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− | '''硫酸'''(りゅうさん、{{lang-en-short|sulfuric acid}})は、[[化学式]] H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> で示される無色、[[酸性]]の液体で[[硫黄]]の[[オキソ酸]]の一種である。古くは'''緑礬油'''(りょくばんゆ)とも呼ばれた。化学薬品として最も大量に生産されている。 | + | '''硫酸'''(りゅうさん、{{lang-en-short|sulfuric acid}}) |
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− | == 概要 ==
| + | 化学式 H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> 。工業上最も重要な酸の1つ。8世紀頃より知られているが,現在では硝酸式製造法 ([[鉛室法]]および塔式) および接触式製造法により大量に生産されている。常温では無色の液体で,濃度の高いものは油状を呈する。分子量 98.08,純粋な硫酸は比重 1.834 (18℃) ,融点 10.49℃。加熱により 290℃で分解しはじめ,約 317℃で沸騰する。水と混ぜると多量の熱を発生する。強い脱水作用があり,また加熱時は強い酸化作用を呈する。強い二塩基酸であるが,金属との反応は硫酸の濃度,温度,金属の種類などにより異なる。有機化合物とは付加,脱水,酸化,スルホン化などの諸反応を起す。化学工業の基礎原料であるばかりでなく,金属製錬,製鋼,紡織,製紙,食料品工業などきわめて広い範囲にわたって使用される。すなわち硫安 ([[硫酸アンモニウム]] ) など硫酸塩の製造のほか,硝酸,リン酸,塩酸などの製造に使われる。また触媒,脱水剤として,あるいは酸化助剤,還元助剤として広く使われ,鉄鋼,黄銅などの酸洗い,石油,油脂の精製,デンプンや木材の糖化,蓄電池,媒染剤などとして大量に使われる。 |
− | 硫酸の性質は濃度と温度によって大きく異なる。濃度の低い硫酸([[濃度#質量パーセント濃度|質量パーセント濃度]]が約90%未満)[[水溶液]]を'''希硫酸'''(きりゅうさん)という。希硫酸は[[強酸]]性だが酸化力や脱水作用はない。濃度の高い硫酸(質量パーセント濃度が約90%以上)を'''濃硫酸'''(のうりゅうさん)といい強力な酸化力や脱水作用を有し、濃硫酸のハメットの[[酸度関数]]は96%では ''H''<sub>0</sub> = −9.88 であり、98%では ''H''<sub>0</sub> = −10.27 の強酸性媒体である<ref name="tanaka">田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年</ref>。
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− | 市販の濃硫酸は96〜98%程度のものが多く、96% (''d'' = 1.831 g cm{{sup-|3}}) のもので[[濃度#物質量/体積(モル濃度)|モル濃度]]は18 mol dm{{sup-|3}}、[[規定度]]は36Nである。濃硫酸を体積で6倍に希釈した希硫酸は、モル濃度は3 mol dm{{sup-|3}}、規定度は6Nであり、質量パーセント濃度は25% (''d'' = 1.175g cm{{sup-|3}})、''H''<sub>0</sub> = −1.47 であり、10%を超え含有する溶液は[[医薬用外劇物]]の指定を受ける。
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− | おもに工業用品、[[医薬品]]、[[肥料]]、[[爆薬]]などの製造や、[[鉛蓄電池]]などの[[電解液]]に用いる。
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− | == 化学的性質 ==
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− | 硫酸は[[三酸化硫黄]] (SO<sub>3</sub>) を[[水]]と反応させて得られる、やや粘性のある[[酸性]]の液体である。
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− | [[塩酸]]などとは異なり[[不揮発性]]であるため、濃度の低い硫酸であっても水分が蒸発すると濃縮されるので、衣服に付いた場合などは、そのまま放置すると穴が開く危険性があり、また、皮膚に付いたものを放置すると、[[火傷]]をする恐れがある。
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− | === 硫酸の水和 ===
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− | 水分子との強い親和力により吸湿性と強い[[脱水作用]]があり、有機化合物から水素と酸素を水分子の形で引き抜く。[[ショ糖]]に濃硫酸をかけると炭化したり、濃硫酸が皮膚に付くと火傷を起こすのは、この脱水作用と発熱およびプロトン化能力のためである。
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− | 硫酸の水和熱は極めて大きく第一水和[[エンタルピー]]変化は以下の通りである<ref name="Parker">D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)</ref>。
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− | : <ce>H2SO4(l)\ + H2O(l) <=> H2SO4 \cdot H2O(l)</ce>, <math>\Delta H^\circ = -27.80 ~ \mathrm{kJ~mol}^{-1}</math>
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− | また硫酸の溶解エンタルピー変化は以下の通りである。
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− | : <ce>H2SO4(l) <=> H^+ (aq)\ + HSO4^- (aq)</ce>, <math>\Delta H^\circ = -73.35 ~ \mathrm{kJ~mol}^{-1}</math>
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− | このため濃硫酸を希釈する場合は、発熱に注意しながら、撹拌して水に少しずつ濃硫酸を加えていかなければならない。
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− | 水に溶かすと発熱するが、氷と混ぜると多くの水溶性化合物に見られるように、逆に[[寒剤]]ともなり得る。
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− | === 金属に対する反応 ===
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− | 金属と反応させた場合の挙動は、金属の種類のほか、硫酸の濃度と温度に依存する。例えば濃度と温度がいずれも高い熱濃硫酸では、[[酸化力]]が高くなる。
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− | 反応生成物も変化に富む。一般には、[[水素]] (H<sub>2</sub>)、[[硫化水素]] (H<sub>2</sub>S)、[[硫黄]] (S)、[[二酸化硫黄]] (SO<sub>2</sub>)、金属の硫化物、硫酸塩が生成する。
