急性胃腸炎

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急性胃腸炎(きゅうせいいちょうえん、: acute gastroenteritis)とは、急性に発症する胃腸症状を主体とした症候群である。

殆どは感染性胃腸炎で、中でもノロウイルスロタウイルス等のウイルス性のものが圧倒的に多いが、一部に細菌性のものがある。病原体に汚染された食物が原因であれば食中毒であるが、例えば黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンによる食中毒は、症状がウイルス性腸炎と極めて類似するため、急性胃腸炎と診断される可能性がある。

感染経路

食品などの原因物質からの感染経路が最も多いケースではあるが、不明な場合も少なくない。

海外旅行などで、現地の食材や飲み水で感染することもある。ペットなどから感染する場合もある。

症状

下痢嘔吐腹痛が主な症状で、発熱および倦怠感を伴うこともある。一般的に、ウイルス性胃腸炎では嘔吐が激しく、細菌性腸炎では下痢が激しくなる傾向にある。

下痢はウイルス性胃腸炎の場合は水様便であることがほとんどだが、腸管出血性大腸菌O157赤痢菌サルモネラ菌腸炎ビブリオカンピロバクター等の細菌が原因の場合は血便となることがしばしばある。

各症状の出現頻度には患者年齢や病原体による差もあるが、個人差が極めて大きいのも急性胃腸炎の特徴である。症状の持続期間も個人差が大きい。

一般的にウイルス性胃腸炎よりも細菌性腸炎のほうが重症になりやすく、しばしば激しい腹痛、血便、38℃以上の高熱を伴う。

ほとんどの場合、数日~1週間程度で自然軽快するが、脱水症状には注意が必要である。また、細菌性腸炎では、ときに重篤な合併症を起こすこともある。 例えば、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌O157赤痢菌に感染すると、溶血性尿毒症症候群を起こすことがある。 サルモネラ菌では敗血症を、カンピロバクターでは稀にギラン・バレー症候群を続発することがある。

治療

嘔吐は1日以上続くことは少ない。このため、症状が軽症であれば経口での水分摂取を薦めることで十分である。 関節などの痛みや高熱を伴う場合もあり、発熱性過換気症候群を併発したケースもある。 や鼻水を主たる症状とした、一般的な風邪とは異なり、重症となり入院するケースは少ない。 入院した場合には、通常の点滴による水分補給及びビタミン点滴による栄養補給を行い原則として絶食する。絶食によって腸管を休ませることが最大の治療であり、風邪と同じく特効薬はない。 通常、水性下痢が治まるまで点滴を行い、通常の食事を取って正常な便が出るまでに回復すれば退院となる。

嘔吐の程度が強く経口摂取が十分にできない場合、経静脈輸液(いわゆる点滴)が必要となる。特に小児などではアセトン血性嘔吐症(自家中毒)の合併が多く、こちらにも急速輸液が有効である。

嘔吐の持続期間が長く経口摂取できない状態が続く場合や、下痢が重篤で経口での水分摂取が追いつかない場合、明らかな脱水がみられる場合は、入院して絶飲食とし、十分量の輸液を継続する必要がある。

ウイルス感染が圧倒的に多いため、病原体ごとに特異的な薬剤というものは存在せず、また使用する必要もない。脱水さえ回避できれば症状は自然軽快するからである。細菌性腸炎の場合でも、よほど重篤な場合を除いては、抗菌薬の投与は必要ない。細菌性腸炎は実質臓器の細菌感染や敗血症と異なり、自然軽快傾向が強いからである。

代表的な止痢薬であるロペラミドは乳幼児では腸閉塞を合併しうるため使用に注意が必要であり、細菌性腸炎では病原体の排泄を遅らせ重症化させる危険があるため禁忌である。特に腸管出血性大腸菌感染症にロペラミドを投与することは、溶血性尿毒症症候群を誘発する恐れがあると考えられており(エビデンスは不十分)、避けるべきである。

予防

急性胃腸炎の病原体の多くは人体外でも長時間生存できるため、院内感染の予防のためには標準感染予防策に加えて接触感染予防策を講じる必要がある。

自宅ではガウン手袋の着用は困難であるが、トイレから出た後、食事前、乳幼児のオムツ交換の前後などこまめに手を洗うことが必要である。紙オムツはビニール袋で密封するなどして廃棄する。患者の便により汚染された衣服などは、漂白剤に浸けおき洗いするなどして消毒すべきである。