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消費税法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | なし |
法令番号 | 昭和63年法律第108号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 租税法 |
主な内容 | 租税法律主義に基づき消費税について定めた法律 |
関連法令 | 日本国憲法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国税通則法、国税徴収法、国税犯則取締法、所得税法、法人税法、地方税法、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 |
条文リンク | 総務省・法令データ提供システム |
消費税法(しょうひぜいほう、昭和63年法律第108号)は、広義の消費税(付加価値税,VAT)に関する法体系の一部を構成する法律[1]。資産の譲渡等に対する税金について定められている。
目的税であり、「消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする(第1条2)」と定められている。
Contents
制度
基本的な仕組み
製造業者、卸売業者、小売業者と資産等が移転するにつれて、負担が次々に転嫁され、最終的には消費者が負担することになる。その過程での課税の累積を排除するため、納税義務者はその売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した額を納税することになっている。
- (売上*税率)-(仕入*税率)
売上にかかる消費税額より仕入れにかかる消費税額が大きい場合、控除しきれなかった額は事業者に還付される。この仕入税額控除において、日本は、ヨーロッパ諸国のようにインボイス方式を用いておらず、仕入にかかる帳簿および請求書(インボイス)等(3万円未満の取引については帳簿)の保存を要件とする「請求書等保存方式」を採用している。
課税の対象
全ての取引は、課税対象取引と課税対象外取引とに分類される。
- 課税の対象は、1)国内において事業者が行った資産の譲渡等、2)外国貨物の保税地域からの引取りである。国内取引については、次の条件を全て満たすものが課税の対象となる。
- 国内において行う取引であること
- 事業者が事業として行う取引であること
- 対価を得て行う取引であること
- 資産の譲渡又は貸付け若しくは役務の提供であること
- 不課税(課税対象外)取引。代表的なものは、給与、家財道具の売却、受取配当金等である。
課税取引の区分
課税対象取引は、6.3%課税取引、0%課税取引及び非課税取引とに区分される。
- 課税取引は、1)国内において行う課税資産の譲渡等、2)課税貨物の保税地域からの引取りである。
- 6.3%課税取引は、消費税が免除されない課税取引であり、消費税といえば一般にこれを指す。食料品や自動車などの販売が該当する。
- 0%課税取引(輸出免税取引)は、輸出として行われる資産の譲渡など外国で消費されるものに係る取引であり、消費地課税主義の観点から消費税が免除される。
- 非課税取引は、1)土地の売買や有価証券等の譲渡、利子の受け取りなど消費になじまないもの、2)医療、介護サービス、助産、教育など政策的な理由によるものである。
非課税取引は、税負担の累積が生じないことから仕入税額控除が認められない。一方、輸出免税取引では、内国消費税の国外消費者への実質的な転嫁を防止する国境税調整の観点から仕入税額控除が認められている。そのため、課税・免税取引と非課税取引の区別は、仕入れに係る消費税額の算定計算において重要な意味を持つ。
納税義務者
- 国内取引:事業者
- 輸入取引:外国貨物を保税地域から引き取る者(事業者か否かを問わない)
特例措置
- 事業者免税点制度
- 当期が消費税の課税事業者であるかどうかは、本人が選択する場合を除き、前前期(基準期間)の課税売上高が1,000万円超であるかどうかによる。この免税点の上限は、平成15年度の税制改正前は、3,000万円とされていたが、課税ベース拡大といわゆる益税(消費者の払った税金が事業者の手元にのこってしまうこと)解消のため引き下げられた。