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− | 希硫酸は水素より[[イオン化傾向]]の大きな金属と反応し水素を発生させる。ただし、[[鉛]]は表面に不溶性の[[硫酸鉛]]を生じ反応が進行しない。[[スズ]]、[[ニッケル]]などとの反応も極めて遅い。[[亜鉛]]との反応は実験室で手軽に水素ガスを発生させる方法として用いられる。
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− | : <ce>{H2SO4} + Zn -> {ZnSO4} + H2</ce>
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− | 濃硫酸を加熱したものを'''熱濃硫酸'''(ねつのうりゅうさん)という。290℃以上では濃硫酸は水と[[三酸化硫黄]]に分解し、三酸化硫黄は酸化力を持ち、これ以下の温度でも平衡混合物として三酸化硫黄が存在する。そのため熱濃硫酸には強い酸化力があり、[[酸化剤]]として用いられる。イオン化傾向の小さい[[銅]]や[[銀]]などとも反応する。また[[炭素]]、硫黄などの非金属とも反応する。
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− | 例えば熱濃硫酸と銀との化学反応式は以下のようになる。
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− | : <ce>{3H2SO4} + 2Ag\ ->[\Delta]\ {2AgHSO4} + {SO2} + 2H2O</ce>
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− | === 有機物に対する求電子置換反応 ===
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− | 熱濃硫酸は[[芳香族化合物]]などの有機物と[[スルホン化]]反応を起こす(ただし[[発煙硫酸]]を使う方法のほうが一般的である)。これは[[化学平衡|平衡]]生成物として僅かに存在しているSO<sub>3</sub>による[[求電子置換反応]]である。この反応により生成する[[スルホン酸]](RSO<sub>3</sub>H)は1価の強酸である。
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− | [[ファイル:Aromatic sulfonation.PNG|thumb|300px|ベンゼンのスルホン化反応]]
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− | 濃[[硝酸]]と濃硫酸を混合した[[混酸]]は、有機物と[[ニトロ化]]反応を起こし、[[グリセリン]]など[[アルコール]]と反応して[[硝酸エステル]]を生成する。これも強酸性媒体である濃硫酸中で硝酸がプロトン化を受け続いて脱水した結果生成したニトロイルイオン(nitroyl / NO<sub>2</sub><sup>+</sup>)による求電子置換反応である。
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− | === 純硫酸中の平衡 ===
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− | 純硫酸は濃硫酸に計算量の三酸化硫黄または発煙硫酸を反応させて得られるが、これを加熱するとやはり290 ℃以上で分解が始まり、さらに加熱により98.33%の水溶液となり、沸点338 ℃の[[共沸]]混合物となる。
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− | {| border="1"
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− | |+ 硫酸水溶液の濃度と酸度関数(抜粋)<ref>M.J.Jorgentson, D.R. Hatter, J. Am. Chem. Soc., vol.85,878(1963).</ref>
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− | ! 重量%!!H<sub>0</sub>!! 重量%!!H<sub>0</sub>
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− | |-
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− | |10||−0.31||60||−4.46
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− | |-
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− | |20||−1.01||70||−5.8
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− | |-
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− | |30||−1.72||80||−7.34
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− | |-
| |
− | |40||−2.41||90||−8.92
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− | |-
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− | |50||−3.38||99.44||−11.21
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− | |}
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− | 濃硫酸、とくに100%の純硫酸であっても分子性の液体としては比較的高度に[[電離]]しており<ref name="Charlot">シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年</ref>、[[水素#水素イオン|水素イオン]](実際にはH<sub>3</sub>SO<sub>4</sub><sup>+</sup>)は10{{sup-|2}} [[濃度#質量モル濃度|mol kg{{sup-|1}}]]程度生成し、また[[溶媒]]としての硫酸は[[溶質]]に[[水素イオン|プロトン]](水素イオン)を供与する力が非常に強くハメットの[[酸度関数]]では''H''<sub>0</sub> = −11.94を示す<ref name="tanaka">田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年</ref>。しかし酸度関数も濃度により変化する。
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− | [[プロトン性極性溶媒]]である純硫酸には[[自己解離]]および[[縮合]]などの平衡が存在し10 ℃の[[平衡定数]]は以下の通りである<ref name="Cotton"> F.A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年, 原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.</ref>。
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− | : <ce>2H2SO4 -> H3SO4^+ \ + HSO4^-</ce> , <math> K = 1.7 \times 10^{-4} ~ \mathrm{mol}^{2} ~ \mathrm{kg}^{-2}</math>
