「正教会」の版間の差分

提供: miniwiki
移動先:案内検索
ja>宇迦えもん
 
 
(同じ利用者による、間の5版が非表示)
1行目: 1行目:
 
{{Otheruseslist|'''[[ギリシャ正教]]'''とも呼ばれ、[[グルジア正教会]]・[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]・[[ブルガリア正教会]]・[[ルーマニア正教会]]・[[ロシア正教会]]等を含む'''正教会'''|'''非カルケドン派'''とも呼ばれる[[アルメニア教会|アルメニア使徒教会]]、[[エチオピア正教会]]、[[コプト正教会]]、[[シリア正教会]]等|非カルケドン派正教会}}
 
{{Otheruseslist|'''[[ギリシャ正教]]'''とも呼ばれ、[[グルジア正教会]]・[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]・[[ブルガリア正教会]]・[[ルーマニア正教会]]・[[ロシア正教会]]等を含む'''正教会'''|'''非カルケドン派'''とも呼ばれる[[アルメニア教会|アルメニア使徒教会]]、[[エチオピア正教会]]、[[コプト正教会]]、[[シリア正教会]]等|非カルケドン派正教会}}
 
{{Pathnav|キリスト教|東方教会|frame=1}}
 
{{Pathnav|キリスト教|東方教会|frame=1}}
[[ファイル:Angelsatmamre-trinity-rublev-1410.jpg|thumb|right|200px|[[アンドレイ・ルブリョフ|聖アンドレイ・ルブリョフ]]による[[イコン]]『[[至聖三者 (ルブリョフによるイコン)|至聖三者]]』。[[至聖三者]]([[三位一体]]の神)そのものは描けないが、至聖三者を象徴する三天使を描いたイコンであるとされる<ref>[http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/icon/shiseisansha.htm 至聖三者(三位一体)のイコン] - [http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/ 大阪ハリストス正教会]のページ</ref>。正教会において、教会は「[[キリスト|ハリストス(キリスト)]]の体」として、また至聖三者の像(イメージ)として、両面から理解される<ref>[[エフェソの信徒への手紙|エフェス書]] 1:23を根拠とする。[http://lib.eparhia-saratov.ru/books/11l/lossky/mystic/10.html {{lang|ru|Глава IX. Два аспекта Церкви - Очерк мистического богословия Восточной Церкви - Владимир Лосский}}]([[ウラジーミル・ロースキイ]])</ref><ref>[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/shinkou05.html 信仰-教会:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref><ref name="Dragas">[http://orthodoxinfo.com/general/dragas.aspx Orthodox Ecclesiology in Outline] by [http://orthodoxwiki.org/George_Dragas Fr. George Dragas]</ref>。教会とは何かを考えるのにあたり、正教では至聖三者についての言及は避けられない<ref>[http://www.oodegr.com/oode/dogmat1/ST2c.htm {{lang|el|Γ. Η Τριαδολογική βάση της Εκκλησιολογίας}}] {{el icon}} [http://www.oodegr.com/english/dogmatiki1/F2c.htm  C.  The Trinitarian basis of Ecclesiology] {{en icon}} ([http://www.oodegr.com/oode/dogmat1/perieh.htm {{lang|el|Σημειώσεις από τις παραδόσεις τού καθηγητού Ι. Δ. Ζηζιούλα}}]より)</ref>。]]
 
[[File:Monroe County - All Saints Orthodox Church - divine liturgy - P1040498.JPG|thumb|right|220px|[[アメリカ合衆国]]の正教会での[[聖体礼儀]]。[[聖体機密]]はその重要性から[[機密 (正教会)|機密]]の中の機密と呼ばれる<ref name="houshinrei2">トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』14頁・17頁、西日本主教区(日本正教会)</ref><ref name="OCASacraments">[http://oca.org/orthodoxy/the-orthodox-faith/worship/the-sacraments/the-sacraments OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - The Sacraments]</ref><ref name="OCAEucharist">[http://oca.org/orthodoxy/the-orthodox-faith/worship/the-sacraments/holy-eucharist OCA - The Orthodox Faith - Volume II - Worship - The Sacraments - Holy Eucharist]</ref>。]]
 
[[Image:Cruz ortodoxa.png|thumb|right|125px|[[八端十字架]]。[[スラヴ]]系の正教会でよく使われる十字。この十字のみならず、[[ギリシャ十字]]や[[ラテン十字]]などの他の十字も正教会で使われる。]]
 
'''正教会'''(せいきょうかい、{{lang-el|Ορθόδοξη Εκκλησία}}、{{lang-ru|Православие}}、{{lang-en|Orthodox Church}})は、'''[[ギリシャ正教]]'''<ref name="OCJtop">[http://www.orthodoxjapan.jp/ 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>もしくは'''東方正教会'''<ref name="seikyoukaitowa">[http://www.orthodoxjapan.jp/seikyoukai.html 正教会とは:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>(とうほうせいきょうかい、{{lang|en|Eastern Orthodox Church}})とも呼ばれる、[[キリスト教]]の教会([[キリスト教諸教派の一覧|教派]])の一つ。
 
  
[[日本語]]の「'''正教'''」、英語名の"{{lang|en|Orthodox}}"(オーソドックス)は、「正しい讃美」「正しい教え」を意味する[[ギリシア語|ギリシャ語]]のオルソドクシア "{{lang|el|ορθοδοξία}}" に由来する<ref name="OCJtop" />。正教会は[[使徒継承]]を自認し、自身の歴史を[[1世紀]]の[[初代教会]]にさかのぼるとしている<ref name="tebiki8.11.">『正教会の手引き』8頁 - 11頁</ref>。
+
'''正教会'''(せいきょうかい、{{lang-el|Ορθόδοξη Εκκλησία}}、{{lang-ru|Православие}}{{lang-en|Orthodox Church}}
  
なお「[[東方教会]]」(とうほうきょうかい)が正教会を指している場合もある<ref name="OCJtop" />。
+
公式には「正統カトリック教会」,一般には,東方正教会,ハリストス正教会,ギリシア正教会などと呼ばれる。ここでいうギリシアは,民族としての名称ではなく,ラテンに対してギリシア文化を表現する。したがって近代ギリシアにおけるギリシア正教会とは区別される。
  
