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『'''青春の門'''』(せいしゅんのもん)は、[[五木寛之]]が[[1969年]]から『[[週刊現代]]』に断続的に連載している大河[[小説]]で、[[テレビドラマ]]化や[[映画]]化、[[漫画]]化もされた。1976年、「筑豊編」で五木は[[吉川英治文学賞]]を受賞した。[[早稲田大学]]の先輩である[[尾崎士郎]]の『[[人生劇場]]』に倣ったものである。
 
  
==登場人物==
+
『'''青春の門'''』(せいしゅんのもん)
* 伊吹 信介(いぶき しんすけ) - 主人公。
 
* 伊吹 タエ(いぶき たえ) - 信介の義理の母親。
 
* 伊吹 重蔵(いぶき じゅうぞう) - 信介の父親。炭鉱での事故により、他界。
 
* 牧 織江(まき おりえ) - 信介の幼馴染。
 
* 塙 竜五郎(はなわ りゅうごろう) - ヤクザ「塙組」の親分。
 
* 金 朱烈(きん しゅれつ) - 朝鮮人。信介から「兄ちゃん」と呼ばれている。
 
* 金 九南(きん きゅうなん) - 朱烈の弟。信介の友達。
 
* 留二(とめじ) - 信介の幼馴染。「でく」と呼ばれている。
 
* 早竹先生(はやたけせんせい) - 野球部の顧問。
 
* 梓旗江先生(あずさはたえせんせい) - 音楽の教師。
 
* 長太(ちょうた) - 塙組の一人。竜五郎からの信頼が厚い。
 
* 矢部 虎次(やべ とらじ) - ケンカ師。筑後の虎として恐れられていた。
 
* エリカ - 長太が惚れている美しい女性。
 
  
==あらすじ==
+
[[五木寛之]]の大河小説。筑豊地方の炭鉱町に生まれた主人公、伊吹信介の人生を描く。昭和45年(1970)「第一部筑豊編」刊行。同編ほかのシリーズ作品により、昭和51年(1976)、第10回吉川英治文学賞を受賞。映画、テレビドラマなど多数映像化されている。
[[第二次世界大戦|太平洋戦争]]真っ只中の昭和時代。[[九州]]・[[筑豊]]に、一人の少年が生を受けた。彼の名は、「伊吹信介」。父親はかつて働いていた[[炭鉱]]で、「'''昇り竜'''」と称されたが炭鉱内の事故で早逝。義母・タエに育てられている。やがて終戦を迎え、タエは病で倒れた。自分達を取り巻く人々とのふれあいや様々な出来事を経て、信介は波乱に満ちた人生を歩み始める。
 
 
 
==作品の舞台==
 
*[[福岡県]][[田川市]](伊吹信介の生まれ育った町)
 
*福岡県[[飯塚市]](当時、大都会だった[[筑豊]]最大の都市)
 
*[[香春岳]]
 
 
 
==小説==
 
===構成===
 
*「第1部 筑豊篇」
 
*「第2部 自立篇」
 
*「第3部 放浪篇」
 
*「第4部 堕落篇」
 
*「第5部 望郷篇」
 
*「第6部 再起篇」
 
*「第7部 挑戦篇」
 
*「第8部 風雲篇」
 
*:「第2部 自立篇」は雑誌掲載時には「立志編」とされていた。
 
*:「第6部 再起篇」までについては1989年(平成元年)から1990年(平成2年)にかけて著者による大幅な加筆を受けた「改訂新版」が出版され、それ以後は通常はこの「改訂新版」が流通している。
 
*:「第8部 風雲篇」については1993年(平成5年)7月から1994年(平成6年)4月にかけて雑誌『週刊現代』に掲載された。加筆修正にて、2016年(平成28年)12月刊行された。
 
*:2004年に講談社文庫から刊行された「新装決定版」は文字を大きくし、装丁を改めたもので、本文は改訂新版と同じである。
 
*「新・青春の門」
 
 
 
===年譜===
 
*1969年(昭和44年) 雑誌『週刊現代』で掲載開始
 
*1970年(昭和45年) 「第1部 筑豊篇」講談社から単行本で刊行開始
 
*1971年(昭和46年) 「第2部 自立篇 上」単行本刊行
 
*1972年(昭和47年) 「第2部 自立篇 下」単行本刊行、講談社文庫から文庫版刊行開始
 
*1973年(昭和48年) 「第3部 放浪篇 上」単行本刊行
 
*1974年(昭和49年) 「第3部 放浪篇 下」単行本刊行
 
*1976年(昭和51年) 「第4部 堕落篇 上」単行本刊行
 
*1977年(昭和52年) 「第4部 堕落篇 下」単行本刊行
 
*1979年(昭和54年) 「第5部 望郷篇 上・下」単行本刊行
 
*1980年(昭和55年) 「第6部 再起篇 上・下」単行本刊行
 
*1980年から1981年(昭和56年) 「第1部 筑豊篇」から「第6部 再起篇」までを『五木寛之小説全集』第17巻から第22巻に収録
 
*1989年(平成元年)から1990年(平成2年) 「第1部 筑豊篇」から「第6部 再起篇」までについて著者による大幅な加筆を受けた「改訂新版」を単行本及び講談社文庫で刊行
 
*1993年(平成5年) 「第7部 挑戦篇 上・下」単行本刊行
 
*2004年(平成16年) 講談社文庫から「新装決定版」刊行開始
 
*2016年(平成28年) 「第8部 風雲篇」単行本、講談社文庫と電子書籍同時刊行
 
*2017年(平成29年)1月より第9部に相当する「新・青春の門」を連載開始
 
 
 
==映画==
 
{{Portal 映画}}
 
===1975年・1977年版===
 
{{Infobox Film
 
| 作品名 = 青春の門
 
| 原題 =
 
| 画像 =
 
| 画像サイズ =
 
| 画像解説 =
 
| 監督 = [[浦山桐郎]]
 
| 脚本 = [[早坂暁]] <br>浦山桐郎
 
| 原案 =
 
| 原作 = [[五木寛之]]
 
| 製作 = [[藤本真澄]]<br>[[宮古とく子]]<br>[[針生宏]]
 
| 製作総指揮 =
 
| ナレーター = [[小沢昭一]]
 
| 出演者 = [[田中健 (俳優)|田中健]]<br>[[仲代達矢]]<br>[[吉永小百合]]<br>[[大竹しのぶ]]<br>[[小林旭]]<br>小沢昭一
 
| 音楽 = [[真鍋理一郎]]
 
| 主題歌 =
 
| 撮影 = [[村井博]]
 