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− | : <ce>2H2SO4 -> H3O^+ \ + HS2O7^-</ce> , <math> K = 3.5 \times 10^{-5} ~ \mathrm{mol}^{2} ~ \mathrm{kg}^{-2}</math>
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− | : <ce>H2O\ + H2SO4 -> H3O^+ \ + HSO4^-</ce>, <math> K = 1 ~ \mathrm{mol~kg}^{-1} \,</math>
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− | : <ce>H2SO4\ + H2S2O7 -> H3SO4^+ \ + HS2O7^-</ce>, <math> K = 7 \times 10^{-2} \mathrm{mol~kg}^{-1}</math>
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− | 平衡にある純硫酸中の化学種の濃度は{{chem|H|3|SO|4|+}}(1.13×10{{sup-|2}} mol kg{{sup-|1}}), {{chem|HSO|4|-}}(1.50×10{{sup-|2}} mol kg{{sup-|1}}), {{chem|H|3|O|+}}(8.0×10{{sup-|3}} mol kg{{sup-|1}}), {{chem|HS|2|O|7|-}}(4.4×10{{sup-|3}} mol kg{{sup-|1}}), {{chem|H|2|S|2|O|7}}(3.6×10{{sup-|3}} mol kg{{sup-|1}}), {{chem|H|2|O}}(1×10{{sup-|4}} mol kg{{sup-|1}})であり<ref>Greenwood, Norman N.; Earnshaw, A. (1997). Chemistry of the Elements, 2nd Edition, Oxford: Butterworth-Heinemann.</ref>、分子性の液体としてはかなり高い[[電気伝導度]]を示し、25℃における比電気伝導度は1.044×10{{sup-|2}} Ω{{sup-|1}} cm{{sup-|1}}である。
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− | この電気伝導度の値は純硝酸の3.72×10{{sup-|2}} Ω{{sup-|1}} cm{{sup-|1}}(25℃)よりは低いものの、[[フルオロ硫酸]]の1.085×10{{sup-|4}} Ω{{sup-|1}} cm{{sup-|1}}(25℃)、純[[フッ化水素]]の1.6×10<sup>−6</sup> Ω{{sup-|1}} cm{{sup-|1}}(0℃)、および純水の6.40×10<sup>−8</sup> Ω{{sup-|1}} cm{{sup-|1}}(25℃)よりもはるかに高い<ref name="Cotton" />。
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− | === 水溶液中の電離平衡 ===
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− | 硫酸は水溶液中では強い[[二塩基酸]]として働き、一段目はほぼ完全解離、二段目はやや不完全となる。2価の酸であっても[[塩基]]水溶液による水溶液中の[[中和滴定曲線]]は1価の強酸と類似の形状を示し第一当量点は現れない。
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− | その[[酸解離定数]]([[熱力学]]的定数)は25 ℃において以下の通りである<ref name="tanaka" /><ref>湯川泰秀訳 『ストライトウィーザー有機化学解説(1)(第4版)』 広川書店、1995年</ref>。ここで <math>{[\mathrm{X}]} \,</math> は <math>{\mathrm{X}} \,</math> の[[活量]]を表すが、希薄水溶液では[[濃度#質量モル濃度|質量モル濃度]](モル濃度にもほぼ漸近する)に近い。
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− | [[ファイル:Titration-H2SO4-NaOH.jpg|thumb|right|280px|[[水酸化ナトリウム]]水溶液による中和滴定曲線]]
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− | ==== 第一解離定数 ====
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− | : <math>\rm H_2SO_4(aq) \ \rightleftharpoons \ H^+ (aq) + HSO_4^- (aq)</math>
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− | : <math>K_{a1} = \frac{[\mbox{H}^+][\mbox{HSO}_4^-]} {[\mbox{H}_2\mbox{SO}_4]} = 10^{5}</math>
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− | : <math>\mathrm{p}K_{a1} = -5 \,</math>
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− | ==== 第二解離定数 ====
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− | : <math>\rm HSO_4^- (aq) \ \rightleftharpoons \ H^+ (aq) + SO_4^{2-} (aq)</math>
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− | : <math>K_{a2} = \frac{[\mbox{H}^+][\mbox{SO}_4^{2-}]} {[\mbox{HSO}_4^-]} = 1.02 \times 10^{-2}</math>
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− | : <math>\mathrm{p}K_{a2} = 1.99 \,</math>
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− | 二段階目の解離に関するエンタルピー変化、ギブスの[[自由エネルギー]]変化、[[エントロピー]]変化および[[定圧モル比熱]]変化は以下の通りである<ref name="Parker" />。解離に伴うエントロピーの減少は、イオンの電荷の増加に伴う水和の程度の増加に起因する。
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− | {| class="wikitable" style="text-align: center; white-space:nowrap;"
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− | |-
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− | !
