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{{Otheruseslist|[[天体]]|暦|月 (暦)|その他|月 (曖昧さ回避)}}
 
{{出典の明記|date=2011-4}}
 
 
{{天体 基本
 
{{天体 基本
 
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| 色 = 衛星
 
| 色 = 衛星
 
}}
 
}}
'''月'''(つき、{{lang-de-short|Mond}}、{{lang-fr-short|Lune}}、{{lang-en-short|Moon}}、{{lang-la-short|Luna}} ルーナ)は、[[地球]]の唯一の[[衛星]](惑星の周りを回る[[天体]])である。太陽系の衛星中で5番目に大きい。地球から見て太陽に次いで明るい<ref name='heibonsha_pedia'>{{Cite book|和書
+
'''月'''(つき、{{lang-de-short|Mond}}、{{lang-fr-short|Lune}}、{{lang-en-short|Moon}}、{{lang-la-short|Luna}} ルーナ)
|author= [[古在由秀]]
 
|chapter= 月
 
|title= 世界大百科事典
 
|publisher= [[平凡社]]
 
|year= 1988
 
}}</ref>。
 
 
 
古くは[[太陽]]に対して'''太陰'''とも、また日輪( = 太陽)に対して月輪(がちりん)とも言った。
 
 
 
== 概要 ==
 
[[太陽系]]の中で[[地球]]に最も近い自然の[[天体]]であり、[[ヒト|人類]]が到達したことのある唯一の地球外天体でもある(「[[アポロ計画]]」を参照)。
 
 
 
地球から見える天体の中では太陽の次に明るく、白色に光って見えるが、これは自ら発光しているのではなく、太陽光を反射したものである。
 
 
 
[[ドイツ語]]では ''{{lang|de|Mond}}''(モーント)、[[フランス語]]では ''{{lang|fr|Lune}}''(リュヌ)、[[英語]]では ''{{lang|en|Moon}}''(ムーン)、[[ラテン語]]では ''{{lang|la|Luna}}''(ルーナ)、[[サンスクリット語]]では ''{{lang|sa|चंद्र}}''(チャンドラ)、[[ギリシャ語]]では''{{lang|el|Σελήνη}}''(セレーネー)と呼ばれる。古くは[[太陽]]に対して'''太陰'''ともいった。[[漢字]]の「月」は三日月の形状から生まれた[[象形文字]]が変化したものである。[[日本語]]では「ツキ」というが、[[奈良時代]]以前は「ツク」という語形だったと推定されている。<!-- これは月そのものの姿と同時に「憑く」という意味を持っており、神や霊が宿る星として考えられてきた。運がいい、等の意味で使われる「ツキがある」なども同じ「ツク」を語源としている。←言語学的に見て誤りなのでコメントアウト。詳しくはノート参照。 -->
 
 
 
また「月」は、広義には「ある[[惑星]]から見てその周りを回る衛星」を指す。例えば、「[[フォボス (衛星)|フォボス]]は[[火星]]の月である」などと表現する{{Refnest|「月」は「他の惑星の衛星」という意味がある<ref>{{Kotobank|月|2=デジタル大辞泉}}</ref>。|group="注"}}。
 
 
 
月は[[天球]]上の[[白道]]と呼ばれる通り道をほぼ4週間の周期で運行する。白道は19年周期で揺らいでいるが、黄道帯とよばれる[[黄道]]周辺8度の範囲に収まる。月はほぼ2週間ごとに黄道を横切る。
 
 
 
[[恒星]]が月に隠される現象を[[掩蔽]]、あるいは[[星食]]という。惑星や小惑星が隠されることもある。[[等級 (天文)|一等星]]や惑星の掩蔽はめったに起こらない。天球上での月の移動[[速度]]は毎時0.5度(月の[[視直径]])程度であるから、掩蔽の継続時間は長くても1時間程度である。
 
 
 
[[暦]]と月の関係は近代に至るまで密接であった。月の《満ち欠け》をもとに決めた暦は[[太陰暦]]と言い、地球から月を見ると月の明るい部分の形は毎日変化し約29.5日周期で同じ形となっており、この変化の周期をもとに暦を決めたものである。歴史的に見ればもともと太陰暦を採用していた地域のほうが多かったのであり、現代でも[[太陽暦]]と太陰暦を併用している文化圏はある。月を基準に決めた暦というのは、[[漁師]]など自然を相手に仕事をする人々にとっては日付がそのまま有用な情報をもたらしてくれるものである。[[日本]]でも、明治5年までは[[太陽太陰暦]]を主として使用していた。明治5年に公的な制度を変えた段階でこれを「[[旧暦]]」と呼ぶようになったが、その後も長らく旧暦のカレンダーは販売され、両方を併用する人々は多かった。今でも一般の[[太陽暦]]のカレンダーに旧暦を掲載したものは広く使われる。
 
 
 
[[日本語]]では暦を読むことを「月を読む」「ツキヨミ([[ツクヨミ]])」「月読」と言った。暦と言えば近代まで太陽太陰暦であったため、暦を読むとはすなわち月を読むことであった{{Refnest|「コヨミ」は「カヨミ(日を読むこと)」が転じた語彙という説が有力である<ref>『神道の本 八百万の神々がつどう秘教的祭祀の世界』 [[学研ホールディングス|学研]]</ref>。|group="注"}}。
 
 
 
{{See also|太陰暦|月 (暦)}}
 
 
 
== 物理的特徴 ==
 
=== 月の性質 ===
 
[[ファイル:Moons of solar system-ja.svg|thumb|400px|主要な太陽系の衛星の比較。他の衛星と比べても月は大きく、月は母惑星地球に対し不釣合いなほど大きな衛星であることが分かる。]]
 
月の直径 (3,474km) は、木星の衛星[[ガニメデ (衛星)|ガニメデ]] (5,262km)、土星の衛星[[タイタン (衛星)|タイタン]] (5,150km)、木星の衛星[[カリスト (衛星)|カリスト]] (4,800km)、[[イオ (衛星)|イオ]] (3,630km) に次ぎ、太陽系の衛星の中で5番目に大きい<ref name="MS70">青木、p70</ref><!--巨大衛星として扱われている-->。また、惑星に対する衛星の直径比率で言えば、月は地球の約1/4であり、ガニメデが木星の約1/27、タイタンが土星の約1/23であるのに比べて桁違いに大きい<ref name="MS70"/>。かつては、衛星が主星の大きさの50%を超える[[冥王星]]と[[カロン (衛星)|カロン]]の組に次いで2番目だったが、冥王星が[[準惑星]]に分類変更されたので、地球と月の組が1番となった。
 
 
 
月はその規模や構造といった物理的性質から、星そのものは[[地球型惑星]]だと考えられている<ref>{{cite web |url=http://www-space.eps.s.u-tokyo.ac.jp/introduction/Solid_planets.htm |title=地球型惑星(固体) - 東京大学 地球惑星科学専攻 宇宙惑星科学講座 |accessdate=2014年7月17日 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140726060746/http://www-space.eps.s.u-tokyo.ac.jp/introduction/Solid_planets.htm |archivedate=2014年7月26日 }}</ref>。ただし軌道の観点ではあくまで「衛星」の範疇であるため、[[惑星の定義|太陽系の8惑星]]を分類する意味で「地球型惑星」と言った場合、月は含めないのが普通である。
 
 
 
従来、地球に対する月は、衛星としては不釣合いに大きいので、[[二重惑星]]とみなす意見もあった。月の[[直径]]は地球の4分の1強であり、[[質量]]でも81分の1に及ぶからである。<!-- 後者を見れば小さいように思えるが、地球-月の系に次ぐものは[[海王星]]に対する[[トリトン (衛星)|トリトン]]の800分の1であり、他の惑星の衛星の場合ははるかに小さいことから、地球-月系の特異さがわかる。 -->月と太陽の見た目の大きさ(視直径)はほぼ等しく、約0.5度である。したがって、他の惑星の場合とは異なり、太陽が完全に月に覆い隠される[[日食#種類|皆既日食]]や、太陽の縁がわずかに隠されずに環状に残る[[日食#種類|金環日食]]が起こる。
 
 
 
月の形状はほぼ球形だが、厳密にはわずかに[[セイヨウナシ]]形をしている。月面の最高点は平均高度より+10.75km、最低点は-9.06kmで、共に裏側にある。[[質量]]はおよそ地球の0.0123倍 (1/81)。[[表面積]](3793万km<sup>2</sup>)は地球の表面積の7.4%に相当し、[[アフリカ大陸]]と[[オーストラリア大陸]]を合わせた面積よりもわずかに小さい。
 
[[ファイル:Earth-Moon.jpg|thumb|center|600px|'''月と地球の距離およびそれぞれの直径''' 月と地球の間の距離は38万4,400km、これに対し地球の直径は1万2,756km、月の直径は3,474km。]]
 
[[ファイル:Lunar libration with phase2.gif|thumb|right|270px|'''月の秤動(ひょうどう)'''この画像は27日分の月の映像を時間を縮めて表示し、月の見かけ上の揺れ([[秤動]])の様子を示す。月が[[楕円軌道]]を巡り地球との距離が変わるので、見かけの大きさも変化する。]]
 
アメリカ合衆国の[[アポロ計画]]やソ連の[[ルナ計画]]で月面に設置された[[コーナーキューブ|反射鏡]]に地球からレーザー光線を照射し、光が戻ってくるのに要する時間を計れば月までの距離を正確に測定できる。この測定は[[月レーザー測距実験|月レーザー測距]](LLR)と呼ばれ、1969年にアメリカの[[マクドナルド天文台]]で初めて行われた。地球中心から月の中心までの平均距離は38万4,403km(約1.3[[光秒]])であり、地球の[[赤道]]半径の約60.27倍である。21世紀に入ってからも各国の天文台で測定が続けられており、月は平均して1年あたり3.8cmの速さで地球から遠ざかっていることが明らかになっている<ref>[http://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEhelp/ApolloLaser.html Apollo Laser Ranging Experiments Yield Results From LPI Bulletin, No. 72, August, 1994]</ref><ref>[http://www.mitsubishielectric.co.jp/dspace/column/c0407_4_b.html アポロから35年。今も続く実験。(三菱電機サイエンスサイト・2004年7月)]</ref>。
 
 
 