| 編集 = [[小川信夫]]
 
| 制作会社 =
 
| 製作会社 =  [[東宝]]
 
| 配給 =  [[東宝]]
 
| 公開 = {{flagicon|JPN}}[[1975年]][[2月15日]]
 
| 上映時間 = 188分
 
| 製作国 = {{JPN}}
 
| 言語 = [[日本語]]
 
| 製作費 =
 
| 興行収入 =
 
| 配給収入 = 5億4800万円<br>1975年邦画配給収入5位
 
| 前作 =
 
| 次作 = 青春の門 自立篇
 
}}
 
{{Infobox Film
 
| 作品名 = 青春の門 自立篇
 
| 原題 =
 
| 画像 =
 
| 画像サイズ =
 
| 画像解説 =
 
| 監督 = [[浦山桐郎]]
 
| 脚本 = [[早坂暁]] <br>浦山桐郎
 
| 原案 =
 
| 原作 = [[五木寛之]]
 
| 製作 = [[藤本真澄]]<br>[[針生宏]]
 
| 製作総指揮 =
 
| ナレーター =
 
| 出演者 = [[田中健 (俳優)|田中健]]<br>[[大竹しのぶ]]<br>[[いしだあゆみ]]<br>[[梢ひとみ]]<br>[[高瀬春奈]]<br>[[梅宮辰夫]]<br>[[高橋悦史]]<br>[[小林旭]]
 
| 音楽 = [[真鍋理一郎]]
 
| 主題歌 =
 
| 撮影 = [[村井博]]
 
| 編集 = [[小川信夫]]
 
| 制作会社 =
 
| 製作会社 =  [[東宝]]
 
| 配給 =  [[東宝]]
 
| 公開 = {{flagicon|JPN}}[[1977年]][[2月11日]]
 
| 上映時間 = 161分
 
| 製作国 = {{JPN}}
 
| 言語 = [[日本語]]
 
| 製作費 =
 
| 興行収入 =
 
| 配給収入 =
 
| 前作 = 青春の門
 
| 次作 =
 
}}
 
[[1975年]][[2月15日]]に第1作、[[1977年]][[2月11日]]に「自立篇」と題した第2作が[[東宝]]で公開された。いずれも脚本は[[早坂暁]]、監督は[[浦山桐郎]]が担当した。「自立篇」が[[キネマ旬報]]ベストテン5位に入るなど評価も高く、興行的にもヒットしたが、原作者の五木と監督の浦山との間で、キャスティングや内容描写で意見が衝突し<ref name="キネ旬7911_1" >{{Cite journal|和書 |author=|year=1979|title=邦画新作情報『青春の門』今度は東映で映画化|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1979年]]([[昭和]]54年)[[11月]]上旬号|pages=183|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref>、第3部は制作されなかった<ref name="キネ旬7911_1" />。こののち映像化がすべて「自立篇」どまりとなるジンクスの始まりとなる。
 
 
 
第1作は5億4800万円の[[配給収入]]を記録、[[1975年]](昭和50年)の邦画配給収入ランキングの第5位となった<ref name="キネ旬" >{{cite book|和書 |title=キネマ旬報ベスト・テン全史: 1946-2002|year=2003|publisher=キネマ旬報社|page=206-207 |isbn=4-87376-595-1}}</ref>。
 
 
 
====キャスト====
 
;第1作
 
*伊吹 信介 - [[浦山春彦]](3歳時)/[[松田剣]](6歳時)/[[田鍋友啓]](10歳時)/[[田中健 (俳優)|田中健]]
 
*伊吹 重蔵 - [[仲代達矢]]
 
*伊吹 タエ - [[吉永小百合]]
 
*牧 織江 - [[山崎理絵]](少女時代)/[[大竹しのぶ]]
 
*塙 竜五郎 - [[小林旭]]
 
*長太 - [[辻萬長]]
 
*セキ - [[小林トシ江]]
 
*梓旗江 - [[高橋惠子|関根恵子]]
 
*矢部 虎 - [[藤田進]]
 
*金山 朱烈 - [[河原崎長一郎]]
 
*朴 - [[井川比佐志]]
 
*早竹先生 - [[加藤武]]
 
*小島労務 - [[藤岡重慶]]
 
*炭鉱主 - [[藤岡琢也]]
 
*平吉/語り手 - [[小沢昭一]]
 
;第2作
 
*伊吹 信介 - [[田中健 (俳優)|田中健]]
 
*牧 織江 - [[大竹しのぶ]]
 
*塙 竜五郎 - [[小林旭]]
 
*カオル - [[いしだあゆみ]]
 
*石井 - [[高橋悦史]]
 
*石井 俊子 - [[宇都宮雅代]]
 
*緒方 - [[伊東辰夫]]
 
*浜崎 - [[高山彰]]
 
*慶子 - [[高瀬春奈]]
 
*人斬り英治 - [[梅宮辰夫]]
 
*結城 実 - [[岡田英次]]
 
*結城家執事 - [[村上冬樹]]
 
*産婦人科医 - [[小松方正]]
 
*照葉のママ - [[初井言榮]]
 
 
 
{{-}}
 
 
 
===1981年・1982年版===
 
{{Infobox Film
 
| 作品名 = 青春の門
 
| 原題 =
 
| 画像 =
 
| 画像サイズ =
 
| 画像解説 =
 
| 監督 = [[蔵原惟繕]]<br>[[深作欣二]]
 
| 脚本 = [[野上龍雄]]
 
| 原案 =
 
| 原作 = [[五木寛之]]
 
| 製作 =
 
| 製作総指揮 =
 
| 出演者 = [[菅原文太]]<br>[[松坂慶子]]<br>[[佐藤浩市]]<br>[[杉田かおる]]<br>[[若山富三郎]]<br>[[鶴田浩二]]<br>[[渡瀬恒彦]]
 
| 音楽 = [[山崎ハコ]]『織江の唄』<ref name="sponichi20160724" >[http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/07/24/kiji/K20160724013025840.html 山崎ハコ「青春の門」歌えたのは九州女だからこそ― スポニチ Sponichi]</ref>
 
| 主題歌 =
 
| 撮影 = [[仲沢半次郎]]<br>[[中島徹]]
 
| 編集 = [[鈴木晄]]
 
| 制作会社 =
 
| 製作会社 =  [[東映京都撮影所|東映京都]]
 
| 配給 =  [[東映]]
 
| 公開 = {{flagicon|JPN}}[[1981年]][[1月15日]]
 
| 上映時間 = 140分
 
| 製作国 = {{JPN}}
 
| 言語 = [[日本語]]
 
