ボストンマラソン
ボストンマラソン | |
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開催時期 | 4月第三月曜日 |
開催地 | ボストン |
コース | 公道コース |
距離 | マラソン |
創立 | 1897年 |
最高記録 |
男子: 2:03:02(2011年) ジョフリー・ムタイ 女子: 2:18:57(2014年) リタ・ジェプトゥー |
公式サイト | www.bostonmarathon.org |
ボストンマラソン(英語: Boston Marathon)は、毎年4月の第三月曜日、Patriot's Dayにアメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンで開催される、国際陸上競技連盟(IAAF)ゴールドラベルのマラソン大会であり[1]、ワールドマラソンメジャーズの一つである[2]。参加には資格タイムを満たしている必要があるため、「選ばれしもののマラソン」と称され、完走者の平均タイムがワールドマラソンメジャーズの中でも抜きん出て速く、大半が4時間未満でゴールする。1897年に創始された[3]、近代オリンピックに次いで歴史の古いスポーツ大会の一つである。
Contents
由来
アメリカ独立戦争が開戦した4月19日を「愛国者の日」とし、それを記念して第一回が開催された[4]歴史を受け継ぎ、現在も例年4月の第三月曜日の愛国者の日に開催されている。
コース
周回や往復ではなく、マサチューセッツ州の8つの市や町を通り抜けるかたちでスタート地点とゴール地点を結ぶコースである[5]。下り基調でスタートしながら、いくつかの上りがあり、特に30km過ぎの「心臓破りの坂」と呼ばれる上り坂(4つあるニュートンヒルズの最後の坂)は、単独の高度上昇量は他のワールドマラソンメジャーズと比較して特に大きくはないものの、走行距離的に身体への負担が実感される地点と重なっていることもあり、難所とされる。
参加
ボストンマラソン 申込資格タイム[6] (2013年大会より適用) | ||
年齢 | 男子 | 女子 |
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18–34 | 3時間 5分 | 3時間 35分 |
35–39 | 3時間 10分 | 3時間 40分 |
40–44 | 3時間 15分 | 3時間 45分 |
45–49 | 3時間 25分 | 3時間 55分 |
50–54 | 3時間 30分 | 4時間 0分 |
55–59 | 3時間 40分 | 4時間 10分 |
60–64 | 3時間 55分 | 4時間 25分 |
65–69 | 4時間 10分 | 4時間 40分 |
70–74 | 4時間 25分 | 4時間 55分 |
75–79 | 4時間 40分 | 5時間 10分 |
80+ | 4時間 55分 | 5時間 25分 |
近年のボストンマラソンの応募資格は、18歳以上で、大会主催者の定める期間中に、国際陸上競技連盟(IAAF)またはその協力団体国際マラソン・ロードレース協会(AIMS)または各国の公式陸上競技連盟による公認マラソン大会において、規定水準以上のタイムを記録することである。応募者が、どの大会でどれだけのネットタイムを達成したかを申込時に申請すると、主催者側がこの記録タイムの真正さを検証した後、正式に申し込みを受諾するというシステムを採用している[7]。このため、BQ(ボストン・クオリファイ=ボストンマラソンの資格要件を満たすこと)は、それ自体が世界の市民ランナーの目標にもなっている。
2010年の申し込みでは、20,000人の資格ランナー枠が数時間で埋まってしまったため、2013年大会に向けて申し込み方式の改革が実施された。現在は、申込資格タイムよりも20分以上速い記録を持つランナーが最初の期間に申し込みをすることができ、次の期間に10分以上速い記録を持つランナーが、また次の期間に5分以上速い記録を持つランナーが申し込みをすることができる、というように、速いランナーから順に出走資格が与えられるローリング方式が採用されている。申込資格タイムを満たすが、それより5分以上速くはないランナーは、さらにその後の期間に申し込みができ、その中でも速い順に、定員付近まで受付が行われる[8]。
例えば、2015年大会の受け入れは、ほぼすべての年齢カテゴリーで定員を超えたため、3時間5分00秒が資格タイムである男子34歳以下のカテゴリーでは3時間3分58秒で足切り、というふうに、80歳以上を除く全カテゴリーで資格タイムマイナス1分2秒における足切りを行い[9]、世代間の公平をはかっている。
さらに、2013年大会からは、申込資格タイムが各年齢グループにおいて5分ずつ短縮され、また、それまで許されていた59秒の「おまけ」も廃止されたので、実質的に5分59秒資格が厳しくなった[10]。
資格要件の例外は、協賛団体、チャリティー団体[11]、スポンサー、海外からの旅行ツアーなどの商業枠、地元ランニングクラブなどで、全参加者の約5分の1はこの枠での参加とされる。
参考⇒ほかの世界の大規模マラソン:ニューヨークシティマラソン、シカゴマラソン、ロンドンマラソン、ベルリンマラソン、パリマラソン、東京マラソン
距離
Boston Athletic Association のウェブサイト[12]に基づく。
- 1897年から1923年は39.429km、1924年から1926年は42.034km、1927年から1950年は42.195km、1951年から1956年は41.360km、1957年からは42.195km
