オイラーのφ関数
オイラーのトーシェント関数(オイラーのトーシェントかんすう、英: Euler's totient function)は各正の整数 n に対して、1 から n までの自然数のうち n と互いに素なものの個数を φ(n) として与えることによって定まる数論的関数 φ である。慣例的に φ(n) と表記されるため、オイラーの φ 関数(ファイかんすう、phi function)とも呼ばれる。また、簡略的にオイラーの関数と呼ぶこともある。
例えば、1, 2, 3, 4, 5, 6 のうち 6 と互いに素なのは 1, 5 の 2 個であるから、定義によれば φ(6) = 2 である。また例えば 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 のうち 7 以外は全て 7 と互いに素だから、φ(7) = 6 と定まる。なおトーシェント関数の値域に含まれない自然数をノントーシェントという。
1 から 20 までの値は以下の通りである。
- 1, 1, 2, 2, 4, 2, 6, 4, 6, 4, 10, 4, 12, 6, 8, 8, 16, 6, 18, 8,…(オンライン整数列大辞典の数列 A000010)
1761年にレオンハルト・オイラーが発見したとされるが、それより数年前に日本の久留島義太が言及したとも言われる。
性質
p を素数とすると、1 から p − 1 のうちに p の素因子である p を因子として含むものは存在しないから、φ(p) = p − 1 が成り立つ。さらに、k を自然数としたとき、1 から pk の中で p を因子として含むもの、すなわち p の倍数は pk − 1 個あるから、次が成立することが確かめられる。 テンプレート:Math theorem また、m, n を互いに素な自然数とすると、φ(mn) = φ(m)φ(n) が成り立つ。これをオイラーの関数は(互いに素な数の積に関して)乗法的であると言う。これらのことからさらに、任意の自然数 n における値を知ることができる。実際に、pk はどの二つも相異なる素因数であるとして、以下のように φ(n) を計算することができる。 テンプレート:Math theorem
自然数 n, d で d が n を割り切るものとすると、1 から n までの自然数のうち n との最大公約数が n/d であるものの数は φ(d) 個である。特に、1 から n までの自然数は n との最大公約数によって類別されるから、d が n の正の約数全てをわたる和に関して等式
- [math]\sum_{d \mid n} \varphi(d) = n[/math]
が成り立つ(d | n は d が n を割り切るの意)。
G を位数 n の巡回群とすれば、n の約数 d に対して G の位数 d の元は φ(d) 個存在する。特に、巡回群 G の生成元になりうる元は φ(n) 個存在する。
自然数 a, m (1 ≤ a < m) とするとき、剰余環 Z/mZ に属する剰余類 a + mZ が既約、つまり Z/mZ の単数である必要十分な条件は代表元 a が m と互いに素であることであるから、既約剰余類の数は φ(m) に等しい。同じことだが、群 G の位数を #G, 環 R の単数群を R× で表すとき、等式
- [math]\varphi(m) = \#(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^\times[/math]
が成立する。これは特に、オイラーの定理 [math] a^{\varphi(m)} \equiv 1\pmod m[/math] の成立を意味する。また同じ式から、1 の m 乗根で原始的であるものの一つを ζ とし、既約剰余類群 (Z/mZ)× を円分拡大 Q(ζ)/Q のガロア群と見れば φ(m) が円の m 分多項式の次数に等しいことも従う。
n > 1 ならば φ(n) < n である。また、n > 3 ならば
- [math]\varphi(n)\geq e^{-\gamma}\cfrac{n}{\log\log n+\cfrac{2.50637}{e^{\gamma}\log\log n}}[/math]
が成り立つ。ここで γ はオイラー定数である。もし n ≠ 2 ⋅ 3 ⋅ 5 ⋅ 7 ⋅ 11 ⋅ 13 ⋅ 17 ⋅ 19 ⋅ 23 であれば 2.50637 のかわりに 2.5 とおくことができる。
σ(n) を約数関数とすると、n > 1 において、
- [math]\frac {6 n^2} {\pi^2} \lt \varphi(n) \sigma(n) \lt n^2[/math]
が成り立つ。
x が 1 より大きい奇数の時、x はノントーシェントである。また、偶数であるノントーシェントは無数に存在する事が知られている。φ(n) = x となる n が存在するならば、それは少なくとも2つ存在するだろうと予想されているが、未だに証明されていない。一方、任意の k > 1 に対して、φ(n) = x となる n の個数がちょうど k 個であるような x は無数に存在することが知られている。
関連項目
外部リンク
- テンプレート:高校数学の美しい物語
- Weisstein, Eric W. “Totient Function”. MathWorld(英語). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- Kevin Ford, The number of solutions of φ(x)=m, Ann. of Math. 150(1999), 283--311.
- D. Miyata & M. Yamashita, Note on derived logarithmic functions of Euler's functions