| 製作費 =
 
| 興行収入 =
 
| 配給収入 = 8.2億円<ref>{{Cite journal|和書|year=1982|title=1981年邦画4社<封切配収ベスト作品>|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1982年]]([[昭和]]57年)[[2月]]下旬号|pages=124|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref>
 
| 前作 =
 
| 次作 = 青春の門 自立篇
 
}}
 
{{Infobox Film
 
| 作品名 = 青春の門 自立篇
 
| 原題 =
 
| 画像 =
 
| 画像サイズ =
 
| 画像解説 =
 
| 監督 = [[蔵原惟繕]]
 
| 脚本 = [[高田宏治]]
 
| 原案 =
 
| 原作 = [[五木寛之]]
 
| 製作 =
 
| 製作総指揮 =
 
| ナレーター =
 
| 出演者 = [[桃井かおり]]<br>[[佐藤浩市]]<br>[[杉田かおる]]<br>[[風間杜夫]]<br>[[平田満]]<br>[[城戸真亜子]]<br>[[西川峰子]]<br>[[萬屋錦之介]]
 
| 音楽 = [[菊池俊輔]]
 
| 主題歌 =
 
| 撮影 = [[仲沢半次郎]]
 
| 編集 = [[鈴木晄]]
 
| 制作会社 =
 
| 製作会社 =  [[東映京都撮影所|東映京都]]
 
| 配給 =  [[東映]]
 
| 公開 = {{flagicon|JPN}}[[1982年]][[1月23日]]
 
| 上映時間 = 137分
 
| 製作国 = {{JPN}}
 
| 言語 = [[日本語]]
 
| 製作費 =
 
| 興行収入 =
 
| 配給収入 =
 
| 前作 = 青春の門
 
| 次作 =
 
}}
 
[[1981年]][[1月15日]]に第1作、[[1982年]][[1月23日]]に「自立篇」と称した第2作が[[東映]]で公開された。監督は第1作が[[蔵原惟繕]]と[[深作欣二]]の共同で、第2作は蔵原の単独である。
 
 
 
====キャスト====
 
;第1作
 
*伊吹 重蔵(じゅうぞう) - [[菅原文太]] - 「昇り蜘蛛<ref group="注">原作では『昇り龍』とされるが、本作では蜘蛛に置き換えられており、冒頭のシーンでは背中に蜘蛛の入れ墨が施されている。</ref>」と呼ばれ、坑夫たちのまとめ役。信介が幼い頃に亡くなっている。喧嘩っ早いが人情があり男気溢れる男。
 
*伊吹 タエ - [[松坂慶子]] - 重蔵の妻。信介の母。愛情深く厳しく信介を育てる。普段は謙虚だが時に身を挺して行動を起こす。
 
*伊吹 信介 - [[村上尚治]](赤ん坊)/[[加瀬悦孝]](幼年期)/[[熊谷康二]](小・中学校時代)/[[佐藤浩市]](高校時代) - 伊吹家の一人息子。タエ、塙、金山の影響を多大に受けながら、重蔵に似て根性のある熱い性格に育つ。
 
*牧 織江 - [[中嶋香葉子]](小学校時代)/[[菊地優子]](小・中学校時代)/[[杉田かおる]](中学校時代) - 信介の幼馴染。信介とは友達として接するが、いつしか恋心を持つようになる。16歳ぐらいで小倉で暮らし始める。
 
*牧 昌江 - [[新橋耐子]] - タエの近所の家のおばさん。タエと親しくしており彼女と同じ職場で働き同じく貧しい生活を送る。
 
*塙 竜五郎 - [[若山富三郎]] - 『塙組』の親分。生前の重蔵とは因縁の仲だが彼の死後、タエと信介を気にかける。
 
*長太 - [[小林稔侍]] - 塙組の組員。塙の手下。塙組と敵対する団体に塙が襲われた時に、相手のもとへ殴り込みを仕掛ける。
 
*春男 - [[時任三郎]] - 高校生。高校生の頃の信介と同じ学生寮で暮らす。いたずらっ子な性格で信介をからかう。
 
*矢部 虎 - [[鶴田浩二]]([[特別出演]]) - 納屋頭と呼ばれ、筑豊の町を仕切る人物。重蔵と塙のケンカを仲裁する。
 
*金山 朱烈 - [[渡瀬恒彦]] - 作中の在日韓国人のリーダー的存在。昔重蔵に助けられたことからタエと信介に恩を返そうとする。
 
*梓旗江 - [[影山仁美]] - 高校の音楽教師。東京から飯塚に引越してきた都会的な女性。信介が異性を意識し始める相手。
 
*平野 - [[石田純一]] - 飯塚にある高校の野球部のコーチ。高校入学前の信介を野球部にスカウトする。
 
*羽根沢 - [[金田龍之介]] - 石炭鉱業会社の経営者。タエを含めて近辺の住人たちの雇い主。待遇に不満を持った金山たちと対立する。
 
*平井 亀吉 - [[金井進二]]
 
*平井 君代 - [[中島葵]]
 
*崔吉道 ‐ [[大林丈史]]
 
*村田 雄蔵 - [[梅津栄]] - 伊吹家の近所の住人。[[第二次世界大戦|戦争]]が終わったことを知り、近所の者と共に喜ぶ。
 
*木村 - [[菅貫太郎]]
 
*呉 昌源 - [[金内喜久夫]]
 
*李 九南 - [[大小原繁]]
 
*趙 隆夫 - [[市川好朗]]
 
*鄭 奔一 - [[志賀圭二郎]]
 
*所長 - [[加藤和夫]]
 
*坑夫の遺族 - [[荒木雅子]] - 冒頭で夫を亡くし、運ばれる棺桶にしがみついて激しく嗚咽する。
 
*坑夫主 - [[守田学哉]]、[[小田部通麿]]
 
*子分 - [[岩尾正隆]]、[[日尾孝司]]、[[勝野賢三]]
 
*補充兵 - [[世羅豊]]
 
*下士官 - [[小坂和之]]
 
*ハルミ - [[井上真由美]]
 
*旅館の主 - [[岡嶋艶子]] - 小倉で旅館を営む。終電をなくして帰れなくなった信介に、部屋を案内する。
 
*ボーイ - [[幸英二]]
 
*係長 - [[大木晤郎]]
 
*親分 - [[疋田泰盛]]
 
*保安係 - [[丘路千]]、[[小峰隆司]]、[[藤沢徹夫]]、[[大矢敬典]]
 
*坑夫 - [[有川正治]]、[[奈辺悟]]、[[畑中猛重]]、[[西村泰治]]
 