記録の扱い
1927年に距離が42.195kmとされてからは、(のちに距離不足が判明した年度を除いて)レース時点での世界最高記録を上回った優勝者のタイムは世界最高記録として扱われてきた。しかし、2004年1月にIAAF(国際陸上競技連盟)が、マラソン記録の公認のために設定したコース条件(ゴール地点の標高がスタート地点の標高より42.195m以上低くなってはならない、スタートからゴールまでの直線距離は21.0975km以下など)を満たしていないため、同年以降は世界記録を超えても国際陸連公認の「世界記録」とは認められなくなった。2011年の大会でジョフリー・ムタイが出した2時間3分2秒のタイム(当時の世界記録を上回る)も、ボストンマラソンの記録ではあるが、世界記録としては扱われていない。 なお、国際陸連公認記録とならない大会は、ワールドマラソンメジャーズ全6大会のうちボストンマラソンだけである。
優勝者への栄典
優勝賞金は15万ドル(2018年時点)[13]。
優勝者は優勝年から50年後の大会に招待される。レースに参加することも可能である。日本人の例では、参加した場合には優勝年と同じ数字のゼッケンが与えられる[14]。
日本人参加選手
日本人では、瀬古利彦が2回優勝している(1981年・1987年)。このほかの日本人優勝者としては、
- 田中茂樹(1951年) 2:27:45
- 山田敬蔵(1953年) 2:18:51
- 浜村秀雄(1955年) 2:18:22
- 重松森雄(1965年) 2:16:33
- 君原健二(1966年) 2:17:11 - 当大会では1位から4位までを日本人選手が独占した[15]
- 采谷義秋(1969年) 2:13:49
- 川内優輝(2018年) 2:15:58[13]
がいる。このうち、田中・山田・浜村の走ったコースは後に距離不足が判明し、いずれも記録抹消の憂き目を見ている。山田の記録は当時世界最高記録とアナウンスされていた。世界選手権優勝・オリンピック入賞の谷口浩美は1993年に出場し4位となっている。
女子日本選手の優勝はまだない(過去最高順位は1992年に出場した山本佳子の2位)。ただし、日本出身で米国籍を取得したゴーマン美智子が1974年と1977年に優勝している。
前記の「50年後の優勝者招待」は、2016年現在、資格を満たした4人がその栄に浴している(浜村秀雄は50年に到達する前に逝去)。田中茂樹は2001年にボストンマラソン前日の交流レースに出場。山田敬蔵は2003年にフルマラソンに出場、4時間10分11秒で70歳以上の部で5位であった。山田は1995年から毎年出場しており、2007年までに17回出場、1998年から2001年まで70歳以上の部を4連覇している。2015年の重松森雄は、心臓疾患を抱えるなどの事情から、レース2日前に実施された5kmのファンランに参加した[16]。2016年には君原健二がフルマラソンに出場、4時間53分14秒で完走した[14]。
歴代優勝者
その他の出来事
2013年の爆弾テロ事件
- 参照: ボストンマラソン爆弾テロ事件
2013年のボストンマラソンでは、スタートから4時間を過ぎた頃にゴール付近で爆弾テロ事件が発生し、大会が途中で打ち切られた。なお、トップアスリートの部はすでに終了しており、公式記録に残る。
女子の参加をめぐって
ボストンマラソンは、世界の大きなマラソンで初めて女子の参加を認めた大会であるが、決して簡単に実現したものではなかった。1960年代まで、女性がマラソンを走ることは生理的に困難であるという見解が陸上競技の関係者の間でもごく当たり前に語られていた。そうした中、女性の権利拡張運動とも相まって、ボストンマラソンへの参加を求める女性が出現したが、主催者側はこれを拒否した。1966年、ロベルタ・ギブ(通称ボビー・ギブ)が初めてレースを完走したが、主催者側は未登録参加のギブを「同時刻に同じコースを走った通行人」として記録を認めなかった[18]。翌1967年にはキャサリン・スウィッツァーが性別を悟られないように"K.V.スウィッツァー”というイニシャルで登録してレースに強行参加。主催者側は出場を認めていないとして彼女を排除しようとしたが、他の男性ランナーに守られてゴールにたどり着いた[18]。1968年からは主催者側も女性が走ることを黙認するようになり、1969年には女子トップでゴールしたサラ・バーマンを「女子優勝者」と認定した[18]。そして、アメリカで公式に女性のマラソン記録が認められるようになった1972年の大会から、正式に女子の参加が認められるようになった。前記の歴代優勝者のリストにおいて、1966年から1971年までの欄に「(非公式)」という但し書きがあるのはこのためである。
1980年の女子優勝者
1980年の大会では女子の先頭を切ってゴールしたのは、ロージー・ルイーズという選手であった(タイムは2時間31分56秒)。しかし、レース途中で彼女を見ていないという複数の証言や、ゴールしたときに彼女のウェアにほとんど汗がついていなかったこと、またゴール800m手前の地点で、群衆の中から彼女が飛び出してきたという目撃証言などから、主催者側は彼女が途中で何らかの方法で近道をしたと判断し、失格とした[19](なお、彼女は前年のニューヨークシティマラソンにも参加しているが、その際にも彼女が地下鉄に乗っていたという証言があった)。代わってカナダのジャクリーヌ・ガローが優勝者となった。こうしたマラソンの「キセル」は、1904年のセントルイスオリンピックでも起きているが(アメリカのフレッド・ローツによるもの)、草創期ならともかく現代のマラソンでこうした事件が起きたことは多くの人を驚かせた。
