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[[ファイル:Emperor Akihito 200302.jpg|thumb|300px|[[御名御璽]]を加えようとする書類に目を通す[[明仁|今上天皇]]([[2003年]][[2月]]、[[皇居]]にて)]]
 
{{Infobox Monarchy
 
|font_color = purple
 
|royal_title = 天皇
 
|realm =
 
|coatofarms = Flag of the Japanese Emperor.svg
 
|coatofarms2 = Imperial Seal of Japan.svg
 
|coatofarms_article = 天皇旗
 
|image = Emperor Akihito cropped 2 Barack Obama Emperor Akihito and Empress Michiko 20140424 1.jpg<!-- 職に複数就任している可能性がある場合は、掲載しない -->
 
|incumbent = 第125代<br>[[明仁|今上天皇]]
 
|incumbentsince = [[1989年]](昭和64年)[[1月7日]]
 
|his/her = 天皇
 
|heir_apparent = [[皇太子徳仁親王]]
 
|first_monarch = [[神武天皇]]
 
|residence = [[皇居]]([[東京都]][[千代田区]])
 
|date = 神武天皇即位元年[[1月1日 (旧暦)|1月1日]]<br>([[グレゴリオ暦]]に換算すると[[西暦]][[紀元前660年]][[2月11日]])
 
|website = [http://www.kunaicho.go.jp/ 宮内庁]
 
}}
 
'''国事行為'''(こくじこうい)とは、[[日本国憲法]]上、[[天皇]]が行うものとして規定されている行為である。いずれも「[[内閣 (日本)|内閣]]の助言と承認」が必要で内閣がその責任を負うと規定されている([[日本国憲法第3条]])。
 
  
== 概説 ==
+
'''国事行為'''(こくじこうい)
国事行為は[[日本国憲法第6条]]及び[[日本国憲法第7条]]に列挙されている行為をいう<ref>伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、139頁</ref>。
 
 
 
いずれも内閣の助言と承認を要する([[日本国憲法第6条]]には明記がないものの[[日本国憲法第3条]]の適用を受けるため内閣の助言と承認を要する<ref name="i-149">伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、149頁</ref>)。[[大日本帝国憲法|帝国憲法]]での[[輔弼]]が「国務各大臣」と各大臣個別の行為とされていたのに対し、日本国憲法での助言と承認は合議体である内閣が担う<ref name="i-150">伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、150頁</ref>。なお、国事行為の委任行為([[日本国憲法第4条]]第2項)そのものについては国事行為に含むとする説と含まないとする説がある。
 
 
 
天皇には国事行為のほか生活上における純然たる私的な行為(私的行為)も当然に認められる<ref name="i-129">伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、129頁</ref><ref>水島朝穂「天皇と民事裁判権」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年</ref>。これら私的行為については公金である宮廷費ではなく内廷費(御手元金)があてられる<ref name="i-129" />。なお、国事行為として憲法に明記されたものではなく純然たる私的行為とも言えない国会開会式への出席などについては[[天皇の公的行為|公的行為]]として憲法上の位置づけに議論がある<ref>伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、132頁</ref>。
 
 
 
[[閣議決定]]の書類は毎回、閣議の後に天皇に届けられ、全てに目を通し[[署名]]や[[押印]]を行う。その数は年間で約1,000件になる<ref>[http://www.kunaicho.go.jp/activity/activity/01/activity01.html 天皇皇后両陛下のご活動]</ref>(これは1回の執務で処理される数百人分の功績調書を含んだ叙勲関係の書類を1件と数えている<ref name=":0">『週刊ダイアモンド 2016 9/17 36号』 ダイヤモンド社 p48</ref>)。決裁は翌日以降に遅らせると「政治への介入」(例えば「法律の[[公布]]」を一日遅らせると、法律の発効に関する手続きを天皇の都合で一日ずらしたことになり、[[立法権]]への介入=[[日本国憲法第41条|憲法41条]]の[[国会 (日本)|国会]]単独[[立法]]の原則などに抵触)となるので、体調が悪くても執務を簡単に休むわけにはいかない。[[御用邸]]で静養中や地方訪問中であっても、[[閣議]]が行われる火・金曜に当たると、[[内閣官房]]の職員が午後、新幹線や飛行機で書類を東京から持参し、御用邸やホテルの部屋で決裁する<ref name=":02">『週刊ダイアモンド 2016 9/17 36号』 ダイヤモンド社 p48</ref>。
 
