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'''声優'''(せいゆう)とは、[[映像]]作品や[[音声]]作品に、[[声]]の出演をする[[俳優]]のこと。広くは[[ナレーター]]も含めることがある。[[英語]]では一般的に男性を voice actor、女性を voice actress といい、[[日本語]]でも'''ボイスアクター'''という場合がある。
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'''声優'''(せいゆう)
  
アニメーション作品ではしばしば'''キャラクターボイス''' (character voice)、略して'''CV'''というが、これは[[和製英語]]である。[[1980年代]]後半に[[アニメ雑誌]]『[[アニメック]]』で副編集長だった[[井上伸一郎]]が提唱した用語で、その後、井上が[[角川書店]]で創刊した『[[月刊ニュータイプ]]』でも用いられている<ref>{{Cite |和書 |author = [[小牧雅伸]]  |title = アニメックの頃…―編集長(ま)奮闘記  |date = 2009 |publisher = [[NTT出版]] |isbn = 4757142161 |pages = 210 |ref = harv}}</ref>。
+
声の俳優。ラジオドラマを演じる俳優として誕生。その放送の普及に伴って,1941年日本放送協会が NHK放送劇団を創設,声優の養成が開始され,以後専門職として定着した。第2次世界大戦後は民間放送にも同様の劇団が生れたが,テレビ時代になって放送劇団の役割は低下。活動の場もテレビのアニメ番組,洋画の吹替えなどに移った。声優から新劇,大衆演劇などの俳優に転じた人も多い。
  
== 声優の仕事内容 ==
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{{テンプレート:20180815sk}}
[[アニメ]]、[[OVA|オリジナルビデオアニメ(OVA)]]、[[ラジオドラマ]]、[[ドラマCD]]、[[コンピュータゲーム|ゲーム]]、[[テレビ]]、[[映画]]、[[洋画]]や[[海外ドラマ]]の日本語[[吹き替え]]などがある。
 
 
 
=== アニメ ===
 
画面を見ながら[[台詞]]を吹き込む[[アフレコ]]と、事前に台詞を収録し、それに合わせて後から動画を制作する[[プレスコ]]の2種類の方法がある。[[日本]]ではアフレコが主流である。近年のアニメ制作のデジタル化により、アフレコ後に絵を修正するケースも多い。なお、声をあてることから[[アテレコ]]とも言う。収録はスタジオに声優を集めて一度に行うのが主流だが、芸人や歌手などの非声優を起用する場合は、個別に別録りすることが多い。
 
 
 
出演料は[[#ランク制|ランク制]]の適用を受ける。
 
 
 
=== 日本語吹き替え ===
 
海外ドラマ・外国映画などの登場人物の声を演じる。アニメ同様、ランク制の対象となる。
 
 
 
=== ゲーム ===
 
基本的に、かけ合いではなく一人ずつ個別に収録する。そのため、共演者であっても顔を合わせたことがないというケースも多い。
 
 
 
[[CD-ROM]]の普及し始めた[[1980年代]]末から増えた仕事である<ref>[[日本電気ホームエレクトロニクス|NECホームエレクトロニクス]]の発売した家庭用[[ゲーム機]][[PCエンジン]]のCD-ROMドライブの発売は1988年12月。</ref>。[[1990年代]]に、[[PlayStation (ゲーム機)|PlayStation]]などの高性能なゲーム機が登場し、声優が起用されることが一般的になった。出演料については、当初は明確な基準がなかったが、[[1998年]]に[[日本俳優連合]](日俳連)と社団法人[[コンピュータエンターテインメント協会]](CESA)の間で協議が持たれてからは、一般向けのゲームでは、アニメと同様にランク制が適用されるようになった。
 
 
 
=== ラジオドラマ・ドラマCD ===
 
[[ラジオドラマ]]・[[ドラマCD]]作品の登場人物・登場キャラクターの声を演じる。
 
 
 
ドラマCDの場合キャスティングされる声優達は人気声優が多い。まだ売れてない無名の声優だとなかなかセールスが伸びず、人気声優だと販売店の扱いが違ったり、声優達の固定ファンの人達が買ってくれたりするためセールスが見込めてCD製作に踏み切れたりする。そのため「ドラマCD」の現場は人気声優達がいっぱい集まりやすい<ref>[http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20140324/enn1403241928030-n1.htm 【カズゾウの絶対音監】ドラマCDの魅力ってナニ!?]</ref>。
 
 
 
=== ナレーション ===
 
テレビ番組・テレビやラジオのCM・PRビデオなどの原稿を読む。
 
 
 
ランク制の対象外の仕事<ref group="注">ただし、アニメ・日本語吹き替え・ゲームのナレーションはランク制の対象となる。</ref>で、ギャラはアニメ・日本語吹き替え・ゲームよりもはるかに高額とされ、特にテレビCMが高額とされている<ref>大栄出版編集部・編『なりたい!!声優』大栄出版、1998年、p.152</ref>。
 
 
 
=== 舞台活動 ===
 
[[関智一]]、[[山口勝平]]などのように、劇団を主宰する者もいる。
 
 
 
=== 俳優・タレント活動 ===
 
[[戸田恵子]]、[[山寺宏一]]、[[高木渉]]など、映画やテレビドラマ、バラエティ番組などに出演している声優もいる。また、[[関俊彦]]、[[花江夏樹]]など、[[子供番組|子ども向け番組]]([[教育番組]]を含む)に顔出し出演をしていたり、[[内田真礼]]、[[竹達彩奈]]などのように、[[コマーシャルメッセージ|CM]]で顔出し出演をする声優もいる。
 
 
 
=== 歌手活動 ===
 
音楽CDを発売したり、コンサートを開催するなど、[[歌手]]として活動する。逆に、アイドル歌手が声優に転身するケースも見られる。
 
 
 
アニメ・ゲームにおいては、メインキャラクター級の担当声優が、その作品の主題歌を歌うことがある。また、キャラクターが歌っているという設定で、声優本人の名義ではなく、キャラクター名義で[[キャラクターソング]]をリリースすることがある。
 
 
 
1990年代以後は、レコード会社との専属契約を結び、本格的に歌手活動をするケースが登場するようになり、2000年代半ば以後は、この傾向がより顕著になっている。
 
 
 
数名の声優が[[音楽ユニット]]を結成し、歌手(音楽)活動をするケースもあり、それを'''[[声優ユニット]]'''と称されることが多い。「[[THE IDOLM@STER|アイドルマスター]]」や「[[ラブライブ!]]」などのように、アリーナ級の会場でライブを行う人気作品もある<ref group="注">特に「ラブライブ!」から生まれた[[μ's]]は、2016年3月31日・4月1日に声優ユニットとしては初めてとなる東京ドームでの単独コンサート開催を実現し、両日満員御礼であった。</ref>。
 
 
 
オリコンなどのヒットチャートにおいては、かつてアニメソングは児童向けの曲として別に集計されていた。また、アニメ専門店や電気量販店は集計の対象外だった。これらが改善された1990年代半ばごろから、声優の歌のCDがランキング上位になることが増えた<ref name="1997nen6gatu">[https://web.archive.org/web/20010217045451/http://ent.nikkeibp.co.jp/ent/bn/9706/special/seiyu.html 椎名へきる、林原めぐみ、國府田マリ子 ヒットチャートは声優だらけ!!]、『[[日経エンタテインメント!]]』1997年6月号より([[インターネットアーカイブ]]のキャッシュ)。</ref>。
 
 
 
[[1997年]]2月に[[椎名へきる]]が声優初となる[[日本武道館]]単独コンサートを開催したのを皮切りに、声優が武道館のような大きな会場で単独コンサートを開催するようになっていった。[[2011年]]12月には[[水樹奈々]]が声優初となる[[東京ドーム]]単独コンサートを開催した<ref group="注">2016年にも東京ドームでの単独コンサートを開催したほか、同じ年には声優のみならずソロ歌手としても初となる[[阪神甲子園球場]]でのコンサートを実現させている。なお、水樹は[[阪神タイガース]]のファンとして知られており、甲子園球場でのコンサートは自身の念願の一つでもあった。</ref>。
 
 
 
[[アニメソング]]が一般層にも浸透するにつれ、アニソンシンガー同様に音楽テレビ番組に出演して歌を歌うケースも増えている。[[2009年]]には、水樹奈々が声優初となる[[NHK紅白歌合戦]]([[第60回NHK紅白歌合戦]])出場を果たしている<ref group="注">水樹はその後も毎年出場を続け、2009年から2014年の計6回にわたり連続出場した。</ref><ref group="注">2015年に声優ユニットのμ'sが、水樹に次いで声優2組目となる紅白出場を果たす。</ref>。
 
 
 
[[茅原実里]]のように、元来歌手を志望していた人物が声優となり、歌手としてもデビューするというケースも見られる。
 
 
 
=== ラジオパーソナリティ ===
 
声優による[[ラジオ]]番組のパーソナリティは、古くから存在するが、1990年代以降は[[文化放送]]や[[ラジオ大阪]]、[[ラジオ関西]]が[[アニラジ]]専門の放送枠を設けるなど、番組数が急増した。2000年代以降は、地上波放送だけでなく[[インターネットラジオ]]番組も増えている。
 