例外はあるものの、正教会の組織は国名もしくは地域名を冠した組織を各地に形成するのが基本である。[[コンスタンディヌーポリ総主教庁]]、[[アレクサンドリア総主教庁]]、[[アンティオキア総主教庁]]、[[エルサレム総主教庁]]、[[ロシア正教会]]、[[セルビア正教会]]、[[ルーマニア正教会]]、[[ブルガリア正教会]]、[[グルジア正教会]]、[[ギリシャ正教会]]、[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]などは個別の組織名であって教会全体の名ではない。いずれの地域別の教会組織も、正教として同じ信仰を有している<ref>[http://oca.org/questions/namerica/greek-orthodox-and-russian-orthodox OCA - Q&A - Greek Orthodox and Russian Orthodox] - [http://oca.org/ Orthodox Church in America]のページ。{{en icon}}</ref>。教会全体の名はあくまで'''正教会'''であり、「[[ロシア]]正教に改宗」「[[ルーマニア]]正教に改宗」といった表現は誤りである<ref name="nikolaido">[http://www.geocities.jp/ynicojp2/what-nikolaido.html#2 正教会(ギリシャ正教:東方正教会)・ニコライ堂について よくある質問]</ref>。
+
[[ローマ・カトリック教会]]とともに,現存最古の教会で,最初の7つの普遍公会議で定められた信仰と慣行を遵守する。
  
なお、[[アルメニア教会|アルメニア使徒教会]][[シリア正教会]][[コプト正教会]][[エチオピア正教会]]なども同じく「正教会」を名乗りその正統性を自覚しているが、上に述べたギリシャ正教とも呼ばれる正教会とは別の系統に属する。英語ではこれらの教会は{{lang|en|"Oriental Orthodox Church"}}とも呼ばれる。詳細は[[非カルケドン派正教会]]を参照。
+
[[1054年]][[ローマ]][[コンスタンチノープル]]をそれぞれ中心として,キリスト教は東西に2つに分れ,東方は正 (統) 教会を主張した。その後,コンスタンチノープルを中心とする宣教によって,ロシア,バルカン諸国のキリスト教化が進み,[[ビザンチン帝国]]を背景に,ヘレニズム的色彩の強いキリスト教の伝統が移植された。
  
== 概要 ==
+
今日,コンスタンチノープル (イスタンブール) ,[[アレクサンドリア]][[アンチオキア]][[エルサレム]]の四総大主教区が古代以来の伝統を継いで存在し,コンスタンチノープル総大主教がギリシア正教全体の名誉上の首長となっている。
=== 正教会を指す対象 ===
 
'''正教会'''とは、[[東方教会]]のうち、七つの[[全地公会議]]を承認し、ふつう、古代総主教庁([[コンスタンディヌーポリ総主教庁]]、[[アレクサンドリア総主教庁]]、[[アンティオキア総主教庁]][[エルサレム総主教庁]])と[[コミュニオン|キノニア(コミュニオン)]]関係にある諸教会をいう<ref name="blackwell169">"The Blackwell Dictionary of Eastern Christianity" Wiley-Blackwell; New edition (2001/12/5), p169 - p170, ISBN 9780631232032</ref>。
 
  
=== 信仰内容の概要 ===
+
[[ローマ教皇]][[首位権]]を認めず,民族主義的傾向が強く,各地方の教会はおおむね自治的で,ロシア正教会はじめ多くの自立教会が連合体を形成している。
[[File:Chora Anastasis2.jpg|thumb|330px|[[フレスコ画]][[イコン]]『[[復活 (キリスト教)|復活]]』。現在は[[カーリエ博物館]]となっている、ホーラ(コーラ)修道院の聖堂内、湾曲した天井に描かれている。主[[日本ハリストス正教会#「ハリストス」|ハリストス]](キリスト)が[[アダム]]と[[イヴ|エヴァ]]の手を取り、[[地獄 (キリスト教)|地獄]]から引き上げる情景を描いたもの。この[[キリストの地獄への降下|ハリストスの地獄降り]]のイコンが、正教会においては復活のイコンとして定着している<ref name="jiho20090407">[[府主教]][[主代郁夫|ダニイル主代郁夫]]『2009年 復活大祭』正教時報 2009年4月号、7頁</ref>。]]
 
正教会は、[[イイスス・ハリストス]](イエス・キリストの中世ギリシャ語およびロシア語読み)の[[十字架]]刑による死と[[復活 (キリスト教)|復活]]の証人とされる[[使徒]]達の信仰と、使徒達から始まった教会のあり方を唯一正しく受け継いでいると自認している。正教会は、神の啓示を信仰の基盤とし、連綿と受け継がれてきた神による啓示に基づく信仰と教えを、'''[[聖伝]]'''と呼び、聖伝を伝えていくにあたっては、[[聖霊|聖神(聖霊)]]の導きがあるとする<ref name="OCJoshie">[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/oshie01.html 教え-聖伝:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。また正教会においては、キリスト教は復活の福音に他ならないとされる<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/thomas.htm ハリストス復活!実に復活!]([http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ 名古屋ハリストス正教会]内のページ)</ref>。
 
  
正教会における聖伝の本質は、教会を形成していく人々の生きた体験の記憶である<ref name="youri1819">『正教要理』18頁 - 19頁、[[日本ハリストス正教会]]教団 昭和55年12月12日第1刷</ref>。[[聖書]]・[[聖師父]]の著書・[[全地公会議]]の規定・[[奉神礼]]([[祈祷書 (正教会)|祈祷書]]・[[イコン]]・[[聖歌]]なども含む)等は個々別々な現れであり、これらの構成要素を集積しても聖伝全体とはならない。なお正教会において[[聖書]]は、聖伝の中核であり、使徒らが残した最も公的な啓示と捉えられている<ref name="OCJoshie" /><ref>[http://www.antiochian.org/content/scripture-and-tradition Scripture and Tradition | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese]</ref><ref group="注釈" name="seisho">正教会においては「聖書は聖伝の中核」と捉える。これに対し、[[カトリック教会]]は「聖書と聖伝を同じく尊敬すべき」とする。[[プロテスタント]]には、聖書以外の伝承も重視する者もおり一概には言えないが、傾向として基本的には「[[聖書のみ]]」の姿勢をとる。</ref>。
+
----
 
