ホオノキ
ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。
形態
大きくなる木で、樹高30 m、直径1 m以上になるものもある。
樹皮は灰白色、きめが細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20 cm以上、時に40 cmにもなり、葉の大きさではトチノキに並ぶ。葉柄は3-4 cmと短い。葉の形は倒卵状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。
ホオノキは花びらの数が多くらせん状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴を受け継いでいる。
果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0 -2個の種子が入っている。
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大きな葉をつける
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樹皮と幹の不定芽
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花
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花。5月・神奈川県。
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若い果実
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熟した果実
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種子
分布
全国の山林に見られる。
生態
本種は強い他感作用(アレロパシー)を示すことが知られている。本種の樹冠下では、他の植物が生えることは少ない。これは、落葉や根などから分泌される他感物質により種子発芽や、発芽した植物の生育が強く抑制されるためである。そのため、自生地の樹冠下では下草が少なく落葉の堆積が目立つ。
ホオノキの花は雌蕊の成熟と、雄蕊の成熟の時期をずらすことで、1つの花では自家受粉しにくいようになっているものの、1つの個体にはいくつも花が付き、これが一様にずれるというわけではないので自家受粉・近親交配が起こってしまう。あるホオノキの集団を調べたところ、自家受粉で誕生した個体の適応度は他家受粉で誕生したものの2%しかなかった。自家受粉、他家受粉の種子を集めて秋まで育てたところ、発芽率は両者に差はなかったものの、苗の高さや葉の表面積では自家受粉由来の種子は有意に小さく、生存率も半分以下であり明らかな近交弱勢が見られたという[1]。また、他家受粉によって出来る果実には各袋に種子が2つ入っていることが有意に多かったという[1]。自家受粉では受粉後の種子の発育に悪影響があり、2つのどちらもが育つということが起こりにくいという仮説が成り立てば、種子の数の違いによって自家受粉に由来する種子かどうか見分けられるかもしれないという。[1]
人間との関係
葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用される。葉が大きいので古くから食器代わりに食物を盛るのに用いられてきた。6世紀の王塚古墳の発掘時には、玄室の杯にホオノキの葉が敷かれていたのが見つかった[2]。
材は堅いので下駄の歯(朴歯下駄)などの細工物に使う。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。
樹皮は厚朴または和厚朴といい、生薬にする。また、アイヌ民族はホオノキの種子の煎じ汁を茶のように飲用した。
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朴葉寿司
注釈
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 中村和子, 石田清. 1996. ホオノキ集団に現れる近交弱勢 ~近交弱勢は大きいか? 他殖種子をより多く取る方法はあるか?~. 北方林業 48巻 No.3 9-11.
- ↑ 柳沢一男『描かれた黄泉の世界 王塚古墳』、新泉社、2004年、ISBN 4-7877-0440-0。