月は、太陽系の惑星やほとんどの衛星と同じく、[[天の北極]]から見て反[[時計]]周りの方向に公転している。軌道は円に近い[[楕円]]形。[[自転周期]]は27.32日で、地球の周りを回る[[公転周期]]と完全に同期している([[自転と公転の同期]])。つまり地球上から[[月の裏側]]を直接観測することは永久にできない。これはそれほど珍しい現象ではなく、火星の2衛星、木星の[[ガリレオ衛星]]であるイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星の最大の衛星タイタンなどにも見られる。ただし、一致してはいても、月の[[自転]]軸が傾いていて[[軌道離心率]]が0ではないので、地球から見た月は[[秤動]]と呼ばれるゆっくりとした振動運動を行なっており、月面の59%が地上から観測可能である。逆に、月面からは地球は天空のある狭い範囲(秤動に応じて東西南北およそ±7°程度の範囲<ref>誠文堂新光社『天文年鑑2013』pp.114-117 月の首振り運動(秤動)より、概略数値を提示。</ref>)に留まって見える(一点に静止して見えるわけではない)。特に、[[スミス海]]や[[東の海]]のように地球から見て月の縁に位置する地点では、秤動によって地球から見えたり隠れたりするのに応じて、逆に地球が月の地平線から昇ったり沈んだりして見える<ref group="注">地球から見て月が±7°程度秤動して見える以上、月から見ればその角度だけ地球の視位置が変化していることであり、「月から見て地球は天空の一点に静止して見える」というのは誤りである。特に、秤動により地球から月面の59%が観測できるということは、地球が見えたり沈んだりする月面上の場所も存在することを意味する。月周回軌道の宇宙船や観測機でなくとも、月面上で地球の出・地球の入りは観測できる。ただし、地球で見える日出・日没や月出・月没と違い、地球の出と地球の入りはほぼ同じ方位となる。</ref>(「[[地球の出]]」の画像は[[月周回軌道]]を回る宇宙船や観測機から撮られた物である)。
 
 
 
2014年5月に発表された研究成果によれば、40億年前の月の自転軸は現在の自転軸と比べると数十度ずれていた事が分かったと発表された<ref name="2014spin">{{Cite web|url= http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2014/2014_05_02.pdf|title= 40億年前の月自転軸は数十度ずれていた|date= 2014-05-02|accessdate= 2014-06-28|format= PDF|publisher= [[九州大学]]|archiveurl= https://web.archive.org/web/20160304192740/http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2014/2014_05_02.pdf|archivedate= 2016年3月4日|deadlinkdate= 2017年10月}}</ref>。
 
 
 
月内部の構造はアポロ計画の際に設置された[[月震]]計で明らかになった。中心から700 - 800kmの部分は[[液体]]の性質を帯びており、液体と[[固体]]の[[境界]]付近などで[[マグニチュード]]1 - 2程度の深発月震が多発している。また、浅発月震と呼ばれる地下300km前後を震源とする地震は、マグニチュード3 - 4にもなるが、発生原因の特定はできていない。表面から60kmの部分が地球の[[地殻]]に相当し、[[長石]]の比率が高い。いわゆる[[地球型惑星]]と同様に[[岩石]]と[[金属]]からなり、深さによって成分が異なる(分化した)天体である。
 
 
 
月は[[ナトリウム]]や[[カリウム]]などからなる[[大気]]をもつが、地球の大気に比べると10<sup>17</sup>分の1(10京分の1)ほどの希薄さであり、表面は実質的に[[真空]]であるといえる。したがって、[[気象]]現象が発生しない。月面着陸以前の[[望遠鏡]]の[[観測]]からも月には大気がないと推定されていたが、[[1980年代]]に[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]によって実際は希薄ながらも大気が存在することが確認された。
 
 
 
[[水]]の存在も21世紀初頭まで確認されていなかったが、[[2009年]]11月にNASAによって南極に相当量の水が含まれることが確認された。ただし、水は極地に[[氷]]の形で存在するだけであって、[[熱水]](鉱化溶液)による元素の集積は起きないとされていて、[[鉱山|鉱脈]]は存在しないと推定されている。また現在は地質学的にも死んでいて、[[マントル]]対流も存在しないが、少なくとも25億年前までは[[火山]]活動があったことが確認されている。[[チタン]]などの含有量は非常に多い。地球のような液体の金属核は存在しないと考えられている。
 
 
 
[[磁場]]は地球の約1/10,000ときわめて微弱である。月全体では磁場が存在せず、局所的に、磁場が異常に強い地域と弱い地域が混在している<ref>{{Cite web|url=http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2014/takahasi/index.shtml |title=磁場で捉えた月のダイナモと極移動の痕跡 / 宇宙科学の最前線 |author=高橋太 |date=2014 |work= |publisher=JAXA |accessdate=2017-06-17 }}</ref>。月はかつて全体的に磁場をもっていたが、液体の金属核の凝固に伴って、全体的な磁場もなくなり、局所的な磁場だけが残ったと考えられている。2014年5月に発表された研究成果によれば、現在の月には大規模な磁場はないが、約40億年前の月中心部では溶けた鉄が活発に運動し磁場を発生させていたことがわかった<ref name="2014spin" />。
 
 
 
=== 月の表面 ===
 
{{出典の明記|section=1|date=2011-4}}
 
[[File:Moon nearside LRO.jpg|thumb|表側(地球から見える側)]]
 
[[File:Moon Farside LRO.jpg|thumb|裏側 黒っぽく見える海が少ない]]
 
[[File:The Moon's North Pole.jpg|thumb|月の北極周辺 夏期 [[ルナー・リコネサンス・オービター]]による写真の合成イメージ]]
 
[[File:Moon South Pole.jpg|thumb|月の南極周辺(南緯70-90度)[[クレメンタイン (探査機)]]による写真の合成イメージ 常に日光が当たらない領域(永久影)が中心のクレーター内に見られる。]]
 
 
 
月の表側(地球から観測される側)の北緯60度 - 南緯30度にわたる領域は光をあまり反射せず黒く見えることから、[[月の海|海]]と呼ばれている。海は月表面の35パーセントを占めるが、月の裏側にはほとんど存在せず、[[高地]]と呼ばれる急峻な地形からなる。月の海は、まだ内部が熱く溶け、地表の下に[[溶岩]]がある時代に[[隕石]]の衝突によって生じた[[クレーター]]の底から[[玄武岩]]質の[[溶岩]]がにじみ出てクレーターが埋められたものとされている。約20kmの厚みがある冷えて固まった黒っぽい玄武岩の層で覆われているために光をあまり反射せず、他と比べて暗く見える。{{要出典範囲|表側にのみ海が存在するのは、そちら側に集中して熱を生み出す[[放射性物質]]が存在したためであるとか、また、地球からの[[重力]]の影響により、より強い重力の働く地球側でのみ溶岩が噴出したためとする説も存在するが、現在のところ定説はない。|date=2011-4}}
 
 
 
海以外の部分は、小石が集まった[[礫岩#角礫岩|角礫岩]]から構成されている。これは太陽系初期から残った[[微惑星]]の衝突によって生じたものである。月には大気や水がほとんど存在しないため、地球では大気の[[断熱過程|断熱圧縮]]で[[流星]]となって燃え尽き、地表に到達しない微小な隕石も、月ではそのまま月面に衝突してクレーターをつくる。また水や風による[[浸食]]や[[地殻変動]]の影響を受けることもないので、数多くのクレーターがそのまま残る。
 
 
 
[[宇宙線]]や[[太陽風]]なども大気や[[磁場]]にさえぎられることなく月面に到達するため、月面の有人探査やあるいは将来の[[月面基地]]建設、[[月の植民]]に際しては、これらを防ぐ必要がある。大気がほとんどないため、赤道付近で昼は110℃、夜は-170℃と温度の変化が大きい<ref>{{Cite web|url=http://www.jaxa.jp/countdown/f13/special/moon_j.html|title=もっと知りたい! 「月」ってナンだ!?|accessdate=2015-12-23|publisher=JAXA}}</ref>。なお、月の公転周期が約27.3日であるのに対して、満ち欠けが約29.5日となっているのは、月が公転する間地球も太陽の周りを公転しており、その分余計に公転しなければならないためである<ref>{{Cite web|url= http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CECBFEA4C1B7E7A4B12FBCFEB4FC.html|title= 月の満ち欠け/周期|accessdate= 2015-12-23|publisher= [[国立天文台]]}}</ref>。
 
 
 
月面は砂([[レゴリス]])によって覆われている。レゴリスは隕石などによって細かく砕かれた石が積もったものであり、月面のほぼ全体を数十cmから数十mの厚さで覆っている。より新しいクレーターなどの若い地形ほど層が浅い。その粒子は非常に細かく、[[宇宙服]]や精密機械などに入り込みやすく、問題を起こす。しかしその一方でレゴリスの約半分は[[酸素]]で構成されており、酸素の供給源や[[建築]]材料としても期待されている。また[[太陽風]]によって運ばれた[[水素]]や[[ヘリウムの同位体|ヘリウム3]]が分布密度は小さいものの吸着されており、[[核融合]]燃料になると考えられている。
 
 
 
[[両極]]付近のクレーター内には「永久影」と呼ばれる常に日陰となる領域があるため、氷が存在している可能性が高いと言われている。
 
 
 
2009年9月、無人月探査機[[チャンドラヤーン1号]]([[インド宇宙研究機関|ISRO]]:[[インド]])および土星探査機[[カッシーニ (探査機)|カッシーニ]]と彗星探査機[[ディープ・インパクト (探査機)|ディープ・インパクト]](いずれも[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]:[[アメリカ合衆国|アメリカ]])の3[[宇宙探査機|探査機]]によって、月に水もしくは水の基となる[[ヒドロキシ基]]が存在していることが確認されたと発表された。存在範囲は月面全体に薄く広がっている状態で、月において水もしくはヒドロキシ基を約1リットル集めるのに、月の土壌約0.76立方メートルが必要だと試算されている。確認された水もしくはヒドロキシ基は、太陽風によって運ばれた水素[[イオン]]が月面にある酸素を含んだ鉱物や[[ガラス]]様物質に衝突した結果生じたものと考えられ、将来の月面探査・月面[[基地]]計画において、抽出して水素と結合すれば[[真水]]を生成可能とされている<ref>[http://www.sciencemag.org/ 学術誌「Science Express」webサイト版] 2009年9月24日付 掲載。</ref><ref>{{Cite news|date=2009-09-24|newspaper=朝日新聞|title=月面、水が存在か 今も太陽側で生成? 3探査機観測|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100213030246/http://www.asahi.com/science/update/0924/TKY200909240094.html|url=http://www.asahi.com/science/update/0924/TKY200909240094.html|accessdate=2009-10-16|archivedate=2010年2月13日|deadlinkdate=2017年10月}}</ref>。
 
 
 
同年[[10月9日]]、NASAの月探査機[[エルクロス]]が月の南極付近にあるカベウスクレーターに衝突した。衝突による閃光や噴出物を観測したところ、上層部分からは細かいチリや[[水蒸気]]が、下層部分の土砂からも水分が確認された。合計水分量は約95リットルだという。
 
 
 
同年[[10月24日]]、[[宇宙航空研究開発機構]] (JAXA) は、月探査機[[かぐや]]が撮影した画像の解析で、月の表側にある平地「[[嵐の大洋]]」の中央部にあるマリウス丘に月面初となる地下[[溶岩トンネル]]に通じる縦穴を発見したと発表した。今回発見された縦穴は「嵐の大洋」において火山活動が活発だったことが分かっている地点に存在しており、直径約70m、深さ約90mの垂直な穴で、穴底部分は少なくとも横幅400m、内高20mを超える[[トンネル]]になっているとしている。JAXAは、今回の発見は将来的な有人探査において天然の基地としての有力候補になったとしている<ref>[http://www.isas.ac.jp/j/topics/topics/2009/1105.shtml SELENE(かぐや)搭載カメラによる月面の縦穴発見] 宇宙科学研究所、2009年11月5日</ref>。
 