 
 
=== アダルト(18禁)作品への出演 ===
 
[[アダルトゲーム]](エロゲー)・[[アダルトアニメ]]などのアダルト(18禁)作品に声をあてる。この場合、声優名を非公表とするか、別の芸名を使うことがほとんどである<ref group="注">まれに普段使用している声優名のままでクレジットされていることもある。</ref>。アダルト作品を専門としている声優もいる。
 
 
 
=== 特撮番組への出演 ===
 
『[[スーパー戦隊シリーズ]]』『[[仮面ライダーシリーズ]]』『[[ウルトラシリーズ]]』などといった[[特撮]]番組に登場するキャラクターの声を演じる。
 
 
 
=== 人形劇・着ぐるみショー ===
 
人形劇はキャラクターの演技とタイミングを合わせながらセリフを言う。
 
 
 
[[着ぐるみ]]ショーでは生で声を合わせることもあるが、基本的には事前に声を収録してそれに合わせて着ぐるみの中の演者([[スーツアクター]])が演技を行う。
 
 
 
=== その他の仕事 ===
 
番号案内の録音されたメッセージ、デパートでの録音案内、駅や路線バスなどの公共交通機関のアナウンス(自動放送)、出演作のイベント出演、テレビ番組への顔出し出演、など。
 
 
 
== 仕事の取り方 ==
 
ここでは本職以外の仕事(各種タレント活動など)に関しては取り上げない。
 
 
 
; アニメ
 
: オーディションを受けて自分の手で仕事を得るというシステムが主流<ref name="nareru120">市原光敏『声優になれる本』世界文化社、1996年、p.120。当時江崎プロダクションの社長だった江崎加子男の証言</ref>。作品世界・登場人物のイメージに適合した声(声質)や演技力を持つ人物が採用され、新人や大物の区別なく選考オーディションを受ける。
 
: 通常は制作会社などから声優の事務所庶務にオーディションのお知らせが通達され、事務所は役柄に合うと判断した所属声優を数人選び、その選ばれた者だけがオーディションを受けられるというのが通例である。そのため大人数の声優を抱える大手事務所では、まず事務所内での競争を勝ち抜かないとオーディションを受ける機会すらない{{Sfn|野村道子|2009|p=130}}。そして、たとえオーディションを受けられたとしても、60本に1本受かればいいというほどの競争率と言われる<ref>橋本崇宏、柳谷杞一郎・著『声優になる!』雷鳥社、2008年、p.157。こおろぎさとみインタビュー</ref>。
 
: [[古川登志夫]]は『[[ポプテピピック]]』に出演した際、「大御所なんだから仕事選べ」という一部視聴者の声が出たことに対して「冗談ではない。アニメのキャラ声は本職だ。第一仕事を選べるほど偉い立場に無い」「一本の仕事を取るのにマネージャーさんが何度頭を下げるかご存知か!」と反論している<ref>[http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1802/28/news129.html 「大御所なんだから、仕事選べよ」に反論 声優・古川登志夫、ポプテピ出演への批判に言及] ねとらぼ</ref><ref>{{cite tweet|number=969076953150976001|user=TOSHIO_FURUKAWA|title=「大御所なんだから、仕事選べよ、なんでこんなクソアニメに!」とのリプがいまだにたっくさん。①「お気遣いありがとうございます」②「アニメのキャラ声は本職です」③そもそも大御所と思っていない」|date=2018年3月1日|accessdate=2018年6月22日}}</ref>。
 
; ゲーム
 
: オーディションで配役を決めることが多いが、ゲーム制作会社などからの指名で決まることもある。
 
; 吹き替え
 
: アニメとは異なりオーディションはほとんど行われず、プロデューサーやディレクターなどが声優を指名して決めることがほとんどとされる<ref name="nareru120" /><ref>山本健翔『声優になるには』ぺりかん社、2007年、p.136</ref>。ただし、[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]作品、[[スティーヴン・スピルバーグ]]作品、[[ジョージ・ルーカス]]作品などでは指名ではなく、アニメ同様オーディションが行われるという<ref>高田城、中川奈美『声優になるには』ぺりかん社、1997年、p.135。加藤敏音響監督インタビュー</ref>。
 
; ナレーション
 
: 日本語吹き替え同様、オーディションはほとんど行われず、指名で決まることがほとんどとされる{{Sfn|松田咲實|2000|pp=121-122}}<ref>大栄出版編集部・編『なりたい!!声優』大栄出版、1998年</ref>。
 
 
 
=== 担当声優の交代劇 ===
 
長期シリーズを中心に、担当声優の引退や逝去、降板など、諸般の事情による交代も時折起こる。また同じく病気や産休に事故などによる療養や、海外留学などによる休業により、「一時的に」別の声優が代役を担当するケースも多く見られる。
 
 
 
;一例
 
*(引退によるもの)『[[BanG Dream!]]』今井リサ役:[[遠藤ゆりか]]<ref>[https://animeanime.jp/article/2017/12/18/36285.html 声優・遠藤ゆりかが引退を発表 「BanG Dream!」「温泉むすめ」もキャスト変更についてコメント] アニメ!アニメ! 2017年12月18日、2018年6月22日閲覧。</ref>→[[中島由貴 (声優)|中島由貴]]<ref>[https://akiba-souken.com/article/34760/ 永遠の一瞬に交錯した“2人の今井リサ”!「BanG Dream! 5th☆LIVE Day2:Roselia -Ewigkeit-」ライブレポート] アキバ総研 2018年6月20日、同22日閲覧。</ref>
 
*(逝去によるもの)『[[それいけ!アンパンマン]]』[[ドキンちゃん]]役:[[鶴ひろみ]]<ref name="oricon20711222">[https://www.oricon.co.jp/news/2102829/full/ 『アンパンマン』代役ドキンちゃんに絶賛の声「違和感がない!」] オリコン 2017年12月22日、2018年6月22日閲覧。</ref>→[[佐久間レイ]](特番の代役)<ref name="oricon20711222"/>→[[冨永みーな]](正式な後任担当)<ref name="oricon20711222"/>
 
*(担当役降板によるもの)『[[クレヨンしんちゃん (アニメ)|クレヨンしんちゃん]]』[[野原しんのすけ]]役:[[矢島晶子]]<ref>[https://www.oricon.co.jp/news/2112678/full/ 『クレヨンしんちゃん』しんのすけ役・矢島晶子が降板発表 「声を保ち続ける事が難しく」] オリコン 2018年6月1日、同22日閲覧。</ref>→[[小林由美子]]<ref>[https://animeanime.jp/article/2018/06/14/38164.html 「クレしん」"シロ"がシロの飼い主に!? しんのすけ新声優・小林由美子さんにTwitterの反応は?] アニメ!アニメ! 2018年6月14日、同21日閲覧。</ref>
 
 
 
== 異性の声を演じることについて ==
 
男性と女性とでは声質が違うということもあり、アニメのアフレコや洋画の吹き替えなどで、女性声優が男性(特に少年・幼い男の子)の声を演じるというケースはよくあるが、その逆の男性声優が女性(特に少女・幼い女の子)の声を演じるというケースは極めてまれである。
 
 
 
== 諸外国の声優 ==
 
諸外国では日本のように専業の声優が確立している国は少なかったが、アメリカやフランスでは声優を専門とする役者も増えている。[[大韓民国|韓国]]では、放送局が放送劇団([[声優劇会]])を持っている。
 
 
 
中には、[[劉セイラ]]や[[Jenya|ジェーニャ]] のように、[[日本語]]を[[母語]]としないながらも日本語を習得し、実際に日本で声優として活動している者も存在する。
 
 
 
== 声優の歴史 ==
 
日本で声優の専業化が進んだ理由は、
 
* [[ラジオドラマ]]全盛期に、[[日本放送協会|NHK]]と[[民間放送|民放]]が自前の放送劇団([[東京放送劇団|NHK東京放送劇団]]など)を組織して専門職を育成したこと
 
* テレビの黎明期は、番組コンテンツ不足のため、[[アメリカ合衆国]]から[[テレビドラマ]]やアニメーションが大量に輸入され、声優による日本語吹き替えの需要が増大したこと
 
* アニメやゲームの人気の高まりにより、最初から声優専門の演技者を志望する者が増えたこと
 
などが考えられる。
 
 
 
