大隅萬里子

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大隅 萬里子(おおすみ まりこ)は、日本生物学者分子生物学細胞生物学)。学位博士。「萬」が常用漢字表に収録されていないため、報道等では大隅 万里子(おおすみ まりこ)と表記される場合もある。

西東京科学大学理工学部助教授帝京科学大学理工学部助教授、帝京科学大学理工学部教授などを歴任した。

概要

東京都出身の分子生物学者、および、細胞生物学者である。西東京科学大学帝京科学大学において教鞭を執った[1]酵母環境応答についての研究や、酵母に対する抗生物質の影響についての研究が知られている[2]。また、である大隅良典水島昇らと共同で酵母の自食作用について研究し[1]オートファジーメカニズムを明らかにした。この研究業績は、良典のノーベル生理学・医学賞の受賞に寄与したことでも知られている[1]

来歴

生い立ち

東京都調布市にある桐朋女子高等学校を卒業した[3]東京都立大学に進学し、理学部にて生物学を学んだ。1969年に東京都立大学を卒業した。大学卒業後は、東京大学大学院に進学し、理学系研究科にて相関理化学を学んだ。また、大学院の同じ研究室で学んでいた大隅良典と知り合い、互いに大学院生のまま結婚した[4][5]1971年、東京大学の大学院における修士課程を修了した。

研究者として

1990年西東京科学大学が開学すると、理工学部にて教鞭を執った[1]。理工学部においては、主としてバイオサイエンス学科講義を担当した[1]1996年に西東京科学大学は帝京科学大学に改組されたが、引き続き理工学部にて教鞭を執った[1]。なお、理工学部では助教授を務めていたが[2]、のちに教授に昇任した[1]。なお、帝京科学大学ではバイオテクノロジー研究センターにも籍を置き、安楽泰宏とともに酵母を用いて真核細胞の未知の機能を解明する研究に従事した[6]。また、岡崎国立共同研究機構が設置・運営する基礎生物学研究所とともに、酵母をモデルとするオートファジーの共同研究に従事した[1]2004年に帝京科学大学を退職した[1]

研究

専門は生物学であり、特に分子生物学細胞生物学といった分野の研究に取り組んだ。研究の主題として酵母を取り上げることが多く[7]、「小さな生き物から大きなテーマを産み出すことこそバイオ研究の醍醐味であろう」[2]と述べている。具体的には、酵母の環境応答についての研究と[2]、酵母と抗生物質との関係についての研究を[2]、それぞれライフワークとしていた。酵母の環境応答に関しては、である大隅良典らとともに酵母のオートファジーについて共同で研究した[1]。その成果を『ネイチャー』で発表した際にも、論文の共同執筆者として名を連ねている[1][8][9]。このオートファジーについての研究業績は高く評価され、のちに良典のノーベル生理学・医学賞受賞に繋がった[1]。そのほか、石浦章一大野茂男らとともに『生化学』を上梓するなど[10]、専門書や学術書の執筆にもあたっていた。

また、学術団体としては、日本細胞生物学会、日本分子生物学会などに所属した。

家族・親族

系譜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大隅芳雄
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大隅和雄
 
大隅清陽
 
 
 
 
 
長沼賢海
 
賢海の娘
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大隅良典
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
大隅萬里子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
萬里子の姉
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
吉田賢右
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  • 係累縁者が多いため、大隅萬里子の親族に該当する著名人のみ氏名を記載した。