 
 
[[2010年]][[9月7日]]、NASAによって、月面において初となる「天然の橋」が確認された<ref>[http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3110/?ST=m_news 月面に天然橋、LROが発見] ナショナルジオグラフィック</ref>。NASAの[[ルナー・リコネサンス・オービター]] (LRO) のカメラ (LROC) が撮影に成功し、その画像が公開された。画像では、橋の右側くぼみから橋下を通過した光が、左側くぼみの底に三日月形に映っている姿をとらえている。地球上においては風や水による浸食現象で形成される[[天然橋|自然橋]]だが、月面で見られるこのような地形は、通常、太古の火山活動によってできた溶岩洞が崩落した結果と考えられている。ただし、今回発見されたケースでは、この天然の橋は溶岩洞の崩落によるものではなく、クレーターを形成した隕石の衝突熱で岩が融解して形成されたものと考えられている<ref>[http://www.nasa.gov/lro/ NASA - Lunar Reconnaissance Orbiter (LRO)] {{en icon}}</ref>。
 
 
 
=== TLP ===
 
月面に一時的な発光現象が起こることがあり、[[一時的月面現象]] ({{lang-en|TLP, Transient Lunar phenomena)}} と呼ぶ。過去数百年の間に地球上からおよそ1500件の観測報告がなされているが、錯覚によるものや望遠鏡の鏡筒内異物による乱反射であったり、レンズの色収差など観測者側に何らかの原因がある場合の誤認が多いとされている<ref name="NHK.cfn150409">[http://www.nhk.or.jp/cosmic/broadcast/150409.html 月のミステリー 奇妙な発光現象の正体は?] NHK  コズミック フロント☆NEXT</ref><ref name="ies.26"/>。
 
 
 
実際に生じている月面での発光現象の原因として明らかになっているものが幾つかある。
 
# 隕石の衝突<ref>{{PDFlink|[http://edu.jaxa.jp/himawari/pdf/2_moon.pdf 月面の環境(レゴリスを中心に)]}} JAXA 宇宙教育センター</ref> - 規模や持続時間の点からTLPは隕石衝突と区別される<ref name="TLP" />。
 
# 月、太陽、地球の位置関係 - 月面斜面に横から太陽光線が当たると地形・高低差によりそれまでは太陽光を反射していなかった場所で反射が生じ発光しているように見える<ref name="NHK.cfn150409" />。
 
# レゴリス - 太陽風によって帯電したレゴリスが舞い上がる<ref>[http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.288/mission-18.html 小型衛星によるLTPおよび高速衝突発光現象観測の提案] ISASニュース 2005.3 No.288</ref>。
 
# ガス噴出 - 月の地殻に含有されている[[ウラン]]({{sup|238}}U)が核分裂を起こし分裂生成物である[[ラドン]]({{sup|222}}Rn)ガス噴出に伴う発光<ref name="ies.26">[http://www.ies.or.jp/publicity_j/mini_hyakka/26/mini26.html 謎の発光現象-TLP] 環境科学技術研究所</ref>([[第18族元素]]の特徴的性質)。特に[[アリスタルコス]]・クレーター付近で顕著な現象。ガスの噴出は地表近くに溜まったガスが突発的に月面の砂を巻き上げるもので、[[アポロ計画]]で発見された月面上のガスの漏出地点と、TLPが頻発に報告される地域が一致するという研究がある<ref name="TLP">{{cite news
 
|author      = Richard Lovett
 
|date        = 2009-03-03
 
|title        = 400年来の謎、月面の発光現象解明へ
 
|url          = http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=18981431&expand
 
|publisher    = ナショナルジオグラフィック ニュース
 
|accessdate  = 2010-08-31
 
|archiveurl  = https://web.archive.org/web/20100109163304/http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=18981431&expand
 
|archivedate  = 2010年1月9日
 
|deadlinkdate = 2017年10月
 
}}</ref>。
 
 
 
=== 月の影響 ===
 
月の[[重力]]は地球に影響を及ぼし、潮の満ち引きを起こす([[潮汐]]作用)。なお、月よりも格段に大きい質量を持つ太陽も潮汐作用を起こし地球に潮汐力を及ぼすが、地球からの距離が月より遠距離にあるため、その影響力は月の力の半分程度である(潮汐力は距離の3乗に反比例する<ref>[http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2004/pdf/200407art5.pdf 天文月報2004年7月号]430p [[国立天文台]] [[小久保英一郎]]</ref>)。
 
 
 
月の潮汐作用により、主に海洋と海底との摩擦(海水同士、地殻同士の摩擦などもある)による熱損失から、地球の自転速度がおよそ10万年に1秒の割合で遅くなっている。また、重力による地殻の変形を介して、地球-月系の角運動量は月に移動しており、これにより、月と地球の距離は年間約3.8cmずつ離れつつある<ref name="MS140">青木、p140</ref>。この角運動量の移動は、地球の自転周期と月の公転周期が一致<!-- {{要出典範囲|(約47日)|date=2011-4}} -->するまで続くと考えられるが、そこに至るまでにはおよそ50億年を要する<ref name="MS140" />。
 
 
 
逆に言えば、かつて月は現在よりも地球の近くにあり、より強力な重力・潮汐力の影響を及ぼしており、また地球(および月)はより早く回転していた。[[サンゴ]]の化石の調査によれば、そこに刻まれた日輪([[年輪]]の日版)により、4億年程前には1日は約22時間で、1[[年]]は400日程あったとされる<ref name="MS140" />。<!-- {{要出典範囲|また、今よりもずっと強い潮汐作用(距離の3乗に反比例する)が働いており、大きな干満の差は海を攪拌して[[生命]]の誕生に寄与したり、[[進化]]に影響を与えていたのではないかと考えられている|date=2011-4}}。 -->
 
<!-- {{要出典範囲|また、月の存在は地球の[[地軸]]の傾きを安定させていると考えられる。もし月がなかった場合には、地球の地軸の傾きは現在と比較して劇的に変化し、それに伴って激しい[[気候]]変動が発生することや、またそのため生物が現在のように発達できなかった可能性も指摘されている。|date=2010年11月}} -->
 
 
 
== 視覚的特徴 ==
 
{{出典の明記|section=1|date=2013年4月3日 (水) 07:38 (UTC)}}
 
[[ファイル:Moon and red blue haze.jpg|thumb|180px|left|地表近くの満月]]
 
月の明るさは満月で-12.7[[等級 (天文)|等]]、半月でも-10等前後に達し、夜間における最も明るい天然[[光源]]である。
 
 
 
地球上から月を観察すると、月の大きさが変わっているように見えることがある。空高くに位置する場合と地平線または水平線近くに位置する場合とは、明らかに大きさに変化があり、前者の場合は小さく見え、後者の場合は大きく見える。
 
 
 
この現象は人間の目の[[錯覚]]によるものである。<!-- 心理学的な観点では地平線上には地球の大地(または海)という大きな物体が存在し、さらに木や建物、山などの物体も存在する。これらと月が同じ視野に入って見える場合、人間は無意識的にこれらの物体と月を比較し、月を大きく見ているというものである。
 
 
 
月とその周りの空しか視野に入らないような十分細長い筒(無ければ手のひら丸めてもよい)を通して地平線近くの月を見ると、大きさが極端に小さく見え、空高くに位置する月と同じになってしまう。このことから、地平線近くの月が巨大に見えるのが「錯覚」であることが確認される。 -->カメラとは異なり、人間の目は視界に入るすべての物体を鮮明に見るべく、常に焦点位置を調節し、脳で画像を合成している。このため近場から遠方に連なる風景の先端に月が見える場合,ズームレンズを動かしながら見るように、人の認識する月が巨大化する。逆に空高くに位置する場合は、比較となる対象物が存在しないために、小さく(実質的な目視上のサイズとして)見えるのである。
 
 
 
実際の月の視直径は、腕を伸ばして持つ[[五円硬貨|五円玉]]の穴の大きさとほぼ同じである。空高くに位置する時の小さな姿は、五円玉の穴にその全てが収まってしまいそうに見える。[[地平線]]近くにある大きな月の場合は、五円玉の穴に入りそうもなく思えるが、実際は小さな月と同じように五円玉の穴に全てが収まってしまう。
 
 
 
なお、月の公転軌道は楕円形であり近地点約36万kmに対して遠地点約40万kmであるため、見かけの大きさは月の軌道上の位置により実際に変わる。また、赤道上の地上から見ると一日のうちでも厳密には距離が変化する。月を天頂付近に見る時が一日のうちで最も月に近く、月を地平線付近に見るときは、それよりもおよそ地球の半径(約6,000km)離れるので、それだけ僅かに小さく見える。
 
 
 
月は一時間あたり、恒星に対して東へ0.5度強だけ動いていき、24時間では13度である。つまり、毎夜、月は前の夜より13度だけ東へ動いていく<ref>「天文学入門 星とは何か」、[[丸善出版]]、P35 ISBN 978-4-621-08116-7</ref>。
 
 
 
[[ファイル:Earthshine 2005-09-01.jpg|thumb|250px|地球照]]
 
[[ファイル:Earthshine diagram.png|thumb|300px|地球照の仕組み]]
 
太陽光が当たっていない、欠けた部分も肉眼でもうっすらと見えることがあるが、これは'''[[地球照]]'''(ちきゅうしょう、earthshine)と呼ばれるもので、地球で反射した太陽光が月を照らすことによって生じるものである。月は大気や雲がなく岩石のみであり、満月が明るく見えるといっても、月の[[アルベド]](太陽光を反射する割合)は7%程である。それに対して地球(満地球)は面積で約16倍大きく、また、アルベドが20-30%(雲や氷雪が良く光を反射する)であり、地球の方がずっと強い光を放っている。肉眼での確認が容易な期間は、新月を挟む月齢27から<!--3-->2(三日月)前後の、月の輪郭が小さな時である。ただし新月の際には目印となるものがなく、発見が困難である。もっとも、[[皆既日食]]の際には地球照の確認が可能で、写真撮影すれば地球照で地形の見える月の周囲に太陽のコロナが写る。また、半月くらいになれば肉眼で地球照を確認することは難しいが、露出時間を長くして影の部分を写真撮影すれば地球照が写る。
 
 
 
月の出・月の入りの頃などに赤い月が観測されることがあるが、これは朝焼けや[[夕焼け]]と同様の原理で、月が地平近くにあることから月からの光が大気の中を長く通り、赤以外の[[光]]が散乱してしまうことによる。月食によっても発生することがある。
 
 
 
月の公転軌道は地球の公転軌道に対して5度ほど傾いている。この傾きが周期的に月食・日食を引き起こしている<ref>「天文学入門 星とは何か」、[[丸善出版]]、P44 ISBN 978-4-621-08116-7</ref>。
 