=== ラジオドラマ時代 ===
 
[[1925年]]3月、NHKの前身である社団法人東京放送局がラジオ放送を開始。そのわずか1カ月後に「映画劇せりふ」の番組内で[[サイレント映画]]『大地は微笑む』のセリフ劇が放送された。この時の声の出演は新派劇俳優の[[井上正夫]]、女優の[[栗島すみ子]]などであった。専門職としてではないが、実質的に彼らが「日本で最初の声優」である<ref>[http://www12.ocn.ne.jp/~kanedoko/syh.htm “声優”の歴史をひもとく頁]「いにしへの声優列伝」内。</ref><ref group="注">ただし、これは無声映画作品に声をつけたものとして放送されており、本格的なラジオドラマとは質が異なる。</ref>。同年7月には舞台中継をスタジオで再現した『[[桐一葉]]』(出演:[[中村歌右衛門 (5代目)]]など)、さらに日本初の本格的な[[ラジオドラマ]]として『大尉の娘』(出演:井上正夫、[[水谷八重子 (初代)|水谷八重子]])が放送される。同年9月、東京放送局は声だけで演技を行う専門の俳優としてラジオドラマ研究生を公募。百余名の応募者のうち12名の女性が選ばれ、11月にラジオドラマ『太っちょう』に声をあてる。声優の歴史に関する多くの資料では彼女たちが「日本の声優第1号」とみなされている。この当時は新聞では「ラヂオ役者」と呼称していた{{Refnest|group="注"|後述するように『読売新聞』では1926年の時点で「声優」という言葉が使われていた。}}。初期のラジオドラマには[[汐見洋]]や[[東山千栄子]]ら[[築地小劇場]]の俳優が多く出演していた<ref>森川友義・辻谷耕史 「声優の誕生とその発展」『メディア史研究』第13号、ゆまに書房、2002年、p.62。</ref>。また、この頃(主に[[1930年代]])活躍していた者として舞台女優の[[飯島綾子]]が挙げられる{{Refnest|group="注"|村田美弥子(当時は村田美禰子)、村田竹子(いずれも女優・[[村田嘉久子]]の妹)とともに「スター」として取り上げられていた<ref>読売新聞 1930年(昭和5年)1月6日付朝刊。</ref>。}}。彼女はラジオドラマの他に[[日本舞踊家]]や[[歌手]](流行歌・歌謡曲・童謡オペレッタ)としても多彩な活動をしていた。
 
 
 
[[1941年]]、NHKはラジオドラマ専門の俳優を養成する東京中央放送局専属劇団俳優養成所の研究生を公募。[[1943年]]に養成を終えた東京放送劇団の第1期生がデビューを果たした<ref>「“声優”誕生」『放送夜話-座談会による放送史』日本放送協会、1968年、p.113。</ref>。これが声優第2号とみなされ<ref>西澤實『ラジオドラマの黄金時代』河出書房新社、2002年、18-19頁。</ref>{{Refnest|group="注"|第1期生の[[加藤道子]]が死去した際、読売新聞は「声優の草分け」と紹介<ref>読売新聞 2004年2月1日。</ref>。}}、「声優」という言葉はこの頃から使われたとする資料もある<ref>浦崎浩實「映画人、逝く 七尾伶子」『[[キネマ旬報]]』2006年10月上旬号、[[キネマ旬報社]]。</ref>が、実際はより古く、『[[読売新聞]]』では[[1926年]]から使用されている<ref>『読売新聞』1926年4月4日朝刊、p.10。</ref>。{{要検証範囲|声優という呼称は、読売新聞の芸能記者だった小林徳三郎によるものという説と、NHKの演芸番組担当[[プロデューサー]]大岡龍男が命名したという説がある<ref>[[勝田久]]「声優の歴史」『声優名鑑 アニメーションから洋画まで…』ジ・アニメ特別編集、近代映画社、1985年、174頁。</ref>|date=2018年1月}}。声優は当初、ラジオドラマを専門に行う東京放送劇団員やその他の放送局の劇団員を指し、テレビ時代になって吹き替えとアニメを行う役者を指す用語として定着していった。
 
 
 
[[1951年]]に民間ラジオ局のラジオ東京(現:[[TBSラジオ]])が開局、専属の放送劇団(ラジオ東京放送劇団、後のTBS放送劇団)を設立して[[1957年]]に放送した連続ラジオドラマ『[[赤胴鈴之助]]』は当時の子供たちから絶大な支持を得た。テレビ放送がなく、ラジオがマスメディアで主要な地位を占めていたラジオドラマ時代の声優は決して日陰の存在ではなく、二枚目の主役の声を多く演じた[[名古屋章]]には月に何十通ものファンレターが届いたという<ref>[[能村庸一]]『実録テレビ時代劇史 ちゃんばらクロニクル1953-1998』[[東京新聞]]出版局、1999年、20-21頁。</ref>。ラジオドラマは全盛期を迎え、声優の紹介記事が新聞のラジオ欄に掲載されるようになると、声優へのファンレターと同時に声優に憧れ、声優志願者も急増した。[[1953年]]のNHK東京放送劇団の第5期生募集には合格者が10名程度のところへ6000名の応募が殺到したという。この時代を声優の[[勝田久]]は第1期声優黄金時代としている<ref>勝田久「声優の歴史」『声優名鑑 アニメーションから洋画まで…』ジ・アニメ特別編集、近代映画社、1985年、175頁。</ref>。
 
 
 
アニメでは、[[1933年]]には日本初の[[トーキー]]の短編アニメーション映画『力と女の世の中』が公開。アニメキャラクターに声をあてたのは、喜劇役者の[[古川ロッパ]]をはじめとする映画俳優達だった。[[1942年]]には[[中国]]の長編アニメーション映画『西遊記・鉄扇姫の巻(鉄扇公主)』が日本で公開され、[[活動弁士]]出身の[[徳川夢声]]、[[山野一郎]]などが声をあてた。[[第二次世界大戦]]後に発足した[[東映アニメーション|東映動画]]により日本でもコンスタントにアニメ映画が製作されるようになると、映画俳優、コメディアン、放送劇団員が使われた。また、洋画の吹き替えはテレビ時代になってから本格的に行われるようになった{{Refnest|group="注"|初の日本語吹き替え作品は[[1931年]]の米映画『[[再生の港]]』だが、起用された在米邦人の広島訛りが不評で後が続かなかったという<ref>清水俊二 『映画字幕五十年』早川書房、1987年、p.76。</ref>。}}。
 
 
 
=== 第1次声優ブーム ===
 
民放テレビの草創期には、[[1961年]]の[[五社協定]]でテレビ局への日本映画の供給停止が決まったことなどによるソフト不足から、海外ドラマや[[洋画]]などのいわゆる外画の日本語吹き替え版が数多く放送された<ref>乾直明『外国テレビフィルム盛衰史』[[晶文社]]、1990年、60頁、118頁、557頁。</ref><ref>串間努『少年ブーム 昭和レトロの流行もの』晶文社、2003年、41頁。</ref><ref>引田惣彌『全記録テレビ視聴率50年戦争 そのとき一億人が感動した』講談社、2004年、38頁。</ref>。当初、NHKは基本的に字幕スーパーで日本国外の作品を放送していたため、日本語吹き替え版は民放が中心となっていた。以後、日本国外の作品は[[1960年代]]前半をピークとして放送された。これらを背景として声優人気が高まっていったという。ブームの中心人物は[[アラン・ドロン]]を持ち役とした[[野沢那智]]で<ref>ハイパーボイス監修『すごい!アニメの音づくりの現場』雷鳥社、2007年、79頁。音響スタッフだった[[田中英行]]の証言。</ref>、[[追っかけ]]までいたという{{Sfn|松田咲實|2000|p=15}}。
 
 
 
テレビや映画の俳優は五社協定とギャラの問題で吹き替えをしなかったため、テレビでの吹き替えは、ラジオ時代からの放送劇団出身者や新劇の舞台役者が多く行った{{Sfn|野村道子|2009|p=24}}。放送劇団出身の[[若山弦蔵]]は当時の吹き替えに参入してきた新劇俳優について、「大部分の連中にとっては片手間の仕事でしかなかった」、「日本語として不自然な台詞でも疑問も持たず、台本どおりにしか喋らない連中が多くて、僕はそれがすごく腹立たしかった」と語っている<ref>とり・みき 『別冊映画秘宝Vol.3 とり・みきの映画吹替王』 洋泉社、2004年、275頁。</ref>。海外アニメにおいては、落語家や浅草出身のコメディアンなどもキャラクターの声をあてたという例がある。
 
 
 
労働環境や待遇は恵まれていなかったことから権利向上のために結束しようという動きがあり、[[久松保夫]]は清水昭の[[太平洋テレビジョン]]に参加するが同社で労働争議が発生。これを受けて[[東京俳優生活協同組合]](俳協)が誕生したが、前述の若山弦蔵のように所属せず独立した者もいた<ref>「太平洋テレビジョンの労働争議」について若山は実名を避けながらも証言をした数少ない一人である。</ref>。後に俳協から分かれて多くの声優プロダクションが結成された。この時代にはまだ声優という言葉は一般には認知されておらず<ref>高田城、千葉節子『声優になるには』ぺりかん社、1983年初版、1994年改定版、47頁。</ref>、別称として、吹き替えを主にしたことから'''吹き替えタレント'''、声をあてることから'''アテ師'''{{Sfn|松田咲實|2000|p=43}}<ref>『テレビ黄金時代の立役者12人の告白 あの日、夢の箱を開けた!』小学館、2003年、190頁。</ref>というものがあった。
 
 
 
