フロネシス
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フロネシス(希: φρόνησις, phronesis, プロネーシス)とは、古代ギリシア哲学、特にアリストテレスによる哲学的な概念であり、「実践的な知」を示す。
概説
アリストテレスは『ニコマコス倫理学』[1]のなかで、知識を「Σοφια ソフィア(智)」と「φρόνησις フロネシス」の2種類とし、ソフィアとフロネシスを明確に区別している。
アリストテレスは「中庸 (ギリシア哲学)」(メソテース[2])を守ることが大事であると説く。中庸とは、現在日本で一般的に使われる儒教における中庸とは違い、勇敢(恐怖と平然)、節制(快楽と苦痛)、寛厚と豪華(財貨について)、矜持(名誉について)、温和(怒りについて)、親愛と真実(正直)と機知(交際について)を指している。そして中庸を守る徳性をフロネシスであるとする。
日本
2006年頃から野中郁次郎がフロネシスの重要性を提唱し続けている。科学的知識と実践的知識を融合して、創造的な行動をする能力を指している。「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」[3]である。深い倫理観[注 1]、歴史観、社会観、政治観、美的感覚に基づく判断・行動である。そのため個人と社会の成熟が必要とされている。
- 野中郁次郎は、2011-2012年に福島原発事故独立検証委員会委員として活動したときに、首相官邸[注 2]と東京電力の福島原発事故への対応を検証し、「失敗の本質」で28年前に指摘した日本軍の失敗の原因である「フロネシスの欠如」を目の当たりにしたとしている。2006年12月に黒川清[注 3]が首相官邸[注 4]で野中の論文[4]を引用したにもかかわらず、そのまま引きずっているからである。
- 野中は、「フロネティック・リーダー」が日本を再生させると考えている。
- 彼らの持つべき能力として、野中は次の6点を挙げる。
- 善い目的を作る
- 場をタイムリーに作る
- ありのままの現実を直観する
- 直観の本質を物語る
- 物語を実現する政治力
- 実践知を組織化する
脚注・出典
脚注
出典
- ↑ 第6巻、邦訳:高田三郎訳『ニコマコス倫理学』(岩波書店、1971年)
- ↑ Mesotes,英語ではGolden Mean。
- ↑ 黒川顧問からのメッセージ・第4回「イノベーティブな人」の条件、「フロネシス(Phronesis)」とはなにか?2006/12/11 首相官邸・イノベーション25
- ↑ イノベーター育成- 知識創造人材を育てる-
参考文献
- 「失敗の本質 戦場のリーダーシップ編」 野中郁次郎ほか、2012年、ダイヤモンド社(ISBN 4478021554)
- 「失敗の本質」野中郁次郎他、ダイヤモンド社 1984年(ISBN 4478370133)、中公文庫 1991年(ISBN 978-4122018334)
- 「フロネシスとしての戦略」2007年3月、本田財団レポート No.119
- イノベーター育成- 知識創造人材を育てる-
- 『言語学序説』ソシュール著、山内貴美男訳、勁草書房 1971年 Sausure, Ferdinand de, 1909, Cours de linguistique generale, ed. par Godel. Geneve: R. Geneve.
- 「フロネシス」 三菱総合研究所
- 『「知的機動力」生かす経営を 現場の構想力が重要 実践知のリーダーを育てよ』(日本経済の羅針盤(下))「経済教室」 2013/8/15 日本経済新聞 朝刊