 
 
== 月の起源 ==
 
=== 古典的学説 ===
 
月がどの様につくられ、地球を巡る様になったかについて古くは3つの説が唱えられてきた。
 
* 親子説(分裂説・出産説・娘説)
 
*: 自転による[[遠心力]]で、地球の一部が飛び出して月になったとする説。
 
* 兄弟説(双子集積説<ref>{{Cite web|url= http://moonstation.jp/ja/qanda/Q030|title= 月の誕生について、巨大衝突説(ジャイアントインパクト説)は本当に正しいのでしょうか?その根拠はどのようなものなのでしょうか?|accessdate= 2014-09-14|publisher= 月探査情報ステーション|archiveurl= https://web.archive.org/web/20160304075202/http://moonstation.jp/ja/qanda/Q030|archivedate= 2016年3月4日|deadlinkdate= 2017年10月}}</ref>・共成長説)
 
*: 月と地球は同じガスの塊から、同時に作られたとする説。
 
* 他人説(捕獲説・配偶者説)
 
*: 別の場所で形成された月と地球が偶然接近した際、月が地球の引力に捉えられたとする説。
 
 
 
だが、いずれの説も現在の月の力学的・物質的な特徴を矛盾なく説明することができなかった。まず、親子説では地球-月系の現在の全[[角運動量]]を原始の地球だけが持っていたとは考えにくかったし、他人説では広い宇宙空間を行く月が地球から丁度良い距離に接近して引力に捉えられる可能性が低かった。[[アポロ計画]]により採取された[[月の石]]の分析結果から地球の[[マントル]]と月の石の化学組成や[[酸素同位体]]比が似ている事が判明したが、兄弟説や他人説ではそうなる理由を説明できなかった。一方で、[[月の石]]の[[放射性炭素年代測定]]により、月は約45億5000万年前に誕生し、また35億年前までは小天体の衝突が多発していたことが判明した。それらを踏まえ、有力とされるようになったのが巨大衝突説である。
 
 
 
=== 巨大衝突説 ===
 
巨大衝突説([[ジャイアント・インパクト説]])は、月は地球と他の天体との衝突によって飛散した物質が地球周回軌道上で集積してできたとする説である。この説は、地球がほぼ現在の大きさになった頃、[[火星]]程の大きさの天体 ([[テイア (仮説上の天体)|テイア]]) が斜めに地球へ衝突し、その衝撃で[[蒸発]]・飛散した両天体のマントル物質の一部が地球周回軌道上で集積して月が形成されたとする。
 
 
 
この説を用いると、以下のことが説明できる。
 
* 月の質量が現在程度になること。
 
* 地球・月系の全角運動量が現在程度でも不思議はないこと。
 
* 月の[[比重]] (3.34) が地球の大陸地殻を構成する[[花崗岩]](比重1.7 - 2.8)よりも大きく、海洋地殻を構成する[[玄武岩]](比重2.9 - 3.2)に近いこと。
 
* 地球と比べて[[揮発性]][[元素]]が欠乏していること。月形成環境が高温であったことで説明できる。
 
* 月の[[核 (天体)|コア]]が小さいこと。地球やテイアのマントルを主とする軽い物質が集積したとすれば説明できる。
 
一方で、詳細な計算によると月岩石の同位体比は巨大衝突説で説明しづらいことが示されている。巨大衝突説の数値計算結果から、月の成分の5分の1は地球に由来し、残る5分の4は衝突天体の物質が寄与することが分かっている。しかしながら、実際には、地球と月の岩石の酸素等の同位体比はほぼ同一であることが知られていて、巨大衝突説には物質科学的な困難が存在する。このことから、次の複数衝突説が提唱されている<ref name="AFP20170110">{{Cite news |title=月の起源、「巨大衝突」ではなかった? 定説覆す論文発表 |newspaper=AFP通信 |date=2017-01-10 |author= |url=http://www.afpbb.com/articles/-/3113531|accessdate=2017-01-10}}</ref>
 
 
 
 
=== 複数衝突説 ===
 
複数衝突説は、月は巨大衝突説が唱えるように1回の大規模衝突によって形成されたのではなく、微惑星の小さな衝突が20回程度繰り返されて月形成がなされたとする説である。このシナリオでは、衝突のたびに原始地球の周囲にデブリ円盤が形成され、円盤物質の集積で小衛星が形成される。こうした小衛星の数々は最終的に合体し、単一の月が形成される<ref name="AFP20170110"/><ref name=":0">Raluca Rufu, Oded Aharonson & Hagai B. Perets (2017), "A multiple-impact origin for the Moon", Nature Geoscience.</ref>。
 
 
 
複数衝突説によると、単独の衝突よりも地球から多くの物質がえぐり取るような衝突が考慮できる。これに加えて、多数の小衛星組成の平均が最終的な月組成となることから、単一衝突シナリオよりも月組成を地球に類似させやすいとされる<ref name="AFP20170110" /><ref name=":0" />。また、月質量以上の周地球デブリ円盤を作る必要がないため、単一の衝突で月を作るよりも緩い条件で月形成を達成できるという利点もある<ref name=":0" />。
 
 
 
なお、巨大衝突説や複数衝突説以外の月の形成に関する新たな学説として「月は2つあった」とする学説が提示されている<ref>[http://www.nature.com/news/2011/110803/full/news.2011.456.html Early Earth may have had two moons] nature</ref>。
 
 
 
== 月齢と呼び名 ==
 
[[ファイル:Mond Grafik.svg|thumb|right|400px|中心の青い球体が[[地球]]、図の右方に[[太陽]]があり、地球の周りに配置される球体が1ヶ月間に[[公転]]する月の位置を示す。図の1の球体が'''朔'''の月の位置を示す。地球から見て、月と太陽が同じ方向にある。図の3の球体が'''上弦'''、図の5が'''望'''、図の7が'''下弦'''の月の位置をそれぞれ示す。]]
 
地球から見て、太陽と月が同じ方向にある瞬間を、'''[[朔]]'''(さく)又は'''新月'''という。日本や中国の旧暦で用いられた[[太陰暦]]・[[太陰太陽暦]]では、朔を含む日を月初(第1日)とする<ref group="注">太陰暦をもとにした[[ローマ暦]]では、月初を「カレンダエ (Kalendae)」、月の第13日又は第15日を「イードゥース (Īdūs)」、その9日前の第5日又は第7日を「ノーナエ (Nōnae)」と呼び、この3日を特別視した。ただし、ローマ暦における月の第1日は、必ずしも新月とは一致しない(参照:[[ローマ暦#ローマ暦の日付の数え方]])。</ref><ref group="注">太陰太陽暦をもとにした[[ユダヤ暦]]では、月の第1日を「[[ローシュ・ホーデッシュ]] [[:en:Rosh Chodesh|Rōš Hōdheš]]」と呼んだ。</ref>。
 
 
 
朔からの経過時間を日単位で表した数値を'''[[月齢]]'''という。朔の瞬間を月齢0として、朔を含む日(朔日)を「[[1日]]」とするため、日本で用いられる旧暦の日付は、その日の午前0時の月齢に1を足したものとなる<ref group="注">ただし、朔日を除く。朔日の午前0時時点では朔を迎えていないため、いまだ月齢0となっていないからである。</ref>。なお、通常、カレンダー等で示される月齢は、当日[[正午]]時点の数値である。例えば、2009年9月19日は[[日本標準時]]午前3時44分に朔となるため、この時点が月齢0となり、同日は旧暦8月1日となる。朔から24時間後の同年9月20日午前3時44分には月齢1となる。カレンダー等で示される月齢は、それぞれ正午時点での数値となるため、2009年9月19日は月齢0.3、翌20日の月齢は1.3となる。
 
 
 
月には、[[月相]](月の満ち欠け)に応じて、様々な名称がある。まず、天文学的に用いられる名称としては、「'''朔'''、'''上弦'''、'''望'''、'''下弦'''」の4つがある。太陽と月の黄経差が、それぞれ0度の状態を朔、90度を上弦、180度を望、270度を下弦と呼ぶ。なお、月相は通常0度から360度までの角度で示されるが、月齢との比較を容易にするため、0度から360度までの角度を0から28までの整数の値に換算して示すことがある。この場合、朔は0、上弦は7、望は14、下弦は21となる。この月相の数値と月齢は必ずしも一致しない(詳細は[[月相]]を参照)。
 
 
 
このほか日本では、旧暦の日付に対応する名称([[三日月]]、十三夜の月、[[十五夜]]の月、十六夜の月など)や月が見える時間帯に関する名称(立待月、居待月、寝待月、夕月、有明月など)、形状に対応する名称([[満月]]、[[弦月]]、半月、弓張月など)、年中行事に関連する名称(芋名月、栗名月)など、月には多くの名称(月名、げつめい)がある。
 
 
 
[[旧暦]][[15日]]の月(ほぼ満月)は日没頃に昇り、以後数日間も夜間に上るため[[月見]]に適しており、特に様々な名称が付された。日没後しばらくしてから上る旧暦[[16日]]の月は「いざよい」(ためらう、なかなか進まないの意)、以後、「立待」(立って待っていると出てくる)、「居待」(座って待っていると出てくる)、「寝待」(寝て待っていると出てくる)、「更待」(ふけまち。夜が更けてから出てくる、あるいは更に待つと出てくる)と、月の出が遅くなるごとにふさわしい名称が付けられている。なお、「夕月」は日没前後に見える月の総称であり、「有明の月」は[[明け方]]になってもまだ残っている月の総称である。
 
 
 
月は毎日平均約50分ずつ遅れて出るため、「月の出」がない日や1日に2回起こる日がある。そのため、月の呼び名は、旧暦の日付ではなく'''朔日を1とする「月の出」の回数(月の出数)'''によって決められる。そうしないと欠番が出たり、同じ月でも地域により呼び名が異なったりするからである。なお、月の出の時刻が0時前後になる旧暦の24日ごろ以降は、'''旧暦の日付と月の呼び名が1日ずれる'''ので注意が必要である。「月の出がない日」といっても、その日に「月の出」がないだけで月が見えないわけではない。その日が始まる午前0時には既に月が出ているので、東から月が出る「月の出」がないのである。
 
