ボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式

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数学では、ボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式(Bogomolov–Miyaoka–Yau inequality)は、コンパクトな一般型複素曲面チャーン数についての不等式

[math] c_1^2 \le 3 c_2\ [/math]

のことである。主要な興味は、代数曲面の基礎となっている実 4-次元多様体の可能な位相形を限定したいがためである。この不等式は、シン=トゥン・ヤウ(丘成桐)テンプレート:Harvs宮岡洋一テンプレート:Harvsにより証明され、後日 Van de Ven (1966) と ボゴモロフ(Fedor Bogomolov)テンプレート:Harvs により定数 3 を 8 と 4 へ置き換えた弱いバージョンが証明された。

アルマン・ボレル(Armand Borel)とフリードリッヒ・ヒルツェブルフ(Friedrich Hirzebruch)は、等号が保たれている無限に多くの場合を発見することにより、不等式が可能な限り保たれることを示した。不等式が成立しない場合は、標数が正の場合で、{{#invoke:Footnotes | harvard_citation }} と Easton (2008)一般化されたレノー曲面English版(generalized Raynaud surface)のような、成立しない場合の標数 p での曲面の例を与えた。

不等式の定式化

ボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式の伝統的な定式化は以下である。

X を一般型のコンパクトな複素曲面として、c1 = c1(X) と c2 = c2(X) をそれぞれ、曲面の複素接バンドルの第一チャーン類、第二チャーン類とすると、

[math] c_1^2 \le 3 c_2. \, [/math]

となり、さらに等号が成り立つ場合は、X は球の商空間である。等号のステートメントは、カラビ予想のヤウによる証明の基礎となった微分幾何学的アプローチの結果である。

[math] c_2(X) = e(X) [/math] はトポロジカルなオイラー標数であり、[math]\sigma(X)[/math] を第二コホモロジー上の交叉形式の符号とすると、トム・ヒルツェブルフの符号定理により、[math] c_1^2(X) = 2 e(X) + 3\sigma(X) [/math] である。従って、ボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式は、一般型曲面の位相形の制限として次の書くことが可能である。

[math] \sigma(X) \le \frac{1}{3} e(X)\ .[/math]

さらに、[math]\sigma(X) = (1/3)e(X)[/math] であれば、普遍被覆は球である。

ネターの不等式とともに、ボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式は、複素曲面を探すことへ境界を与える。複素曲面として実現されるように写像の位相形を限定することから、曲面の地理学(geography of surfaces)が導かれる。一般型曲面を参照。

c12 = 3c2 である曲面

X を一般型でボゴモロフ・宮岡・ヤウの不等式を満たすように [math] c_1^2 = 3 c_2[/math] である曲面とすると、Yau (1977) では X が無限離散群により [math]{\mathbb C}^2[/math] の中の単位球の商空間に同型であることが証明された。この不等式を満たす曲面の例を探すことは極めて困難である。Borel (1963) は無限に多くの曲面に対して、cテンプレート:Sup sub = 3c2 の値が無限に多く存在する。Mumford (1979) は、マンフォード曲面English版(Mumford surface)と呼ばれる cテンプレート:Sup sub = 3c2 = 9 を満たす曲面を発見した。cテンプレート:Sup sub + c2 は 12 で割り切れるのでこの値は可能な限り最小値である。さらに、テンプレート:Harvs はちょうど 50個のマンフォード曲面が存在することを示した。

Barthel, Hirzebruch & Höfer (1987) は、例を発見する方法を与え、特に、cテンプレート:Sup sub = 3c2 = 3254 である曲面 X を与えた。Ishida (1988) は cテンプレート:Sup sub = 3c2 = 45 である曲面の商空間を発見し、この商空間の不分岐被覆をとると、全ての正の整数 k に対して cテンプレート:Sup sub = 3c2 = 45k である曲面の例を与えた。 テンプレート:Harvs は、全ての正の整数 n に対し、cテンプレート:Sup sub = 3c2 = 9n である曲面の例を与えた。

参考文献