 
 
== 内容 ==
 
[[ファイル:Emperor Akihito and Shinzo Abe 201212.jpg|thumb|200px|[[内閣総理大臣]]を任命する[[明仁|今上天皇]](左)([[2012年]][[12月]]、[[皇居]]にて)]]
 
[[ファイル:Emperor Akihito 201101.jpg|thumb|200px|召集した[[国会]]の[[国会開会式|開会式]]で[[おことば]]を述べる[[明仁|今上天皇]]([[2011年]][[1月]]、[[国会議事堂]]にて)]]
 
[[ファイル:Emperor Akihito Yoshiro Mori and Hideki Shirakawa 20001103.jpg|thumb|200px|[[栄典]]を授与する[[明仁|今上天皇]](左)([[2000年]][[11月3日]]、[[皇居]]にて)]]
 
国事行為は具体的には以下の行為を指す。
 
*; [[内閣総理大臣]]を任命すること([[日本国憲法第6条]]第1項)
 
:内閣総理大臣の任命は国会の指名に基づいて行われる([[日本国憲法第6条]]第1項、[[日本国憲法第67条]])。
 
:内閣総理大臣の任命について定める[[日本国憲法第6条]]には内閣の助言と承認についての記述はないが、内閣総理大臣の任命は[[日本国憲法第3条]]の「国事に関するすべての行為」に含まれるため内閣の助言と承認を要する<ref name="i-149" />。
 
:内閣総理大臣の任命については[[日本国憲法第71条]]により従前の内閣が助言と承認を行うことになる(通説・実務)<ref name="i-150" /><ref>野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、124頁</ref>。
 
 
 
*;[[最高裁判所長官]]を任命すること(第6条第2項)
 
:最高裁判所長官の任命は内閣の指名に基づいて行われる。
 
:[[日本国憲法第6条]]には内閣の助言と承認についての記述はないが、最高裁判所長官の任命についても[[日本国憲法第3条]]の「国事に関するすべての行為」に含まれるため内閣の助言と承認を要する。
 
:最高裁判所長官の任命については、内閣は指名とともに助言・承認も行うことになる。
 
*;[[憲法改正]]、[[法律]]、[[政令]]及び[[条約]]を[[公布]]すること([[日本国憲法第7条]]第1号)
 
:公布の時期については、憲法改正については直ちに(日本国憲法96条)、法律については議決の奏上の日から30日以内に公布される([[国会法]]第66条。ただし、[[日本国憲法第95条]]に定める特別法については[[地方自治法]]第26条による)。
 
:帝国憲法下では法令等の公布の方法について[[公式令]](明治40年勅令第6号)が「[[官報]]ヲ以テ布告シ」と定めていたが、日本国憲法施行に伴い公式令が廃止されて以来、公布の方法については法定されていない<ref>吉川和宏「法令公布の方法」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年</ref>。
 
:最高裁判例は「公式令廃止後の実際の取扱としては、法令の公布は従前通り官報によってなされて来ていることは上述したとおりであり、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもって法令の公布を行うものであることが明らかでない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもってせられるものと解するのが相当」(最高裁昭和32年12月28日大法廷判決)と判断しており官報によることが先例となっている<ref>吉川和宏「法令公布の方法」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年</ref>。
 
 
 
*;[[国会]]を召集すること(第7条第2号)
 
: 国会召集の国事行為は国会の会期を開始させるものであるから、そもそも国会の会期に含まれない[[参議院の緊急集会]]はこれから除外される(参議院の緊急集会は[[国会法]]の規定に基づき[[参議院議長]]が招集する)。
 
:憲法上、国会の召集について実質的決定権の所在を直接定めた明文規定は存在しないが、日本国憲法第7条や議院内閣制の建前から内閣に属するとされる(通説・実務)<ref>野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、127頁</ref>。
 
