ドセタキセル
220px | |
---|---|
155px | |
IUPAC命名法による物質名 | |
(2R,3S)-N-carboxy-3-phenylisoserine, N-tert-butyl ester, 13-ester with 5, 20-epoxy-1, 2, 4, 7, 10, 13-hexahydroxytax-11-en-9-one 4-acetate 2-benzoate, trihydrate | |
臨床データ | |
胎児危険度分類 | ? |
法的規制 | ? |
投与方法 | 点滴静注 |
薬物動態的データ | |
生物学的利用能 | NA |
血漿タンパク結合 | >98% |
代謝 | 肝臓 |
半減期 | 86 hours |
排泄 | 胆汁排泄 |
識別 | |
CAS登録番号 | 114977-28-5 |
ATCコード | L01CD02 |
PubChem | CID 148124 |
DrugBank | APRD00932 |
KEGG | D07866 |
化学的データ | |
化学式 | C43H53NO14 |
分子量 | 807.879 g/mol |
ドセタキセル(docetaxel、略称:DTX、TXT)は、タキサン系の抗がん剤の一つである。重合した微小管に結合して細胞の有糸分裂を阻害する。商品名はタキソテール(taxotere、サノフィ社)。
先行して開発されたパクリタキセル(商品名タキソール)と名称が非常に似ていて、作用機序も同じだが、抗腫瘍効果や溶解性の点で改良がなされており、重篤な副作用の発症率が低いという報告がある[1]。
Contents
効能・効果
類似名称薬剤による誤投与問題
上述のように、タキソテールはタキソール(パクリタキセル:1日の投与量上限が210mg/m2)よりも少ない用量となるため、名称を間違わないように注意が必要となる。
2011年7月、タキソテール(従来は粘調性のある液状。バイアル入り)の溶解済み製剤が発売され、名称が「ワンタキソテール点滴静注」とされたが、「タキソテール点滴静注用」も引き続き販売されている。
注射剤の調製
パクリタキセルと同様に水に難溶なため、無水エタノールに溶かして使用される[2]。タキソテール注はタキソール注(パクリタキセル)と異なり、添付溶解液として13%エタノール溶液が添付されており、これに用時溶解して使用する。ただし、エタノールに過敏な患者に用いる場合は、生理食塩水または5%ブドウ糖液を用いることもできる。
一方、ワンタキソテールは溶解済みの1バイアル製剤であるが、溶液に39.5%のエタノールが含まれており[3]、エタノールに過敏な患者に用いることが難しかった[4]。2008年にタキソテールの再審査が終了[5]すると、後発品が一斉に発売され、その中には「エタノールフリー」を謳う製品が複数存在した。2015年5月になって、ワンタキソテールの組成を変更してアルコールを含まない製剤とする旨の変更承認申請が提出された[6]が、2016年11月現在では変更承認されていない。
なお、ワンタキソテール点滴静注のドセタキセル濃度は、添付文書に従ってタキソテール点滴静注用を溶解した場合の2倍となっている。
作用機序
パクリタキセルと同様、微小管に結合して安定化させ脱重合を阻害することで、腫瘍細胞の分裂を阻害する。
副作用
重大な副作用として添付文書に記載されているものは、
- 骨髄抑制(汎血球減少、白血球減少(97.4%)、好中球減少(発熱性好中球減少を含む)(95.8%)、ヘモグロビン減少(57.3%)、血小板減少(11.8%)等)、
- ショック(0.2%)、アナフィラキシー(0.2%)、黄疸、肝不全、肝機能障害、急性腎不全(< 0.1%)、間質性肺炎(0.6%)、肺線維症(< 0.1%)、急性呼吸促迫症候群(< 0.1%)、急性膵炎、
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)(0.2%)、腸管穿孔(< 0.1%)、胃腸出血(0.4%)、虚血性大腸炎、大腸炎(< 0.1%)、イレウス(0.2%)、
- 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)、多形紅斑(< 0.1%)、重篤な口内炎等の粘膜炎、
- 心タンポナーデ、肺水腫(< 0.1%)、浮腫・体液貯留(0.7%)、心筋梗塞(< 0.1%)、心不全(< 0.1%)、静脈血栓塞栓症、感染症(2.5%)
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、血管炎、末梢神経障害、四肢の脱力感等の末梢性運動障害、Radiation Recall現象
である[7]。(頻度未記載は頻度不明)
パクリタキセルに比べ骨髄抑制(白血球減少など)の発現頻度は高いが、神経毒性が少ないので神経障害(麻痺、しびれ、難聴など)は少ない[1]。累積投与量が増すと、浮腫や爪の変性が見られる。
パクリタキセル製剤と同様に、ドセタキセル製剤にも無水エタノールが含まれるため、投与後に急性アルコール中毒を呈する患者がいることについて米国FDAは警告した。なお、パクリタキセルに比べ、ドセタキセルの方がアルコール量は少ない[8][2]。
出典
- ↑ 1.0 1.1 Journal of the National Cancer Institute, November 17, 2004
- ↑ 2.0 2.1 抗がん剤のアルコールについて 国立がん研究センター
- ↑ “ワンタキソテール点滴静注20mg/1mL/80mg/4mL 添付文書” (2016年10月). . 2016閲覧.
- ↑ “ワンタキソテール点滴静注の適正使用について”. 埼玉県病院薬剤師会 (2011年8月10日). . 2015閲覧.
- ↑ “新医薬品等の再審査結果 平成19年度(その4)について (pdf)”. 厚生労働省医薬食品局長 (2008年2月26日). . 2015閲覧.
- ↑ “サノフィ 抗がん剤ワンタキソテールのエタノール除外製剤を承認申請”. ミクス (2015年5月22日). . 2015閲覧.
- ↑ “タキソテール点滴静注用80mg/20mg 添付文書” (2016年10月). . 2016閲覧.
- ↑ “FDA Drug Safety Communication: FDA warns that cancer drug docetaxel may cause symptoms of alcohol intoxication after treatment”. . 2014閲覧.
参考文献
- 『タキソテール点滴静注用』医薬品インタビューフォーム・2013年10月(新様式第12版)(サノフィ)
- 『ワンタキソテール点滴静注』医薬品インタビューフォーム・2014年9月(新様式第6版)(サノフィ)