テレビの日本語吹き替え作品第1号は[[TBSテレビ|TBS]]の前身であるKRTテレビが[[1955年]][[10月9日]]より放送開始したアメリカのアニメ『[[スーパーマン]]』であると言われる。実写では[[1956年]]にTBSの前身であるKRTテレビで放送された『カウボーイGメン』と記録されている。これらKRTテレビでの放送はいずれも生放送による吹き替えで、あらかじめ録音したアフレコによる作品第1号は、アニメでは1956年[[4月8日]]に[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]が、番町スタジオの安井治兵衛に依頼して放送した海外アニメ『テレビ坊やの冒険』。
 
 
 
[[1966年]]に『土曜洋画劇場』(現・『[[日曜洋画劇場]]』)の放送が始まり、この番組によってスターの声を特定の声優に固定する持ち役制(フィックス制度)が始まった<ref>酒井広「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・六本木」『映画はブラウン管の指定席で』淀川長治監修、[[テレビ朝日]]編著、[[テレビ朝日|全国朝日放送株式会社]]、1986年、p.38</ref>。
 
 
 
=== 第2次声優ブーム ===
 
1970年代後半の劇場版『[[宇宙戦艦ヤマト]]』のヒットによるアニメブームと並行して起こったブーム。そのブームに押される形で声優業と並行した音楽活動も盛んになり、[[神谷明]]、[[古谷徹]]、[[古川登志夫]]などのアニメの美男子キャラクターを持ち役とする人気声優によるバンド『[[スラップスティック (バンド)|スラップスティック]]』を結成してライブ活動を行ったほか<ref>[[上野修 (ラジオプロデューサー)|ドン上野]]『ミスター・ラジオが通る』実業之日本社、1986年、152頁。</ref>、多くの声優がレコードを出すなどした。当時万単位のレコードを売り上げる声優として、[[潘恵子]]、[[戸田恵子]]、神谷明、[[水島裕 (声優)|水島裕]]、スラップスティックの名が挙げられている<ref>『ジ・アニメ』1982年3月号、108頁。</ref>。[[1979年]]に放送開始した『[[アニメトピア]]』などアニメ声優が[[ラジオパーソナリティ|パーソナリティ]]を務めるラジオ番組なども誕生。ラジオドラマでは声優人気を背景にした『[[夜のドラマハウス]]』があり、アマチュア声優コンテストも開催されていた<ref>藤井青銅『ラジオな日々 80's RADIO DAYS』小学館、2007年、24頁。</ref>。
 
 
 
この時代は[[アニメ雑誌]]が創刊され始めた時代であり、『[[アニメージュ]]』の創刊編集長である[[尾形英夫]]は、声優の[[アイドル]]化を編集方針の一つとして打ち出した<ref>尾形英夫『あの旗を撃て! 「アニメージュ」血風録』オークラ出版、2004年、60頁、120頁。</ref>。『アニメージュ』以外の他のアニメ誌も同様に誌面に声優コーナーを設けて、定期的に声優の情報を発信した。人材の供給・育成面では、声優専門プロダクションが分裂することによって次第に数が増え始め、各プロダクションにより声優養成所が設けられた。これらにより、放送劇団出身者や舞台役者などの俳優活動の一環や余技としての声優業ではなく、最初からアニメ声優を目指した声優が登場し始めた。このブームはおおむね[[1980年代]]前半頃までとされている。
 
 
 
==== 1990年前後 ====
 
1980年代末のテレビアニメ『[[鎧伝サムライトルーパー]]』に出演した5人の男性声優で[[1989年]]に結成したユニット『'''[[NG5]]'''』が人気を集め、ニュース番組で取り上げられるほどであった。声優がマルチ活動をするようになった先駆け的グループであるとも言われている<ref>アニメージュ編集部・編『声優になりたいあなたへ』徳間書店、1994年、p.46</ref>。しかし、声優界全体のブームとまでは至らなかった<ref>「声優業界の明日はどこにあるのか?」『流行批評SPECIAL EDITION オタクになれないアニメ好きの本』キルタイムコミュニケーション、1997年、107頁。</ref><ref>堀田純司『萌え萌えジャパン』講談社、2005年、264頁。</ref>。一方で、[[林原めぐみ]]や[[井上喜久子]]といった女性声優にも注目が集まるようになる。
 
 
 
一方、[[1990年代]]になって、吹き替え作品が、地上波放送の他にも、DVDなどのパッケージやCS放送などさまざまな形態で発信されるようになると、従来の持ち役制度はほぼなくなったとされる{{Sfn|松田咲實|2000|p=16}}。
 
 
 
=== 第3次声優ブーム ===
 
用語として一時期頻繁に用いられていたが、明確な定義は存在していない。おおむね1990年代半ばごろに起こったとされる。
 
* 声優のマルチ活動化やアイドル化が進む。
 
* 声優の音声入りの[[テレビゲーム]]やパソコンゲーム、声優がパーソナリティを務めるラジオ番組、声優が出演するイベントが増える。
 
* 声優の歌手活動が増える。
 
* [[1994年]]に初の声優専門誌『[[声優グランプリ]]』『ボイスアニメージュ』が創刊される。
 
* [[1995年]]に初の声優専門のテレビ番組『[[声・遊倶楽部]]』が誕生。
 
* 声の演技力のほかにも、特にアニメ・ゲームで活躍するには容姿の良さや歌唱力などといったようなことも声優に求められる傾向。
 
などといったようなことが、このブームの主な特徴として挙げられる。
 
 
 
=== 近年(2000年代後半以後) ===
 
2000年代後半ごろから、一部のマスコミで「第4次声優ブーム」という表現が用いられるようになった(ただし、明確な定義はない)<ref name="oricon20150208">{{Cite web|url=http://www.oricon.co.jp/special/47663/|title=声優ブームが生んだ功罪 今の声優に求められるものとは?|work=ORICON STYLE|publisher=[[オリコン|オリコン株式会社]]|date=2015-02-08|accessdate=2015-08-09}}</ref><ref>『週刊プレイボーイ』集英社、2013年7月1日号、70頁。</ref>。このころから、子どもの「なりたい職業ランキング」上位に「声優」がランクインするようになった<ref name="oricon20150208" />。
 
 
 
2000年代後半以後、[[深夜アニメ]]の本数が急速に増加<ref group="注">2007年に、[[日本BS放送|BS11]]による『[[アニメ+]]』が創設されて以後、この傾向が年々顕著になってきている。</ref>。これにより、いわゆる「アニメバブル」という状況が生まれて、若手声優が多くデビューする状況が生まれることになった。また、[[水樹奈々]]、[[田村ゆかり]]の成功や、2005年から開催されている[[Animelo Summer Live]]などの[[アニメソング]]系の[[演奏会|ライブ]]<ref group="注">他には、[[ANIMAX MUSIX]](2009年開始)、[[リスアニ!|リスアニ! LIVE]](2010年開始)など。</ref>がコンスタントに開催されるようになったことなどで、歌手活動を両立させる声優が急速に増加するようになった。
 
 
 
== 声優の経歴 ==
 
声優の経歴としては、以下のようなケースがある。
 
 
 
=== 放送劇団出身 ===
 
NHKと民放が組織した[[劇団]]で、局のアナウンサーとは別個に、芸能を担当するために放送局で養成され、主にラジオドラマを担当した放送タレントである。彼らを指す言葉として「声優」が生まれた。芸能事務所などの台頭で現在では全て解散している<ref>「ラジオ名作数々残し 来春NHK放送劇団が"終幕"」『中日新聞』1989年11月5日付け夕刊</ref>。
 
 
 
NHKの東京放送劇団からは、[[巖金四郎]]、[[加藤道子]]、[[中村紀子子]]、[[大木民夫]]など、NHK札幌放送劇団出身の[[若山弦蔵]]、NHK九州放送劇団出身の[[内海賢二]]など多数。民放では後のTBSにあたるラジオ東京放送劇団からは[[大平透]]、[[中村正 (声優)|中村正]]、[[滝口順平]]、[[田中信夫]]、[[朝戸鉄也]]、[[向井真理子]]など。地方局では、CBC中部日本放送劇団出身の[[中江真司]]、RKB毎日放送劇団出身の[[八奈見乗児]]など。地方局で活動していたのはラジオドラマ時代までで、テレビ時代になると海外作品の日本語吹き替えなどの声優の仕事は東京に集中していった。
 
 
 
=== 声優養成所・声優学校出身 ===
 
声優プロダクション付属の[[声優養成所]](養成所)、声優になるためのレッスン指導を主とする養成所、[[:Category:声優関連の学校|声優関連の学校]](声優養成学科がある専門学校)などの出身。
 
 
 
==== 養成所・専門学校 ====
 
声優になることを目指すには、声優の養成所や専門学校に通うのがもっとも一般的である。養成期間はおおむね1年から3年で、養成期間修了後に行われる所属オーディションに合格するとプロダクション所属となる。この時点では「新人・ジュニア・仮所属」などと称される見習い期間となる。見習い期間が終了し、内部審査を経て、認められた者だけが正所属(正規に所属する)となる。学生時代のうちから養成所に通う人間もいれば、社会人になってから養成所に通う人間もいる(多くは前者のケースだが、例えば[[茅野愛衣]]は社会人経験から養成所に通って、その後に声優デビューを叶えた)。
 