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− | !! style="white-space:nowrap"| <math>\Delta H^\circ</math>
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− | !! style="white-space:nowrap"| <math>\Delta G^\circ</math>
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− | !! style="white-space:nowrap"| <math>\Delta S^\circ</math>
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− | !! style="white-space:nowrap"| <math>\Delta Cp^\circ</math>
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− | |-
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− | ! style="white-space:nowrap"| 第二解離
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− | | style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| −21.93 kJ mol{{sup-|1}}
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− | | style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| 11.38 kJ mol{{sup-|1}}
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− | | style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| −111.7 J mol{{sup-|1}} K{{sup-|1}}
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− | | style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| −209 J mol{{sup-|1}} K{{sup-|1}}
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− | |-
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− | |}
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− | == 物理的性質 ==
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− | 濃度98%の硫酸の融点は3 ℃、比重は1.84 (15 ℃) である。204 ℃、98.33%の濃度で水と三酸化硫黄の[[分圧]]が等しくなるため、不揮発性ではあるが、温度を上げるだけではこれ以上濃度を高めることはできない。
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− | 濃度が高くなるにつれ、油状になる。硫酸の[[粘度]] (Pa s) は多くの液体で見られる通り温度の上昇とともに下がっていき、25 ℃、1気圧では、23.8×10{{sup-|3}}であるが、50 ℃で11.7×10{{sup-|3}}、100 ℃では4.1×10{{sup-|3}}となる。しかし、[[ヒドロキシ基]]により強い[[水素結合]]が生成されるため<ref name="tanaka" />、粘度は水の数十倍にもなる<ref>[[国立天文台]]編『[[理科年表]] 平成25年』 p.388、[[丸善]]</ref>。
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− | 純硫酸の25 ℃における[[比誘電率]]は101であり、イオン解離に有利な溶媒であるといえる<ref name="Charlot" />。
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− | == 歴史 ==
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− | === イスラム錬金術 ===
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− | [[ファイル:Distillation_by_Retort.png|thumb|right|200px|[[アランビック]]蒸留器]]
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− | 硫酸を発見した人物として2人の名前が知られている。1人は[[8世紀]]のイスラム世界の[[錬金術|錬金術師]]、[[ジャービル・イブン=ハイヤーン]](ラテン名ゲベル{{lang|lt|Geber}})であり、[[ミョウバン]]もしくは[[緑礬]](りょくばん、[[硫酸鉄(II)]] 7水和物を主体とする鉱石)を[[乾留]]して硫酸を得たとされている。もう1人は[[9世紀]]のイスラム社会の医者であり錬金術師であった[[アル・ラーズィー|イプン・ザカリア・アル・ラーズィー]] (ラテン名ラーゼス{{lang|lt|Rhases}}) である。緑礬あるいは[[胆礬]]([[硫酸銅(II)]]5水和物を主体とする鉱石)を乾留して硫酸を発見した。いずれにせよ乾留の過程で、[[熱分解]]によって[[酸化鉄(III)]]あるいは[[酸化銅(II)]]とともに三酸化硫黄が生じる。これが水を吸って凝縮し、希硫酸が得られた。
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− | この方法は、[[13世紀]]の[[ドイツ人]][[アルベルトゥス・マグヌス|アルベルト・マグナス]]などによるイスラム文献の翻訳により、[[ヨーロッパ]]へと伝えられた。このような由来により中世の錬金術師の間では、硫酸は礬油({{lang|lt|oleum vitrioli}})・礬精({{lang|lt|spiritus vitrioli}})と呼ばれていた。
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− | [[14世紀]]には、[[ベネディクト会]]の修道士であり、錬金術学者でもあったバレンティヌス ([[:en:Basil Valentine|Basilius Valentinus]]) が[[硫黄]]と[[硝石]]を併せて燃焼させると、金属を溶かす性質のある液体(硫酸)が得られることを発見した。
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− | [[1600年]]ごろ、[[オランダ]]人の発明家[[コルネリウス・ドレベル]] (Cornelius Jacobszoon Drebbel) は、熱したイオウと硝石から当時としては最も効率よく硫酸を回収する方法を確立した。ドレベルの手法は150年後に登場するローバックの[[鉛室法]]につながっていった。
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− | [[17世紀]]にはドイツの化学者[[ヨハン・ルドルフ・グラウバー]] (Johann Rudolph Glauber) が[[アムステルダム]]に硫酸工場を設立している。水蒸気を通じながら、硫黄を硝石と一緒に燃やす手法を採った。硝石の分解生成物が硫黄を酸化して三酸化イオウを作り、三酸化イオウと水の化合物として硫酸を得ていた。硫酸工場の目的は、硝石と反応させて[[硝酸]]を製造するためであった。[[1654年]]には[[食塩]]に硫酸を反応させて[[塩酸]]を発見している。このとき生成する[[硫酸ナトリウム]]は彼の名からグラウバー塩とも呼ばれる。
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− | === 産業革命 ===
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− | [[1736年]]には、[[イギリス]]のジョシュア・ウォード (Joshua Ward) が全工程にガラス容器を用い、グラウバーの製法を用いて生産規模を拡大した。
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− | [[1746年]]にイギリスの化学技術者[[ジョン・ローバック]] (John Roebuck) が反応容器の素材をそれまでのガラスから[[鉛]]に変え、鉛室法の基礎を確立した。硫酸の製造コストを大幅に引き下げることができたため、鉛室法の工場はイギリス中に広まった。[[繊維]]の[[漂白剤]]の製造に硫酸が欠かせなかったことから、17世紀から18世紀当時の[[産業革命]]の進展に大いに寄与した。
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− | [[1793年]]、[[フランス]]の化学者ニコラ・クレマン (Nicolas Clement) とシャルル・デゾルム (Charles Bernard Désormes) が鉛室法を完成した。鉛の容器中で硫黄と硝石に「空気を通じながら」燃焼させたことに特徴がある。クレマンとデゾルムは、1811年に[[ヨウ素]]を発見した化学工業家[[ベルナール・クールトア]]の友人であり、ヨウ素のサンプルの分析を依頼されて発見を再確認し、[[1813年]][[11月29日]]にクールトアの業績を公開している。
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− | その後、鉛室の前段階で硫黄を燃焼させ、三酸化硫黄を製造する工程が発明された。