+
*[[グルジア正教会]]
正教会においては、信仰は神の存在を認めることにとどまらず、神の慈愛に自らを委ねることであり、行いを伴う信仰が本来の意味における人間の完成を実現し、周囲を明るく照らすものであるとされる。信仰を自分のものとするかしないかは、その人自身の自覚と努力する意志によるとされる<ref name="youri0205">『正教要理』2頁 - 5頁、[[日本ハリストス正教会]]教団 昭和55年12月12日第1刷</ref><ref group="注釈" name="ishi">信仰について、「その人の意志による」とはしない教派もある。たとえば[[予定説]]の立場をとる者は「その人の意志による」といった文言・考えを認めない。</ref>。
+
*[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]
 
+
*[[ブルガリア正教会]]
教会に属する全てのものは[[機密 (正教会)|機密]]的で神秘的なものとされる。特に[[聖体機密]]は「機密の機密」ないし「教会の機密」と呼ばれ、教会生活の中心と理解される<ref name="houshinrei2" /><ref name="OCASacraments" /><ref name="OCAEucharist" />。
+
*[[ルーマニア正教会]]
{{Main|機密 (正教会)}}
+
*[[ロシア正教会]]
 
 
正教会が信じている内容を簡単かつ適切な言葉で表していると位置づけられるのが、[[日本正教会]]では単に信経(しんけい)と呼ばれる[[ニカイア・コンスタンティノポリス信条|ニケヤ・コンスタンチノープル信経]]である<ref name="youri20">『正教要理』20頁、[[日本ハリストス正教会]]教団 昭和55年12月12日第1刷</ref>。
 
 
 
「正教はハリストスの[[復活 (キリスト教)|復活]]のいのちそのもの」「いのちは言葉では伝わらないこと」から、正教について言葉で説明し尽くすことは出来ないことが強調される<ref name="seikyoukaitowa" />。
 
 
 
{{See also|復活 (キリスト教)|聖伝|神の像と肖|共働}}
 
 
 
==== 斎(ものいみ)について ====
 
[[ファイル:Mary of egypt2.jpg|thumb|190px|[[エジプトのマリア|エジプトの聖マリア]]の[[イコン]]。[[17世紀]]に[[ロシア]]で描かれたもの。中心に祈りを奉げるエジプトの聖マリアの姿が描かれ、周囲にその生涯についての伝承内容が左上から順に描かれている。エジプトの聖マリアの伝承には斎についての教えが豊富に含まれ、大斎の第五[[主日]]はエジプトのマリアを記憶する。]]
 
西方教会では、[[第二バチカン公会議]]以降、斎の義務がゆるやかになったが、正教会では今でも食物制限を伴う「斎」が教義上重要な位置を保ち、信者の生活の習慣となっている。
 
 
 
斎は主に食物摂取の規定に言及されるが、斎の期間は他の遊興なども控え、行いを慎み、祈りを増やし、学びの機会を積極的に設け、ハリストス・教会のための働きを増すことが勧められている。「断食」という言葉で斎を限定する事は避けられる傾向がある。
 
 
 
斎についてのキリスト教文書の最古の規定は[[19世紀]]にコンスタンディヌーポリ総主教庁図書室で発見された1世紀の文書『[[ディダケー]]』(十二使徒の教え)である。斎の習慣は[[旧約]]時代から継承されたものであり、古代からごく最近に至るまで、東西を問わず守られていた。
 
 
 
斎は祭と表裏一体をなす。大きな祭には必ず厳格な斎がその前に義務付けられる。正教徒の生活は斎と祭によってリズムをつけられているといえる。
 
 
 
===== 斎の種類 =====
 
斎の規定は食品を以下のように分類する。
 
* [[食肉|肉]]
 
* [[魚類|魚]]
 
* 乾酪類:[[鶏卵|卵]]およびすべての[[乳製品]]
 
* [[ぶどう酒]]と[[オリーブ油]]
 
* その他の食品
 
 
 
斎は程度に応じてこれらの[[食品]]を禁止または許可するものである。
 
もっとも厳格な斎は、肉、魚、乾酪、[[酒]]、オリーブ油を禁食するものである。明示的に禁止されているのはぶどう酒であるが、他の酒類も避けるのが通例である。これに対して、オリーブ油以外を避けなければいけないかどうかは、論者により分かれる。
 
 
 
最も厳格な斎は次の時になされる。
 
* 斎解禁時を除く、[[水曜日]]と[[金曜日]]
 
* 降誕祭前日
 
* [[神現祭]]前日
 
* [[大斎 (東方正教会)|大斎]]・復活祭前、[[赦罪の主日]]の晩課後より復活祭までの期間の[[平日]]。西方教会の[[四旬節]]に相当。ただし[[生神女福音祭]]のときを除く。
 
 
 
これに対して、祭および他の定められた時節には、斎が解かれる。
 
* [[光明週間]]([[復活大祭]]につづく週) この期間はむしろ斎が「禁止」されている。
 
* 税吏とファリセイの主日につづく週(不禁食週間)
 
* 降誕祭後の一定期間
 
 
 
また大斎中の主日には酒とオリーブ油、生神女福音祭が大斎期間にある場合には加えて魚が許される。
 
 
 
なお一般信徒の間では斎の際にも魚食は許される事が多い。上記の斎規定はあくまで標準的な修道院のものであり、一般信徒に対してはこれらに比べて比較的緩やかな斎が勧められるのが常である。しかしどの程度の斎・食物規定が信徒に勧められるかは地域・教区によって差があり、一概には言えない。
 
 
 
===== 斎の期間 =====
 
もっとも期間の長い斎は大斎である。[[土曜日|土]][[日曜日|日]]を除く8週間、合計四十日が最も厳しい斎に充てられる。詳細は[[大斎 (東方正教会)|大斎]]の項を参照。
 