*学友 - [[小野田晃弘]]、[[野田利明]]、[[篠原仁]]、[[室岡隆博]]
 
*警察署員 - [[高並功]]、[[秋山勝俊]]
 
*芸者 - [[末永容子]]、[[宮嶋真理子]]、[[速水典子]] - 塙たちが開いた宴会の場で、彼らを相手にお酌をする。
 
*パンスケ - [[松香ふたみ]]、[[日高久美子]]
 
*壇組組員 - [[丹治勤]]、[[川本勝久]]、[[滝本光一郎]]、[[丸山俊也]]、[[鳥居敏彦]]、[[羽根田真之助]] - 塙組が管轄する店で働いていたタエを、重蔵が勝手に辞めさせようとしたため手荒いやり方で引き止めようとする。
 
*玄海のチンピラ - [[細川純一]]、[[司裕介]]
 
*群衆 - [[笹木俊志]]、[[軽部仁]]
 
*長屋の住人 - [[藤長照夫]]、[[久保井法高]]
 
*看護婦 - [[徳永真由美]]、[[前川恵美子]]、[[稲垣陽子]]
 
*用務員 - [[宮城幸生]]
 
*高校生 - [[高山成夫]]
 
*警防団員 - [[久保政行]]
 
*警官 - [[白井滋郎]]
 
*結婚式の女 - [[梅田まゆみ]]
 
*少年 - [[田中淳也]]、[[守田昌史]]
 
*店の女主人 - [[絵沢萠子]] - 若い頃のタエの雇い主。塙の息の掛かった[[カフェー (風俗営業)|カフェー]]らしき店で働く。
 
*その他 - [[蓑和田良太]]
 
*ナレーター - [[鈴木瑞穂]]
 
;第2作
 
*伊吹 信介 - [[佐藤浩市]] - 早稲田大学入学を機に福岡から上京。自分がどういう人間か何に向いているのかを模索する。
 
*牧 織江 - [[杉田かおる]] - 好意を寄せる信介の後を追って上京する。しかし不慣れな都会暮らしに不運が続きトラブルに遭う。
 
*カオル - [[桃井かおり]] - 娼婦。美人できっぷが良く姉御肌だが、ちょっと気難しい性格。周りで困り事があると手助けしようとする。
 
*緒方 達也 - [[風間杜夫]] - 信介の大学先輩。大学の劇団に所属し演出を担当。やや強引な性格で金にだらしない。
 
*河内 正和 - [[平田満]] - 信介の大学の同級生。緒方と同じ劇団に所属。
 
*沢野 昌子 - [[城戸真亜子]] - 緒方の劇団仲間。比較的裕福な家の娘。緒方や他の学生たちと共に学生運動に参加している。
 
*沢野 怜子 - [[江月美穂]] - 昌子の母。夫がいるのかは不明だが、緒方を用心棒代わりに自宅に間借りさせている。
 
*笹崎 ルミ - [[山本ゆり子]]
 
*藤井 道子 - [[矢場みどり]]
 
*売春宿の女将 - [[馬渕晴子]] - 『一竜』の経営者。カオルたち遊女に頑張って稼いでもらう。
 
*角田 卓治 - [[火野正平]] - 詳細は不明だが売春宿で働く。好意を寄せるカオルに気に入られようと色々と頼まれ事を聞いている。
 
*はつみ - [[西川峰子]] - カオルと同じ店の娼婦で、年上である彼女を慕っている。常連客の河内に本気で恋心を抱く。
 
*浜崎 竜二 - [[矢吹二朗]] - ボクシングの学生チャンピオン。数ヶ月後、信介とボクシングで戦う。
 
*ラーメン屋店主 - [[江幡高志]] - 上京直後の織江の雇い主。ある時店の金が無くなってしまい織江が盗んだと疑う。
 
*木元 良次 - [[小林稔侍]]  - 飲み屋のマスターだが、2階に待機させた女性に売春させるガラの悪い男。織江とトラブルを起こす。
 
*二木 英治 - [[萬屋錦之介]](特別出演)木元の知人。『人斬り英治』の異名を持つヤクザ風の男で木元も恐れる存在。
 
*おえい - [[加賀まりこ]] - 英治の女。女郎として働く。これまで英治から義理人情を理由に苦労させられてきたが彼に惚れている。
 
*早瀬 理子 - [[中島ゆたか]] - 石井の恋人。東京女子医大のスポーツ医学の教授。石井の子を妊娠している。
 
*石井 忠雄 - [[渡瀬恒彦]] - 大学の体育の実技を教える教授。ボクシングジムで、信介に個人的にボクシングを教え始める。
 
 
 
====製作経緯====
 
東宝版の自立編公開から2年経った1979年10月になって<ref name="キネ旬7911_1" />、東宝の前二作に不満を持つ[[五木寛之]]が、東宝で製作されなかった第3部「放浪篇」を東映での製作を希望し<ref name="キネ旬7911_1" />、五木と[[岡田茂 (東映)|岡田茂]]東映社長とで話し合いが持たれ<ref name="キネ旬7911_1" />、シリーズものでは異例の他社移行が決まった<ref name="キネ旬7911_1" />。岡田は「五木氏は『青春の門』はライフワークだといっており、映画化にも強い関心を寄せている。今回東映での製作希望があったのでウチでやることになった。前二作に負けない魅力あるスタッフ、キャストで質的にもすぐれた娯楽作品を作りたい。主人公の信介、織江役を東宝作品とは違う若手スターの起用を考えている。脚本には[[笠原和夫 (脚本家)|笠原和夫]]を予定。1981年の正月公開を予定している」などと話した<ref name="キネ旬7911_1" />。このとき五木の希望通り、第3部「放浪篇」を製作すれば良かったのだが、東映は改めて第1部から第3部までを一本にまとめて製作することで両者が了解点に達した<ref name="キネ旬7911_1" />。前作からまだ数年しか経っておらず[[リメイク]]には早過ぎ<ref name="深作" >{{Cite book | 和書 | title = 映画監督 深作欣二 | author = [[深作欣二]]・[[山根貞男]] | publisher = [[ワイズ出版]] | year = 2003 | id = ISBN 4-89830-155-X | pages = 384-387 }}</ref>、これがまたも第3部は作られないという運命を辿る。[[高岩淡]]企画製作部長は「『[[人生劇場]]』だって何本も作られているし、全く新しい東映調の『青春の門』を作り上げる。元々、五木さんは[[高倉健]]と[[富司純子|藤純子]]をイメージして小説を書かれたそうだし、そうした意味からも東映で製作されてしかるべきものなのだ。もちろん二人には出演依頼をするつもりでいる」と話した<ref name="キネ旬7911_1" />。
 