{| class="wikitable"
 
|-
 
!月相!!およその月齢!!月の出数!!主な名称
 
|-
 
!0・[[朔]]
 
|0||1||新月
 
|-
 
!1
 
|1||2||二日月、既朔(きさく)
 
|-
 
!2
 
|2||3||[[三日月]](みかづき)
 
|-
 
!7・[[弦月|上弦]]
 
|7.5||7||半月、七日月、弓張月
 
<!---- | 9 || 10 || || 十日夜(とうかんや) これは10月10日の月のこと -->
 
|-
 
!12
 
|12||13||十三日月、十三夜月<!-- 、後の月(のちのつき) これは9月13日の月のこと -->
 
|-
 
!13
 
|13||14||十四日月、小望月(こもちづき)、幾望(きぼう)、待宵の月(まつよいのつき)
 
|-
 
!14・望
 
|14||15||十五日月、十五夜<!-- 、中秋の名月 8月15日の月のこと -->、望月(もちづき)、[[満月]]<ref group="注">必ず十五夜に満月(望)になるわけではない。太陰太陽暦では、15日と16日とが半々くらいである。たまに、17日の未明が満月になることがある(例えば、2015年6月3日)。</ref>
 
|-
 
!15
 
|15||16||十六夜(いざよい)、十六日月、既望(きぼう)
 
|-
 
!16
 
|16||17||十七日月、立待月(たちまちづき)
 
|-
 
!17
 
|17||18||十八日月、居待月(いまちづき)
 
|-
 
!18
 
|18||19||十九日月、寝待月(ねまちづき)、臥待月(ふしまちづき)
 
|-
 
!19
 
|19||20||二十日月、更待月(ふけまちづき)
 
|-
 
!21・[[弦月|下弦]]
 
|22.5||23||半月、二十三日月、弓張月
 
|-
 
|}
 
{| class="wikitable" style="text-align:center; "
 
|+'''月の出入り時刻の例'''(2009年9月、時刻は[[日本標準時]])
 
|-
 
!rowspan="2"|日付<br />(旧暦)!!rowspan="2"|{{nowrap|月齢<ref>日本標準時正午時点の月齢。</ref>}}!!colspan="4"|東京!!colspan="4"|京都!!rowspan="2"|説明
 
|-
 
!月の出!!月の入り!!月の出!!月の出数!!月の出!!月の入り!!月の出!!月の出数
 
|-
 
!9月10日<br />{{nowrap|(7月22日)}}
 
|20.7|| ||10:45||20:46||22|| ||10:59||21:04||22||style="text-align:left;"|[[東京]]・[[京都]]とも、前日に出た月が午前10時台に没し、午後 9時頃にまた出てくる。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は1増える。
 
|-
 
!9月11日<br />(7月23日)
 
|21.7|| ||11:51||21:37||23|| ||12:05||21:55||23||style="text-align:left; "|東京・京都とも、前日に出た月が正午頃に没し、午後 9時台にまた出てくる。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は1増える。
 
|-
 
!9月12日<br />(7月24日)
 
|22.7|| ||12:54||22:36||24|| ||13:08||22:55||24||style="text-align:left; "|'''下弦'''。半月。<br />東京・京都とも、前日に出た月が午後 1時頃に没し、午後10時過ぎにまた出てくる。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月13日<br />(7月25日)
 
|23.7|| ||13:51||23:44||'''25'''|| ||14:06|| ||-||style="text-align:left; "|東京では、前日に出た月が午後 2時前に没した後、当日中に再び出てくる。そのため、「月の出数」は 1増える。これに対して京都では、前日に出た月が午後 2時過ぎに没した後、当日中には再び月が出てこない。そのため、「月の出数」は増えない。
 
|-
 
!9月14日<br />(7月26日)
 
|24.7|| ||14:42|| ||-||0:02||14:56|| ||'''25'''||style="text-align:left; "|東京では、前日に出た月が午後 2時過ぎに没した後、当日中には再び月が出てこない。そのため、「月の出数」は増えない。これに対して京都では、未明に出た月が午後 3時前に没している。そのため、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月15日<br />(7月27日)
 
|25.7||0:55||15:25|| ||26||1:14||15:40|| ||26||style="text-align:left; "|東京・京都とも、未明に出た月が午後 3時台に没する。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月16日<br />(7月28日)
 
|26.7||2:08||16:02|| ||27||2:27||16:18|| ||27||style="text-align:left; "|東京・京都とも、未明に出た月が午後 4時台に没する。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月17日<br />(7月29日)
 
|27.7||3:21||16:36|| ||28||3:39||16:51|| ||28||style="text-align:left; "|東京・京都とも、未明に出た月が午後 4時台に没する。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月18日<br />(7月30日)
 
|28.7||4:32||17:07|| ||29||4:49||17:23|| ||29||style="text-align:left; "|東京・京都とも、未明に出た月が午後 5時台に没する。「月の出」は 1回なので、「月の出数」は 1増える。
 
|-
 
!9月19日<br />(8月1日)
 
|0.3||5:42||17:37|| ||'''1'''||5:58||17:54|| ||'''1'''||style="text-align:left; "|'''朔'''。新月。<br />東京・京都とも、日の出後に出た月が午後 3時台に没する。朔となったので「月の出数」は、 1に戻る。
 
|}
 
 
 
[[和暦]]や[[中国暦]]の[[太陰太陽暦]]では、月の約29.5日の周期を大の月(30日間)と小の月(29日間)で調整する。このため、毎年月ごとの日数が異なり、煩雑で記憶できない。そこで、毎年、暦([[大小暦]])を作成して参照した。日本では、大小暦に絵を描いたものが、後に[[浮世絵]]になった。
 
 
 
月の初日( 1日)は「朔日(ついたち、さくじつ)」と呼び、月の最終日([[29日]]又は[[30日]])は「[[晦日]](みそか、つごもり)」と呼ぶ。「ついたち」とは「月立ち(つきたち)」、「つごもり」は「月隠り(つきこもり)」が音変化した語である。また、一年の最終月の最終日(29日又は30日)は、「[[大晦日]](おおみそか、おおつごもり)」である。
 
 
 
日本の[[童謡]]の「お月さん幾つ、十三ななつ」はこれだけでは意味不明であるが、[[沖縄民謡]]の童謡「[[月ぬ美しゃ]]」に由来するとの見方がある。そこでは「月ぬかいしゃ、10日3日。みやらびかいしゃ10ななつ」とあり、13日の月、つまり成熟前が美しいとの意とされ、月齢を年齢になぞらえている。
 
 
 
=== 月齢と人間的事象の関連の有無 ===
 
現代においても、詳細なデータなど明確な根拠を示さず、テレビ・雑誌等々で、月齢が、人間の[[生理学|生理]]的、精神的な事象(例えば[[出産]]や、[[自殺]]、[[殺人]]、[[交通事故]]の起こりやすさ等)に影響を及ぼしているのではと語られることがある。
 
 
 
月齢と暴力行為の因果関係については、2007年初頭に[[ポーランド]]の科学者Michal Zimeckiが確認したとされるが、その一方で[[シドニー大学]]と[[ニューサウスウェールズ州]]のManly病院の研究者らが、心理学専門誌''Australian and New Zealand Journal of Psychiatry''誌に1998年に発表した内容では「'''両者間に特別な関連性はみられない'''」とされたという。2007年6月5日、「'''満月の日には犯罪が増える'''」と[[イギリス]]の英南部[[サセックス|サセックス州]][[警察]]のある[[警察署]]が発表し、満月の日に警察官を多めに配置すべきだとの見解を表明したというが、懐疑的に見る人が多かったという<ref>{{Cite news|date= 2007-06-06|newspaper= AFPBB News|title= 満月の日には犯罪が増える?英警察発表|url= http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2235559/1659766|accessdate= 2011-04-16}}</ref>。
 
 
 
== 人間と月の関係の歴史 ==
 
=== 古代ギリシア ===
 
[[古代ギリシア]]の人々は、月をすでに観察していて、[[月食]]が起きるのは満月の時であること、また月食時に月の表面に丸い影が徐々に現れることを観察して、それらのことからその影というのは自分たちの住む地の影で、地は球体であると推定したといい、[[アリストテレス|アリストテレース]]の時代(紀元前4世紀ころ)には、その知識はギリシア世界では広くゆきわたっていたという。
 
 
 
[[Image:Ptolemaicsystem-small.png|thumb|100px|古代ギリシアから中世にかけての[[宇宙論]]。([[ペトルス・アピアヌス]]画、アントワープ、[[1539年]])]]
 
アリストテレースも地球の周りを月、太陽、および他の惑星が回っているという宇宙論を説いた([[地球中心説]])。
 
 
 
{{seealso|宇宙論}}
 
 
 
[[ギリシア神話]]の月の[[女神]]は元々[[セレーネー]]であるが、後に[[アルテミス]]や[[ヘカテー]]と同一視され、月が満ちて欠けるように3つの顔を持つ女神とされるようになった。[[ローマ神話]]では[[ルーナ]]がセレーネーと、[[ディアーナ]]がアルテミスと同一視されたので、ここでも月神は2つの顔を持つとされた。これらの神々は一般にあまり区別されない。ルーナ ''Luna'' の名は[[ロマンス語]]ではそのまま月を表す普通名詞となった。また、英語などではセレーネーから派生した ''selen-'', ''seleno-'' という月を表す[[語根]]・[[接頭辞]]が存在する。元素周期表で[[テルル]](地球)の真上に位置し、あとから発見された[[セレン]]はこの語根から命名された。
 
 
 
=== ヨーロッパの伝統文化 ===
 
古来より月は[[太陽]]と並んで神秘的な意味を付加されてきた。ヨーロッパ文化圏では太陽が[[金色]]・[[黄色]]で表現されるのに対し、月は[[銀色]]・[[白]]で表されることが多い。西洋では月が人間を[[狂気]]に引き込むと考えられ、[[英語]]で "{{lang|en|lunatic}}"(ルナティック) とは気が狂っていることを表す。また満月の日に[[狼男|人狼]]は人から[[オオカミ|狼]]に[[変身]]し、[[魔女]]たちは[[黒ミサ]]を開くと考えられていた。
 
 
 
=== 西洋占星術 ===
 
月は[[七曜]]・[[九曜]]の1つで、[[10大天体]]の1つである。
 
 
 
[[西洋占星術]]では、[[巨蟹宮]]の支配星で、吉星である。感受性を示し、[[母親]]、[[妻]]、[[女性]]に当てはまる<ref>[[石川源晃]]『【実習】占星学入門』 ISBN 4-89203-153-4</ref>。
 
 
 
=== イスラム文化 ===
 
[[ファイル:Flag of Turkey.svg|thumb|right|125px|赤地に白い三日月と五芒星をあしらった[[トルコの国旗]]]]
 
[[トルコ共和国]]、[[パキスタン]]、[[モルディブ]]、[[マレーシア]]などの国では[[国旗]]に'''新月'''(一般的には三日月と認識されることが多いが、地球の[[北半球]]から見る月の向きから考えると新月直前の27 - 28日月である)が描かれている。これらの国では[[ムスリム]]が国民の圧倒的多数を占める、ないし[[イスラム教]]を[[国教]]としているため、新月はイスラム教の意匠であると思われることが多いが誤解である([[偶像崇拝]]の禁止が定められているため、月の崇拝も禁じられる)。[[コンスタンティノープル]]においては古くから新月がシンボルとして用いられており、[[オスマン帝国]]によってイスラム教共通の意匠として広めようと試みられた。今日、月を国旗に採用しているイスラム国家がそれほど多くはないのは、帝国の衰退とともに独立した諸国が、新月を採用しなかったためとされる。[[太陰暦]]である[[ヒジュラ暦|イスラム暦]]との関連性を指摘する説もある。
 
 
 