 
 
これに対して短い斎は、水・金曜日および定められた祭の前の一日の斎である。領聖前の禁食を斎とみなすならば、半日に満たない斎期間もあるといえる。
 
 
 
これらの中間に
 
* 使徒の斎([[ペンテコステ|聖神降誕祭]]の次の主日から[[ペトル・パウェル祭]]まで)
 
* [[生神女就寝祭]]の斎(生神女就寝祭まで)
 
* [[フィリポ|フィリップ]]の斎(使徒フィリップの記憶日から[[クリスマス|降誕祭]]まで)
 
などの比較的長期にわたる斎がある。
 
 
 
=== 沿革・分布 ===
 
[[File:Eastern Orthodoxy by country.png|right|thumb|450px|国別:[[正教徒]]の分布状況
 
{{legend|#000055|主要宗教となっている地域 (75%以上が正教徒)}}
 
{{legend|#0000aa|主要宗教となっている地域 (50% – 75%)}}
 
{{legend|#0000ff|少数派であるが重要な割合 (20% – 50%)}}
 
{{legend|#5555ff|少数派であるが重要な割合 (5% – 20%)}}
 
{{legend|#aaaaff|少数派 (1% – 5%)}}
 
{{legend|#b4c8ff|1%以下の少数派であるが[[独立正教会]]の地位を得ているもの}}
 
]]
 
成立期において[[地中海]]の沿岸東半分の地域を主な基盤とし、[[東ローマ帝国]]の[[国教]]として発展したことから「東方正教会」の名もあるが、今日では[[ギリシャ]]、[[東ヨーロッパ|東欧]]において優勢であるのみならず、世界の大陸すべてに信徒が分布する<ref group="注釈" name="SP">[[南極大陸]]にも正教会がある。[[リラの聖イオアン聖堂]]を参照。[[南極圏]]に範囲を拡大すれば[[キングジョージ島]]に[[至聖三者聖堂 (南極)]]がある。</ref>。また、[[中東]]にも[[初代教会]]から継承される少なくない[[正教徒]]のコミュニティが存在する。
 
 
 
他[[キリスト教諸教派の一覧|教会(教派)]]との関係については、「正教会と他の諸教会が『分裂』した」のではなく、「正教会から他の諸教会が離れて行った」と正教会は捉えている<ref name="seikyoukaitowa" />([[西方教会]]には逆の観方ないし別の観方がある<ref>[http://www.newadvent.org/cathen/13535a.htm CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Eastern Schism]</ref>)<ref group="注釈" name="RC">ローマ・カトリックの側に立った見解においては「最も古い[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]([[西方教会]])から東方正教会が分離した」となる。正教側の見解はこれと異なっている。少なくとも歴史上、[[教皇|ローマ教皇]]が東方教会に対して[[西方教会]]に対するのと同じような権限を行使し得た史実は無い(逆に東方の[[総主教]]が西方に対して一方的権限を行使したことも無い)。平等な総主教達の中からローマ総主教(教皇)が東方から分かれて行った、というのが正教会における認識である。このように、[[東西教会]]のいずれも、自らこそを正統であると自認している。東西両教会は[[8世紀]]から[[13世紀]]にかけて長い時間を経て差異を深め分裂に至った。詳細は[[東西教会の分裂]]を参照。</ref>。
 
 
 
[[20世紀]]に、正教会が盛んな地域である東欧に成立した[[共産主義]][[政権]]の[[弾圧]]を受けて大きな人的・物的・精神的被害を受けたが、共産主義政権の崩壊後に各地の正教会は復興しつつある。
 
 
 
[[日本]]には[[亜使徒]]の称号で後に列聖された[[ニコライ・カサートキン|ニコライ]]により[[ロシア正教会]]から伝道され、[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]が成立している。日本正教会では、[[イエス・キリスト]]を中世ギリシャ語・ロシア語由来の読み方で[[イイスス・ハリストス]]と転写したり、"{{lang|el|Άγιο Πνεύμα}}"(アギオ・プネヴマ、[[聖霊]])を[[日本ハリストス正教会#「聖神」(せいしん)|聖神]]と訳したりするなど、用語上、日本の慣例的な表記と異なる点がある。以下、この記事では日本ハリストス正教会で使われている用語を断りなく用いる場合がある。こうした用語については[[日本ハリストス正教会#聖書・祈祷書等にみられる独自の翻訳・用語体系|日本正教会の聖書・祈祷書等にみられる独自の翻訳・用語体系]]を参照。
 
{{See|正教会の歴史}}
 
 
 
== 教会 ==
 
=== 全世界の組織 ===
 
==== 基本構成 ====
 
正教会は上記4つの古代総主教庁([[コンスタンディヌーポリ総主教庁]]、[[アレクサンドリア総主教庁]]、[[アンティオキア総主教庁]]、[[エルサレム総主教庁]])のほか、[[独立正教会]]、[[自治正教会]]の数々で構成されている<ref name="blackwell169" />。
 
 
 
基本的に[[総主教]]達は平等である<ref name="taka94">高橋(1980) p94</ref>。
 
 
 
各[[独立正教会]]・[[自治正教会]]の首座主教([[総主教]]・[[府主教]]・[[大主教]]のいずれかがその任にあたる)は「同格者中の第一人者」として、他の主教達に比べて若干の特権を持って居る。しかし首座主教といえども、他の[[主教]]達・[[聖シノド|主教会議]]の同意が無ければ独断では行動できない(聖使徒規則34条)<ref>クレマン(1977) p104</ref>。
 
 
 
==== 独立教会・自治教会 ====
 
[[ファイル:Tokyo Resurrection Cathedral 201000.jpg|thumb|right|200px|[[ニコライ堂]]([[日本正教会]]の[[首座主教]]座大聖堂、[[東京都]][[千代田区]])]]
 
各独立教会・各自治教会には統括する[[首座主教]]が居るが、それぞれの教会組織・首座主教に歴史的な尊敬の度合いの違いはあっても権威の優劣は存在しない。[[カトリック教会]]における[[ローマ教皇]]をトップとするような組織構成をとらず、各地域の独立教会・自治教会が、正教信仰と[[使徒]]時代以来の教会の姿を分かち合って緩やかに結びつき、正教会としての一致を保っている<ref name="seikyoukaitowa" />。
 