 
 
しかし製作は進まず。東映は年始に年間ラインアップを発表しても半分は潰れるということは珍しくなかった<ref>{{Cite journal|和書 |author=|year=1981|title=映画・トピック・ジャーナル 大巾な改革を行った東映宣伝部|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1982年]]([[昭和]]57年)[[3月]]下旬号|pages=172|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref>。[[1980年]]までの5年間、正月興行第一弾を担っていた「[[トラック野郎|トラック野郎シリーズ]]」が終了し、1980年夏の時点では[[佐木隆三]]原作の『[[海燕ジョーの奇跡]]』を[[松田優作]]主演・[[深作欣二]]監督で1981年の正月興行第一弾にという流れが強まって来た<ref name="活動屋人生148" >{{Cite book | 和書 | title = 映画界のドン 岡田茂の活動屋人生 | author = | publisher = [[新文化通信社|文化通信社]] | year = 2012 | id = ISBN 978-4-636-88519-4 | pages = 148-149 }}</ref><ref name="キネ旬811_2" >{{Cite journal|和書 |author=|year=1981|title=興行価値 東映第2弾の『青春の門』|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1981年]]([[昭和]]56年)[[1月]]下旬号|pages=176|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref>。ところが松田が脚本にクレームを付けるなど二転三転、正月興行第一弾には間に合わない状況になり<ref name="キネ旬811_2" /><ref name="あかんやつら" >{{cite book |和書 |title= あかんやつら 東映京都撮影所血風録 |author= [[春日太一]] |publisher= [[文藝春秋]] |year=2013 |isbn= 4-1637-68-10-6 |pages= 381-385 }}</ref>、正月興行の選定は東映内部で紛糾した<ref name="あかんやつら" /><ref name="se19801123">『[[サンデー毎日]]』1980年11月23日号 「正月映画が決まらずに頭が痛い東映」、p.153</ref>。深作監督の『謀叛』なども候補に挙がり<ref>{{Cite book | 和書 | title = 映画界のドン 岡田茂の活動屋人生 | author = | publisher = 文化通信社 | year = 2012 | id = ISBN 978-4-636-88519-4 | page = 146 }}</ref>、『海燕ジョーの奇跡』を正月興行第二弾までずらしてまで粘ったが結局流れた<ref name="キネ旬811_2" /><ref name="日下部" >{{Cite book | 和書 | title = シネマの極道 映画プロデューサー一代 | author = 日下部五朗 | publisher = [[新潮社]] | year = 2012 | id = ISBN 978-4103332312 | pages = 126-129 }}</ref>([[海燕ジョーの奇跡#深作欣二版映画企画]])。このため、東映は正月興行に初めて[[アニメ]]を持ってきて『[[サイボーグ009 (アニメ)#劇場版(第3作)|サイボーグ009 超銀河伝説]]』(併映『[['80アニメーション ザ・ベストテン]]』)の公開を決定した<ref name="se19801123"/>。これに「劇映画のメジャーがアニメに逃げるとは」と撮影所内部が猛反撥した<ref name="se19801123"/>。しかし[[松竹]]が[[寅さん]](『[[男はつらいよ 寅次郎かもめ歌]]』)、[[東宝]]が[[山口百恵]]のさよなら映画『[[古都 (1980年の映画)|古都]]』と強力で、これに対抗する作品もなく<ref name="se19801123"/>、正月興行第二弾で反撃を期待されたが、並みの映画では代打にならず、1980年10月に入っても正月第二弾が決まらない異常事態になった<ref name="活動屋人生148" /><ref name="se19801123"/>。プロデューサーの[[日下部五朗]]は、岡田社長から「五朗、お前、正月第二弾に何やんねん!」と矢の催促を受け、仕方なく脚本の[[野上龍雄]]に以前から頼んでいた『青春の門』を代替作品として急ぎ製作することになった<ref name="日下部" /><ref name="sankei160518" >[http://www.sankei.com/entertainments/news/160518/ent1605180001-n1.html 【話の肖像画】 俳優・佐藤浩市(3)深作欣二監督に反論して怒鳴られる]</ref>。野上は[[テレビドラマ|テレビ]]の『[[必殺シリーズ]]』が忙しく『青春の門』には取り掛かってなく急ぎ脚本書きを始めた<ref name="あかんやつら" /><ref name="日下部" />。
 
 
 
監督には野上が『必殺シリーズ』でコンビを組んでいた[[蔵原惟繕]]を推薦し<ref name="あかんやつら" /><ref name="無頼派6" >[[東京スポーツ]]連載「東映伝説のプロデューサー日下部五朗の『無頼派活動屋人生』」(6) 2010年4月14日</ref>、蔵原は脚本にも参加した<ref name="あかんやつら" />。蔵原は本作前の『[[象物語]]』製作中に東映=[[テレビ東京|東京12チャンネル]]合作による製作費10億円の[[パニック映画|パニック超大作]]『東京超大地震』([[早坂暁]]のオリジナル脚本を予定していた)の監督オファーを受けていたが、同作は製作中止になっていた<ref>{{cite journal | 和書 |author =  | journal = [[ロードショー (雑誌)|ロードショー]] | volume = 1979年10月号| title = 邦画マンスリー | publisher = [[集英社]]  | page = 149 }}{{cite journal | 和書 |author =  | journal = ロードショー | volume = 1979年11月号| title = 邦画マンスリー | publisher = 集英社  | page = 237 }}</ref>。[[ロケハン]]ではチーフ助監督の[[土橋亨]]が撮影に重要な[[ボタ山]]を北九州中探しまわった<ref name="あかんやつら" />。しかしふさわしい景色がなくボタ山無しでの撮影を考えたが、一般人から聞いた情報により、[[出光興産|出光石油]]の[[出光興産#製油所・工場|山口精製所]]に元[[大日本帝国海軍|海軍]]の炭鉱があると聞いた<ref name="あかんやつら" />。現地に訪れると最盛期の炭鉱そのままといえるような光景があったという。脚本その他も遅れ、撮影は1ヵ月という状況になったため<ref name="無頼派6" />、蔵原一人では間に合わない、二班体制で撮影した方がいいと蔵原が『海燕ジョーの奇跡』の分解で体が空いた[[深作欣二]]にやってもらえないかと提案し、日下部が深作に助っ人を頼んだ<ref name="深作" /><ref name="データ・バンク" >{{Cite book | 和書 | title = データ・バンク にっぽん人 日下部五朗 | author = 佐藤正弥 | publisher = 現代書林 | year = 1982 | id = ISBN 978-4905924463 | page = 93 }}</ref>。深作は快く引き受け、蔵原とシーンの分担が行われ、深作はアクション主体の演出を担当した<ref name="深作" /><ref name="深作欣二の軌跡" >{{Cite journal | 和書 | title = 深作欣二の軌跡 |journal = キネマ旬報臨時増刊2003年5月12日号 |volume =  |issue = 1380 |pages = 181-182 |publisher = [[キネマ旬報社]] }}</ref>。深作は蔵原の[[日本大学芸術学部・大学院芸術学研究科|日芸]]の二年後輩で親しく問題はなかった<ref name="深作" />。
 
