殺人

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殺人(さつじん)とは、人を殺すことである[1][2]人殺し(ひとごろし)ともいう。

概説

殺人とは、人を殺すことであり、人のを奪うことである。

殺人は、重い犯罪として規定されていることが一般的である(殺人罪)。法域によっては殺人を行った者は死刑に処される可能性がある。

「殺人」と言えば、一般的には自分以外の人物を殺すことを指していることが多い。しかし、「殺人」に自分自身を殺すことも含める場合もある。「自殺とは自分に対する殺人であり、罪であり、だから自殺してはいけない」と言われることがある。自殺もやはり殺人として殺人罪に問える・問うべきだと(理念的に)規定している州もある。

通常の殺人と比較して残酷な動機、手法で行われる殺人を猟奇殺人(りょうきさつじん)と呼ぶこともある。猟奇殺人を題材とした作品のことを猟奇作品(りょうきさくひん)、スプラッターと呼ぶ。これらの作品が凶悪犯罪低年齢化を助長しているとの批判もある(メディア効果論を参照)。
また、一度に大人数の人を殺すことを大量殺人と呼び、その犯人はスプリー・キラーと呼ばれる。さらに、時系列的に1人ずつ大人数を殺していくことを連続殺人と呼び、その犯人をシリアルキラーと呼ぶ。
これらの行為が何らかの政治的・思想的な意図を持って行われた場合にはテロとも呼ばれる。

一方、殺人は個人対個人、個人対集団のみで行われるだけでなく、何らかの意図を持った集団によって個人あるいは複数人を殺すケースもある。このようなケースは集団殺人と呼ばれ、これも政治的・思想的な意図を持って行われた場合にはテロとも呼ばれる。

強盗の末に殺人を犯す場合もある。これを強盗殺人という。これは強盗の被害者に抵抗された為に捕縛から逃れるため、あるいは被害者に犯行を目撃された為に口封じあるいは発覚を遅らせる為に殺害する場合がある。場合によっては非常に大きな量刑となる場合がある。

宗教

旧約聖書ではカインアベルを殺したのが最初の殺人と書かれている[3][4]モーセの十戒の中ではは殺人を禁じた[5]新約聖書ではイエスサタンの事を指して「初めからの人殺し」と言われた[6]

ほとんどの宗教で、殺人は行ってはいけないこととして扱われている。仏教の五戒においても不殺生戒があげられている。

法律

現在では、どの国でも例外なく、人を殺すことは法的には原則として禁じられている(殺人罪)。

ただし、緊急時に自分の身体・生命等を守ろうとしてやむを得ず行った行為(正当防衛)の結果偶発的に人が死んだ場合などは罪に問われないことも多い。ただし正当防衛と言っても程度問題であり、過剰な行為(過剰防衛)があった認定されると、やはり何かしらの罪に問われることがある。

加害者の故意が認められない場合は法的には殺人とはされないが、別の罪(傷害致死罪過失致死罪危険運転致死傷罪等)に問われることがある。また、明確な殺意を持っていなくとも、自身の行為によって相手の生命を奪う可能性を認識していた場合には「未必の故意」を問われる可能性がある。

胎児を殺すこと(中絶すること)については、扱いは国や地域によって異なっており、認めている国も禁止している国もある。人工妊娠中絶を参照。

組織的に人を殺すこともやはり殺人には変わりない。ただし国によっては、刑罰として人を殺すこと(死刑死刑執行)については殺人罪に問われないようにして、(一応)合法としていることも多い。ただし、死刑に関しては賛否両論で世論が割れることは多い(死刑存廃問題)。死刑執行命令を出す権限を持つ人物が(日本においては法務大臣)、自身の信念などに基づいて執行命令を出すのを控えることはある。また法的な枠組みとしては死刑が認められていても、恩赦等の政治的・行政的な措置によって死刑が行われることを回避するということもしばしば行われている。なお政権が国民の支持を失い交代すると、前政権にはそもそも正当性がなかったとして、死刑執行命令を出したことも違法な行為だったとして、遡って以前の権力者が殺人罪に問われ裁かれることもある。[7]

戦争が起こっている際に、政府の正規軍等が戦時国際法の規定の範囲で戦闘行為を行い、その結果人を殺しても罪には問われないということになっている。ただし、兵士はどんな殺人をしてもよいなどと規定しているわけではなく、あくまで国際法の範囲内の行為に限る。必要性・必然性の無い殺人を行った場合は罪に問われる。また政府軍・正規軍であろうが、正当性を著しく欠く殺人を行うと人道に対する罪に問われ裁かれることになる。

公海上の海賊など「人類共通の敵」に対しては武力行使が認められている。このため、海賊の取り締まり等で、結果として殺人が行われることがある。これについても、どんな殺人でも認められるというわけではなく、殺人罪に問われないのは、手続き・手順を守りやむを得ず行われた場合に限る。[8]

殺人が故意で計画的に行われたのか、一時の激情で無計画に行われたのか、ということで量刑の大小など法的な扱いを変える法体系になっていることは多い。[注 1]

例外によっては、殺人が合法化された国家や社会がある。江戸時代の日本では、武士が、無礼を働いた百姓町人を切り付けることは、切り捨て御免の規定に基づき認められていた。ただし、これも所定の手続きを踏んでいないと行ってはならなかった。