 
 
こうした養成機関でのレッスン経験が全く無く<ref group="注">[[文学座]]や[[こまつ座]]などで俳優としての活動はしていた。</ref>、現役声優だった父・[[大塚周夫]]の紹介で声優事務所に所属した[[大塚明夫]]は、自著『声優魂』で、ステレオタイプな役者が多く輩出している元であると批判している<ref name="seiyu_damashii">[http://gigazine.net/news/20150329-seiyu-damashii/ 「声優だけはやめておけ。」と声優・大塚明夫が綴った「声優魂」] [[GIGAZINE]] 2015年3月29日、同5月8日閲覧。</ref>。
 
 
 
=== 俳優・舞台役者出身 ===
 
主に舞台演劇や[[ミュージカル]]などをやる舞台役者が声優として長く活動するようになるケースは、声優という職業が成立する時期から多く存在しており、『[[ルパン三世]]』シリーズなどで知られる[[山田康雄]]、[[納谷悟朗]]などが、これに該当する。また、[[吹き替え]]を中心に、[[俳優]]として活動してきた役者が声優としても長く活動するようになるケースもあり、[[津嘉山正種]]、[[磯部勉]]などが、これに該当する。
 
 
 
=== 子役出身 ===
 
[[児童劇団]]などに所属する小中学生(あるいは高校生)が、声優の仕事をするようになったことがきっかけで、そのまま声優業を中心に活躍するケースは、声優という職業が成立する時期から多く存在しており、[[古谷徹]]、[[古川登志夫]]などが、これに該当する。近年でだと、[[宮野真守]]、[[入野自由]]、[[飯田里穂]]、[[諸星すみれ]]などが、これに該当する。
 
 
 
=== その他の出身(アイドル、歌手出身など) ===
 
[[アイドル]]、[[グラビアアイドル]]、[[歌手]]、[[モデル (職業)|モデル]]、[[特撮]]番組系俳優、[[お笑いタレント]]、[[アナウンサー]]、[[レポーター]]、[[コスプレ|コスプレイヤー]]などといった経歴のタレントが、声優の仕事をするようになったことがきっかけで、そのまま声優業を中心に活躍するケース。また、声優になるための足掛かりとしてアイドルをしていたケースや、歌手になるための足掛かりとして声優を目指すケース、あるいは、各種コンテストで入選したことがきっかけで声優として活動するようになったケースも、これに該当する。一例として、[[仲谷明香]](元[[AKB48]])、[[前島亜美]](元[[SUPER☆GiRLS]])、[[田所あずさ]](「[[ホリプロタレントスカウトキャラバン]]」でのグランプリ受賞がきっかけで声優デビュー)などが挙げられる。特に2010年代になって以後は、アイドルから声優への転身者や、現役アイドルのまま声優としても活動する人間が登場、増加するようになっている<ref name="seiyuartist2018a" />。
 
 
 
== 他の分野の芸能人・著名人などの声優活動 ==
 
[[俳優]]・歌手・音楽家・アイドル・グラビアアイドル・モデル・お笑いタレント・スポーツ選手・[[アナウンサー]]などといった他の[[芸能人]]・著名人が、声優活動をすることがある。
 
 
 
もともと、専業の声優が確立されていなかった時代、[[東映動画]]の長編作品の頃から、長編アニメーション映画において、他の芸能人・著名人などを声優に起用することは珍しくない。[[1990年代]]以降の[[スタジオジブリ]]制作作品、[[2000年代]]以降の[[スタジオ地図]]制作作品に至るまで、こうした傾向は現在でも続いている。
 
 
 
=== 批判 ===
 
作品の質よりも話題性を狙って他の芸能人・著名人などを声優に起用するということも多いため<ref>原恵一、浜野保樹・編著『アニメーション監督 原恵一』晶文社、2005年、p.48。「劇場版『クレヨンしんちゃん』の有名人のキャスティングは宣伝の一環だ」と原恵一の証言</ref>、他の芸能人・著名人などの声優起用に批判が出ることもある。
 
 
 
[[2007年]]公開のアニメ映画『[[ザ・シンプソンズ MOVIE]]』や[[2012年]]公開の映画『[[アベンジャーズ (2012年の映画)|アベンジャーズ]]』などで、これまでのシリーズで日本語吹き替えを担当していた声優を、新作映画で俳優・タレントに交代する事態が発生しており、企業への批判が殺到した。『ザ・シンプソンズ MOVIE』、『[[TAXi4]]』、『[[エクリプス/トワイライト・サーガ]]』では、ソフト化に伴い劇場公開版に加え、元々担当していた声優陣による新たな吹き替え版が同時収録された。しかし、ソフト化の際に劇場公開版のみが収録される作品が大半である。特に『アベンジャーズ』ではキャスティングの変更などに対する批判のコメントが[[Amazon.co.jp]]の本作品のレビュー欄に殺到する事態となった<ref>[http://www.cinematoday.jp/page/N0048516 批判殺到でコメント欄の炎上も!タレントの日本語吹き替え版起用に映画ファンの怒り爆発!(シネマトゥデイ)]</ref>。[[2012年]]公開の映画『[[プロメテウス (映画)|プロメテウス]]』の主人公エリザベス・ショウ役の吹き替えにタレントの[[剛力彩芽]]が起用された際、ソフト化に際して変更もなかったため『[[エイリアン (映画)|エイリアン]]』シリーズのファンなどから酷評され、Amazon.co.jpのレビューが炎上した<ref>[http://news.livedoor.com/article/detail/7113955/ 映画『プロメテウス』声優にタレント剛力彩芽を起用して強い批判の声 / ファン「メーカーは正気なのでしょうか?」] ロケットニュース24、2015年3月17日閲覧。</ref>。
 
 
 
『[[ターミネーター3]]』や『[[サイレントヒル: リベレーション3D]]』のように、劇場公開版では芸能人が吹き替えを担当したが、ソフト版ではプロの声優に差し替えて収録する場合もある。また、『X-MEN フューチャー&パスト』のように、新規バージョンをソフト化する際は、プロの声優で収録し直すケースもある。
 
 
 
[[2004年]]公開のアニメ映画『[[イノセンス]]』では、プロデューサーの[[鈴木敏夫]]が大物俳優の起用を立案し、草薙素子役を[[田中敦子 (声優)|田中敦子]]から[[山口智子]]に変更しようとしていたが、スケジュールの都合に加えて「出来上がっているイメージを変えるべきではない」と出演を固辞した山口と、監督や声優陣の反対により田中が続投したということがあった。
 
 
 
[[oricon style|オリコンスタイル]]で「タレント(他の芸能人や著名人など)を声優に起用するべきか、それともしないべきか」というアンケート調査を[[2014年]]に行ったところ、ほぼ半々に意見が分かれた<ref>[http://oricon.co.jp/special/1372/2/ タレントの声優起用、ほぼ半々に意見が割れる] [[oricon style|ORICON STYLE]] 2014年8月1日閲覧。</ref>。
 
 
 
=== 俳優を声優に起用すること ===
 
アニメ監督の[[原恵一]]は、他の芸能人や劇団の子役・俳優を声優に起用している<ref>「原恵一監督が語る新作映画のキャスティング!」『サイゾー』インフォバーン、2007年8月号。</ref>。同じくアニメ監督の[[富野由悠季]]は、声優の演技は型にはまっていると批判したことがあり<ref>{{Cite book|和書|author=[[富野由悠季]]|title=富野由悠季インタビュー集 富野語録|page=195|publisher=[[ラポート]]|isbn=978-4-89-799296-9|date=1999-1}}</ref>、主役に劇団出身者や新人声優を多く起用している。同じくアニメ監督の[[押井守]]は、存在感と新鮮さが声優に勝ることがあるとして<ref>{{Cite book|和書|author=[[押井守]]|title=すべての映画はアニメになる|pages=307-309|publisher=徳間書店|isbn=978-4-19-861828-5|date=2004-03-27}}</ref>、『[[スカイ・クロラシリーズ#映画|スカイ・クロラ The Sky Crawlers]]』ではメインキャラクター全員に有名俳優を起用している。
 
 
 
上述の俳優が声優に起用されることに関して、アニメを多く手がける脚本家の[[首藤剛志]]は「マイクの前で声を出しているだけの声優よりも、声優としての技量が劣っても、実際に観客の前で芝居をする俳優が買われているのではないか」と述べている<ref>{{Cite web|date=2006-03-01|url=http://www.style.fm/as/05_column/shudo39.shtml|title=首藤剛志「シナリオえーだば創作術 第39回 『戦国魔神ゴーショーグン』予告のわけ……」|work=|author=|publisher=[[アニメスタイル|WEBアニメスタイル]]|accessdate=2013-04-18}}</ref>。
 
 
 