 
 
各教会が区別されながら一つに一致しているのは、「区別と一致」である[[至聖三者]]([[三位一体]]の神)の姿が教会に映し出されているものと理解される<ref name="tebiki6.">『正教会の手引き』6頁</ref>。こうした教会の現状は、歴史上、教会共同体が拡大するにつれ、母体となる母教会から子教会が生まれ出るというプロセスを経て形成された。「母教会」「子教会」「姉妹教会」という表現が使われる<ref name="taka80">高橋(1980) p80 - p82</ref>。
 
 
 
[[独立正教会]]や[[自治正教会]]の中には、正教会に複数ある総主教庁からの承認が一部のみにとどまっているものがある。たとえば[[エストニア]]使徒正教会は[[コンスタンディヌーポリ総主教庁]]からは自治正教会として承認されているが、[[モスクワ総主教庁]]からは自治正教会としては承認を得られていない<ref group="注釈">[[コンスタンディヌーポリ総主教庁]]庇護下の自治正教会であるエストニア使徒正教会の他に、[[モスクワ総主教庁]]庇護下に[[自主管理教会]]としての[[エストニア正教会]]がある。</ref>。逆に[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]は[[モスクワ]]総主教庁からは自治正教会として承認されているが、コンスタンディヌーポリ総主教庁からは自治正教会としては承認を得られていない<ref name="blackwell169" />。ただしこれらの場合、論点になるのは当該教会の地位についてであって、お互いに正教会としては承認し合い、交流も行われている(例:[[日本ハリストス正教会#1970年以降の他正教会との交流年表|日本正教会の他正教会との交流]])。
 
 
 
また20世紀末から、[[アンティオキア総主教庁]]、および[[ロシア正教会]]に、[[自主管理教会]]という教会組織の種別が設けられている。
 
 
 
これらのほかに、[[マケドニア正教会]]、[[ウクライナ正教会・キエフ総主教庁]]、[[モンテネグロ正教会]]など、上記の正教会の組織からは承認されていない教会組織がある。これらの教会との交流をどのようにするかについては、それぞれの正教会組織において個別に判断されており、全世界の正教会に共通する統一見解は無い。
 
{{Main|正教会の教会機構一覧}}
 
{{Orthodoxy}}
 
 
 
==== 総主教 ====
 
[[コンスタンディヌーポリ総主教]]は[[全地総主教]]とのタイトルを保持し、「対等な者達(主教達)における第一人者」(First among Equals)と呼ばれ敬意を表されるが<ref>[http://www.goarch.org/archdiocese/departments/religioused/resourcesforteachers/first_among_equals First among Equals; Greek Orthodox Archdiocese of America]</ref>、[[総主教]]達は基本的に全て平等である<ref name="taka94" /><ref name="Dragas" />。
 
{{Gallery
 
|title=正教会の[[総主教]]達(総主教同士は基本的に対等)
 
|width=170
 
|height=170
 
|lines=2
 
|File:Ecumenical Patriarch Bartholomew 200902.jpg|[[コンスタンディヌーポリ総主教]]<br/>[[ヴァルソロメオス1世 (コンスタンディヌーポリ総主教)|ヴァルソロメオス1世]]
 
|File:Patriarch Theodore II of Alexandria.jpg|[[アレクサンドリア総主教]]<br/>[[セオドロス2世 (アレクサンドリア総主教)|セオドロス2世]]
 
|File:Patriarch John X of Antioch and Konstantinos Tsiaras derivative.jpg|[[アンティオキア総主教]]<br/>[[イオアン10世 (アンティオキア総主教)|イオアン10世]]
 
|File:Patriarch Theophilos III of Jerusalem Senate of Poland 01.JPG|[[エルサレム総主教]]<br/>[[セオフィロス3世 (エルサレム総主教)|セオフィロス3世]]
 
|File:Patriarch Kirill I of Moscow 03.jpg|[[モスクワ総主教]]<br/>[[キリル1世 (モスクワ総主教)|キリル1世]]
 
|File:Ilia II.jpg|[[ジョージア (国)|グルジア]]総主教<br/>[[イリア2世 (グルジア総主教)|イリア2世]]
 
|File:Patriarch Daniel of Romania.jpg|[[ルーマニア]]総主教<br/>[[ダニエル (ルーマニア総主教)|ダニエル]]
 
|File:Neophyte of Bulgaria.jpg|[[ブルガリア]]総主教<br/>[[ネオフィト (ブルガリア総主教)|ネオフィト]]
 
}}
 
 
 
==== 正教を国教とする国家 ====
 
正教を[[国教]]とする国家としては[[ギリシャ]]([[ギリシャ正教会]])、[[フィンランド]]([[フィンランド正教会]])、[[キプロス]](キプロス正教会)が挙げられる。[[ロシア]]においては[[ロシア正教会]]が最大多数を占めるが、国教とは定められていない<ref>[http://orthodoxeurope.org/page/3/14.aspx Bases of the Social Concept of the Russian Orthodox Church]</ref><ref>[http://users.auth.gr/~pv/Politics%20in%20Orth.%20Christianity.htm Politics in Orthodox Christianity]</ref>。
 
 
 
=== 名称・別称 ===
 
==== 東方正教会 ====
 
東方正教会という別称は、西方教会(ローマ・カトリック、[[聖公会]]、プロテスタントほか)に対置される語である。両者は[[11世紀]]頃に分立した。[[東方教会]]という名称は多く西方で使われる語であり、正教会自身は、たんに「正教」ないし「正教会」の語を好んで用いる<ref>11世紀頃には「神聖にして正統普遍なる使徒の東方教会」と称していたとする説もある(尚樹啓太郎『ビザンツ帝国史』1999年 東海大学出版会 P522より)</ref>。これは「正教」が「正しい教え」であるため、それ以上の限定を必要としないという発想に基づいているほか、現在は正教会の伝道範囲が東方に限定されていないという現状も反映されている。また自称としては「[[正教徒]]」が多く使われる。
 