 
 
映画化が伝わると織江役とタエ役を「やらせて欲しい」と多くの女優から売り込みが殺到したが<ref name="データ・バンク" />、タエ役には[[五木寛之]]が[[松坂慶子]]をリクエスト<ref name="日下部" /><ref name="映画情報8302" >{{Cite journal|和書|author=[[加東康一]]|date=1983年2月号|title=加東康一のうわさの向こう側 神話崩壊で火山活動開始の松坂慶子|journal=映画情報|publisher=[[国際情報社]]|pages=75}}</ref>。しかし松坂は当時一番脂ののっている女優で[[松竹]]の至宝<ref name="データ・バンク" />。日下部が三顧の礼を尽くして何度も松竹にお願いに上がり[[土下座]]までして<ref name="日下部" />、最終的に岡田東映社長が松竹に乗り込み<ref name="映画情報8302" />、[[大谷隆三]]松竹社長に啖呵を切り<ref name="映画情報8302" />、松坂の東映貸し出しが決まった<ref name="日下部" /><ref name="データ・バンク" />。松坂が[[クランクイン]]したのは1980年11月25日で<ref name="活動屋人生148" />、深作のクランクインも同じ日だった<ref name="データ・バンク" />。日下部は松坂を口説くため2ヵ月以上通ったと話しているため<ref name="無頼派6" />、キャスティングは早めに進められていたのかも知れない。また伊吹重蔵役にはこれも五木が[[高倉健]]をリクエスト<ref name="se19801123"/>。五木は前作の東宝版でも高倉をリクエストしていた<ref>{{Cite journal | 和書 | author = | date = 1973年7月夏の特別号 | title = 高倉健に他社から出演交渉| journal = [[キネマ旬報]] | page = 183 }}</ref>。[[ヨーロッパ]]旅行中の高倉を[[スイス]][[ジュネーブ]]まで追いかけ交渉したが、「泥縄仕事はいやだ」とにべもなく断られた<ref name="se19801123"/>。この辺りの問題をマスメディアが好餌としたため、岡田社長が改めて記者会見を行い製作を発表する一幕もあった<ref name="キネ旬811_2" />。[[佐藤浩市]]は本作が映画デビュー作<ref name="sankei160518" />。織江役の[[杉田かおる]]も映画はこれが実質初出演となる。あわただしい製作過程でありながら、[[菅原文太]]、[[若山富三郎]]、[[鶴田浩二]]、[[松坂慶子]]といった大スターのキャスティングに成功し、各々見せ場を披露した<ref name="活動屋人生148" /><ref name="データ・バンク" />。特に松坂は菅原と肌もあらわに激しい[[濡れ場]]を演じ<ref name="無頼派7" >[[東京スポーツ]]連載「東映伝説のプロデューサー日下部五朗の『無頼派活動屋人生』」(7) 2010年4月15日</ref>、演技的にも新境地を開いたと評された<ref>{{Cite journal|和書 |author=押川義行|year=1981|title= 日本映画批評『青春の門』|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1981年]]([[昭和]]56年)[[3月]]下旬号|pages=160|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=|date=1982年7月号|title=雑談えいが情報 昔の素顔・今の横顔シゴカれつつ、演技者として脱皮松坂慶子|journal=映画情報|publisher=国際情報社|pages=37}}</ref>。
 
 
 
製作も短期決戦、宣伝も短期決戦で、[[クランクアップ]]は1980年の12月末<ref name="活動屋人生148" />。撮影期間は1ヶ月と大作にしては異例のスピードであった<ref name="活動屋人生148" />。[[東映京都撮影所|京都撮影所]]は持てる力を出し切った。岡田は「[[高岩淡]]所長が体を本当に張ったのは『青春の門』が初めてじゃないかな」と評した<ref name="活動屋人生148" />。地方キャンペーンに駆け回ったのは映画の封切り後で<ref name="活動屋人生148" />、原作の知名度は高いものの、文芸大作はじっくり売り込む姿勢が勝ちのパターンというのが過去の例でもあり、本作は宣伝期間も少なく興行は不安視された<ref name="キネ旬811_2" />。しかし原作出版の[[講談社]]も映画を盛んに[[PR]]し<ref name="活動屋人生148" />、松坂が初めて本格的なラブシーンを演じたこともあって大きな話題になり<ref name="日下部" /><ref>[http://www.asagei.com/excerpt/56382 名作妖艶シネマ「このセリフが悩ましかった!」(4)「女優を知り尽くした三者」座談会-その1 -アサ芸プラス]</ref>、[[興行収入#配給収入|配収]]8億2千万円の大ヒット<ref>{{Cite book | 和書 | title = 映画界のドン 岡田茂の活動屋人生 | author = | publisher = [[新文化通信社|文化通信社]] | year = 2012 | id = ISBN 978-4-636-88519-4 | page = 172 }}</ref><ref name="キネ旬812_1" >{{Cite journal|和書 |author=|year=1981|title=興行価値 日本映画 8ガケ守れるか『自立編』|journal=[[キネマ旬報]]|issue=[[1982年]]([[昭和]]57年)[[2月]]上旬号|pages=178–179|publisher=[[キネマ旬報社]]}}</ref>。当初は東映が撮るとヤクザ調になるのではという声もあったが、感動的な青春ドラマに仕上げ、岡田社長は「文芸大作の風格はカッチリ出たのではないか。今後東映カラーといっても原作ものを手がけることで、東映はヤクザ映画というイメージを克服、脱皮してゆくことになる。文芸大作も出来るという目安だけはこの『青春の門』の成功でついたと思う」などと話した<ref name="活動屋人生148" />。
 
 
 