=== 特撮番組系の俳優の声優活動 ===
 
[[東映]]の[[特撮]]変身ヒーロー作品、とりわけ「[[仮面ライダーシリーズ]]」の「昭和ライダー」最終作にあたる『[[仮面ライダーBLACK RX]]』および「[[スーパー戦隊シリーズ]]」では『[[炎神戦隊ゴーオンジャー]]』に至るまで長きにわたりオールアフレコで制作されてきた。
 
 
 
いわゆる「平成ライダー」第1作にあたる『[[仮面ライダークウガ]]』<ref>[https://web.archive.org/web/20140222023652/http://career.nexsol.jp/useful/interview33_1.html BIGLOBEポータル内旧コンテンツ「お仕事DB」第33回・鈴村展弘インタビュー記事より。2014年2月8日確認](2014年2月22日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>および『[[侍戦隊シンケンジャー]]』<ref>[http://www.toei.co.jp/tv/shinken/story/1188144_1569.html 侍戦隊シンケンジャー 第二幕 極付粋合体] 東映公式サイト 2014年1月9日閲覧。</ref>から、俳優が顔出しで演じるシーンは基本的に一般的なドラマと同様の撮影同時録音方式に切り替えられたものの、現在でも[[スーツアクター]]が演じる変身後のシーンなど番組制作の各所でアフレコが多用されているため、特撮番組に出演経験のある俳優は、声優としての演技経験を事実上しているとも言える。そのためか、特撮番組で出演経験のある俳優がアニメなどの声あてをすることもあり、中には声優を本業として転向した者もいる。
 
 
 
== 声優が他の分野での芸能活動をすること ==
 
2000年代以後、声優が歌手や俳優(特に舞台)など、他の分野での芸能活動をすることが特に顕著になった。
 
 
 
声優が他の分野での芸能活動をするケースの一つとして、俳優活動が挙げられる。理由として「声優さんには『ああ、あの声の人だ』という知名度ならぬ『知声度』があるので、仮に顔がいまいちわからなくても、『声』がわかったときの感動や話題性があるから」が挙げられる<ref>{{Cite web|publisher=オリコン|url=https://www.oricon.co.jp/special/49140/|title=声優出身者が俳優業で活躍 そもそも声優のポジションとは?|accessdate=2018-04-30}}</ref>。特に俳優活動の中でも、舞台での活動と両立する声優が少なくないが、理由として「舞台はやり直しができず、実際にその芝居や息づかいが観客に見られていることで、それが声の芝居に生きるから」などが挙げられている<ref>一例として、『声優バイブル2016』22頁~29頁(入野自由のインタビューページ)、『声優バイブル2017』18頁~25頁(関智一のインタビューページ)など。</ref>。
 
 
 
また、声優が歌手などの活動と両立させるケースが、特に2000年代以後に顕著になっているが、これについては下記の節にて述べる。
 
 
 
=== 「アイドル声優」と「声優アーティスト」 ===
 
歌手などの活動と両立させる声優について、「アイドル声優」あるいは「声優アーティスト」と表現するケースが登場、増加するようになった(ただし、いずれかまたはいずれにも、必ずしも該当しないケースもあるので留意が必要である)。
 
 
 
'''アイドル声優'''とは、第3次声優ブームと称されていた[[1990年代]]半ばごろから出てきた俗称。この頃には'''ボイスアイドル'''とも呼ばれた<ref>「声優業界の明日はどこにあるのか?」『流行批評SPECIAL EDITION オタクになれないアニメ好きの本』キルタイムコミュニケーション、1997年、114頁。</ref>。本業に留まらず、歌を通してそのCDを発売したりライブを開催するなど歌手活動をする、声優専門誌や漫画雑誌などのグラビアに登場する、写真集やイメージビデオを発売する、CMに出演する(これはいわゆる「Web CM」を含む)などといった[[アイドル]]的活動を行う声優を指すことが多い。本業を蔑ろにしているという批判的なニュアンスも含んでおり、実際にベテラン声優を中心に否定的、悲観的にとらえることが少なくない(一例として[[桑島法子]]は「アイドル声優は旬を過ぎたら使ってもらえなくなる」と述べている)<ref name="seiyuartist2018b">{{Cite web|publisher=おたぽる|url=http://otapol.jp/2016/07/post-7316.html|title=浅川悠がアイドル化の進む声優界に苦言 業界が「人気のあるカワイコちゃん」を求めた結果、新人声優は……|accessdate=2018-04-30}}</ref>。
 
 
 
実際、2010年代になり、[[内田真礼]]<ref>{{Cite web|publisher=ねとらぼ|url=http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/04/news036.html|title=声優・内田真礼がイケメンとイチャつく三菱地所レジデンスの新CMに反響 「なんだこの神CM」「めちゃめちゃ可愛い」|accessdate=2018-04-30}}</ref>、[[竹達彩奈]]<ref>{{Cite web|publisher=ORICON STYLE|url=http://www.oricon.co.jp/news/2043042/full/|title=人気声優・竹達彩奈が吉野家とのコラボで“大食いキャラ”をいかんなく発揮!!|accessdate=2018-04-30}}</ref>などのように、顔出しでCMに出演するケースや、[[内田真礼]]<ref>{{Cite web|publisher=まんたんウェブ|url=https://mantan-web.jp/article/20150415dog00m200053000c.html|title=内田真礼:ヤングジャンプの巻頭グラビアに|accessdate=2018-04-30}}</ref>、[[佐倉綾音]]<ref>{{Cite web|publisher=まんたんウェブ|url=https://mantan-web.jp/article/20170627dog00m200021000c.html|title=佐倉綾音:人気声優が「マガジン」初表紙 京都で“和”グラビア|accessdate=2018-04-30}}</ref>、[[斉藤朱夏]]<ref>{{Cite web|publisher=まんたんウェブ|url=https://mantan-web.jp/article/20170816dog00m200018000c.html|title=斉藤朱夏:「ラブライブ!サンシャイン!!」声優が「ヤンジャン」グラビアに|accessdate=2018-04-30}}</ref>、[[逢田梨香子]]<ref>{{Cite web|publisher=まんたんウェブ|url=https://mantan-web.jp/article/20180328dog00m200034000c.html|title=逢田梨香子:“声優界最高の美女”が再び「ヤンジャン」表紙に はじける素肌!|accessdate=2018-04-30}}</ref>などのように、一般の漫画雑誌などでのグラビアに登場するケースが登場するようになっている。
 
 
 
'''声優アーティスト'''とは、上記のアイドル声優に代わって[[2000年代]]半ばごろから出てきた俗称であり、主に、声優業と歌手業を両立させている声優を指すことが多い<ref name="oricon20150208" />。「アイドル声優」「声優アーティスト」のいずれの場合も、日本の女性声優に特に多いといわれる。
 
 
 
近年では本格的なアイドルもしくはアーティスト活動までには至らずとも、アニメに出演する場合、主題歌などを担当したり<ref group="注">作品限定の声優ユニット活動を行うこともある。</ref>、各種関連番組([[アニラジ]]、[[ニコニコ生放送]]など)やイベントへの出演など、タレント活動を求められるケースが一般的になっている<ref name="excite_review">[http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20150511/E1431274079675.html 「新人で歌やイベントがNGなら仕事が難しい」変わりゆく声優の現状をプロが真剣討論] エキサイトレビュー 2015年5月11日、同9月22日閲覧。</ref>。さらには、アイドル主体のアニメ・ゲーム作品における担当アイドル(キャラクター)を完全トレースして、本格的なアイドルレベルの振り付けによるライブ活動を展開し、中には本格的なアイドルを凌ぐドーム公演や紅白歌合戦への出場などを果たす声優ユニットも存在する<ref group="注">[[アイドルマスターシリーズ]]([[THE IDOLM@STER]]・[[アイドルマスター シンデレラガールズ]]・[[アイドルマスター ミリオンライブ!]]・[[アイドルマスター SideM]])、[[ラブライブ!シリーズ]]の[[μ's]]・[[Aqours]]、[[Wake Up, Girls!]]、[[プリパラ]]の[[i☆Ris]]などの例がある。特に「ラブライブ!」シリーズのキャストは歌唱力やダンス力を重視したオーディションにより、 それまで声優経験が皆無(他業種出身のメンバーに加えて、芸能界での活動経験がなかったメンバーもいる)からの起用者も多くいる。</ref>。実際、[[i☆Ris]]、[[Wake Up, Girls!]]、[[22/7 (アイドル)|22/7]]などのように、「声優を軸足にしつつも、アイドル的な活動を行うグループ」が登場、増加するようになっている<ref name="seiyuartist2018a">{{Cite web|publisher=Real Sound|url=http://realsound.jp/2017/10/post-116776.html|title=アイドルの声優活動なぜ増加? 2つのシーンに起こった変化を読む|accessdate=2018-04-28}}</ref>。
 
 
 
「アイドル声優」「声優アーティスト」のいずれであれ、声優の顔出しでの活動が増えた理由として、声優の社会的地位の向上のほかに、声優の役割やイメージの変化(「裏方的な仕事」とされてきたのが「ルックスや若さが重視される」ように変化した)が背景としてあるという<ref name="oricon20150208" /><ref name="seiyuartist2018b" />。
 