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− | [[1818年]]、フランスの物理学者、化学者である[[ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック|ゲイ=リュサック]]が鉛室法を改良、[[1827年]]には、鉛室で生成した[[窒素酸化物]]を回収するため、鉛室の後段に接続するゲイ=リュサック塔を考案した。[[1837年]]にはフランスの硫酸工場に最初の塔が設置されたものの、広範囲には使われなかった。
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− | [[1859年]]には、イギリスのジョン・グローバー (John Glover) が回収した不純物を含む硫酸から硝酸を分離するためのグローバー塔を考案した。ゲイ=リュサック塔はグローバー塔と組み合わせることで真価を発揮し、硝酸法の地位が確立した。これをもって、硫酸製造の工業化が完成されたとされている。イオウの燃焼室、グローバー塔、鉛室、ゲイ=リュサック塔を直列に接続し、グローバー塔とゲイ=リュサック塔の間で硫酸を循環させるシステムができあがった。
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− | [[1870年代]]には、鉛室の前後に2種類の塔を備えた硫酸工場がイギリスを中心にヨーロッパ中に広まった。
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− | 鉛室法は長い間標準的な製法であったが、[[白金]][[触媒]]を用いる[[接触法]]が開発され、ついで、[[1915年]]に発見された[[五酸化二バナジウム]] (V<sub>2</sub>O<sub>5</sub>) 触媒を用いるBASF法に置き換えられていった。
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− | == 日本国内の製造史 ==
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− | 国内最初の硫酸製造工場は、[[1872年]]5月20日([[旧暦]][[明治]]5年4月14日)、[[北区 (大阪市)|大阪市北区]][[天満]]にある大阪[[造幣局 (日本)|造幣局]]に設置された。大阪造幣局創設の翌年である。[[貨幣]]に利用する[[金]][[銀]]合金の分離精製、および円形(えんぎょう/金属板を貨幣の形に打ち抜いたもの)の洗浄に用いるためである。当時の製造設備は硝酸法の一種である鉛室式であり、製造能力は1日当たり、180キログラムであった<ref>『造幣局百年史(資料編)』 大蔵省造幣局、1971年</ref>。
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− | 硝酸法のもう一つの製造方法である接触法の製造設備は[[日露戦争]]中である[[1905年]]に登場した。設置場所は、[[神奈川県]][[平塚市]]にあった平塚海軍火薬廠である。製造能力は1日当たり、3,000キログラムであった。
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− | == 工業的製法 ==
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− | 硫酸の原料は[[二酸化硫黄]] (SO<sub>2</sub>) である。日本国内では原料の二酸化硫黄を銅などの[[非鉄金属]]の[[製錬]]副産物、[[黄鉄鉱]]などの焙焼(現在日本国内では行われていない)、もしくは[[石油]]の[[脱硫]]による回収硫黄から得ている。
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− | : <ce>
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− | 2FeCuS2\ + SiO2\ + 5O2 \ \overset{\Delta}{->} \ 2Cu\ + Fe2SiO4\ + 4SO2
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− | </ce>
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− |
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− | : <ce>
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− | \rm 4FeS2\ + 11O2 \ \overset{\Delta}{->} \ 2Fe2O3\ + 8SO2
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− | </ce>
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− | 硫酸は二酸化硫黄を酸化し水と反応させることで製造されている。
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− | 酸化の方法は大きく接触法と硝酸法に分かれる。歴史的には[[窒素酸化物]]を[[触媒]]とする硝酸式(代表的なものは[[鉛室法]])で製造されてきたが、製造できる硫酸の濃度が低く、装置とくに鉛室の鉛に起因する不純物も多くなってしまう。2004年現在、日本国内ではすべて接触法で硫酸を製造している。
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− | 接触法では、[[二酸化硫黄]]を[[酸化]]するために[[五酸化二バナジウム]]を表面に付着させたペレットやタブレットを用いる(触媒の失活を抑えるための添加物に特色があり、各種触媒が開発された)<ref>{{PDFlink|https://www.shokubai.org/senior/News62.pdf 触媒懇談会ニュース No. 62 触媒学会シニア懇談会 January 1, 2014。2017年12月3日 閲覧}}</ref>。固体[[触媒]]を使い二酸化硫黄ガスを直接酸化させるため不純物の少ない[[三酸化硫黄]](無水硫酸)が得られる。
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− | : <ce>2SO2\ + O2 -> 2SO3</ce>
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− | 三酸化硫黄と水との反応はあまりにも激しく、生成物が飛散しやすいため、吸収塔内で反応生成物である三酸化硫黄を濃硫酸に過剰に吸収させて[[発煙硫酸]] (H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>·''n''SO<sub>3</sub>) とし、純水の希釈水で最終製品である93[[パーセント|%]]、95 %、98 %の濃硫酸を得る。出来た濃硫酸はプロセスに戻し三酸化硫黄の溶媒として用いるほか、原料ガスの脱水にも用いられる<ref>{{PDFlink|https://www.mes.co.jp/mes_technology/research/pdf/200_08.pdf 三井造船技報 No. 200(2010-6)。2017年12月3日 閲覧}}</ref>
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− | : <ce>H2SO4 \cdot nSO3\ + nH2O -> (n\ +1)H2SO4</ce>
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− | 補足1: [[三酸化硫黄]]は[[水]]とは発熱を伴って激しく反応し、硫酸を生じる。その化学反応式を以下に示す。
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− | : <ce>SO3\ + H2O -> H2SO4</ce>
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− | 補足2: 二酸化硫黄を[[二酸化窒素]]により酸化する硝酸法による硫酸製造の反応式。
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− | : <ce>SO2\ + NO2 -> SO3\ + NO</ce>
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− | 補足3: [[過酸化水素]]による方法
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− | : <ce>SO2\ + H2O2 -> H2SO4</ce>
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− | == 硫酸の生産能力 ==
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− | 硫酸はさまざまな[[肥料]]、[[繊維]]、[[薬品]]の製造に不可欠である。そのため、硫酸の生産能力は、一国の化学産業の指標となっている。2000年現在の年間生産量では、全世界の9600万トンのうち、[[中国]]が2400万トンを占める。次いで、[[アメリカ合衆国]]の960万トン、[[ロシア]]の830万トン、日本の710万トン、[[インド]]の550万トンである。中国とインドは5年間で生産量を約30%伸ばしており、ロシアも成長しているが、日本は微増にとどまり、アメリカ合衆国は減少している。
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− | 2016年度日本国内生産量は 6,460,710t、消費量は 762,555t である<ref>[http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編]</ref>。