宇宙からの参加者
2007年に行われた大会では、国際宇宙ステーションに滞在中の女性宇宙飛行士、スニータ・ウィリアムズが参加した。NASAを通じて電子メールで送られた14000番のゼッケンをつけてトレッドミルで42.195kmを4時間24分で完走。宇宙からのマラソン大会への正式参加は史上初めて。
スポンサー
1984年から1991年まで8年間、リコーがスポンサーを務めていたが、スポンサー料が高くなりすぎたため、スポンサーをやめ、シットゴーがスポンサーとなったが、優勝賞金は5万5000ドルから3万ドルに減額された[20]。
車いすの部
1975年、当時24歳のボブホールという車いす使用の青年の参加を許可し、2時間58分の記録を公式に認めた。メジャー大会で初となったこのニュースは、多くの障害者が車いすマラソンに挑戦するきっかけとなった。
なお、1970年には非公式であるが、ベトナム退役軍人のユージン・ロバーツ(Eugene Roberts)が病院の車椅子を使って7時間掛けて完走している[21]。
日本人では、2007年と2011年に副島正純が優勝し、女子では土田和歌子が2007,2008,2009,2010,2011年に5連覇している。
提携大会
脚注
- ↑ http://www.iaaf.org/competitions/iaaf-label-road-races/calendar/2014
- ↑ https://www.worldmarathonmajors.com/
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/boston-marathon-history.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/boston-marathon-history.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/event-information/course-map.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/participant-information/qualifying.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/participant-information/qualifying.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/participant-information/qualifying.aspx
- ↑ http://www.baa.org/news-and-press/news-listing/2014/september/2015-boston-marathon-qualifier-acceptances.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/participant-information/qualifying.aspx
- ↑ http://www.baa.org/news-and-press/news-listing/2014/july/boston-marathon-raises-historic-amounts-for-local-non-profits.aspx
- ↑ http://www.baa.org/races/boston-marathon/boston-marathon-history.aspx
- ↑ 13.0 13.1 “川内優輝 ボストンV “市民ランナー”が世界の頂点に 最高峰WMM日本人初”. デイリースポーツ. (2018年4月18日) . 2018閲覧.
- ↑ 14.0 14.1 “75歳・君原さん「私も年を取ったな」 4時間台で完走”. 朝日新聞. (2016年4月19日) . 2016閲覧.
- ↑ 『いのちもやして、たたけよ。: 鼓童30年の軌跡』p189鼓童文化財団、出版文化社, 2011
- ↑ 50年前の雄姿再び=ボストン優勝の重松さん―マラソン - Runnet(2015年4月20日、元記事は時事通信)
- ↑ 田中だけは公式記録に出身地まで記載されている
- ↑ 18.0 18.1 18.2 宇佐美彰朗『女子マラソン どうして強くなったのか』筑摩書房、1996年、p22 - 23
- ↑ Rosie Ruiz Wins the Boston Marathon
- ↑ 冠大会に不況の風 スポンサーの降板目立つ 代役が見つからない例も 朝日新聞 1992年11月16日 夕刊3ページ
- ↑ http://webhost.bridgew.edu/jhuber/readings/boston_the_100th_marathon.html
関連項目
- 木村次郎右衛門 - 第一回ボストンマラソンが行われた1897年4月19日生まれ。世界男性歴代最高齢者である。
- ボストンマラソン爆弾テロ事件
- パトリオット・デイ - 2013年に発生したボストンマラソン爆弾テロ事件の事件発生から顛末までを描いた2016年の映画。
外部リンク
- the Boston Marathon(英語)
- www.42k195.com(英語)