「静止エネルギー」の版間の差分
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2018/8/18/ (土) 10:53時点における最新版
静止エネルギー(せいしエネルギー、英: rest energy[1])は、アインシュタインの特殊相対性理論によって示された、質量が存在することにより生じるエネルギー。質量 [math]m\,[/math] の物体は、光速 [math]c\,[/math] を用いて、
- [math]E_0 = mc^2 \,[/math]
で表される静止エネルギー [math]E_0\,[/math] を持つ。運動エネルギーやポテンシャルエネルギーとは異なるもので、質量が存在するだけで生じる。
この式は、質量を持つ物体には膨大なエネルギーが内在していることを示している。そして、実際に質量をエネルギーに変換することは可能である。例えば、電子と陽電子を衝突させると、これらの粒子が対消滅し、元の質量に応じたエネルギーが発生する。また、原子核反応でエネルギーが発生する場合には、反応後の質量はわずかに減少するし(質量欠損)、一般の化学反応でも、非常にわずかではあるが質量が変化する。
相対論におけるエネルギー
特殊相対性理論によれば、運動する物体のエネルギーは次の式で表される。
- [math]E = \sqrt{ m^2c^4+ \left|\boldsymbol{p} \right|^2c^2 }[/math]
ここで、[math]E\,[/math] はエネルギー、[math]m\,[/math] は質量、[math]\boldsymbol{p}[/math] は運動量、[math]c\,[/math] は光速である。また、運動量 [math]\boldsymbol{p}[/math] と速度 [math]\boldsymbol{v}[/math] の関係は次の式で表される。
- [math]\boldsymbol{p}=\frac{\boldsymbol{v}E}{c^2}[/math]
これらから、エネルギーと速度の関係は次の様になる。
- [math]E=\frac{mc^2}{\sqrt{1- \left|\boldsymbol{v} \right|^2/c^2}}[/math]…(式1)
この式をテーラー展開すると次の様になる。
- [math]E = mc^2 \left\{ 1 + \frac{1}{2}\left(\frac{ \left|\boldsymbol{v} \right|}{c}\right)^2 + \frac{3}{8}\left(\frac{ \left|\boldsymbol{v} \right|}{c}\right)^4 + \frac{5}{16}\left(\frac{ \left|\boldsymbol{v} \right|}{c}\right)^6 + \cdots \right\}[/math]
この式は、速度 [math]\boldsymbol{v}[/math] が光速に対して充分小さい ([math] \left|\boldsymbol{v} \right|^2 \ll c^2[/math]) 場合は、次のようになる。
- [math]E = mc^2 + \frac{1}{2}m \left|\boldsymbol{v} \right|^2[/math]
[math]mc^2\,[/math] は最初に述べた静止エネルギーであるので、結局式は次のようになる。
- [math]E = E_0 + \frac{1}{2}m \left|\boldsymbol{v} \right|^2[/math]
つまり、速度が小さい場合は、質量 [math]m\,[/math] の物体が速度 [math]\boldsymbol{v}[/math] で動いている場合の運動エネルギーが [math]\frac{1}{2}m \left|\boldsymbol{v} \right|^2[/math] になるというニュートン力学と同じ結論になる。
なお、式1を導出するのに、[math]E_0 = mc^{2}\,[/math] の [math]m\,[/math] に相対論的質量
- [math]m_r=\frac{m}{\sqrt{1-{ \left|\boldsymbol{v} \right|^2/c^2}}}[/math]
を代入するという説明がなされることがあるが、正しい説明とは言えない。まず、相対論的質量という概念自体にあまり意味がない(相対論的質量を参照)。そして、[math]E_0 = mc^2\,[/math] という式は、静止エネルギーと質量の関係を表している式であるから、相対論的質量という質量とは異なるものを代入して、運動している物体のエネルギーが得られるかどうかは定かではない。