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− | == 用途 ==
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− | [[File:Photo-CarBattery.jpg|thumb|300px|鉛蓄電池]]
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− | 硫酸を原料(実際には発煙硫酸と[[塩化水素]]から製造した[[クロロスルホン酸]]を反応に用いる)に合成される[[直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム]](RC<sub>6</sub>H<sub>4</sub>SO<sub>3</sub>Na)および[[高級アルコール]]の硫酸モノエステルの[[ナトリウム]]塩である[[ラウリル硫酸ナトリウム]](CH<sub>3</sub>(CH<sub>2</sub>)<sub>11</sub>OSO<sub>3</sub>Na)は[[合成洗剤]]、[[シャンプー]]および[[歯磨き粉]]などの[[界面活性剤]]として用いられる。多数の[[スルホ基]](-SO<sub>3</sub>H)を有する[[高分子]]は陽[[イオン交換樹脂]]として、[[イオン交換膜]]および水の精製などに用いられる。[[酸触媒]]としては[[ニトロ化合物]]製造の反応助剤として重要な役割を持つ。
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− | また安価な強酸であることから希硫酸は、[[デンプン]]の糖化による[[水飴]]の製造、[[臭素]]および[[ヨウ素]]の製造、[[紡績]]、金属の[[電解精錬]]用の電解液としても用いられる。[[鉛蓄電池]]の電解液としては濃度約33%(''d''=1.24 g cm{{sup-|3}})の希硫酸が用いられ、放電に伴い濃度は低下する。
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− | 肥料としては[[硫安]]、[[過リン酸石灰]]の製造原料として大量に消費される。紙を濃硫酸で処理した半透明の薄い紙は[[硫酸紙]]と呼ばれ、[[羊皮紙]]の代用として用いられる<ref name="kagakudaijiten">化学大辞典編集委員会 『化学大辞典』 共立出版、1993年</ref>。
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− | == 硫酸イオン ==
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− | <div style="float:right">[[ファイル:Sulfate-ion-2D-dimensions.png|130px]]</div><div style="float:right">[[ファイル:Sulfate-3D-vdW.png|100px]]</div>
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− | '''硫酸イオン'''(りゅうさんいおん、sulfate, SO<sub>4</sub><sup>2−</sup>)は主に'''硫酸'''およびその化合物の電離、分解などによって生成する2価の[[陰イオン]]で[[硫酸塩]][[結晶]]中にも存在する、硫黄化合物である。
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− | [[正四面体]]型構造で、硫酸[[ヒドラジン|ヒドラジニウム]](N<sub>2</sub>H<sub>6</sub>SO<sub>4</sub>)結晶中のS-O結合距離は149pmであり、[[単結合]]と[[二重結合]]の中間的な長さに相当する。このS-O間の共有結合に関しては、当初はs、p軌道に加えd軌道も混じった混成であるという意見や(これはd軌道のエネルギーの高さから、SF<sub>6</sub>の場合と同様早期に否定的な意見が出ている)、酸素原子上の非共有電子対のバックドネーション的な効果が提唱されていたものの、実験と理論の両面からの検討により単結合と捉えるのが妥当であることが判明した<ref>M. S. Schmøkel, S. Cenedese, J. Overgaard, M. R. V. Jørgensen, Y.-S. Chen, C. Gatti, D. Stalke and B. B. Iversen, ''Inorg. Chem.'', 51, 8607 (2012).</ref>。なお単なる単結合より結合距離が短い点に関しては、酸素原子と硫黄原子上にそれぞれ−1.5と+4価程度の電荷が存在すること、共有結合そのものも分極が強く電荷にかなりの偏りがあることにより、S-O間に共有結合に加えクーロン力(イオン結合的な力)が働いているためである。
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− | 硫酸は強い[[酸化剤]]となるため、イオン化傾向の低い金属などにも作用し、硫酸イオンを含む多くの[[金属]]の化合物を作る。硫酸イオンより酸素原子が1つ少ないイオン (SO<sub>3</sub><sup>2−</sup>) は[[亜硫酸]]イオンと呼ばれる。
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− | 金属イオンに対する[[配位結合]]は弱いほうであるが、[[コバルト]](III)イオンなどに対してはスルファト[[錯体]](sulfato)を形成する。
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− | : <math>
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− | \rm [Co(NH_3)_5(H_2O)]^{3+} + SO_4^{2-} \ \rightleftharpoons \ [Co(SO_4)(NH_3)_5]^+ + H_2O
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− | </math>
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− | [[海水]]中にもかなり多量に溶存し、その濃度は2.8 g dm{{sup-|3}}、0.029 mol dm{{sup-|3}}と陰イオンとしては[[塩化物イオン]]に次いで多量に存在する。
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− | == 硫酸水素イオン ==
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− | [[ファイル:Hydrogensulfat-Ion.svg|right|100px|硫酸水素イオン]]
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− | '''硫酸水素イオン'''(りゅうさんすいそいおん、hydrogensulfate, HSO<sub>4</sub><sup>−</sup>)は硫酸の一段階目の電離により生成し、また硫酸水素塩の結晶中に存在する1価の陰イオンであり、やや歪んだ四面体型構造で、水素原子が結合したO-S結合距離がやや長い。
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− | 希硫酸中には硫酸イオンは寧ろ低濃度でしか存在せず陰イオンの多くは硫酸水素イオンとして存在し、硫酸濃度を10{{sup-|2}} mol dm{{sup-|3}}程度以下に希釈をして初めて硫酸イオンが主な化学種となる。
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− | たとえば[[ラマンスペクトル]]による結果では3.5 mol kg{{sup-|1}} (3.07 mol dm{{sup-|3}})の希硫酸ではHSO<sub>4</sub><sup>−</sup>が2.06 mol dm{{sup-|3}}、SO<sub>4</sub><sup>2−</sup>が1.01 mol dm{{sup-|3}}である<ref>E. B. Robertson and H. B. Dunford, ''J. Am. Chem. Soc.'', 86, 5080 (1964).</ref>。
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− | == 硫酸塩 ==
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− | {{右
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− | |{{Vertical images list
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− | |幅=150px
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− | |1=Iron(II)-sulfate-heptahydrate-sample.jpg
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− | |2=硫酸鉄(II)七水和物
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− | |3=Copper sulfate.jpg
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− | |4=硫酸銅(II)五水和物
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− | |5=Chromium Alum - side view2.jpg