 
 
== 声優プロダクション ==
 
声優プロダクションは、声優から手数料を徴収し、音響制作会社や放送局などに対して、アニメ・日本語吹替・ナレーションなど得意分野ごとに配置されたマネージャーが営業活動や声優の売り込みなどを行う。専門の養成所を持ったり専門学校と提携して新人の育成も行う。
 
 
 
元々制作会社の関連会社に位置していて連携の強いプロダクションが存在し、特に2000年代は特に新たに創業される例が見られた<ref group="注">[[エイベックス・プランニング&デベロップメント]](旧アクシヴ。声優プロダクションとしては縮小化したのち、グループ再編で[[エイベックス・ピクチャーズ]]の1部門となった)、[[KADOKAWA]]系[[プロダクション・エース]]、[[アニプレックス]]系[[ボイスアンドハート]](廃業の後、アニプレックスから独立)、[[ドワンゴアーティストプロダクション]](株式会社ドワンゴ プランニング アンド ディベロップメント。現在の[[MAGES.]]となる[[AG-ONE]]へ会社統合の後、廃業)、[[ブシロード]]系の[[響 (芸能プロダクション)|響]]など。</ref>が、2010年代以降は制作会社の一部門として直営され、より連携が強固なプロダクションも存在する<ref group="注">MAGES.-[[アミュレート]](ドワンゴアーティストプロダクションの事実上承継先)、[[学研プラス]]-office EN-JIN、[[エイベックス・ピクチャーズ]](エイベックス・プランニング&デベロップメントから一部受け入れ)。前述の響もグループのレコード会社[[ブシロードミュージック]]直営だった時期がある。</ref>。特定の制作会社との連携が強くとも、他の制作会社が手掛ける仕事も請ける。また、元々音楽系のプロダクションでも声優のマネージメントを行う例が近年あり<ref group="注">[[ミュージックレイン]]、[[S_(企業)|株式会社S]]、ポニーキャニオンアーティスツなど。ただし、ポニーキャニオンアーティスツは現在、声優、声優兼歌手およびアニメソング歌手枠のアニメ専門マネージメント組織「スワロウ」へ分割し、ポニーキャニオンアーティスツ本体は声優マネージメントを行っていない。</ref>、この場合は本業を生かして歌手活動も積極的に行われることが多い<ref group="注">『声優兼アーティスト』枠で所属オーディションを開催するなどしている。</ref><ref group="注">歌手志望者を声優として(も)デビューさせる例があり、株式会社S(現在はディファレンスに移籍)の[[新田恵海]]のように、歌手志望として所属オーディションに合格するも事務所の方針で最初は声優としてデビューし、合格から5年半を経て歌手デビューを果たすという例もあり、また、ポニーキャニオンアーティスツ(現スワロウ)の[[遠藤ゆりか]](2018年6月、芸能活動引退)のように、歌手デビュー後に声優としてもデビューするという例もある。</ref>。他分野中心のタレントプロダクションが声優に力を入れ始める例も見られる<ref group="注">[[スペースクラフト]]、[[ホリプロ]]など。</ref>。
 
 
 
== 声優の経済環境 ==
 
声優は、所属事務所からの基本給というものは存在せず、各人の仕事実績によるギャランティ(報酬金)が収入となる個人事業者である。所属事務所とは通常1年更新のマネジメント契約を締結し、売込みやマネジメントの対価として業界平均で出演料の約20%から30%を事務手数料として事務所へ支払い、[[源泉徴収]]も10%<ref group="注">平成25年度以降の25年間は復興特別所得税が加算されるため、10.21%となる[http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2798.htm]。</ref>引かれ<ref group="注">ただし、年収が少ないため結果的に源泉徴収税を納めすぎとなっているという者は、翌年の確定申告で還付を受けることができる。</ref>、この残りが声優の手取りの報酬となる{{Sfn|野村道子|2009|p=148-149}}。歌手や俳優など、他の芸能の世界と何ら変わりない厳しい競争社会であり、経済的に自立できずに脱落していく者も多い。
 
 
 
日本語吹き替えが始まった[[1960年代]]には、声の仕事は顔出し出演の7割の出演料「顔出しの七掛け」とされ<ref>とり・みき『映画秘宝Vol.3 とり・みきの映画吹替王』洋泉社、2004年、p.141。野沢那智インタビュー</ref>、低い位置にある仕事とみなされ、舞台俳優がアルバイトのような形でやっていた。ただし、実写の仕事と比較して、吹き替えの仕事は拘束時間が少なく掛け持ち出演が可能だったため、一概に低収入とは言えなかった。
 
 
 
声優の賃金待遇改善については、声優の多くが[[日本俳優連合]](日俳連)に所属しており、日俳連は音響制作会社の集合体である日本音楽制作者連盟(音声連)、声優のマネージメントを行う事業者で組織する[[日本芸能マネージメント事業者協会]](マネ協)と「三団体実務小委員会」を設けて、出演ルールの改定や待遇の改善を申し入れて来た。ときには[[ストライキ]]([[1973年]][[8月8日]])や街頭[[デモ活動]]を行うなどして、1973年には報酬が約3倍アップ、[[1980年]]には再放送での利用料の認定、[[1991年]]には報酬が約1.7倍上昇するなどの成果を勝ち取って来た。
 
 
 
業界に対してのみならず、1973年と[[2001年]]には[[デモ行進]]、[[1988年]]には[[永井一郎]]が『[[オール讀物]]』([[文藝春秋]])において『磯野波平ただいま年収164万円』と題して、アニメ出演料の安さを訴える記事を寄せて、世間一般への理解を求める行動を起こしている<ref>「[http://www.nippairen.com/news/hist1986/h198609.html 日本俳優連合30年史 本編 1986年〜1990年 ショッキングな実態公表]」 [http://www.nippairen.com/ 日本俳優連合公式サイト]</ref>。
 
 
 
日俳連・マネ協・音声連による協議の結果、外画動画出演規定、新人登録制度、CS番組に関する特別規定、ゲーム出演規定などを締結した。アニメでは、放送局と、[[アニメ制作会社]]で組織される日本動画製作者連盟も加わって、団体協約が締結されている。これにより、仕事1作品あたりの報酬は作品のジャンル・放送時間帯・放送回数・ソフト化などによる2次利用、そして経験実績などの条件によって受け取る額が算出される方法を取られており、音響制作会社の一方的な言い値で手取りを決定されるということはない<ref group="注">一概には言えないが、日俳連は基本的に土日祝日のゴールデンタイムに放送される番組に最も高いクラスの報酬を設定している。</ref>。
 
 
 
以上の協定は、声優・マネジメント事業者・音声製作事業者がそれぞれの団体に所属しなければ縛られることはない。例えば、[[石原裕次郎]]は映画『[[わが青春のアルカディア]]』の出演料が1千万円だったと言われている<ref>アニメージュ編集部・編『劇場アニメ70年史』徳間書店、1989年、93頁。</ref>。そのため組織率を高めるために、音声連が製作する作品に出演する人数について「日俳連に属さない出演者の数は全体の20%以内」とし、日俳連に属さない出演者については加盟を推奨することが音声連には課せられている。逆にマネ協・日俳連側は、音声連に入っていない製作会社へ音声連への加盟を奨めることとなっている。
 
 
 
これらの協定を嫌う[[日本アドシステムズ]]などの製作者側もあり、日俳連に所属しない声優を起用するケースが[[1990年代]]半ばより増加したが、[[東映アカデミー]]や[[ラムズ]]のように事業を停止したケースもある。音声連に属していない事業者としては[[神南スタジオ]]や脱退した音響映像システム(現・サンオンキョー)などがあり、マネ協に属していない事業者としては[[ネルケプランニング]]などがある<ref group="注">ただし、現在ではスタッフの移籍がより増えたため、実質的に加盟している状況の会社もある。</ref>。
 
 
 
=== ランク制 ===
 
日俳連に所属する声優が、アニメと日本語吹き替え作品に声をあてる際の出演料についての規定で、この制度では報酬は、ランクと拘束時間によって算出され、演じる役のセリフ量にかかわらない。また、社団法人[[コンピュータエンターテインメント協会]](CESA)に加盟するゲーム会社との間にも同様のランク制が設けられている。ランクの設定は毎年4月に更新され、人気が上がったりキャリアを重ねると、マネ協や音声連との協議の上、ランクが上がっていく。ランクが1つ上がるごとに出演料が千円ずつアップする。例外として、60歳以上の者はランクを上げることは出来ても下げることは出来ない。1991年に出演料が約1.7倍アップしたこともあり、予算の限られたアニメや吹き替えにはランクの高い(出演料が高い)ベテラン声優が起用されなくなる弊害が生じるようになった。それにより、2001年から2年の期間限定でランク下げを認める特例期間が設けられた。
 
 
 
