ビデオ・アート
ビデオ・アート (video art) とは、映像と音声を扱う芸術ジャンルのひとつ。ディスプレイ(展示・上映)の媒体に映像機器、記録媒体にかつてはビデオテープ、現在はDVDなどの電磁的記録媒体を使うことがある。これによってスクリーンとフィルムを使う実験映画と区別されている。1960年代半ばに始まり、機材が低価格化した1980年代以降は、爆発的に制作者の数を増やし、現在に至っている。
一般的な劇映画・テレビ放送ともっとも異なる点は、観客を楽しませることを目的としていないことである。そのため、作品にもよるが観客に忍耐を強いる作品が多い。
歴史
世界初のビデオ・アート作品は、1963年にナム・ジュン・パイクが西ドイツのヴッパータールのパルナス画廊で展示したインスタレーションといわれている。13台のテレビ受像器にそれぞれ改造を施し、テレビ画像を歪めたり白黒反転させたりしたものを展示した。1965年にはニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで個展『NJパイク—エレクトロニックTV実験、3台のロボット、2つの禅箱、1つの禅缶』を開き、歪んだ画像やさまざまな模様を映しだす『磁石テレビ』を発表した。パイクはビデオ・アートの開拓者であるとともに、2006年に亡くなるまで、このジャンルにおける巨大な存在であり続けた。
ビデオ・アートの歴史において重要なハードウェアは、1964年にソニーから発売された世界初の家庭用オープンリール式1/2インチVTR「CV-2000」と、1966年に発売されたポータブルビデオカメラ「DVC-2400」である(このふたつのセットは、ポータパックという愛称で呼ばれた)。この発売をきっかけに、実験映画、コンセプチュアル・アート、パフォーマンス・アートのアーティストたちが続々とビデオ制作をはじめた。
アーティスト
アメリカ合衆国では、パイク以外にはビル・ヴィオラが比較的よく知られている。ほかにビト・アコンシ、ジョン・バルデッサリ、ダグラス・ゴードン、ジョーン・ジョナス、ダン・グレアム、ピーター・キャンパス、ウィリアム・ウェッグマン、マーサ・ロスラーらが有名。スティーナ・ヴァスルカ、ウッディ・ヴァスルカ夫妻のようなCGを使うアーティストもいる。
ヨーロッパのアーティストでは、ポーランドのヴォイチェフ・ブルシェヴスキ、ドイツのウォルフ・カーレン、オーストリアのピーター・ウェイベル、イギリスのデイビッド・ホール、スイスのピピロッティ・リストなどが知られる。
日本人で言及されることが比較的多いとされるアーティストは、飯村隆彦、松本俊夫、出光真子、山本圭吾である。