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− | |6=クロムミョウバン
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− | }}
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− | }}
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− | 硫酸は安価に製造できる不揮発性の強酸のため、種々の[[硫酸塩]]が工業製品として製造されている。
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− | 硫酸イオンを含む[[イオン結晶]]であり多くのものは水溶性であるが、アルカリ土類金属塩(CaSO<sub>4</sub>, SrSO<sub>4</sub>, BaSO<sub>4</sub>, RaSO<sub>4</sub>)、[[鉛]]塩(PbSO<sub>4</sub>)および銀塩(Ag<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) は難溶性であり、[[バリウム]]塩および[[ラジウム]]塩は特に溶解度が低い。本来硫酸イオンは[[無色]][[透明]]であるが[[遷移金属]]イオンを含むものは様々な色を呈する。(記事 [[硫酸塩]]も参照のこと)
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− | * [[硫酸亜鉛]] (ZnSO<sub>4</sub>) – 七水和物は皓礬(こうばん)
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− | * [[硫酸アルミニウム]] (Al<sub>2</sub>(SO<sub>4</sub>)<sub>3</sub>)
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− | * 硫酸アルミニウムカリウム (AlK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O) – 最も一般的な[[ミョウバン]]
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− | * [[硫酸アンモニウム]] ((NH<sub>4</sub>)<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) – 硫安、肥料として用いられる
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− | * [[硫酸カリウム]] (K<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) – 肥料
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− | * [[硫酸カルシウム]] (CaSO<sub>4</sub>) – [[石膏]]の主成分
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− | * [[硫酸銀]] (Ag<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸クロムカリウム]] (CrK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O) – [[クロムミョウバン]]
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− | * [[硫酸タリウム]] (Tl<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) – 殺鼠剤の有効成分
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− | * [[硫酸鉄(II)]] (FeSO<sub>4</sub>) – 七水和物は[[緑礬]]
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− | * [[硫酸鉄(III)]] (Fe<sub>2</sub>(SO<sub>4</sub>)<sub>3</sub>)
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− | * [[硫酸銅(I)]] (Cu<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸銅(II)]] (CuSO<sub>4</sub>) – 五水和物は[[胆礬]]
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− | * [[硫酸ナトリウム]] (Na<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) – 芒硝(ぼうしょう)
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− | * [[硫酸鉛]] (PbSO<sub>4</sub>) – [[鉛蓄電池]]の[[電極]]
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− | * [[硫酸ニコチン]] (C<sub>10</sub>H<sub>14</sub>N<sub>2</sub>·1/2 H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>) – [[殺虫剤]]
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− | * [[硫酸ニッケル]] (NiSO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸バリウム]] (BaSO<sub>4</sub>) – [[造影剤]]
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− | * [[硫酸マグネシウム]] (MgSO<sub>4</sub>) – 瀉利塩(しゃりえん、Epsom salt)
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− | === 硫酸水素塩 ===
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− | '''硫酸水素塩'''(りゅうさんすいそえん、hydrogensulfate)は硫酸水素イオン(HSO<sub>4</sub><sup>−</sup>)を含むイオン結晶で、水素塩(酸性塩)の一種であり、広義には硫酸塩に含まれる。'''重硫酸塩'''(じゅうりゅうさんえん、bisulfate)、'''酸性硫酸塩'''(さんせいりゅうさんえん、acid sulfate)などと呼ばれることもあるが正式名称ではない。多くのものが吸湿性で水に易溶であり、水溶液は硫酸水素イオンの電離のため酸性を示す。
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− | 硫酸水素塩は[[アルカリ金属]]塩(M<sup>I</sup>HSO<sub>4</sub>)が硫酸塩と硫酸の等モル混合水溶液の濃縮により得られ比較的安定であり、加熱により脱水し[[二硫酸]]塩(M<sup>I</sup><sub>2</sub>S<sub>2</sub>O<sub>7</sub>)となる。難溶性塩の酸性融解の[[融剤]]あるいは[[白金]][[坩堝]]などの洗浄に用いられる。
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− | [[アルカリ土類金属]]塩、鉛塩(M<sup>II</sup>(HSO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>)などは硫酸塩を熱濃硫酸に溶解し冷却すると得られるが、吸湿により硫酸塩と硫酸に分解しやすい<ref name="kagakudaijiten" />。
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− | また硫酸一水和物H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>·H<sub>2</sub>Oは濃硫酸に計算量の水を加えて冷却すると結晶として得られ、融点は8.5℃であり固体(H<sub>3</sub>O<sup>+</sup>·HSO<sub>4</sub><sup>−</sup>)は[[オキソニウムイオン]]と硫酸水素イオンからなるイオン結晶である。
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− | * [[硫酸水素アンモニウム]] (NH<sub>4</sub>HSO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸水素カリウム]] (KHSO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸水素カルシウム]] (Ca(HSO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>)
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− | * [[硫酸水素ナトリウム]] (NaHSO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸水素ニトロシル]] (NOHSO<sub>4</sub>) – ニトロソ化試薬
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− | === 硫酸塩鉱物 ===
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− | {{右