方法

詳細は殺害戦争死刑を併せて参照のこと。

殺人は相手の人物の生命活動を不可逆的に断つことが目的であり、その手段は古今東西枚挙に暇がない。
動物は基本的に呼吸器系・循環器系の遮断、物理的な打撃・感電による失血死や身体の損傷、毒物や毒ガス等による呼吸不全や臓器不全、酷暑や酷寒といった苛烈な環境に置くことによる衰弱、水や栄養を断つことによる衰弱・栄養失調によって不可逆的に死に至る。よって、手段を簡潔に例示すれば、絞殺刺殺殴打等の物理的な攻撃・電撃、毒物・毒ガス、苛烈な環境への放置、水分や栄養の遮断等が挙げられる。それらの行為は広義では死刑執行、戦時中においてさえ「殺人」と言える。
そして、それらを自身に対して行った場合(縊死、自刃、飛び降り、鉄道自殺、服毒自殺等)には前述の通り自身に対する殺人行為と言える。

動機

動機も千差万別であるが、殺人はどの国においても重罪であり、宗教・思想・感情的に忌避され、実行だけでなく隠蔽にも大変な労力を伴うため、特定個人を殺害する場合や大量殺人、快楽殺人においてさえ、よほど強い動機あるいは切迫した状況下でなければ人は殺人を犯さない。

まず、特定個人に対する殺意を持つ場合であるが、何らかのトラブルや嫌がらせ、考えの相違等によりその人に対して強い憎悪を抱き、その人物を抹殺したいという思いを強くする場合が挙げられる。大量殺人や連続殺人においては抹殺したい対象が複数人に及ぶ。これは個人的な怨恨による殺人が挙げられる。対立する人種や宗教の人を狙った大量殺人もある。
また、自身が犯した別の犯罪や公表されたくない秘密を相手が握っており、特に脅迫等それを暴露することが切迫している場合、口封じのために殺害する場合もある。

一方、人を殺すことそのものを目的とする場合には大量殺人や快楽殺人が挙げられる。これは社会に対する不満を訴える手段、社会的な注目を浴びたいという欲望、人を殺すことに快楽を覚える場合等がある。

犯行の隠蔽

全ての国家では殺人は罪に問われるため、他の犯罪にも言えることだが、ごく一部の猟奇殺人のケースを除き、自身が警察等の法治組織に逮捕されることを防ぐため、自身が殺人を犯したこと、また殺人行為そのものの隠蔽を図る必要がある。その方法もまた枚挙に暇がない。
前者においては、自身が殺人を行ったことを隠蔽するには、殺人の起こった時刻にその場に居合わせることが不可能だったことを示唆する(アリバイ工作)、殺人が起こった場所の何者かが入った痕跡を消す・残さない(密室殺人)、被害者と自身の接点や動機を隠すことが一般的に行われる。また後者においては、死体遺棄バラバラ殺人等の方法で遺体を隠し、あるいは消滅させて殺人の痕跡を消し去る工作をする。

また、殺人の存在が明るみに出、自身の犯行であることが明らかにされても、長期間の逃亡を図り逮捕を免れようとする場合もある。

統計

ファイル:Map of world by intentional homicide rate.svg
故意で計画的な殺人の発生率。人口10万人当たりの発生件数。2012年現在の数値。
  0-1
  1-2
  2-5
  5-10
  10-20
  >20
ファイル:Historical homicide rate in Stockholm.svg
ストックホルム での殺人発生率の歴史。1400年代以降。中世には殺人発生率が高かったことが読み取れる。100,000人あたり45に対して、1950年代には0.6と大きく減少している。ただし直近の10年では少し発生率が上昇している。


国連統計による主な国の人口10万人当たり殺人発生率は、アメリカ合衆国(2010年)4.2件、イギリス(2009年)1.2件、ドイツ(2010年)0.8件、イタリア(2009年)0.9件、フランス(2009年)1.1件、スウェーデン(2010年)1.0件、オーストラリア(2010年)1.0件、スイス(2010年)0.7件、ロシア(2010年)10.2件、中国(2010年)1.0件、韓国(2010年)2.6件、日本(2009年)0.4件[9]

日本

ICPO調査による2002年の統計では、日本では年1,871件の殺人が発生しており、人口10万人あたりの発生率は1.10件で、先進国の中ではアイルランドと並んで最も低い[10]。なお、日本の統計において「殺人」は、殺人既遂のみならず殺人未遂・予備や自殺教唆・幇助をも含むと定義されている[11]ため、それらを除けばより少ない値となる。殺人既遂のみに限った場合の年間被害者数は2012年度で年間383人である[12]

なお、日本の殺人(上記の通り未遂・予備等含む)認知件数は毎年減少傾向にあり[13]、1955年(昭和30年)には年間3000件を超えていたが、2013年は年間1000件を下回り戦後最低件数を更新した[14]

日本における殺人の検挙人数の男女比は、2011年は男子733人、女子238人と女子の比率が24.5%であった。2010年の調査において、被疑者と被害者との関係は30.3%が親族、58.5%が親族を含まない面識者、11.1%が面識のない者であった。[15]

他の先進国に比べて低いとされる日本の殺人発生率は、警察が殺人発生率の増加を恐れるなどの理由により不審な死(変死)の可能性があっても解剖に回さず、自殺事故心不全にしたがるため殺人が見逃された結果であるという説もある[16]。事実として、司法解剖の医師不足は深刻であり、現状では警察の死体取扱い数に対する司法解剖率は数%に留まっている。

脚注

  1. 日本の旧刑法1908年(明治41年)に廃止)では、「故殺」(こさつ、一時の感情による無計画な殺人)と、謀殺(ぼうさつ、計画的な殺人)とを区別していた。
出典

関連項目