====エピソード====
 
スケジュールは過密で、福岡のロケ先ではメイン監督の蔵原は寝る間もないほどだったが、助っ人の深作はパートが少なく早めに宿に帰って麻雀をうったりしていた<ref name="日下部" /><ref name="無頼派7" />。そこで伊吹タエという母であり、女でありという役どころに悩んでいた松坂慶子の相談相手にのっているうち、深作と松坂が親しくなった<ref name="日下部" /><ref name="あかんやつら" />。本作の地方キャンペーンで札幌へ行ったときに、夜飲みに出て最後にみんなでラーメンを食べたら、深作の残したラーメンを松坂が啜った<ref name="日下部" />。これを見た日下部が二人の仲に気づき、それを周囲に自慢したら、みんなに「何を今さら言っているんですか」と言われた<ref name="日下部" />。本作を機に松坂は深作の撮る東映作品によく出るようになった<ref name="日下部" /><ref>[https://cinema.ne.jp/recommend/keikomatsuzaka2016100911/ ヒロインから悪女、特撮ものまで演じきる美しき大スター松坂慶子 -シネマズby松竹]</ref>。
 
 
 
音楽監督の[[山崎ハコ]]は、同じ東映の[[1979年]]『[[地獄 (1979年の映画)|地獄]]』の主題歌を担当したことから、スタッフから「ハコさんで」と再び抜擢された<ref name="映画秘宝201011" >{{Cite journal|和書|author=|date=2010年11月号|title=孤高のシンガー・ソングライター、登場 山崎ハコの世界|journal=[[映画秘宝]]|publisher=[[洋泉社]]|pages=76–77}}</ref>。『織江の唄』<ref name="sponichi20160724" />はイメージソングで劇中では使われない<ref name="映画秘宝201011" />。映画館でお客さんの入れ替えの時に流したのと、テレビスポットで盛んに使われ、山崎ハコのキャリアで一番のヒット曲になった<ref name="映画秘宝201011" />。この曲の影響で山崎に「暗い」イメージが定着した<ref name="映画秘宝201011" />。
 
 
 
{{深作欣二}}
 
 
 
第一作のヒットを受け、五木も積極的に年一回のシリーズにして欲しいと要望<ref name="映画情報8202" >{{Cite journal|和書|author=|date=1982年2月号|title=雑談えいが情報 あなたならどれを見ますか? 出そろった'82年正月作品|journal=映画情報|publisher=国際情報社|pages=37}}</ref>。しかし第一作公開後、週刊誌のインタビューで伊吹信介役の[[佐藤浩市]]が「五木小説はアマい」などと発言し五木を激怒させたが<ref name="映画情報8202" />、東映は一年に一本のペースでシリーズ化を発表し<ref name="映画情報8202" />、蔵原の単独監督で第二作『自立篇』を製作した。
 
 
 
第二作『自立篇』は主人公・伊吹信介が筑豊をあとにして上京、早稲田大学に入学してからの物語で舞台は東京。信介役の[[佐藤浩市]]と信介を慕って上京する幼なじみの織江役の[[杉田かおる]]以外はキャストが一新されたが、第一作で朝鮮人炭鉱労働者のボス役だった[[渡瀬恒彦]]が今度は早大教授として出演。この教授のモデルは早稲田大学商学部不正入試問題でやり玉に挙がった人物だった<ref name="映画情報8201" >{{Cite journal|和書|author=|date=1982年1月号|title=雑談えいが情報 桃井かおりや話題のカップルが出演する『青春の門・自立篇』|journal=映画情報|publisher=国際情報社|pages=36}}</ref>。カオル役の [[桃井かおり]]は五木の「彼女でなければピッタリこない」という推薦によるもの<ref name="映画情報8201" />。監督の[[蔵原惟繕]]は本作撮影後に4年越しの企画『[[南極物語]]』の[[クランクイン]]が正式に決まり、撮影中も『南極物語』の話ばかりしていたといわれる<ref name="映画情報8201" />。
 
 
 
当初は『自立篇』を1982年正月映画第一弾を予定していたが<ref name="映画情報8202" />、『[[セーラー服と機関銃 (映画)|セーラー服と機関銃]]』『[[燃える勇者]]』が正月映画第一弾に変更になり、正月映画第二弾として公開された。しかし[[興行収入|興行成績]]が振るわず、さらなる続編は作られなかった<ref name="深作" />。シリーズものは内容はともかく観客に与える新鮮味が第一弾と第二弾ではかなり違い<ref name="キネ旬812_1" />、東宝版も第二弾は第一弾の6ガケに留まったことから<ref name="キネ旬812_1" />、第一弾で大きな反響を呼んだ[[松坂慶子]]の[[濡れ場]]のような話題もなく、興行は不安視されていた<ref name="キネ旬812_1" />。 
 
 
 
==テレビドラマ版==
 
===1976年・1977年版===
 
[[1976年]][[4月7日]]から[[9月29日]]に第一部「筑豊編」が、[[1977年]][[12月7日]]から[[1978年]][[5月31日]]に第二部「自立編」が[[毎日放送]]制作([[TBSテレビ|TBS]]系列)で放映された。
 
 
 
[[北大路欣也]]が本作の演技に対して、第14回[[ギャラクシー賞]]・選奨を受賞<ref>{{cite web|url=http://www.houkon.jp/galaxy/14th.html|title=第14回ギャラクシー賞受賞作品|publisher=[[放送批評懇談会]]|date=|accessdate=2014-11-14}}</ref>。
 
 
 
====キャスト====
 
;第一部
 
*伊吹 タエ - [[小川眞由美|小川真由美]]
 
*伊吹 重蔵 - [[北大路欣也]]
 
*伊吹 信介 - [[栗又厚]]/[[鳥海勝美]]/[[江藤潤]]
 
*牧 織江 - [[飯島洋美]]/[[名川忍]]/[[秋吉久美子]]
 
*辻 春男 - [[火野正平]]
 
*菅野 長太 - [[谷隼人]]
 
*金 朱烈 - [[山本圭]]
 
*梓 旗江 - [[大谷直子]]
 
*矢部 彪 - [[芦田伸介]]
 
*塙 竜五郎 - [[中村敦夫]]
 
;第二部
 
*伊吹 信介 - 江藤潤
 
*カオル - [[松坂慶子]]
 
*緒方 - [[高岡建二|高岡健二]]
 
*牧 織江 - [[木村理恵]]
 
*梓 旗江 - [[水谷良重]]
 
*石井 - [[高橋悦史]]
 
*三杉先生 - [[宇野重吉]]
 
*塙 竜五郎 - 中村敦夫
 
 
 
====スタッフ====
 
*脚本 - [[小野田勇]]
 
*演出 - [[瀬木宏康]]
 
*プロデューサー - [[財前定生]](毎日放送)、[[加藤哲也]]([[松竹芸能]])
 
*音楽 - [[佐藤勝]](第一部)、[[間宮芳生]](第二部)
 