略歴

著作

共著

主な寄稿、分担執筆、講演録、等

  • 大隅萬里子ほか「メチオニル-tRNA合成酵素――酵素と基質の相互作用」『蛋白質核酸酵素』16巻11号、共立出版1971年10月、993-999頁。ISSN 0039-9450{{#invoke:check isxn|check_issn|0039-9450|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}
  • 大隅万里子「RNAファージQβのreplicase」『化学と工業』25巻12号、日本化学会1972年12月、845-846頁。ISSN 0022-7684{{#invoke:check isxn|check_issn|0022-7684|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}
  • 中島捷久信沢枝里・大隅万里子「インフルエンザウイルスの遺伝子とその機能発現」『生化学』57巻5号、1985年5月、371-387頁。ISSN 0037-1017{{#invoke:check isxn|check_issn|0037-1017|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}
  • 大隅萬里子「酵母を大学の実験教材とする試み」『遺伝』46巻7号、裳華房1992年7月、74-79頁。ISSN 0387-0022{{#invoke:check isxn|check_issn|0387-0022|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}
  • 大隅良典・大隅万里子・馬場美鈴「酵母における自食作用の発見――飢餓によって誘導されるオルガネラ」『蛋白質核酸酵素』38巻1号、共立出版、1993年1月、46-52頁。ISSN 0039-9450{{#invoke:check isxn|check_issn|0039-9450|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}
  • 水島昇ほか「オートファジーに必須な新しいprotein conjugationシステム」『日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集』21巻、1998年12月1日、220頁。
  • 山形史ほか「AAA型ATPase・SKD1は初期エンドソームの構造と機能を制御する」『日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集』21巻、1998年12月1日、302頁。
  • 水島昇ほか「オートファジーに必須な新しいprotein conjugationシステム」『日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集』21巻、1998年12月1日、459頁。
  • 吉原隆ほか「NADP-依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼのラット肝臓および腎臓における局在」『電子顕微鏡』35巻、2000年5月1日、153頁。ISSN 0417-0326{{#invoke:check isxn|check_issn|0417-0326|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}}

主な論文

  • Mariko Ohsumi, Gerald F. Vovis and Norton D. Zinder, "The isolation and characterization of an in vivo recombinant between the filamentous bacteriophage f1 and the plasmid pSC101", Virology, Vol.89, Iss.2, September, 1978, pp.438-449.
  • Mariko Ohsumi, et al., "Nucleotide Sequence of the Regulatory Region of malB Operons in E. coli", Journal of Biochemistry, Vol.94, Iss.1, 1983, pp.243-247.
  • Mariko Ohsumi, et al., "Identity of calcium-activated neutral proteases from rabbit cardiac and skeletal muscle", Comparative Biochemistry and Physiology Part B: Comparative Biochemistry, Vol.79, Iss.4, 1984, pp.643-646.
  • Noboru Mizushima, et al., "A protein conjugation system essential for autophagy", Nature, Vol.395, September 24, 1998, pp.395-398.
  • Yoshinobu Ichimura, et al., "A ubiquitin-like system mediates protein lipidation", Nature, Vol.408, November 23, 2000, pp.488–492.

脚注

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 「大隅萬里子教授の共同研究がノーベル医学・生理学賞として選定されました」『大隅萬里子教授の共同研究がノーベル医学・生理学賞として選定されました | ニュース | ニュース | 帝京科学大学帝京科学大学2016年10月5日
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 大隅萬里子「酵母はモデル生物――酵母から生命の仕組みをみる」『TUSTニューズレター』1巻2号、帝京科学大学1998年、2頁。
  3. 「今までの講演会」『桐朋会主催講演会|活動報告|桐朋会』桐朋会事務局。
  4. 「ノーベル賞大隅さん、夫婦で会見――偉業達成『妻が支え』」『東京新聞:ノーベル賞大隅さん、夫婦で会見 偉業達成「妻が支え」:社会(TOKYO Web)中日新聞社2016年10月4日
  5. 「『ありがとうしかない』――大隅さん夫妻会見」『「ありがとうしかない」 大隅さん夫妻会見  :日本経済新聞日本経済新聞社2016年10月4日
  6. 「第3プロジェクト――酵母を用いた未知の真核細胞機能の解明」『TUST-BioTech RC 第3プロジェクト帝京科学大学バイオテクノロジー研究センター
  7. 大隅萬里子「酵母からヒトの身体の仕組みをみる」『TUST-BioTech RC帝京科学大学バイオテクノロジー研究センター2000年4月17日
  8. Noboru Mizushima, et al., "A protein conjugation system essential for autophagy", Nature, Vol.395, September 24, 1998, pp.395-398.
  9. Yoshinobu Ichimura, et al., "A ubiquitin-like system mediates protein lipidation", Nature, Vol.408, November 23, 2000, pp.488–492.
  10. 鈴木紘一編、石浦章一ほか著『生化学』2版、東京化学同人2007年

関連人物

関連項目

外部リンク


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