 
 
==== ギリシャ正教 ====
 
英語ではギリシャで発祥した教会という意味で {{lang|en|Greek Orthodox Church}} ともいい、これにあわせて日本では正教会を指して[[ギリシャ正教]]と呼ぶことも多い。これはギリシア語圏に正教会の中心があったことから誤用とはいいがたく、日本ハリストス正教会関係者のなかにも、ギリシャ正教の語を用いる者がいる<ref>[[高橋保行]]『ギリシャ正教』(講談社学術文庫)、1980年。ISBN 4-06-158500-2</ref>。なお[[ギリシャ正教会]]と呼ぶこともあるが、これは近代に設置された、[[ギリシャ|ギリシャ共和国]]を主として管轄する[[ギリシャ正教会]](ギリシャ共和国の正教会)({{lang|en|Church of Greece}}) を指す名称でもある。
 
{{See also|ギリシャ正教}}
 
 
 
==== その他 ====
 
「ロシア正教」が教派名として使われる事がままあるがこれは誤りである。「ロシア正教」は教派名ではなく組織名であり、その教義は他の正教会組織である[[グルジア正教会]]、[[ブルガリア正教会]]、[[セルビア正教会]]、[[ギリシャ正教会]]、[[ルーマニア正教会]]、[[日本正教会]]などと完全に同様である。また、[[グルジア正教会]]は[[5世紀]]、[[ブルガリア正教会]]は[[10世紀]]、[[セルビア正教会]]は[[13世紀]]に[[独立正教会]]として承認されているが(ただしいずれも後代、一時的に地位喪失の期間があった)、ロシア正教会は独立正教会としての地位を母教会から承認されたのは[[16世紀]]に入ってからであり、相対的には新しい組織であるという点に鑑みても、「ロシア正教」は教派の別名として用いるのは適切でない<ref name="nikolaido" />。
 
 
 
正教会と頻繁に比較される別教派として[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]があるが、「オーソドクス」(正しい讃美)と「[[カトリック (概念)|カトリック]]」(普遍)は元来、対立概念ではなく、違う文脈から教会の性質を述べるものである([[#正教会とは何か(教会論)|後述]])。正教会もまた[[ニカイア・コンスタンティノポリス信条|信経]]にある通りに、「一つの聖にして『公なる』(カトリケー)使徒の教会」であることを任じており、教会の普遍性([[カトリコス]])を深く自覚しているが、自教会の名称としては「オーソドクス」を名乗っている<ref>[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/shinkou05.html 信仰-教会:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。
 
{{See also|ロシア正教会}}
 
 
 
=== 教会とは何か(教会論・聖職者) ===
 
[[File:Orthodox clergy.jpg|right|thumb|220px|諸[[神品 (正教会の聖職)|神品]]による[[奉神礼]]の光景。[[イコノスタシス]]の向こう側の[[至聖所]]の[[宝座 (正教会)|宝座]]手前で水色の祭服を着用し、[[ミトラ (宝冠)|宝冠]]を被って奉事に当たっているのが[[主教]]。左手前に大きく写っている濃い緑色の祭服を着用した人物と、至聖所の奥に小さく写っている人物が[[司祭]]。白地に金色の刺繍を施された[[祭服]]を着ている二人が[[輔祭]]である。正教会では祭日ごとに祭服の色を統一して用いるのが一般的であり、このように諸神品が別々の色の祭服を用いるケースはそれほど多くは無い。また、祭服をこのように完装するのは写真撮影などの特別な場合を除いて奉神礼の場面に限られている。]]
 
 
 
==== 基本 ====
 
正教会における教会論(教会とは何か)においては、教会は[[イエス・キリスト|ハリストス(キリスト)]]の体であり、[[至聖三者|至聖三者(三位一体の神)]]の像であると理解され、教会の首(かしら)はハリストスであるとされる<ref name="Dragas" />。
 
 
 
==== 「聖にして公なる使徒の教会」 ====
 
正教会は[[信経]]において「聖にして公なる使徒の教会」とされる<ref name="VolumeI">[http://oca.org/orthodoxy/the-orthodox-faith/doctrine/the-symbol-of-faith/church OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - The Symbol of Faith - Church]</ref>。
 
 
 
教会は聖なるハリストスの体であり、[[至聖三者|至聖三者(三位一体の神)]]の像であり、聖なる神との交わりの中にあるため、聖であると理解される<ref name="VolumeI" />。
 
 
 
「公なる」([[カトリック (概念)|カトリック]]、{{lang-el|καθολικός}} <small>カソリコス</small><ref group="注釈" name="katholikos">{{lang|el|καθολικός}}…「カソリコス」は現代ギリシャ語転写。古典ギリシャ語再建音では「カトリコス」。</ref>, {{lang-en|Catholic}})については、地理的な広がりといった外的なものとしてのみ理解されるべきではなく(地理的に拡大する以前から教会は「公なる」ものであったと理解される<ref name="VolumeI" />)、質的な面からも理解されなければならない<ref>[[パーヴェル・エフドキーモフ]]著、古谷 功訳『ロシア思想におけるキリスト』129頁 - 130頁(1983年12月 あかし書房)ISBN 4870138093 において[[アレクセイ・ホミャコーフ]]([[1804年]] - [[1860年]])の考察として記述</ref>。「公なる教会」は正教において、充分であり、完全であり、全てを包括し、欠落が無いことを意味する<ref name="VolumeI" />。
 
 
 
{{See|カトリック (概念)#正教会におけるカトリック(普遍)}}
 
 
 
「使徒の」については、正教会が自教会を、使徒達の信仰と、使徒達から始まった教会のありかたを、唯一正しく受け継いできた教会であるとすることを意味する<ref name="seikyoukaitowa" />。また、「[[イエス・キリスト|ハリストス(キリスト)]]の体(聖体血)を中心にした奉神礼共同体」としても自教会を捉え、ビザンティン時代に現在のかたちがほぼ確立した[[奉神礼|奉神礼(礼拝)]]には、ハリストスと[[使徒]]達によって行われた礼拝のかたちと霊性が保たれているとする<ref name="seikyoukaitowa" /><ref name="taka80" />。
 