*制作協力 - [[東通]]
 
*制作 - 毎日放送、松竹芸能
 
{{前後番組|
 
放送局=[[TBSテレビ|TBS]]系|
 
放送枠=水曜22時台([[毎日放送|MBS]]制作枠。1976.4-9)|
 
番組名=青春の門・筑豊編|
 
前番組=[[禁じられた美徳]]|
 
次番組=[[愛と憎しみの宴]]|
 
2放送局=TBS系|
 
2放送枠=水曜22時台(MBS制作枠。1977.12-1978.5)|
 
2番組名=青春の門・自立編|
 
2前番組=[[分水嶺_(テレビドラマ)|分水嶺]]|
 
2次番組=[[幸福の断章]]}}
 
{{TBS水曜10時枠の連続ドラマ}}
 
 
 
===1991年版===
 
[[1991年]][[4月11日]]・[[4月12日]]の二夜連続で、[[テレビ東京]]系で放映された。現在は放送ライブラリー([[横浜市]])で視聴できる。
 
====キャスト====
 
*伊吹 信介 - [[渡部篤郎]]
 
*伊吹 重蔵 - [[役所広司]]
 
*伊吹 タエ - [[黒木瞳]]
 
*牧 織江 - [[松永麗子]]
 
*塙 竜五郎 - [[細川俊之]]
 
*梓旗江 - [[萬田久子]]
 
*ナレーター - [[永井一郎]]
 
 
 
====スタッフ====
 
*脚本 - [[岩間芳樹]]
 
*演出 - [[小田切成明]]
 
*プロデューサー - [[佐々木彰]]、[[小橋智子]]、[[渋谷幹雄]]
 
*音楽 - [[菊池俊輔]]
 
 
 
===2005年版===
 
『青春の門-筑豊篇-』のタイトルで、『TBSテレビ放送50周年スペシャルドラマ』として[[2005年]][[3月21日]]・[[3月22日]]の二夜連続で放映された。視聴率は1日目が16.8%、2日目が13.5%。
 
 
 
====キャスト====
 
*伊吹 タエ - [[鈴木京香]]
 
*伊吹 重蔵 - [[豊川悦司]]
 
*伊吹 信介 - [[渡邉奏人]](3 - 5歳)→[[泉澤祐希]](7 - 10歳)→[[石田卓也 (俳優)|石田卓也]](13 - 18歳)
 
*牧 織江 - [[福地亜紗美]](7 - 10歳)→[[邑野みあ]](13 - 18歳)
 
*牧 昌江 - [[神津はづき]]
 
*塙 竜五郎 - [[岸谷五朗]]
 
*金山 朱烈 - [[杉本哲太]]
 
*梓旗江 - [[伊藤歩]]
 
*沢田 文治 - [[ガッツ石松]]
 
*吉田 一郎 - [[金田明夫]]
 
*菅野 長太 - [[浜田学]]
 
*恩田先生 - [[大浦龍宇一]]
 
*木山 とよ - [[森康子]]
 
*カフェ「玄海」のママ - [[根岸季衣]]
 
*女子生徒 - [[岩佐真悠子]]
 
*羽根沢 正道 - [[佐藤浩市]]
 
*矢部 虎次 - [[緒形拳]]
 
 
 
====スタッフ====
 
*脚本 - [[成瀬活雄]]
 
*演出 - [[平野俊一]]
 
*プロデューサー - [[貴島誠一郎]]、[[橋本孝]]
 
*音楽 - [[長谷部徹 (作曲家)|長谷部徹]]
 
*制作 - [[ドリマックス・テレビジョン]]
 
*製作 - TBS
 
 
 
{{リダイレクトの所属カテゴリ
 
|redirect1 = 青春の門-筑豊篇-
 
|1-1 = 2005年のテレビドラマ
 
|1-2 = TBSのテレビドラマ
 
|1-3 = ドリマックス・テレビジョンのテレビドラマ
 
}}
 
 
 
==漫画==
 
[[いわしげ孝]]の作画で「筑豊篇」が漫画化され、[[講談社]]『[[モーニング (漫画雑誌)|モーニング]]』に連載された。講談社[[モーニングKC]]より単行本が刊行されている。全7巻。
 
#1巻 [[2005年]][[3月17日]]発行 ISBN 4063724204
 
#2巻 2005年3月17日発行 ISBN 4063724212
 
#3巻 2005年[[6月23日]]発行 ISBN 4063724484
 
#4巻 2005年[[9月21日]]発行 ISBN 4063724670
 
#5巻 2005年[[12月22日]]発行 ISBN 4063724840
 
#6巻 [[2006年]][[3月23日]]発行 ISBN 4063725057
 
#7巻 2006年[[7月21日]]発行 ISBN 4063725367
 
 
 
==舞台==
 
*[[2008年]]3月、[[東京]][[池袋]]のあうるすぽっとにおいて「放浪篇」が舞台化された<ref>[http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20080129-313671.html 五木寛之氏原作「青春の門」初舞台化]</ref>。演出:鐘下辰男。
 
*2013年11月に桜美林大学プルヌスホールにて同演出家と桜美林大学生による「放浪編」が再演<ref>[http://www8.obirin.ac.jp/opai/opap_item.php?no=92]</ref>。
 
*2016年には、演出[[千葉哲也]]で[[虚構の劇団]]が[[SPACE 雑遊]]で再演<ref>[http://kyokou.thirdstage.com/info/next/2015/11/30-seisyunnomon 虚構の旅団vol.3「青春の門〜放浪篇〜」]</ref><ref>{{cite web|url=http://natalie.mu/stage/news/173762|title=虚構の劇団、五木寛之の小説「青春の門」を舞台化|publisher=ステージナタリー|date=2016-02-02|accessdate=2016-02-02}}</ref>。
 
 
 
==脚注==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist}}
 
 
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注"}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[1975年の映画]]
 
* [[1977年の映画]]
 
* [[1981年の映画]]
 
* [[1982年の映画]]
 
 
 
==外部リンク==
 
* {{Allcinema title|144970|青春の門 (1975年)}}
 
* {{Kinejun title|18298|青春の門 (1975年)}}
 
* {{ぴあ映画チラシ|10431||青春の門 (1975年)}}
 
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青春の門』(せいしゅんのもん)

五木寛之の大河小説。筑豊地方の炭鉱町に生まれた主人公、伊吹信介の人生を描く。昭和45年(1970)「第一部筑豊編」刊行。同編ほかのシリーズ作品により、昭和51年(1976)、第10回吉川英治文学賞を受賞。映画、テレビドラマなど多数映像化されている。



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