのではないか」、という仮説。哲学の世界で多用される懐疑主義的な思考実験で、1982年哲学者ヒラリー・パトナムによって定式化された。正しい知識とは何か、意識とはいったい何なのか、といった問題、そして言葉の意味や事物の実在性といった問題を議論する際に使用される。水槽の中の脳、培養槽に浮かぶ脳、桶(おけ)の中の脳、水槽脳仮説などと訳される。
内容
ある科学者が人から脳を取り出し、脳が死なないような特殊な成分の培養液で満たした水槽に入れる。脳の神経細胞を、電極を通して脳波を操作できる非常に高性能なコンピュータにつなぐ。意識は脳の活動によって生じるから、水槽の脳はコンピュータの操作で通常の人と同じような意識が生じよう。実は、現実に存在すると思っている世界は、このような水槽の中の脳が見ている幻覚ではなかろうか?
参考文献
- ヒラリー・パトナム "Reason, Truth, and History" chapter 1, pp. 1-21 Cambridge University Press (1982) ISBN 0521297761 オンラインペーパー
- 戸田山和久 『知識の哲学』 91-108頁 産業図書 2002年 ISBN 4-7828-0208-0
関連文献
日本語のオープンアクセス文献
- 神山 和好 「水槽の中の脳型懐疑論を論駁する」 科学基礎論研究 Vol.32, No.1(2004) pp.31-38
- 水谷 雅彦 「バーチャルリアリティは「悪」か(pdf)」 哲学 Vol. 2009 (2009) , No. 60 pp.67-82_L5
- 星新一 「これからの出来事」 - 水槽の脳を題材にした短編小説。
関連項目
- 胡蝶の夢 - 荘子の説話
- 邯鄲の枕 - 沈既済の故事
- 洞窟の比喩
- ルネ・デカルト
- 独我論
- マトリックス (映画)
- シミュレーテッドリアリティ
- ブレイン・マシン・インタフェース
外部リンク
- テンプレート:IEP
- Brains in a vat (英語) - スタンフォード哲学百科事典「水槽の脳」の項目。
- テンプレート:PhilP
- サイト「ザ・マトリックス」内:項目「形而上学としてのマトリックス」 - 心の哲学者デイヴィッド・チャーマーズが 映画『マトリックス』について哲学的に解説したエッセイ。映画の主人公ネオの置かれている立場が、実質的に水槽内の脳と同等であることが論じられている。