また、[[赤十字社]]の十字の意匠は偶像崇拝を禁ずるイスラム教では[[キリスト教]]信徒のイエス崇拝に繋がるという理由から長らく忌避され続けてきたため、イスラム圏では赤新月が用いられ、名称も[[赤十字社#名称と標章|赤新月社]]としている。
 
 
 
=== パラオ ===
 
[[ファイル:Flag of Palau.svg|thumb|right|125px|[[パラオの国旗]]]]
 
[[パラオの国旗]]は、明るい青の上に黄金色の[[満月]]を描いている。シンプルなデザインではあるが、[[パラオ]]の人々にとっては特別な意味を含んでいる。黄金色の月は、パラオ人の機が熟し独立国となったことを表し、また月はパラオの人々にとって[[収穫]]や、自然の循環、年中行事に重要な役割を果たしている。
 
 
 
=== 東洋の伝統文化 ===
 
[[中国]]の伝説では、月には[[カツラ (植物)|桂]]の木が生えているとされ、[[呉剛]]という男が切ろうとしているとも言われる。また、夫の[[ゲイ (中国神話)|羿]]を裏切った[[嫦娥]]の変じた蝦蟇([[ヒキガエル科|ヒキガエル]])が住んでいるともいわれる。そのほか、中国でも月の模様をウサギの姿とする見方がある。また、月の通り道にそって28の[[星座]]を作り、これを「[[二十八宿]]」と呼び、月は1日にこの星座を1つずつ訪ねて天空を旅していくと考えられていた。
 
 
 
東洋では月は[[陰陽思想|陰]]の象徴となり、[[女性]]と連関すると考えられていた。{{要出典範囲|故に[[月経]]と呼ばれた|date=2011-4}}。
 
 
 
=== 日本の伝統 ===
 
『[[古事記]]』では[[黄泉の国]]から戻った[[イザナギ]]が禊を行った時に右目を洗った際に生まれた[[ツクヨミ]](月読の命)が月の神格であり、夜を治めるとされている。同時に左目から生まれたのが[[アマテラス]]で、[[太陽]]の女神である。
 
 
 
『[[竹取物語]]』では[[竹]]から生まれた絶世の美女'''かぐや姫'''は、月の出身と明かし、月に帰っていった。他に、『[[今昔物語集]]』の天竺部に記されている「三獣、[[菩薩]]の道を修行し、兎が身を焼く語(こと)」という[[説話]]の結末で、[[帝釈天]]が火の中に飛び込んだ[[ウサギ]]を月の中に移したとされており<ref>[[永積安明]]、[[池上洵一]]訳注『[[今昔物語集]]』[[平凡社]]、ISBN 4582803830。</ref>、'''[[日本]]では月には[[ウサギ]]が住んでいるという言い伝えがある'''(なお[[タイ王国|タイ]]には、月の町と呼ばれる[[チャンタブリー県]]があり、[[チャンタブリー#県章|その県章]]には月とウサギが描かれている)。
 
 
 
==== 月見 ====
 
{{main|月見}}
 
 
 
主に秋、月を愛でる行事。代表的なものとして、中秋の名月・十五夜がある。なお中秋の名月は満月とは限らない。[[旧暦]]8月([[グレゴリオ暦]]9月ごろ)は乾燥して月が鮮やかに見え、また月の昇る高さもほどよく、気候的にも快適なため観月に良い時節とされた。
 
 
 
==== 季語としての月 ====
 
俳句の世界で単に「月」と言った場合、それは秋の月。月は、[[春]]の[[花]]に対して、[[秋]]の[[季語]]である。「'''木の間よりもりくる月のかげ見れば心づくしの秋は来にけり'''」[[よみ人しらず]](『[[古今和歌集]]』)、「'''月見れば千々にものこそかなしけれ我が身ひとつの秋にはあらねど'''」[[大江千里 (歌人)|大江千里]](同)など、秋の月を賞し、月に物思うこころは古くから歌に作られている。
 
 
 
例句
 
* 秋もはやはらつく雨に月の形(なり) [[松尾芭蕉]]
 
* 月天心貧しき町を通りけり [[与謝蕪村]]
 
 
 
傍題
 
* 上弦
 
* 下弦(かげん・げげん)
 
* 弓張月(片割月・弦月・半月)
 
* 月の舟
 
* 月の弓
 
* 上り月
 
* 下り月(降り月・望くだり)
 
* 有明(有明月)
 
* 朝月(朝月夜(あさづくよ))
 
 
 
=== 月の模様のみたての伝統 ===
 
日本では、月の海をウサギが[[餅つき]]をしている姿に見立てることがある([[月の兎]])。古代中国でも月の模様をウサギの姿とする見方があり、月のことを玉兎(ぎょくと)と呼ぶ。月とウサギとの由来はインド仏教説話集[[ジャータカ]]からとされる。また、玉兎の他に仙女([[嫦娥]])や蟾蜍([[ヒキガエル科|ヒキガエル]])だという言い伝えもある。西洋においては、月の模様をカニの姿や編み物をする老婦人とみたものがある。また、[[ネイティブアメリカン]](インディアン)には、月の模様を女性の顔と見る慣習がある。北アメリカ、東欧では白い部分を女性の横顔に見たてている。
 
 
 
=== 月を見ることに関する伝承 ===
 
[[北ヨーロッパ|北欧]]において「[[妊娠]]した女性は月を見てはいけない」、あるいは「[[イヌイット]]の娘は月を見ると妊娠するから月を見ない」、[[アイスランド]]において「[[子供]]が[[精神障害]]になるから妊婦が月に顔を向けてはいけない」など、女性が月を見ることを禁忌とした伝承はいくつかある。
 
 
 
=== 17世紀以降の月理学の発展 ===
 
[[ファイル:Galileo's sketches of the moon.png|thumb|right|175px|[[ガリレオ・ガリレイ]]のスケッチ ([[1610年]])]]
 
{{seealso|月理学}}
 
「{{要出典範囲|月の研究は望遠鏡による観察と、月面図の作成という形で始まった|date=2011-4}}。これを[[月理学]]と呼ぶ。
 
 
 
{{要出典範囲|最初の[[月面図]]を作成したのはイギリスの[[ウィリアム・ギルバート (物理学者)|ウィリアム・ギルバート]]だと考えられている|date= 2011-4}}。[[ウィリアム・ギルバート (物理学者)|ウィリアム・ギルバート]]は[[1603年]]に亡くなっており、観察自体は[[1600年]]ごろのものだと考えられている。月面図自体が出版されたのは[[1651年]]と遅かった。ギルバートの観察は裸眼によるものであり、[[月理学]]のさきがけと言える。最初に望遠鏡で月面を観測したのは、イギリスの[[トーマス・ハリオット]]であった。ハリオットの月面図は[[1609年]]7月に作成された。[[ガリレオ・ガリレイ]]による有名なスケッチは[[1610年]]に描かれ、同年3月13日に出版された「[[星界の報告]]」で発表されている。先駆者の仕事と比較すると、特徴的な地形を精密に描いたこと、「山」の影の長さを計測し、「標高」を推定したことにおいて優れている。{{要出典範囲|彼の計測により、月面の山が地球上の山よりも高いことが分かった。|date= 2011-4}}
 
 
 
=== 月旅行を描いた小説 ===
 
ギリシャ時代に書かれた[[ルキアノス]]の『イカロ・メニッパス』では、翼をつけてオリンポスの山から飛び上がることで月に行く様子が描かれている。
 
 
 
[[シラノ・ド・ベルジュラック]]も [[1656年]]に『[[月世界旅行記]]』を書いている。[[ムルタ・マクダーモット]]は1728年に『A Trip to the Moon』を出版した<ref>{{cite journal|url=http://efanzines.com/FR/sfr18.htm |title=SPACESHIPS OF FICTION |journal=Science-Fantasy Review |date=SPRING '50 |volume=IV |issue=18 }}</ref>。
 
 
 
[[1865年]]、[[1870年]]には[[フランス]]の作家[[ジュール・ヴェルヌ]]は小説『[[月世界旅行]]』を発表した。これは、[[南北戦争]]終了後の[[アメリカ合衆国]]において、「大砲クラブ」なる火器の専門家集団が巨大な大砲を製造して、人間が入った大きな砲弾に着陸・帰還用のロケットエンジンを搭載して月に撃ち込むことで人を送り込もうとする、という物語である<ref group="注">大砲を使用して宇宙へ行くという概念はヴェルヌよりも137年早く[[ムルタ・マクダーモット]]が自身の著作に記していた。また、当時、既に兵器としてではあったものの、[[ロケット]]は存在しており、宇宙旅行の道具として[[シラノ・ド・ベルジュラック]]や[[アシール・エアーオード]]の作品でも移動手段としてロケットが扱われていた。</ref>。
 
[[1901年]]には『[[月世界最初の人間]]』が[[ハーバート・ジョージ・ウェルズ]]によって著された。
 
そのほかにも、『[[ジョン・W・キャンベル]]』の『月は地獄だ!』や[[ロバート・A・ハインライン]]の『月を売った男』のように初の月面到達を描いた小説はいくつも書かれている。
 
 
 
日本では[[1882年]]6月に[[貫名駿一]]が『星世界旅行 千万無量』<ref>{{cite book|author=貫名駿一 |authorlink=貫名駿一 |title=星世界旅行 千万無量 |publisher=世界蔵 |date=1882年6月 }}</ref>、[[1888年]]に[[井口元一郎]]が『夢幻現象政海之破裂』<ref>{{cite book|author=井口元一郎 |title=夢幻現象政海之破裂 |publisher= |date=1888年 }}</ref>、[[1906年]]に[[羽化仙史]]が『月世界探検』<ref>{{cite book|author=羽化仙史 |authorlink=羽化仙史|title=月世界探検 |publisher=大学館 |date=1906年 }}</ref>、[[1915年]]には石松夢人が『怪飛行艇月世界旅行』を著した<ref>{{cite book|author=石松夢人 |title=怪飛行艇月世界旅行 |publisher=萬巻堂 |date=1915年 }}</ref>。
 
 
 
=== 冷戦時代の無人探査と有人探査 ===
 
{{Main|月探査|月にある人工物の一覧}}
 
 
 
[[冷戦]]の影響下で、有人探査にむけて[[アメリカ合衆国]]と[[ソビエト連邦]]の間で熾烈な競争([[宇宙開発競争]]、スペース・レース)が行われた。当初宇宙開発競争はソ連が先行しており、人類初の有人宇宙飛行は[[1961年]][[4月12日]]、ソ連の[[ボストーク1号]]に乗る[[ユーリ・ガガーリン]]により行われ、初めて地球周回軌道に入った。これに対抗してアメリカも宇宙開発を進めており、有人宇宙飛行計画として[[マーキュリー計画]]が進められていた。
 
 
 