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− | |{{Vertical images list
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− | |幅=200px
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− | |1=
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− | |2=透石膏
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− | |3=Celestina mineral.jpg
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− | |4=天青石
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− | }}
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− | }}
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− | [[鉱物学]]において、硫酸塩からなる[[鉱物]]を'''硫酸塩鉱物'''(りゅうさんえんこうぶつ、sulfate mineral)という。[[硫化鉱物]]の酸化および[[熱水]]からの析出などにより生成し、以下のようなものがある。
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− | * [[明ばん石|明礬石]], Alunite(KAl<sub>3</sub>(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>(OH)<sub>6</sub>)
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− | * [[マラー石]], Mallardite(MnSO<sub>4</sub>·7H<sub>2</sub>O)
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− | * [[緑礬]], Melanterite(FeSO<sub>4</sub>·7H<sub>2</sub>O)
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− | * [[赤礬]], Bieberite(CoSO<sub>4</sub>·7H<sub>2</sub>O)
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− | * [[亜鉛緑礬]], Zinc-melanterite((Zn,Mn,Mg,Fe)SO<sub>4</sub>·7H<sub>2</sub>O)
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− | * [[胆礬]], Chalcanthite(CuSO<sub>4</sub>·5H<sub>2</sub>O)
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− | * [[石膏]], Gypsum(CaSO<sub>4</sub>·2H<sub>2</sub>O)
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− | * [[硬石膏]], Anhydrite(CaSO<sub>4</sub>)
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− | * [[天青石]], Celestite(SrSO<sub>4</sub>)
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− | * [[重晶石]], Barite(BaSO<sub>4</sub>)
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− | * [[硫酸鉛鉱]], Anglesite(PbSO<sub>4</sub>)
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− | * [[北投石]], Hokutolite((Ba,Pb)SO<sub>4</sub>)
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− | == 硫酸エステル ==
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− | 硫酸と[[アルコール]]とが脱水縮合した構造を持つ誘導体を示す。モノエステル(ROSO<sub>2</sub>OH)およびジエステル((RO)<sub>2</sub>SO<sub>2</sub>)が存在し、モノエステルは1価の強酸である。{{main|硫酸エステル}}
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− | * [[硫酸ジメチル]] ((CH<sub>3</sub>O)<sub>2</sub>SO<sub>2</sub>) – メチル化試薬
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− | == 硫酸に因む地名 ==
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− | [[ファイル:Ryusan-machi busstop.jpg|thumb|200px|硫酸町バス停]]
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− | * 硫酸町(りゅうさんまち [[山口県]][[山陽小野田市]]小野田)
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− | ** 硫酸町バス停([[サンデン交通]]・[[船木鉄道|船鉄バス]])
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− | :[[日産化学工業]]小野田工場に由来。かつては硫酸町商店街もあった。現在「硫酸町」は通称地名の扱いだが、引き続き独自の郵便番号が割り振られている(〒756-0807)。[http://www.wdic.org/w/GEO/%E7%A1%AB%E9%85%B8%E7%94%BA 国土用語の基礎知識 日本地理編]も参照。
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− | == ゲーム内での使用 ==
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− | ゲーム『[[バイオハザード]]』シリーズでグレネードランチャーの弾薬として使われる。ゲーム内での名称は『[[硫酸弾]]』。設定には弾頭に濃硫酸を搭載した物とされている。現実世界では濃硫酸を用いてある程度の大きさがある生物を瞬時に制圧し、殺害することはできない。
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− | == 脚注・参考文献 ==
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− | {{reflist}}
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− | == 関連項目 ==
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− | {{Commonscat|Sulfuric acid}}
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− | {{Commonscat|Sulfates|硫酸塩}}
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− | * [[硫酸菌]]
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− | * [[混酸]]
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− | * [[二硫酸]]
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− | * [[亜硫酸]]
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− | * [[過硫酸]]
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− | * [[ピラニア溶液]]
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− | * [[硫酸協会]]
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− | == 外部リンク ==
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− | * [http://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/4880/4880.html 硫酸 理科ねっとわーく(一般公開版)] - 文部科学省 国立教育政策研究所
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| {{水素の化合物}} | | {{水素の化合物}} |
| {{硫黄の化合物}} | | {{硫黄の化合物}} |
− | | + | {{テンプレート:20180815sk}} |
| {{DEFAULTSORT:りゆうさん}} | | {{DEFAULTSORT:りゆうさん}} |
| [[Category:硫黄の化合物]] | | [[Category:硫黄の化合物]] |