- 簡易課税制度
- 消費税におけるいわゆる原則課税は、売上に係る消費税額と仕入に係る消費税額の差額を納税する仕組みとなっているが、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であり予め届出書を提出している中小事業者は、その業種に応じて、売上の何パーセントが仕入れであるかという法定のみなし仕入率を適用して仕入れに係る税額を計算する制度。この制度についても益税解消などの観点から、上限が2億円から引き下げられた。
- 限界控除制度
- 1997年3月31日まで設けられていた制度で課税売上高が当時の免税点の3,000万円を超えてはいるが6,000万円未満(2001年からは5,000万円未満)である中小事業者については、税額が0から一挙に3%に増加することを防ぐためのいわば激変緩和措置として税額から一定公式により算定される限界控除税額をマイナスするという制度である。この制度も益税を招くことから廃止された。
- 中間納付制度
- 消費税は消費者からの預かり金的な性質を持っているが、これを預かってから納税するまでの運用益が事業者にとどまることに対する批判から、前課税期間の確定消費税額等により1月、3月又は6月ごとに中間申告・納税が必要とされている。
日本での導入に際して
日本では、1989年4月1日に、既存のいわゆる贅沢(ぜいたく)品に対して個別に課税する物品税等を廃止し、これに代わって消費税法(昭和63年12月30日法律第108号)により一般消費税が導入され、土地や住宅家賃などの非課税資産やサービスを除き、幅広い資産の譲渡又は役務の提供が課税対象となっている。
竹下登政権時である1989年の導入当初の消費税の税率は3%であったが、1997年の橋本龍太郎政権時に5%に引き上げられた。
また、消費税率の引き上げに併せて地方消費税(消費税の25%)が導入され、(国税の)消費税分の4%に地方消費税分である1%(0.04×0.25=0.01)を合計して「消費税等」の税率が5%となった。この「消費税等」とは、税法上、(国税の)消費税と地方消費税の総称である。消費税導入の審議において、参議院では、野党が審議を阻止する為、牛歩戦術を取った。
また消費税が導入される前日には消費者による掛け込み需要がおき、翌4月1日、4月2日と商店は閑古鳥になった。
1989年、参議院で野党が過半数となった時、12月11日に消費税廃止法案が参議院で可決されている(衆議院では廃案)。
総額表示化
2004年4月1日より、値札や広告で消費税額を含めた総額表示(税込表示、内税)を行うことが義務づけられた(ただし、書籍については従来通りのままで免除)。また、2007年4月1日から始まる課税期間からは、企業内部の帳簿においても総額表示が義務付けられている。2013年には増税に伴う経過措置として消費税転嫁対策特別措置法が施行された。これにより、2013年10月1日から2021年3月31日までの間、消費税額を含めた総額表示は「義務」か「任意」へ緩和されたことで、ほとんどの事業者や小売店が従来通りの「税抜(税別)価格」の表示へと逆戻り[2]することになった。
総額表示への移行に際して
総額表示が義務化される以前は、一部の商品や小売店を除き、商品価格は税抜価格で表示され、支払い時に消費税分の5%を加算する方法が主流であったため、消費者はいちいち個別に税込価格に変換する作業を強いられるうえ、この際に1円未満の端数が発生することもある。総額表示化の義務化される以前、1円未満の端数は切り捨てされることが多かったが、まとめ買いするとその分も加算して計算されることになっていた(例:10円(税別)の商品ひとつは端数分を切り捨てると10.50円→10円だが、それを10個購入すると、105.00円→105円となる)。そのため、総額表示に移行するときにこれまでどおり端数切り捨てを行う店舗が多く、端数分の表記をめぐって混乱が起きた。
総額表示への対応方法としては、大きく
- 従来同様、税抜価格合計に、支払い時に5%を加算。
- 完全に内税へ移行。
の二つに分かれ、売り場での個々の商品価格の表示方法は
- 端数分を切り上げて表示し、レジにて加算分を値引く(10円の商品は"11円"と表示、レジにて10円に値引き)。従来どおりの税抜価格合計に、支払い時に5%を加算し、1円未満の端数は切り捨てる方式。税抜(本体)価格が併記してあることもある。