月に接近した最初の人工物体は、[[ソビエト連邦]]の[[ルナ計画]]によって打ち上げられた無人探査機[[ルナ1号]]で、[[1959年]]1月に月近傍5,995 kmを通過した。ソビエト連邦は引き続き無人探査機[[ルナ2号]]で月面到達に成功した。ルナ2号は1959年[[9月13日]]に月面へ着陸・衝突している。[[月の裏側]]を初めて観測したのは1959年[[10月7日]]に裏側の写真を撮影した[[ルナ3号]]。初めて軟着陸に成功したのは[[ルナ9号]]で、[[1966年]][[2月3日]]に着陸し月面からの写真を送信してきた。1966年[[3月31日]]に打ち上げられた[[ルナ10号]]は初めて月の周回軌道に乗った。
 
 
 
[[ファイル:Aldrin Apollo 11.jpg|thumb|right|240px|月面を歩く[[エドウィン・オルドリン|バズ・オルドリン]] [[1969年]][[7月20日]]]]
 
しかし、人間を月に送ることに成功したのはアメリカである。アメリカは1959年[[3月3日]]に打ち上げられた[[パイオニア4号]]で初めて月の無人探査に成功し、1961年5月25日に行なわれた「アメリカは10年以内にアメリカ人を月に送り、無事地球に帰還させることを約束すべきだと信じます。」という[[ジョン・F・ケネディ|ケネディ]]大統領の声明もあって、[[ジェミニ計画]]を経て[[アポロ計画]]が行われることとなった。[[レインジャー計画]](衝突)、[[サーベイヤー計画]](軟着陸)、[[ルナ・オービター計画]](周回)などにより有人機の着陸に適した場所が選ばれ、[[1969年]][[7月20日]]、[[アポロ11号]]が静かの海に着陸し[[ニール・アームストロング]]船長が人類で初めて月面に降り立った。このアポロ計画は[[1972年]]の[[アポロ17号]]まで続けられた。なお、[[アポロ13号]]は事故(液化酸素タンクの爆発)により、月面に着陸せずに、[[月周回軌道|月軌道]]を周回して不要になったロケットパーツを月に落下させて人工[[地震]]を起こさせただけで、地球に帰還した(帰還の[[ミッション]]は非常に困難なものであった)。
 
 
 
しかしこのような探査には高度な技術と莫大な費用が必要であり、アメリカではアポロ20号まで予定されていたが予算の削減で17号で終わった。ソ連は[[1970年]]から[[1974年]]にかけて、[[ルナ16号]]、[[ルナ20号|20号]]、[[ルナ24号|24号]]で月の土壌を採取し[[サンプルリターン|地球へ持ち帰ること]]に成功、[[ルナ17号]]、[[ルナ21号|21号]]で無人[[月面車]]を送り込んだが、有人月面探査計画である[[ソユーズL3計画]]は1974年6月23日、正式に中止が決定した。
 
 
 
[[噂|俗説]]として月面着陸は[[捏造]]であった、あるいは宇宙飛行士は月面で[[宇宙人]]に遭遇していたとする、[[アポロ計画陰謀論]]も存在するが、捏造の証拠とされるものはことごとく反証されており、また日本の月探査衛星が月面に残るロケット噴射跡を確認したため、少なくとも月に到着したことは事実と確認されている。
 
 
 
=== アポロ計画終了以後 ===
 
{{Seealso|月面基地|月の植民}}
 
 
 
アポロ計画終了以後人類は月面を歩いていないが、各国による無人探査が行われている。[[2004年]]2月、[[アメリカ合衆国大統領|アメリカ大統領]][[ジョージ・ウォーカー・ブッシュ|ジョージ・W・ブッシュ]]は[[2020年]]までに再び月に人類を送り込む計画を発表し、NASAにより[[コンステレーション計画]]が発表されたが、後に予算の圧迫などを理由に中止されている。その他には、[[欧州宇宙機関]] (ESA)、[[中国国家航天局]] (CNSA)、[[日本]]の[[宇宙航空研究開発機構]] (JAXA)、[[インド宇宙研究機関]] (ISRO) でも[[月探査計画]]がある。
 
 
 
[[中国]]は月面探査に積極的な姿勢をとっており、特に月面で[[ヘリウム]]の[[同位体]]である[[ヘリウム3]]の発掘を行い地球でエネルギー資源として用いることを狙っていると言われる。
 
 
 
日本では[[LUNAR-A]]と[[かぐや|SELENE(かぐや)]]の2つの計画があり、月探査計画LUNAR-Aではペネトレータと呼ばれる槍状の探査機器を月面に打ち込み、月の内部構造を探る計画だったが、[[2007年]]に計画中止が決まった。月探査周回衛星計画SELENEは月の起源と進化の解明のためのデータを取得することと、将来の月探査に向けての技術の取得を目的としている。2007年[[9月14日]]に打ち上げられ、[[2009年]][[6月11日]]まで月を周回してデータを集めた。
 
 
 
なお[[2006年]]には、それまで解析されずに放置されていたアポロ観測データが発掘された<ref>{{Cite web|url=https://www.wakusei.jp/book/pp/2007/2007-2/2007-2-11.pdf|title=未解析だったアポロ熱流量観測データ|accessdate=2007-10-20|author=S Yasuyuki, T Satoshi, T Jun, H Ki-iti, H Axel|year=2007|format=PDF|publisher=日本惑星科学会誌、'''16''' (2)}}</ref>。この観測データの解析の結果、従来の知見を覆すような結果が得られ始めている。このアポロ観測データと日本のかぐやなど、世界の月周回探査衛星による観測データを合わせた解析によって、より月の起源について理解が深まることが期待される。
 
 
 
また、より長期の計画として[[月面基地]]建設の構想もある。NASAは2006年12月、上記のコンステレーション計画の一つとして2020年までに月面基地の建設を開始し、[[2024年]]頃には長期滞在を可能とする計画を発表したが、こちらも中止されている。また[[ロシア連邦宇宙局]]は2007年8月、[[2025年]]までの有人月面着陸と、[[2028年]] - [[2032年]]の月面基地建設を柱とした長期計画を発表した。JAXAの長期計画にも有人の月面基地が含まれる。
 
 
 
=== 1990年代以降の月探査機一覧 ===
 
* [[ひてん]]([[日本]]、[[1990年]] - [[1993年]])
 
* [[クレメンタイン (探査機)|クレメンタイン]](米国、[[1994年]])
 
* [[ルナ・プロスペクター]](米国、[[1998年]] - [[1999年]])
 
* [[のぞみ (探査機)|のぞみ]](日本、1998年 - [[2003年]])
 
** [[火星]]へ向かうための月[[スイングバイ]]の際、若干だが科学観測も行っている。
 
* [[スマート1]](欧州、2003年 - [[2006年]])
 
* [[かぐや]](日本、[[2007年]] - [[2009年]])
 
* [[嫦娥1号]](中国、2007年 - 2009年)
 
* [[チャンドラヤーン1号]](インド、[[2008年]] - 2009年)
 
* [[ルナー・リコネサンス・オービター]](米国、2009年 - )
 
* [[エルクロス]](米国、2009年)
 
* [[嫦娥2号]](中国、[[2010年]] - )
 
* [[GRAIL]] (アメリカ、[[2011年]] - [[2012年]])
 
* [[LADEE]] (アメリカ、[[2013年]] - [[2014年]])
 
* [[嫦娥3号]](中国、2013年 - )
 
 
 
== 月面の地名 ==
 
=== クレーター ===
 
{{See also|Category:月のクレーター|en:List of craters on the Moon}}
 
 
 
* [[アサダ (クレーター)|アサダ]]
 
* [[アッベ (クレーター)|アッベ]]
 
* [[アーベル (クレーター)|アーベル]]
 
* [[アベンエズラ (クレーター)|アベンエズラ]]
 
* [[アボット (クレーター)|アボット]]
 
* [[アポロ (クレーター)|アポロ]]
 
* [[イネス (クレーター)|イネス]]
 
* [[エラトステネス (クレーター)|エラトステネス]]
 
* [[グーテンベルク (クレーター)|グーテンベルク]]
 
* [[クラビウス (クレーター)|クラビウス]] - 直径230km、地球から見える月面上のクレーターの中でも1・2を争う巨大クレーター。多角形が特徴。[[クリストファー・クラヴィウス]](ドイツ出身の数学者・天文学者)が名の由来。
 
* [[ゴクレニウス (クレーター)|ゴクレニウス]]
 
* [[コペルニクス (クレーター)|コペルニクス]]
 
* [[ジョルダーノ・ブルーノ (クレーター)|ジョルダーノ・ブルーノ]] - [[1178年]]に月面で発光現象が観測されたという記録があり、かつてはこの時にできたクレーターだと考えられていた。かぐやによる観測で実際には100万年から1000万年前に形成されたことが明らかになったが、月面にある直径10km以上のクレーターの中で最も新しいことに変わりはない<ref>「[http://web-ext.u-aizu.ac.jp/press/caist/091118_g_buruno.html 月面クレータ、ジョルダノ・ブルーノの形成年代に関する研究成果]」[[会津大学]]先端情報科学研究センター</ref><ref>『月のかぐや』JAXA[[宇宙航空研究開発機構]]・編、[[新潮社]]([[2009年]])22ページ</ref>。
 
* [[ティコ (クレーター)|ティコ]]
 
* [[プトレマイオス (クレーター)|プトレマイオス]]
 
* [[ワン・フー (クレーター)|ワン・フー]]
 
* [[ダーウィン (クレーター)|ダーウィン]]
 
 
 
=== 山・山脈 ===
 
{{See also|月の山の一覧}}
 
 
 
* [[ピレネー山脈 (月)|ピレネー山脈]]
 
* [[アルプス山脈 (月)|アルプス山脈]]
 
 
 
=== 海・大洋 ===
 
{{See also|月の海|月の海の一覧}}
 
 
 
* [[嵐の大洋]] - 月面最大の海
 
* [[雨の海]] -  2番目に大きな海
 
* [[泡の海]]
 
* [[既知の海]]
 
* [[危難の海]]
 
* [[雲の海]]
 
* [[賢者の海]]
 
* [[氷の海]]
 
* [[静かの海]]
 
* [[島の海]]
 
* [[湿りの海]]
 
* [[蒸気の海]]
 
* [[スミス海]]
 
* [[波の海]]
 
* [[晴れの海]]
 
* [[東の海]]
 
* [[縁の海]]
 
* [[フンボルト海]]
 
* [[蛇の海]]
 
* [[南の海]]
 
* [[神酒の海]]
 
* [[モスクワの海]]
 
* [[豊かの海]]
 
 
 
=== その他 ===
 
{{See|en:List of valleys on the Moon|en:List of features on the Moon}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
 
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注"}}
 
 
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* [[白尾元理]]『月のきほん』[[誠文堂新光社]]、[[2006年]]。ISBN 4-416-20621-6。
 
* [[青木満]]『月の科学』[[ベレ出版]]、[[2008年]]。ISBN 978-4-86064-184-9
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{ウィキポータルリンク|天文学}}
 
{{Commons&cat|Moon}}
 
{{Wikiquote|月}}
 
{{Wiktionary|月}}
 
 
 
* [[満月]]
 
* [[月の光]]
 
