ドグラ・マグラ

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夢野久作の、狂気と殺人を主題にした長編幻想小説。

1935年(昭和10)春秋社刊。狂人の独白を多用したプロットは錯綜(さくそう)してやや難解のきらいがあるが、主人公は記憶喪失者であり、精神病棟のなかで自分が何者であるかを必死になって模索する。

やがて『ドグラ・マグラ』という標題の原稿をみつけてそれを読み進むうちに、自分が母親や許婚者を殺した狂人であり、しかも自分を殺人狂にしたのは精神病理学の正木教授の非人道的実験材料にされた結果であることを知る。

しかし狂人が真犯人を発見しても、現実と幻想の境目がないので真相は永遠に謎(なぞ)に包まれたままである。不条理の世界をグロテスクに描いて、戦前の日本では実にユニークなファンタジーである。