正形式
複素幾何学では、正形式(positive form)とは、ホッジタイプ (p, p) の実形式である。
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(1,1)-形式
複素多様体 M 上の実 (p,p)-形式は、タイプ (p,p) の実形式、つまり、交叉
- [math]\Lambda^{p,p}(M)\cap \Lambda^{2p}(M,{\Bbb R})[/math]
を持つ形式である。実 (1,1)-形式 [math]\omega[/math] は正ということと、次の同値な条件が満たされることとは同値である。
- [math]\sqrt{-1}\omega[/math] は正(必ずしも正定値である必要はない)の虚部を持つエルミート形式である。
- (1,0)-形式の空間 [math]\Lambda^{1,0}M[/math] のある基底 [math]dz_1, ... dz_n[/math] に対し、[math]\sqrt{-1}\omega[/math] は対角行列の形、非負な [math]\alpha_i[/math] をもつ実形式 [math] \sqrt{-1}\omega = \sum_i \alpha_i dz_i\wedge d\bar z_i[/math] と書くことができる。
- 任意の (1,0) 接ベクトル [math]v\in T^{1,0}M[/math] に対し、[math]-\sqrt{-1}\omega(v, \bar v) \geq 0[/math]
- [math]I:\; TM\mapsto TM[/math] を複素構造を決める作用素とすると、任意の実接ベクトル [math]v\in TM[/math] に対し、[math]\omega(v, I(v)) \geq 0[/math] である。
正のラインバンドル
代数幾何学では、正の (1,1)-形式は、豊富なラインバンドルの曲率形式として現れる(また、正のラインバンドルとして知られている)。L を複素多様体上の正則なエルミートラインバンドルとすると、
- [math] \bar\partial:\; L\mapsto L\otimes \Lambda^{0,1}(M)[/math]
は、複素多様体自身の複素構造を決める作用素である。従って、L は、エルミート構造を保存し、同時に、
- [math]\nabla^{0,1}=\bar\partial[/math]
を満たす一意な接続を持つ。
この接続をチャーン接続という。
チャーン接続の曲率 [math]\Theta[/math] は、常に、純虚数 (1,1)-形式である。ラインバンドル L は、
- [math]\sqrt{-1}\Theta[/math]
が、正定値 (1,1)-形式であるとき、正であると呼ぶ。小平埋め込み定理は正のラインバンドルは豊富であり、逆に、任意の豊富なラインバンドルは [math]\sqrt{-1}\Theta[/math] が正定値なエルミート計量を持つことを言っている。
(p, p)-形式の正値性
M 上の純 (1,1)-形式は、凸錐(convex cone)を形成する。M が次元 [math]dim_{\Bbb C}M=2[/math] のコンパクトな複素曲面でれば、ポアンカレ双対
- [math] \eta, \zeta \mapsto \int_M \eta\wedge\zeta[/math]
を考えると自己双対である凸錐(self-dual)を持っている。
[math]2\leq p \leq dim_{\Bbb C}M-2[/math] のとき (p, p)-形式に対し、正値性に関して 2つの異なった考え方がある。正の実係数を持つ正形式の積の線型結合であるときは、強い正値性を持つといわれる。n-次元複素多様体 M 上の実 (p, p)-形式 [math]\eta[/math] は、コンパクトな台を持ち、強い正値性を持つすべての (n-p,n-p)-形式 ζ に対し、 [math]\int_M \eta\wedge\zeta\geq 0 [/math] であるときに、弱い正値性を持つといわれる。
弱い正値性と強い正値性は、凸錐を作る。コンパクトな多様体上では、これらの錐はポアンカレのペアについて自己双対(dual)である。
参考文献
- Phillip Griffiths and Joseph Harris (1978), Principles of Algebraic Geometry, Wiley. ISBN 0-471-32792-1