30分枠作品の最低ランクの出演料が1万5千円で、最高ランクが4万5千円、その上に上限なしのノーランクが設定されており、これが基本出演料となる。またその基本出演料に「目的使用料」として、アニメは1.8倍が加算され、吹き替えは1.7倍が加算される。予告編のセリフをやった場合、基本出演料のランクを基にしたギャラが加算される。放送時間枠が60分や120分の場合は「時間割増」となり、その分のギャラが支払われる。出演作品がソフト化されたり再放送された場合、規定に基づいて「転用料(2次使用料)」が支払われる。これらの合計が声優の総出演料となるのだが、そこから事務手数料や税金などで約30%から40%引かれる。
 
 
 
なお、アニメ・日本語吹き替え・ゲーム以外のナレーションの仕事は、このランク制の適用を受けない。
 
 
 
=== 新人声優の待遇 ===
 
声優学校や声優養成所を卒業して、[[日本芸能マネージメント事業者協会]](マネ協)加盟の声優事務所のオーディションに合格した新人声優は、まず「預かり」という身分から声優業をスタートする。この時点ではまだ声優個人としての[[日本俳優連合]](日俳連)への加盟はできない。預かりは声優業の最初のステップとして、ランク制の事実上の番外とでもいうべき存在である。預かり期間修了後はジュニアランクとなり、ジュニアランクでいられる期間は3年間ないし所定の起用率に到達するまでで、それを終了した後は日俳連へ加盟し通常のランクの声優になる<ref>野村道子『しずかちゃんになる方法 めざすは声優一番星』リブレ出版、2009年、pp.148-149</ref>。
 
 
 
出演料が安すぎるという理由で[[1990年]]に一度新人(ジュニア)ランクを撤廃したことがあったが、[[1994年]]から新たな形で再び導入された。
 
 
 
預かりとジュニアランクの声優の出演料は1万5千円で、ランクが付いた声優とは違い、上述の「目的使用料」「予告編のセリフ代」「時間割増料」「転用料」は支払われない。
 
 
 
=== ベテラン声優の収入源 ===
 
声優としてベテランになり日俳連のランクが高くなると、予算の関係からアニメ・ゲーム・吹き替えの仕事は自然とできなくなっていく。そういったことを補うのが、CMやテレビ番組などでの[[ナレーション]]の仕事である。ナレーションは日俳連の協定によるランクの縛りがなく<ref group="注">アニメ・ゲームのナレーションはランクの縛りがある</ref>、また、ギャラはアニメ・ゲーム・吹き替えよりもはるかに高額とされる。そのためか、新人・若手声優だった頃はアニメに多く出演していたが、後に中堅・ベテラン格になるにつれてアニメの仕事が徐々に減っていき、ナレーションが中心になるという傾向にある。
 
 
 
ベテラン声優の中には収入の少なさを補うために本業の傍ら、声優事務所の経営、声優の養成所や専門学校の講師、カルチャースクールの喋り方教室の講師、音響監督などといった副業をしている者もいる。また、ベテランになると、経済的にはむしろそのような副業のほうが本業という声優も珍しくないといわれている。
 
 
 
== 声優の世界の厳しさ ==
 
数多くいる声優の訓練生だが、ほとんどの者はデビューを叶えることなく去って行く。デビュー出来たとしても、ほとんどの新人声優は声優業のギャラだけでは生計を立てられず、アルバイトなどの副業をこなす、または実家で生活するか実家からの仕送りに頼る、と言った新人・若手声優がほとんどである。さらにその中から後に声優として第一線で活躍できる者は「ごくわずか」であるという狭き門である。オーディションで他の声優との競争に勝てずに仕事がもらえずに無名のまま脱落し、経済的に自立できずにわずかな期間でやめる、またはプロダクションから「今後、第一線級の声優として売れる見込みがない」と判断されて契約を解除される、という新人・若手声優が多いという<ref>[http://blog.livedoor.jp/hajimemashite_maru/archives/35794610.html 第044話 彼女の決断 : それが声優!WEB] [[浅野真澄]]・[[畑健二郎]] 2013年12月21日閲覧。</ref><ref name="seiyugenjitsu2018a" />。実際、一例として[[内田彩]]は、2015年9月のインタビューにて「声優の仕事一本で食べていけるようになる2~3年くらい前まで、声優の仕事が空いているときは派遣のアルバイトをやっていました」と打ち明けている<ref>{{Cite web|publisher=産経新聞|url=http://www.sankei.com/premium/news/150926/prm1509260026-n1.html|title=【魅力発見・動画付き】 アニメ「ラブライブ!」で大ブレークの内田彩 声優やりながら肉体労働も|accessdate=2018-04-28}}</ref><ref group="注">声優として2008年にデビューして以後、『[[キディ・ガーランド]]』(2009年。アスクール役)で主演を務めるなど、出演本数を積み重ねてはいたが、メインキャラとしての出演が増えたのは2012年以後のことであった。</ref>。
 
 
 
[[1996年]]発売のキネマ旬報刊『声優名鑑』には約2400人の声優が掲載されていたが、このうち声優としての地位が確立されている者は約300人だけで、しかもそのうち声優業だけで食べていける者は約半数であるという<ref>{{Cite|和書|author = 市原光敏|title = 声優になれる本 - あの声優がすべてを明かす!|date = 1996|publisher = 世界文化社|isbn = 4418965084|pages = 101|ref = harv}}</ref>。また2010年代には、『[[それが声優!]]』(テレビアニメ、漫画)や『[[声ガール!]]』(テレビドラマ)など、声優の世界の実状を描写する作品が登場するようになった。
 
 
 
ある程度の知名度、出演本数、活動年数があったにもかかわらず、声優業で生計を立てていくことが難しいという理由で引退した者も少なくなく、継続して仕事を維持するのも厳しい世界である<ref name="seiyugenjitsu2018a">{{Cite web|publisher=ファイナンシャルフィールド|url=https://financial-field.com/living/2018/04/26/entry-16205|title=実録 生き残れるのは一握りと言われる「声優」の収入と生活の現実|accessdate=2018-04-28}}</ref>。
 
 
 
== 声優の数 ==
 
[[1996年]]発売のキネマ旬報刊『声優名鑑』には約2400人の声優が掲載されていたが、このうち声優としての地位が確立されている者は約300人で、またそのうち声優業だけで生計を立てられる者は約半数だという<ref>{{Cite|和書|author = 市原光敏|title = 声優になれる本 - あの声優がすべてを明かす!|date = 1996|publisher = 世界文化社|isbn = 4418965084|pages = 101|ref = harv}}</ref>。[[テレビ朝日]]の番組「人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙!3時間SP」(2017年1月9日放映)では、日本には約6300人の声優がいるとしている。
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
=== 注釈 ===
 
{{Reflist|group="注"}}
 
=== 出典 ===
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 参考文献 ==
 
* {{Cite book|和書|author = 松田咲實|year = 2000|title = 声優白書|publisher = オークラ出版|isbn = 978-4872785647|ref = harv}}
 
* {{Cite book|和書|author = 野村道子|year = 2009|title = しずかちゃんになる方法 めざすは声優一番星|publisher = [[リブレ出版]]|isbn = 978-4862636515|ref = harv}}
 
* 大塚明夫:「声優魂」、講談社 (星海社新書)、ISBN 978-4061385672 (2015年3月26日)。
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[ボイスオーバー]]
 
 
 
== 外部リンク ==
 
{{Commonscat|Voice actors from Japan|日本の男性声優}}
 
{{Commonscat|Voice actresses from Japan|日本の女性声優}}
 
* [http://www.nippairen.com/ 協同組合日本俳優連合] - 声優の多くが加盟。
 
* [http://www.manekyo.com/ 一般社団法人日本芸能マネージメント事業者協会] - 声優のマネージメントを行うプロダクションなど事業者が加盟する。
 
* [http://www.sei-yu.net/ 日本声優事業社協議会] - 声優事業社で組織。
 
* [http://www.onseiren.com/ 一般社団法人日本音声製作者連盟] - アニメの音響製作、外国作品の日本語版製作を行う音響製作会社で組織。
 
* [https://web.archive.org/web/20050208003343/http://www.nippairen.com/saiban/siryou.html 日本アニメーション・音響映像システム二次使用料未払い訴訟関係資料] - 原告の日本俳優連合側がまとめた資料。
 
*{{Kotobank|2=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典}}
 
 
 
{{Normdaten}}
 
  
 
{{DEFAULTSORT:せいゆう}}
 
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[[Category:声優|*]]
 
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[[Category:アニメ製作の手法と役職]]
 
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[[Category:コンピュータゲーム]]
 
 
[[Category:音声]]
 
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[[Category:メディア関連の職業]]
 
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[[Category:おたく]]
 
 
[[fi:Ääninäyttelijä#Japanissa]]
 

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声優(せいゆう)

声の俳優。ラジオドラマを演じる俳優として誕生。その放送の普及に伴って,1941年日本放送協会が NHK放送劇団を創設,声優の養成が開始され,以後専門職として定着した。第2次世界大戦後は民間放送にも同様の劇団が生れたが,テレビ時代になって放送劇団の役割は低下。活動の場もテレビのアニメ番組,洋画の吹替えなどに移った。声優から新劇,大衆演劇などの俳優に転じた人も多い。



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