- 端数分を切り捨てて表示し、差分は店舗側が負担する(10円の商品は"10円"と表示、それを2個以上買った場合でも1個あたり10円)。内税へ移行する際に行われた。
- 端数分は四捨五入、差分はほぼ相殺される(10円の商品は10.50円→"11円"と表示、87円の商品は91.35円→"91円"と表示)。内税へ移行する際に行われた。
- 端数分を切り捨てて表示し、レジにて差分を加算する(10円の商品は"10円"と表示、それを2個買った場合は1円を加算)。
- 端数を小数点以下2桁で表示、差分は小数点以下なので切り捨て(10円の商品は"10.50円"と表示、87円の商品は"91.35円"と表示)。
というパターンに分化された。
国が端数の処理方法を法令で明文化しなかったため、このように各店舗で端数の処理が統一されず、消費者の混乱を招く結果となったが、実際には、上記(1)-(3)が多く行われている。
国税庁は『支払総額である「**,***円」さえ表示されていればよく、「消費税額」や「税抜価格」が表示されていても構わない』としているが[3]、パソコン・家電製品などの販売店やガソリンスタンド、ほとんどのスーパーマーケット・ディスカウントストアでは総額表示義務付け以降でも、税抜価格(本体価格)を意図的に大きく表示し、税込価格が目立たないよう小さく表示する(税込価格の併記すらしない)ケースがある。
総額表示に対する批判
内税表示をすること自体への批判に対しては、酒税やたばこ税のような他の間接税も内税表示であり消費税の内税表示のみを批判することはおかしいとの反論もある。また、基本的に従来の方式は事業者の益税を生み出すものであり、総額表示へ移行することで、この益税を抹消させ、課税の負担の公平を図る意味もある。
請求書方式
日本の消費税制度では、インボイス方式ではなく請求書等保存方式(日本型インボイス方式)が用いられている。
- 請求書保存方式の概要
- 請求書保存方式とは「帳簿の保存に加え、取引の相手方(第三者)が発行した請求書等という客観的な証拠書類の保存を仕入税額控除の要件とする方式」である[4]。
- 請求書保存方式の導入経緯
- 消費税は、生産から最終消費に至るまでの各取引段階で課税されることから、税の累積を排除する、いわゆる前段階税額控除方式が採用されている。累積排除の方法としては、日本の取引慣行や納税義務者の事務負担に配慮するといった観点から、インボイス方式ではなく、原則として帳簿上の記録等に基づいて控除する「帳簿方式」が採用された。
- 平成6年の税制改正において、「帳簿方式は実態として十分に機能しているが、納税者自身が作成した帳簿を要件にして税額控除ができるというのは消費税制度に対する信頼性の点で疑問であるとの国民の声が大きい。」との指摘があり、仕入税額控除の方法について議論が行われた。
- 仕入税額控除の方式として、下記3方法についての検討が行われている。
- A方式:登録制度を前提とする書類方式(欧州型インボイス方式)
- B方式:登録制度を前提としないが、課税事業者のみに限定した書類形式
- C方式:請求書等保存方式
- A方式及びB方式においては、「非登録事業者又は免税事業者で取引の中間段階に位置する者が取引から排除される」との指摘があった。
- C方式は、「現在、取引の大部分の事業者間取引において請求書等(インボイス)が交わされ保存されているという取引の実態を尊重した方式であり、かつ事業者に新たな書類の作成など追加的な事務負担がほとんど生じないことから円滑な移行が可能。原則として取引の証拠書類の保存を仕入税額控除の要件としている点で、制度の信頼性や課税非課税判定等の利便性、正確性の観点から、現行方式より望ましい制度である。わが国の経済社会や取引の実状に適合している」との指摘があり、請求書保存方式を採用されることになった。
脚注
- ↑ 鎌倉治子 (2008年10月). 諸外国の付加価値税(2008 年版) (Report). 国立国会図書館調査及び立法考査局 .
- ↑ 消費者の利便性の考慮や、価格表示に対するクレームを回避するため、小数ながら自主的に「(消費税8%分)税込価格」を強調表示している事業者や店舗もある。
- ↑ No.6902「総額表示」の義務付け〔平成22年4月1日現在法令等〕 - 国税庁
- ↑ “『請求書等保存方式』と『インボイス方式』”. 財務省. . 2012閲覧.