平安将棋(へいあんしょうぎ)は、将棋の一種であり、二人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。
1120年頃の書とされる習俗辞典二中歴に平安大将棋とともに掲載されている将棋である。この中では単なる「将棋」という名前であるが、後の小将棋や現代の本将棋と区別してこう呼ばれる。
二中歴の記述
『二中歴』の「第十三 博棊歴」には、以下のような将棋の記述がある。
- 将棊 棊一作騎
- 玉将八方得自在 金将不行下二目 銀将不行左右下
- 桂馬前角超一目 香車先方任意行 歩兵一方不他行
- 入敵三目皆成金 敵玉一将則為勝
(二中歴3 第十一~第十三(尊経閣善本影印集成)ISBN 4-8406-2316-3 P.118 より引用)
ルール
※文献にしか載っていないものであるため、当時の正確なルールであるとは限らない。
基本ルール
- 将棋盤の上で行う。将棋盤の大きさは縦横8マスずつ[1]、縦8マス・横9マス、縦横9マスずつの諸説があるが正確なことはわかっていない。
- 駒は、玉将(玉)・金将(金)・銀将(銀)・桂馬(桂)・香車(香)・歩兵(歩)の6種類あり、それぞれ動きが決まっている。
- 敵陣に関する記述はないが、おそらく相手から見て3段目までに入れば玉将と金将以外のどの駒も金将に成れる。
- 本将棋とは違い、捕獲した駒を自らの持ち駒にはできないと考えられている。持ち駒が使用できるルールも存在したとする説もある。
- 本将棋と同様に敵の玉将を詰めると勝ちとなるが、敵を玉将だけにしても勝ちである。
初期配置図
以下のいずれかであったか、時代が下るとともに盤の大きさも変化していったと考えられる。
縦横8マスずつと仮定した場合
▽香車 |
▽桂馬 |
▽銀将 |
▽金将 |
▽玉将 |
▽銀将 |
▽桂馬 |
▽香車
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▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵
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▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵
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▲香車 |
▲桂馬 |
▲銀将 |
▲玉将 |
▲金将 |
▲銀将 |
▲桂馬 |
▲香車
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縦8マス・横9マスと仮定した場合
▽香車 |
▽桂馬 |
▽銀将 |
▽金将 |
▽玉将 |
▽金将 |
▽銀将 |
▽桂馬 |
▽香車
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▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵
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▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵
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▲香車 |
▲桂馬 |
▲銀将 |
▲金将 |
▲玉将 |
▲金将 |
▲銀将 |
▲桂馬 |
▲香車
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縦横9マスずつと仮定した場合
現代の本将棋から飛車と角行を除いたものである。
▽香車 |
▽桂馬 |
▽銀将 |
▽金将 |
▽玉将 |
▽金将 |
▽銀将 |
▽桂馬 |
▽香車
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▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵 |
▽歩兵
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▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵 |
▲歩兵
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▲香車 |
▲桂馬 |
▲銀将 |
▲金将 |
▲玉将 |
▲金将 |
▲銀将 |
▲桂馬 |
▲香車
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駒の動き
現代の本将棋に同じ。ただし、取った駒は使えないので、成銀・成桂・成香・と金の区別はなく、すべて金将になったと考えられる。
元の駒
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動き
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成駒
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動き
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玉将(ぎょくしょう)
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全方向に1マス動ける。
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-
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-
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-
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金将(きんしょう)
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縦横と斜め前に1マス動ける。
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-
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-
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-
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銀将(ぎんしょう)
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前と斜めに1マス動ける。
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金将(きんしょう)
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縦横と斜め前に1マス動ける。
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桂馬(けいま)
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前へ2、横へ1の位置に移動できる。その際、駒を飛び越えることができる。
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香車(きょうしゃ)
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前方に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
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歩兵(ふひょう)
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前に1マス動ける
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脚注
- ↑ 観戦記者・天狗太郎(山本亨介)は「8×8説、玉(王)が左、金将は右(チェス女王のように向かい合わず)、歩兵の初期配置は二段目で成りも二段目、行き処の無い歩香桂でない限り不成も可」説を採り(『将棋庶民史』ほか)、棋士・飯田弘之はノーマルな「8×8説」(本文2.2の[初期配置図・1縦横8マスずつと仮定した場合]、成りは三段目で不成も可)説を採る(『遊戯史研究』11号ほか)
関連項目