平安大将棋(へいあんだいしょうぎ)は、将棋の一種であり、二人で行なうボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。
1120年頃の書とされる習俗辞典『二中歴』に平安将棋とともに掲載されている将棋である。この中では単なる「大将棋」という名前であるが、後の15×15マスの大将棋と区別してこう呼ばれる。
二中歴の記述
『二中歴』の「第十三 博棊歴」には、以下のような大将棋の記述がある。
又大将棊十三間云 玉将各住一方中 金将在脇 銀将在金之次 次有銀将 次有銅将 次有鐵将 次有香車 銅将不行四隅 鐵将不行後三方 又横行在王之頂方 行前一歩左右不云多少 又有猛虎在銀之頂 行四角一歩 飛龍在桂馬之上 行四隅超越 奔車在香車之頂 行前後不云多少 注人在中心歩兵之頂 行前後如是 一方如此行方准之
読み下すと以下のようになる。銀将の記述が重複しており、桂馬の記述が抜けている。「玉将各住一方中」から双玉であったと読み取れる一方で、「玉将」と「王」が混在していることから、玉将と王将の区別があったとも取れる。
また、大将棋十三間にいわく、玉将はおのおの一方の中に住(じゅう)し、金将は脇にあり、銀将は金の次にあり。次に銀将あり、次に銅将あり、次に鉄将あり。次に香車あり、銅将は四隅に行かず、鉄将は後ろ三方に行かず。また、横行は王の頂方にあり。前一歩に行き、左右は多少をいわず。また、猛虎あり、銀の頂にあり、四角一歩に行く。飛龍は桂馬の上にあり、四隅に行き超越す。奔車は香車の頂にあり、前後に行くこと多少をいわず。注人は中心歩兵の頂にあり、前後に行くこと是のごとし。一方此のごとく行方是に準ぜよ。
ルール
基本ルール
- 縦横13マスずつに区切られた将棋盤の上で行う。
- 駒は、平安将棋の6種類に銅将・鉄将・横行・猛虎・飛龍・奔車・注人を加えた13種類あり、それぞれ動きが決まっている。なお中将棋・大将棋と同じ名前の駒もあるが、全て動きが異なる。
- 平安将棋の記述に準じ、敵陣3段目に入れば玉将・金将以外のどの駒も金将に成れる[3]。
- 本将棋とは違い、取った駒を自らの持ち駒にはできない。
- 本将棋と同様に敵の玉将を詰ますと勝ちとなるが、敵を玉将だけにしても勝ちである。
初期配置図
通説
現在一般的な説での初期配置図である。
▽香車 |
▽桂馬 |
▽鉄将 |
▽銅将 |
▽銀将 |
▽金将 |
▽玉将 |
▽金将 |
▽銀将 |
▽銅将 |
▽鉄将 |
▽桂馬 |
▽香車
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▽奔車 |
▽飛龍 |
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▽猛虎 |
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▽横行 |
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▽猛虎 |
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▽飛龍 |
▽奔車
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▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵
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▽注人 |
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▲ 注人 |
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▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵 |
▲ 歩兵
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▲ 奔車 |
▲ 飛龍 |
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▲ 猛虎 |
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▲ 横行 |
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▲ 猛虎 |
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▲ 飛龍 |
▲ 奔車
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▲ 香車 |
▲ 桂馬 |
▲ 鉄将 |
▲ 銅将 |
▲ 銀将 |
▲ 金将 |
▲ 玉将 |
▲ 金将 |
▲ 銀将 |
▲ 銅将 |
▲ 鉄将 |
▲ 桂馬 |
▲ 香車
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新説
上の初期配置が不自然であるとして、最近新たに提唱されたもの。
▽香車 |
▽桂馬 |
▽鉄将 |
▽銅将 |
▽銀将 |
▽金将 |
▽玉将 |
▽金将 |
▽銀将 |
▽銅将 |
▽鉄将 |
▽桂馬 |
▽香車
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▽奔車 |
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▽猛虎 |
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▽猛虎 |
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▽奔車
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▽飛龍 |
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▽横行 |
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▽飛龍 |
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▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵
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▽注人 |
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▲注人 |
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▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵
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▲飛龍
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▲横行 |
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▲飛龍 |
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▲奔車 |
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▲猛虎 |
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▲猛虎 |
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▲奔車
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▲香車 |
▲桂馬 |
▲鉄将 |
▲銅将 |
▲銀将 |
▲金将 |
▲玉将 |
▲金将 |
▲銀将 |
▲銅将 |
▲鉄将 |
▲桂馬 |
▲香車
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駒の動き
平安将棋と共通している玉将・金将・銀将・桂馬・香車・歩兵は省略。
元の駒
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動き
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成駒
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動き
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銅将(どうしょう)
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四隅に行けない。
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金将(きんしょう)
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斜め下二方に行けない。
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鉄将(てつしょう)
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後ろ三方に行けない。
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横行(おうぎょう)
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縦には前一歩、左右にはいくらでも行ける。
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猛虎(もうこ)
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四隅に一歩行ける。
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飛龍(ひりゅう)
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四隅に飛んで行ける。
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奔車(はんしゃ)
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前後にいくらでも行ける。
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注人(ちゅうにん)
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前後に一歩ずつ行ける。
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飛龍の動きについては、通説では上の表のように現代将棋の角行と同じ動きであるが、「斜めに1マス飛んで2マス目に進む」という説も最近提唱されている。
関連項目
脚注
- ↑ ただし、岩手県平泉町の志羅山遺跡の第88次発掘において、表裏とも「飛龍」と読める駒状の木片が出土している(『天童の将棋駒と全国遺跡出土駒』2003年、天童市将棋資料館。2002年平泉町教育委員会発行の資料を参考にしたとある)。
参考文献
- 1318-1339、「第十三 博棊歴」、『二中歴』尊経閣善本影印集成、3、 (原著1220-1221) ISBN 4-8406-2316-3 p. 118。
- 水野 和雄、1998、「輸入された娯楽」、大塚初重(編)『芸術・学芸とあそび』12、 〈考古学による日本歴史〉 ISBN 4-639-01497-X pp. 166-178。