 
 
==== 聖体礼儀 ====
 
[[パン]]と[[ワイン|ブドウ酒]]をハリストス(キリスト)の体と血として食べる感謝の祭儀([[聖体礼儀]])は、正教会においてキリスト教の伝統の神髄とされる。教会共同体の中心にはこの感謝の祭儀(聖体礼儀)があるとし<ref name="taka80" />、この「聖体血を食べる」ことを通じて、信者がハリストス・神と一つとなり、互いが一つとなり、ハリストスが集めた「新たなる神の民の集い・教会」が確かめられるとする<ref name="seikyoukaitowa" />。
 
 
 
==== 神品(聖職者) ====
 
正教会における聖職者は[[神品 (正教会の聖職)|神品(しんぴん)]]という<ref>[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/katachi05.html かたち-聖職者と修道士:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。
 
 
 
教会という共同体が拡大するにつれて使徒達が自身に代わるものとして共同体の中心に置いた者は[[主教]]であり、現代の正教会にみられる主教はこれの継承者であり、主教達のまとめ役として[[総主教]]、[[府主教]]、[[大主教]]がいる<ref name="taka80" /><ref name="taka82">高橋(1980) p82 - p84</ref>。
 
 
 
主教の輔佐役として[[司祭]]・[[輔祭]]がいる。司祭は主教区に属する管轄区において[[奉神礼]]を司祷し、説教、相談等の職務にあたる。輔祭は聖体礼儀や教会の他の職務に際し、また他の教会における働きに際し、主教・司祭の輔佐を行う。輔祭、司祭、主教の順に[[叙聖]]されていくが、司祭と輔祭は輔祭叙聖前であれば妻帯できる(主教は[[修道士]]から選ばれるため独身である)<ref>トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』25頁、西日本主教区(日本正教会)</ref>。
 
{{Main|神品 (正教会の聖職)|教衆}}
 
 
 
== 聖伝 ==
 
正教会において、[[聖伝]]({{lang-el|Ιερά Παράδοση}}<ref name="elorwiki">[http://el.orthodoxwiki.org/%CE%99%CE%B5%CF%81%CE%AC_%CE%A0%CE%B1%CF%81%CE%AC%CE%B4%CE%BF%CF%83%CE%B7 {{lang|el|Ιερά Παράδοση}} - OrthodoxWiki]</ref>, {{lang-ru|Священное Предание}}, {{lang-ro|Sfânta Tradiție}}<ref>[http://ro.orthodoxwiki.org/Sf%C3%A2nta_Tradi%C5%A3ie Sfânta Tradiție - OrthodoxWiki]</ref>, {{lang-en|Holy Tradition}})とは神の民(すなわち'''正教会'''、[[正教徒]])の生活そのものである<ref name="OCAvolumeI">[http://oca.org/orthodoxy/the-orthodox-faith/doctrine/sources-of-christian-doctrine/tradition OCA - The Orthodox Faith - Volume I - Doctrine - Sources of Christian Doctrine - Tradition]</ref><ref name="zb-predanie">[http://www.zakonbozhiy.ru/Zakon_Bozhij/Chast_1_O_vere_i_zhizni_hristianskoj/SvJaschennoe_Predanie/ {{lang|ru|Священное Предание | 《Закон Божий》}}]</ref>。[[聖イウスチン・ポポヴィッチ]]は、聖伝について「[[イエス・キリスト|ハリストス(キリスト)]]にあっての生活=[[至聖三者]]([[三位一体]]の神)にあっての生活、ハリストスにあっての成長=至聖三者にあっての成長」とまとめている<ref>[http://archangelsbooks.com/articles/church/AttributesofChurch.asp The Attributes of the Church, by St. Justin Popovich - ArchangelsBooks.com]</ref>。
 
 
 
聖伝は継続し<ref name="OCAvolumeI" />、教会が[[聖霊|聖神(せいしん、聖霊)]]の導きを受けて生き続けるゆえに、成長し、発展する<ref name="OCJoshie" />。[[セルゲイ・ブルガーコフ]]によれば、「聖伝は今も以前より小さくなることなく恒に続き、私たちは聖伝の中に生き、聖伝を実行する。」<ref name="zb-predanie" />。
 
 
 
聖伝の内容には、具体的には[[聖書]]、[[使徒|聖使徒]]・衆聖人・[[致命者]]・[[聖師父]]達によるの著述や教え及び行動、[[奉神礼]]、初代教会の伝承、[[全地公会議]]の確認事項などが挙げられるが<ref>[http://www.goarch.org/ourfaith/ourfaith8032 Introduction: What Is The Greek Orthodox Church? Greek Orthodox Archdiocese of America]</ref>、聖伝は全てがこれらの具体的な諸事物に還元できるものではない。聖伝は単なる伝達事項や情報を超えている。聖伝は神について私たちに教え神の知識を教えるが、実際に聖伝の生活に入るとはどのような事なのかを理解するのには、神との[[キノニア|交わり(キノニア)]]の直接的体験が必要であるとされる<ref>[http://azbyka.ru/hristianstvo/svyaschennoe_predanie/ {{lang|ru|Священное Предание}}] ({{lang|ru|АЗБУКА ВЕРЫ}}、司祭:オリェグ・ダヴィデニコフ)</ref>。
 
 
 
[[ファイル:Basil-the-Great.jpg|thumb|right|170px|[[カイサリアのバシレイオス|聖大ワシリイ(バシレイオス)]]を画いた細密画([[15世紀]]・[[アトス山]])]]
 
{{Quotation|[[聖霊|聖神(せいしん・聖霊)]]によって与えられるものは、楽園の更新、天国への上昇、子たる身分の更新、神をあえて自分たちの父と呼ぶこと、[[イエス・キリスト|ハリストス(キリスト)]]の恩寵にあずかる者となり、光の子と呼ばれ、永遠の光栄にあずかること、一口に言って、この世においても、また来るべき世においても、ことごとく「満ち溢れる祝福」([[ローマの信徒への手紙|ロマ書15:29]])の中にあること…|[[カイサリアのバシレイオス|聖大ワシリイ(バシレイオス)]]|「聖大バシレイオスの『聖霊論』」山村敬訳、p109([[南窓社]] [[1996年]][[6月30日]]発行 ISBN 9784816501951)より、一部を正教会での用語に換えて引用}}
 
