対数正規分布

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対数正規分布
確率密度関数
Probability density function
μ=0
累積分布関数
Cumulative distribution function
μ=0
母数 [math]\mu \in \mathbb{R} [/math]
[math]\sigma \gt 0\,[/math]
[math]x\in (0,\infty)[/math]
テンプレート:確率分布/リンク 密度 [math] f(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma x} \exp \left( -\frac{ (\ln{x}-\mu)^2}{2\sigma^2} \right)[/math]
累積分布関数 [math]\frac{1}{2} \operatorname{erfc}\!\left[-\frac{\ln{x} - \mu}{\sqrt{2}\sigma}\right][/math]
期待値 [math]e^{\mu + {\sigma^2 }/{2} } [/math]
中央値 [math]e^{\mu}[/math]
最頻値 [math] e^{\mu-\sigma^2}[/math]
分散 [math] e^{2\mu+\sigma^2}(e^{\sigma^2}-1)[/math]
歪度 [math] \sqrt{e^{\sigma^2}-1}(e^{\sigma^2}+2)[/math]
尖度 [math] e^{4\sigma^2}+2e^{3\sigma^2}+3e^{2\sigma^2}-6 \,[/math]
エントロピー [math]\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \ln{(2\pi\sigma^2)} + \mu [/math]
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確率論および統計学において、対数正規分布(たいすうせいきぶんぷ、: log-normal distribution)は、連続確率分布の一種である。この分布に従う確率変数対数をとったとき、対応する分布が正規分布に従うものとして定義される。そのため中心極限定理の乗法的な類似が成り立ち、独立同分布に従う確率変数の積は漸近的に対数正規分布に従う。

定義

定数μと正の定数σ>0に対し、正の実数を値にとる確率変数X確率密度関数f (x)が

[math]f(x) = \frac{1}{\sqrt{2\pi} \sigma x} \exp \left(-\frac{ (\ln{x}-\mu)^2}{2\sigma^2}\right), \quad 0\lt x\lt \infty[/math]

で与えられるとき、確率変数Xは対数正規分布に従うという。また、上記の確率密度分布に対応する対数正規分布をΛ(μ, σ2)と表記する[1]。なお、正規分布と異なり、分布のパラメータμ, σ2自体は平均、分散に対応しない。

このとき、対応する累積分布関数F (X)は

[math] \begin{align} F_X(x;\mu,\sigma) & = \frac12 \left[ 1 + \operatorname{erf}\!\left(\frac{\ln x - \mu}{\sigma\sqrt{2}}\right) \right] \\ & = \frac12 \operatorname{erfc}\!\left(-\frac{\ln x - \mu}{\sigma\sqrt{2}}\right) \\ & = \Phi\bigg(\frac{\ln x - \mu}{\sigma}\bigg) \end{align} [/math]

である。但し、erfcは相補誤差関数、Φは標準正規分布の累積分布関数である。

正規分布との関係

対数正規分布という名は、対数正規分布 Λ(μ, σ2) に従う確率変数 X の対数関数をとったときに、新たな確率変数 Y = ln X が正規分布 N(μ, σ2) に従うことに由来する。また、正規分布に従う確率変数が負の値をとりうるのに対して、対数正規分布に従う確率変数は正の値のみとるという性質を有する。

性質

平均・分散

対数正規分布 Λ(μ, σ2) に従う確率変数 X に対し、平均 E(x) および分散 V(x) はそれぞれ以下で与えられる。

[math]\begin{align} \mathrm E(X) &= e^{\mu + \sigma^2 / 2}, \\ \mathrm V(X) &= e^{2\mu+\sigma^2}(e^{\sigma^2}-1). \end{align}[/math]

再生性

対数正規分布Λ(μ1, σ12)に従う確率変数Xと対数正規分布Λ(μ2, σ22)に従う確率変数Yが互いに独立であるとき、確率変数の積XYは対数正規分布Λ(μ1+μ2, σ12+σ22)に従う。 この性質は正規分布が再生性を有することから導かれる。

中心極限定理の類似

正の値を取る独立同分布に従う確率変数 X1,..., Xn が条件

[math] \begin{align} \mu &= \mathrm E(\ln X_i) \lt \infty \\ \sigma^2 &= \mathrm V(\ln X_i) \lt \infty \end{align} [/math]

を満たすならば、積 X1Xn は漸近的に対数正規分布 Λ(, 2) に従う[1]

n次対数正規分布

Espensheidらによって提案された次の分布fn (x) をn 次対数正規分布n-th order log-normal distribution)という[2]

[math]f_n(x) = c_n x^n \exp\left(-\frac{(\ln x-\ln\mu)^2}{2(\ln \sigma)^2}\right)[/math]

ここで、μ , σ はそれぞれ平均、分散に関する値、cn は正規化のための定数で

[math]c_n^{-1} = \sqrt{2\pi} \ln\sigma \mu^{n+1} \exp\left(\frac{(n+1)^2(\ln\sigma)^2}{2}\right)[/math]

である。通常の対数正規分布はn = −1 次の場合に相当する。

0次対数正規分布

特に0次対数正規分布(ZOLD):

[math]f_0(x) = \frac{\exp\left(-\dfrac{(\ln x-\ln\mu)^2}{2(\ln \sigma)^2}\right)}{\sqrt{2\pi} \ln\sigma \mu \exp\left(\dfrac{(\ln\sigma)^2}{2}\right)}[/math]

は、最頻値がμ に等しく、σ に依存しないことから感覚的な理解が容易で、物理学の分野で用いられることがある。

脚注

  1. 1.0 1.1 Crow & Shimizu 1988, p. テンプレート:Google books quote.
  2. 高橋幹二、日本エアロゾル学会編、 『エアロゾル学の基礎』 森北出版、2003年、124頁。ISBN 4-627-67251-9 

参考文献

  • 蓑谷千凰彦 『統計分布ハンドブック』 朝倉書店、2003年。
  • (1988) Lognormal distributions, Statistics: Textbooks and Monographs. Marcel Dekker. ISBN 0-8247-7803-0. 

関連項目