* [[月食]]・[[日食]]
 
* [[月の裏]]
 
* [[月震]]
 
* [[太陰暦]]
 
* [[衛星]] - [[月以外の地球の衛星]]
 
* [[アポロ計画]] - [[月にある人工物の一覧]]
 
* [[ソ連の有人月旅行計画]]
 
* [[月の植民]]
 
* [[月部]] - [[漢字]]の[[部首]]
 
  
== 外部リンク ==
+
地球の[[衛星]]。半径 1738kmで地球の約4分の1,[[質量]]は約 81分の1で,太陽系の諸衛星中でも最大の部類に属する。比重約 3.34で地球の約 0.6倍,[[表面重力]]は地球の約6分の1,[[大気]]はほとんどなく[[アルベド]]は 0.073。地球との共通重心を焦点とする平均距離 38万 4400kmの楕円軌道上を 27.32日で1[[公転]]し,また地球と同方向に同じ周期で[[自転]]するので,いつも地球に対し同じ面を向けている。実際の公転速度は一貫しているが,月が日々描く日周弧は多少変化していくので,月が地球へ向ける面はそれに応じて変動する。地球上の観察者から見れば月はほぼ公転周期と等しい周期でわずかに変動することになり,この変動を[[秤動]]と呼ぶ。
* [https://www.google.com/maps/space/moon/@44.3021916,71.8961574,19896048a,60y,236.82h/data=!3m1!1e3 月] - [[Google マップ]]
 
* [http://gisstar.gsi.go.jp/selene/ 月の地形図] {{ja icon}} - [[国立天文台]]
 
* [http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/moon/moon00.html 宇宙の質問箱 月編] {{ja icon}} - [[国立科学博物館]]
 
* [http://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi こよみの計算] {{ja icon}}
 
* [https://moonstation.jp/ 月探査情報ステーション] {{ja icon}}
 
  
 +
1959年ソ連の宇宙探査機ルナ3号 ([[ルナ]] ) により地球に向いていない月の裏側が初めて撮影され,1960年代の終りにはアメリカの[[ルナオービター]]の探査活動によって月面の表側と裏側を含む全体の近接写真が撮影された。月の地形は,地球から見て白っぽく見える部分 (高地) と,黒っぽく見える部分 (月の海) の2つに大別される。 17世紀のイタリアの天文学者 G.リッチオリは,この暗い領域を「雨の海」や「神酒の海」のように月の海と名づけた。高地はおもに[[斜長岩]]質の[[角礫岩]]から成り,月の海の部分は[[玄武岩]]質の岩石から成っている。高地の部分が形成された年代は 40億年以上前であり,月の海の部分に玄武岩が噴出したのは 40億~33億年前であることが[[アポロ計画]]による月岩石の研究からわかった。月面は[[隕石]]や[[小惑星]]の衝突によって表層が粉砕されて形成された岩石破片の微細粒子から成る表土層でおおわれているがその地形上のもっとも特徴的な形態は[[クレータ]]である。クレータはおよそ 200kmあるいはそれ以上の直径にまで達するものがある。大小さまざまな非常に多くのクレータが月面上に散らばっていて,なかには互いに重なりあうものもある。大型クレータのほとんどは[[天体]]が高速度で月面に当たって形成されたものと考えられるが,比較的小さくてさしわたしが 1kmより小さなものの多くは,爆発性の火山活動により形成された可能性がある。ほとんどのクレータには外周輪があるが典型的なものでは周囲よりも 1500mも高いものある。また,多くの場合クレータ内には衝突時のはね返り現象による1つまたは数個の中央丘がある。海として知られる月面上の周囲より暗い領域には比較的クレータが少いが,これは海が大部分のクレータができたのち,その上へ広がった巨大な溶岩流であるためだと考えられている。その他の注目に値する地形的な特徴としてはリルと呼ばれる深い峡谷構造がある。リルは数百 kmも続くものがあり,海や大きなクレータの縁にある山脈や丘のなかに平行したグループの形で存在する傾向がある。また,アメリカの打上げた[[孫衛星]]の軌道データの解析やその後のアポロ計画の詳細な探査の結果,月面には[[マスコン]]と呼ばれる重力の強い部分があることが判明している。
  
 +
月の起源についてはいろいろな理論が提起されてきた。 19世紀末にイギリスの天文学者 G.H.[[ダーウィン]]が太陽潮汐の数学的理論をもとに,月は本来は地球の一部であったものが潮汐力により切り離されて地球から遠ざかったという地球放出説を唱えた。ほかに地球と月は原始の星間雲から同時に形成されたとする同時成長説 (地球周辺凝結説) や月は太陽系のどこか別の場所で形成され,その後地球により捕捉されたとされる軌道捕獲説があるが,どれもが物理学的にも地球化学的にも説明しきれない点がある。これらの従来の仮説に加えて,より矛盾の少い巨大衝撃説 (衝突岩屑説) が唱えられている。この理論によれば太陽系の歴史の初期に,火星ほどの大きさをもつ天体が原始地球に衝突した結果,破片の雲が地球周囲の軌道に飛出し,その後一体となって固まり月となったとされる。衝突前の地球は金属質の中心部とケイ酸塩に富むマントルが分化していたため,飛出した物質 (つまり原始月) はケイ酸塩が支配的な構成物となり,一方の地球では金属質の核ができあがったと考えられる。しかし,この説で月の起源が完全に究明されたわけではない。
 +
 
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2018/11/2/ (金) 08:31時点における最新版

25px
Moon
仮符号・別名 太陰
lat:Luna
分類 衛星
発見
発見年 有史以前
発見方法 目視
軌道要素と性質
平均公転半径 384,400 km[1][2]
近地点距離 (q) 363,304km[1][3]
遠地点距離 (Q) 405,495km[1][3]
離心率 (e) 0.0548799[1]
公転周期 (P) 27日7時間43.193分
平均軌道速度 1.022 km/s
軌道傾斜角 (i) 5.1454
地球の衛星
物理的性質
長短径 3,475.8 km
(赤道)
3,471.3 km
(極)
直径 3,474.3 km
(平均)
表面積 3,800万 km2
質量 main|22}} kg
地球との相対質量 0.01230002
平均密度 3.344 g/cm3
表面重力 1.622 m/s2
(0.165 G)
脱出速度 2.378 km/s
自転周期 27日7時間43.193分
(恒星月、公転と同期)
29日12時間44.048分
朔望月
光度 -12.66 等(満月)
アルベド(反射能) 0.136
赤道傾斜角 1.5424 度
表面温度
最低 平均 最高
40 K 250 K 396 K
年齢 約46億年
大気圧 10-7 Pa(昼)
10-10 Pa(夜)
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(つき、: Mond: Lune: Moon: Luna ルーナ)

地球の衛星。半径 1738kmで地球の約4分の1,質量は約 81分の1で,太陽系の諸衛星中でも最大の部類に属する。比重約 3.34で地球の約 0.6倍,表面重力は地球の約6分の1,大気はほとんどなくアルベドは 0.073。地球との共通重心を焦点とする平均距離 38万 4400kmの楕円軌道上を 27.32日で1公転し,また地球と同方向に同じ周期で自転するので,いつも地球に対し同じ面を向けている。実際の公転速度は一貫しているが,月が日々描く日周弧は多少変化していくので,月が地球へ向ける面はそれに応じて変動する。地球上の観察者から見れば月はほぼ公転周期と等しい周期でわずかに変動することになり,この変動を秤動と呼ぶ。

1959年ソ連の宇宙探査機ルナ3号 (ルナ ) により地球に向いていない月の裏側が初めて撮影され,1960年代の終りにはアメリカのルナオービターの探査活動によって月面の表側と裏側を含む全体の近接写真が撮影された。月の地形は,地球から見て白っぽく見える部分 (高地) と,黒っぽく見える部分 (月の海) の2つに大別される。 17世紀のイタリアの天文学者 G.リッチオリは,この暗い領域を「雨の海」や「神酒の海」のように月の海と名づけた。高地はおもに斜長岩質の角礫岩から成り,月の海の部分は玄武岩質の岩石から成っている。高地の部分が形成された年代は 40億年以上前であり,月の海の部分に玄武岩が噴出したのは 40億~33億年前であることがアポロ計画による月岩石の研究からわかった。月面は隕石小惑星の衝突によって表層が粉砕されて形成された岩石破片の微細粒子から成る表土層でおおわれているがその地形上のもっとも特徴的な形態はクレータである。クレータはおよそ 200kmあるいはそれ以上の直径にまで達するものがある。大小さまざまな非常に多くのクレータが月面上に散らばっていて,なかには互いに重なりあうものもある。大型クレータのほとんどは天体が高速度で月面に当たって形成されたものと考えられるが,比較的小さくてさしわたしが 1kmより小さなものの多くは,爆発性の火山活動により形成された可能性がある。ほとんどのクレータには外周輪があるが典型的なものでは周囲よりも 1500mも高いものある。また,多くの場合クレータ内には衝突時のはね返り現象による1つまたは数個の中央丘がある。海として知られる月面上の周囲より暗い領域には比較的クレータが少いが,これは海が大部分のクレータができたのち,その上へ広がった巨大な溶岩流であるためだと考えられている。その他の注目に値する地形的な特徴としてはリルと呼ばれる深い峡谷構造がある。リルは数百 kmも続くものがあり,海や大きなクレータの縁にある山脈や丘のなかに平行したグループの形で存在する傾向がある。また,アメリカの打上げた孫衛星の軌道データの解析やその後のアポロ計画の詳細な探査の結果,月面にはマスコンと呼ばれる重力の強い部分があることが判明している。

月の起源についてはいろいろな理論が提起されてきた。 19世紀末にイギリスの天文学者 G.H.ダーウィンが太陽潮汐の数学的理論をもとに,月は本来は地球の一部であったものが潮汐力により切り離されて地球から遠ざかったという地球放出説を唱えた。ほかに地球と月は原始の星間雲から同時に形成されたとする同時成長説 (地球周辺凝結説) や月は太陽系のどこか別の場所で形成され,その後地球により捕捉されたとされる軌道捕獲説があるが,どれもが物理学的にも地球化学的にも説明しきれない点がある。これらの従来の仮説に加えて,より矛盾の少い巨大衝撃説 (衝突岩屑説) が唱えられている。この理論によれば太陽系の歴史の初期に,火星ほどの大きさをもつ天体が原始地球に衝突した結果,破片の雲が地球周囲の軌道に飛出し,その後一体となって固まり月となったとされる。衝突前の地球は金属質の中心部とケイ酸塩に富むマントルが分化していたため,飛出した物質 (つまり原始月) はケイ酸塩が支配的な構成物となり,一方の地球では金属質の核ができあがったと考えられる。しかし,この説で月の起源が完全に究明されたわけではない。

テンプレート:月



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  2. NASA Staff (2011年5月10日). “Solar System Exploration - Earth's Moon: Facts & Figures”. NASA. . 2011閲覧.
  3. 3.0 3.1 離心率と軌道長半径より計算。