 
 
[[カイサリアのバシレイオス|聖大ワシリイ(バシレイオス)]]による上記の記述は、教会の聖伝について真の「実存的な」面を示している。正教会において聖伝は、固定された教義でもなければ、画一的な奉神礼の実践でもない。確かに聖伝には[[教理]]や奉神礼の定式が含まれるが、それらを超えて教会の日常生活を通して体験される、[[イエス・キリスト|イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)]]の恩寵と、神父(かみちち・父なる神)の仁愛、[[聖霊|聖神(せいしん・聖霊)]]の[[キノニア|交親(交わり・キノニア)]]([[コリントの信徒への手紙二|コリンフ後書13:13]])を通しての神の民の変容があるとされる<ref name="GOAAtradition">[http://www.goarch.org/ourfaith/ourfaith7116 Tradition in the Orthodox Church; Greek Orthodox Archdiocese of America]</ref>。
 
 
 
教会にある全てのものが聖伝とされるわけではない。神の国とは本質的には関係がなく、一部の地域でのみ習慣的に行われているものもある。<ref name="OCJoshie" />教会の中にあるものが聖伝かそうでないかは、「使徒時代に遡るものか(聖書に基礎づけられているか)<ref name="OCJoshie" /><ref name="elorwiki" />」「全ての教会に受け入れられ聖師父によって教えられているか<ref name="elorwiki" />」などによって判断される。なお、全ての聖師父による著述が同等の権威を有するわけではなく、特に重要と判断されるものとそうでないものとがある<ref name="mariyaseishifu">[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/oshie04.html 教え-生神女マリヤ、聖人、聖師父:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。
 
 
 
== 注釈 ==
 
<references group="注釈"/>
 
 
 
== 注・出典 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* [http://www.orthodoxjapan.jp/pdf/new-tebiki.pdf#search=&#39;%E6%AD%A3%E6%95%99%E4%BC%9A+%E5%A4%A9%E4%BD%BF+pdf&#39; 『正教会の手引き』日本ハリストス正教会 全国宣教委員会 2004年11月]
 
** [http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/shinkou01.html 信仰-信経:日本正教会 The Orthodox Church in Japan](内容は上記『正教会の手引き』の改訂前のもの)
 
* 『正教要理』[[日本ハリストス正教会]]教団 昭和55年12月12日第1刷
 
* "The Blackwell Dictionary of Eastern Christianity" Wiley-Blackwell; New edition (2001/12/5) ISBN 9780631232032
 
* [[高橋保行]]『ギリシャ正教』(講談社学術文庫)、1980年。ISBN 4-06-158500-2
 
* [[オリヴィエ・クレマン]]『東方正教会』(クセジュ文庫)、冷牟田修二、白石治朗訳、白水社、1977年。ISBN 978-4-560-05607-3 (4-560-05607-2)
 
* [[イラリオン・アルフェエフ]]著、ニコライ高松光一訳『信仰の機密』[[ニコライ堂|東京復活大聖堂教会(ニコライ堂)]]、2004年。
 
* [[カリストス・ウェア]]論集1、水口優明・松島雄一訳『私たちはどのように救われるのか』日本ハリストス正教会教団、西日本主教教区
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[日本正教会訳聖書]]
 
* [[神品 (正教会の聖職)]]
 
* [[教衆]]
 
  
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Orthodox Church}}
 
 
* [http://www.orthodoxjapan.jp/ 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan] ([[日本ハリストス正教会]] 公式ウェブサイト)
 
* [http://www.orthodoxjapan.jp/ 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan] ([[日本ハリストス正教会]] 公式ウェブサイト)
* [http://nikolaido.jp/link.html 正教会関連リンク集]([[ニコライ堂]]公式サイト内のページ)
 
* [http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/yougoshuu.htm 正教会用語集]([http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/index.htm 大阪ハリストス正教会]内のページ)
 
* [http://www.orthodox-jp.com/pandane/cyril/index.html イコンの在る世界]
 
* [http://www.orthodox-jp.com/maria/index.html 東方正教会の聖歌]
 
* [http://orthodoxwiki.org/ OrthodoxWiki](英語ほか多言語)
 
 
 
{{キリスト教 横}}
 
  
 
{{DEFAULTSORT:せいきようかい}}
 
{{DEFAULTSORT:せいきようかい}}

2018/8/11/ (土) 22:47時点における最新版

キリスト教 > 東方教会 > 正教会

正教会(せいきょうかい、ギリシア語: Ορθόδοξη Εκκλησίαロシア語: Православие英語: Orthodox Church

公式には「正統カトリック教会」,一般には,東方正教会,ハリストス正教会,ギリシア正教会などと呼ばれる。ここでいうギリシアは,民族としての名称ではなく,ラテンに対してギリシア文化を表現する。したがって近代ギリシアにおけるギリシア正教会とは区別される。

ローマ・カトリック教会とともに,現存最古の教会で,最初の7つの普遍公会議で定められた信仰と慣行を遵守する。

1054年ローマコンスタンチノープルをそれぞれ中心として,キリスト教は東西に2つに分れ,東方は正 (統) 教会を主張した。その後,コンスタンチノープルを中心とする宣教によって,ロシア,バルカン諸国のキリスト教化が進み,ビザンチン帝国を背景に,ヘレニズム的色彩の強いキリスト教の伝統が移植された。

今日,コンスタンチノープル (イスタンブール) ,アレクサンドリアアンチオキアエルサレムの四総大主教区が古代以来の伝統を継いで存在し,コンスタンチノープル総大主教がギリシア正教全体の名誉上の首長となっている。

ローマ教皇首位権を認めず,民族主義的傾向が強く,各地方の教会はおおむね自治的で,ロシア正教会はじめ多くの自立教会が連合体を形成している。


外部リンク