サイエンス・フィクション

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サイエンス・フィクション英語: Science Fiction、略語:SFSci-Fiエスエフ

おもに 20世紀に盛んになった文学ジャンルで,科学の発達とその驚異を取扱い,それが未来,架空の現在もしくは過去のこととして設定される。対象となる科学も,事実に基づく場合から,こじつけ,矛盾にいたるまで多様である。ただ小説全体を通じて,科学的態度,方法,用語に対する少くとも表面上の忠実さからくる真実らしさが要求される。古くは2世紀のルキアノス,17世紀のシラノ・ド・ベルジュラックの月旅行の物語,スウィフトの『ガリバー旅行記』 (1726) ,ボルテールの『ミクロメガス』 (52) ,M.シェリーの『フランケンシュタイン』 (1818) などの先例があるが,本格的な SFの出現は,近代科学が起り,物的世界の可能性に一般の関心が高まった 19世紀後半のことで,ベルヌと H.G.ウェルズに負うところが大きい。ベルヌは『月世界旅行』 (65) ,『海底2万里』 (70) で,ロケットや潜水艦による世界の拡大を描き,ウェルズは『タイム・マシン』 (95) ,『透明人間』 (95) のほか,『きたるべき世界』 (1933) ではきたるべき大戦後の世界を予言した。初期の作品は,娯楽,社会批評,予言などを目指したが,科学の発達を利用して迫真の描写ができるなど,特殊な可能性が徐々に開発されるにつれ,独自のジャンルとして認められるにいたった。 1926年にはアメリカで世界最初の SF専門誌『アメイジング・ストーリーズ』が H.ガーンズバックにより創刊され,同様の雑誌が続々と発行されて SFは大いに流行したが,同時に宇宙活劇といった「スペース・オペラ」が横行し,低俗で扇情的なパルプ・マガジン向けのものというイメージを一般にうえつけることともなった。これが払拭され,批評に耐えるまじめな文学表現として再浮上できたのは,アシモフ,ブラッドベリー,A.C.クラーク,ハインラインなどの豊かな科学知識をもつ練達の作家たちの長い努力による。 A.ハクスリーの『すばらしい新世界』 (32) ,チャペックの『山椒魚戦争』 (36) ,オーウェルの『1984年』 (49) などが,SFの手法と約束に従って書かれたが,少くとも 20世紀なかばまで続いた SFの低い評価を反映して,ほとんどの場合 SFと称していない。第2次世界大戦後の SFのブームは,宇宙旅行,コンピュータ,原子力,遺伝学など現代科学のめざましい進歩がすでに多くの作家によって予見されていたことを大衆が実感したのと相まって,このジャンルの評価を徐々に高め,非写実文学の主要な,そしておそらく 20世紀の最も特徴的な形態として認めさせるにいたった。日本では戦前の海野十三を先駆として,50年代後半から 60年代にかけて,星新一のファンタジックなショート・ショート,小松左京の文明批評的な作品が出て,ジャンルとして確立され,筒井康隆の「ブラック・ユーモア」などが広がりをみせた。

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