20180717お菓子と砂糖の世界史(S.Kamijo)

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1.はじめに

 お菓子の定義をまず述べる、ブリタニカ国際大百科事典によれば、

常食のほかに食する嗜好品の一種。古くは果物や木の実の総称であったところからこの名がある。現在では穀類,豆類,芋類,木の実,果物,砂糖,乳製品,鶏卵,ゼラチン,特殊酒,香料などを材料として,種々の形につくったものをいい,和菓子と洋菓子に大別される。 [ブリタニカ国際大百科事典, 2018](引用)

とある。  これからも砂糖はお菓子に欠かすことのできない食材であることいえる。また、砂糖は世界史においても交易品と現在も国際的に取引がされる食品でもある。アメリカ農務省の統計によると、

世界の砂糖生産量・消費量ランキング (アメリカ農務省, 2018).jpg

図 1 世界の砂糖生産量・消費量ランキング (アメリカ農務省, 2018)

このような統計となり、先進国途上国にかかわらずに人口規模に応じて砂糖を消費している。ブラジルが世界最大の砂糖産地であり、高緯度地域の多くの国で輸入超過となっており、日本は砂糖の消費の50%以上を輸入に頼っている。世界規模に取引がなされる砂糖の歴史と貿易のあり方をまとまることにより砂糖とお菓子の世界史を考察する。  

2.砂糖とお菓子の過去

 塩は私たちが生きるのに欠かせない。塩Saltソルトの語源が古代ローマ兵の給料Salaryサラリーであり、塩が課税対象となったことからも、その価値はゆらぎない。対して砂糖やお菓子というのはなくても生きていけるのである。むしろ貴重品であった。

お菓子は民俗学において、「ケ」(日常)と「ハレ」(非日常)の分類において、古代から「ハレ」(非日常)の食べ物であり今にもその名残がある。 [池上俊一, 2013](参照)

とあるように、お菓子の非日常性がわかる。「パンがなければお菓子を食べればいい」とマリー・アントワネットが言ったというデマがフランス革命時に流れたことも、絶対王政下の宮廷が民衆からしたら非日常的な贅沢がなされていたのだろうという考えがあったのだろう。そのような、貴重な品物だったものが現在一般人でも簡単に手に入るようになったのはなぜだろうか。 「黒い積荷」(黒人奴隷)をアフリカから新大陸へ「白い積荷」(砂糖)を新大陸からヨーロッパへという三角貿易(奴隷貿易)は人類史においての汚点であり、現在においても、南北アメリカ大陸の国々に差別と憎しみを引き起こしている。

 大量の、安い、しばしば奴隷のような強制的に働かされる労働力を用いて、「世界市場」向けに大量生産を行う。カリブ海の砂糖生産は、まさに条件に最適であった。 [川北稔, 1996](参照)

大量生産を行うためには大量の労働力が必要なのである。さらに、大量供給されるからには値段は下降していくため、労働者の賃金や維持費は安い方が良いのである。この時代のプランテーションの名残により、私たちは今も南米地域や途上国から砂糖を輸入している。

3.砂糖とお菓子の未来

 世界商品となった砂糖は世界史に大きな影響をあたえながら、私たちが手に入れることができるようになったことは、理解ができた。さて、その砂糖の安定供給を脅かす可能性の商品が登場した。

(1)原油価格高騰によって代替エネルギーとしてバイオエタノールが実用化されつつあり、 そのため、(2)バイオエタノールの原料である砂糖価格が高騰している。 [茂木創, 2006](引用)

サトウキビは砂糖以外にバイオエタノールの原料でもある。石油価格の高騰は現在も続いており、限りのある資源である。発展途上国がますますエネルギーが必要となるのであれば、地下資源の消費速度は早まる可能性もある。そうなると、資源価格の上昇は早まる可能性がある。経済原論に従い、バイオエタノールの増産は進み、砂糖の生産量は少なくなり、再度砂糖が高級品となる日が来るかもしれない。そうしたら、お菓子は貴族の食べ物にふたたび戻るのだろうか。

4.さいごに

 砂糖とお菓子の過去と未来は、そんなに甘くはないことが今回のレポートによってわかった。特に、砂糖の歴史は奴隷制度と直結していた。この時代の奴隷制であるが、武装した奴隷商がアフリカの村を突如襲い、殺戮と拉致を繰り返し家族も散り散りさせられ、奴隷になるまで30%も生き残らなかった。さらに、奴隷となっても一生き地獄が待っているのであった。かつて人間が行っていた過酷な労働は今や機械がおこなう。その機械の燃料は化石燃料である。化石燃料が労働の肩代わりをしているならば、化石燃料が枯渇したときに奴隷制度が復活しないことを願うのみだ。

5.参考文献

アメリカ農務省. (2018, 5). Sugar: World Markets and Trade. Retrieved from Sugar World Markets and Trade USDA Foreign Agricultural Service: https://apps.fas.usda.gov/psdonline/circulars/Sugar.pdf
ブリタニカ国際大百科事典. (2018年7月16日). ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 “菓子”. 参照先: http://japan.eb.com/rg/article-02083600
川北稔. (1996). 著: 砂糖の世界史 (ページ: 45). 岩波ジュニア新書.
池上俊一. (2013). 著: お菓子でたどるフランス史 (ページ: 6). 岩波ジュニア新書.
茂木創. (2006). バイオエタノール生産の増加と砂糖価格の上昇 ブラジルのオランダ病の可能性についての一考察. 拓殖大学政経学部. MACRO REVIEW.