位相空間論
数学における位相空間論(いそうくうかんろん、英: general topology; 一般位相幾何学)または点集合トポロジー(てんしゅうごうトポロジー、point-set topology; 点集合論的位相幾何)は、位相空間の性質やその上に定義される構造を研究対象とする位相幾何学の一分野である。位相幾何学のほかの分野が多様体などの特定の構造や具体的な構造を前提とすることと異なり、現れる位相空間としては病的なものも含めた極めて広範かつ一般のものを扱い、その一般論を形成するのが位相空間論の主目的である。
基本的な定義
位相、あるいは位相空間は集合 X とその開集合系とも呼ばれる部分集合の族 Σ の組 (X, Σ) として与えられる。ここで、Σ の元は X の開集合と呼ばれ、三つの公理
を満足する。
歴史
一般位相の研究はいくつかの流れを取りまとめる形で始まった。主なものは
- 実数直線の部分集合についての詳細研究、かつて「点集合に関する位相幾何学」(topology of point sets) と呼ばれていたもの、
- 多様体概念の導入、
- 距離空間論、特にノルム線型空間の研究(後の函数解析学)
などが挙げられる。分野としての位相空間論は1940年頃には成立しており、それにより例えば連続性に関する直観の殆どを、数学の各分野で応用することができるようなものとして、技術的にふさわしい形で捉えることができるようになった。
研究対象
もう少し詳細に、位相空間論における基本概念の定義とそれらに関する定理やその証明について述べる。基本概念としては
などがある。
他にもより進んだ概念が現れるが、数学のほかの分野への言及なしに、これらの基本概念に直接的に関係するのがふつうである。集合論的位相幾何学 (set-theoric topology) は、そういった概念が集合論に実質的な関係を持つのはいつかというような問題の研究がつきものである。
位相幾何学のほかの主要な分野には代数的位相幾何学、幾何的位相幾何学、微分位相幾何学などがあるが、一般位相幾何学はその名称が示唆するように、それらの分野に対する共通の基盤を与えるものである。
点集合位相幾何学の重要な変形版が非点集合的位相幾何学 (pointless topology, point-free topology) で、これは点集合を基礎とする点集合位相幾何学と異なり、束や特に枠と場所の圏論的研究を通じた位相的概念の構築を行うものである。
関連項目
参考文献
位相空間論の標準的な教科書として:
- Bourbaki; Topologie Générale (General Topology); ISBN 0-387-19374-X, 日本語訳: 『位相 1-7』 森毅、清水達雄ら訳、東京図書〈ブルバキ数学原論〉、1968-1969。
- John L. Kelley; General Topology; ISBN 0-387-90125-6, 日本語訳: 『位相空間論』 児玉之宏訳、吉岡書店〈数学叢書〉、1968年。
- James Munkres; Topology; ISBN 0-13-181629-2
- Paul L. Shick; Topology: Point-Set and Geometric; ISBN 0-470-09605-5
- Ryszard Engelking; General Topology; ISBN 3-88538-006-4
- Steen, Lynn Arthur; Seebach, J. Arthur Jr. (1995) [1978], Counterexamples in Topology (Dover reprint of 1978 ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-0-486-68735-3, MR507446
- O.Ya. Viro, O.A. Ivanov, V.M. Kharlamov and N.Yu. Netsvetaev; Elementary Topology: Textbook in Problems; ISBN 978-0-8218-4506-6