 
 
*;[[衆議院解散]](第7条第3号)
 
:天皇の国事行為には衆議院の解散が明記されている。憲法上、衆議院解散の実質的決定権の所在を直接定めた明文規定は存在しないが、日本国憲法第7条や議院内閣制などを根拠として内閣に属するとされる(通説・実務)。
 
:衆議院解散は[[日本国憲法第69条|憲法第69条]]によって、[[内閣不信任決議]]の可決、または内閣信任決議の否決によってのみ可能とする見解が存在する。1948年12月23日の最初の解散では第7条と第69条に基づいて行われた(いわゆる[[馴れ合い解散]])が、2回目以降は内閣不信任決議可決の有無に関わらず、第7条に基づいて解散をしている。
 
 
 
*;[[国会議員]]の総選挙の施行を公示すること(第7条第4号)
 
:「総選挙」とは、[[公職選挙法]]では[[衆議院議員総選挙]]を指し、[[参議院議員通常選挙]]のことは指さない。しかし、本条では「国会議員の総選挙」として参議院議員通常選挙の公示も含まれており、憲法7条においては「総選挙」は衆議院議員総選挙のほか参議院議員通常選挙を含んでいる<ref>伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、146頁</ref>。
 
:なお、国政選挙における[[補欠選挙]]では公示ではなく、告示が行われ、告示は各々[[都道府県]]の[[選挙管理委員会]]が行う。
 
 
 
*;[[国務大臣]]及び法律の定めるその他の[[官吏]]の任免並びに[[全権委任状]]及び[[大使]]及び[[公使]]の[[信任状]]を認証すること(第7条第5号)
 
:[[認証官]]の任免及び全権委任状及び大使及び公使の信任状について認証する。
 
:認証官のうち国務大臣の任命については憲法上に規定があり(日本国憲法第68条)、内閣総理大臣が任命した後に天皇がこれを認証する。
 
:全権委任状及び大使及び公使の信任状の発給権限は内閣に属する([[日本国憲法第73条]]第2号)。
 
 
 
*;[[大赦]]、[[特赦]]、減刑、刑の執行の免除及び復権([[恩赦]])を認証すること(第7条第6号)
 
: 恩赦の決定権は内閣に属する([[日本国憲法第73条]]第7号)。
 
 
 
*; [[栄典]]を授与すること(第7条第7号)
 
:栄典の授与を行う。天皇によって授与される栄典には[[叙勲]]や[[文化勲章]]などがある。憲法上、栄典の授与の実質的決定権の所在を直接定めた明文規定はないが、日本国憲法第7条や行政権の主体であることなどを根拠として内閣に属するものとされる(通説・実務)<ref name="kempou">野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、130頁</ref>。
 
:栄典の授与はいかなる特権も伴わない(第14条3項後段)。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する(第14条3項後段)。
 
:なお、憲法第7条第7号の規定は天皇以外の機関(内閣総理大臣や[[都道府県知事]]など)によって授与される栄典を設けることを禁じるものではない<ref name="kempou" />。
 
 
 
*; [[批准書]]及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること(第7条第8号)
 
:批准書など外交文書の認証を行う。
 
 
 
*; 外国の大使及び公使を[[接受]]すること(第7条第9号)
 
 
 
*; 儀式を行うこと(第7条第10号)
 
:本条の「儀式」は天皇が主宰して行う国家的性格を持つ儀式をいう<ref name="i-140">伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、140頁</ref>。これに対しては他人が主宰する儀式への参列もこれに含むとする反対説もある。
 
:本条の儀式としては[[即位の礼]](皇室典範第24条)、[[大喪の礼]](皇室典範第25条)、[[元日節会|新年祝賀の儀]]などの国家的儀式等が挙げられ、[[日本国憲法第20条]]第3項に基づき宗教的色彩は排除されるとともに<ref name="i-140" />、費用は公金である[[宮廷費]]から支出されている<ref name="i-140" />。
 
:一方、[[元始祭]]や[[皇霊祭]]など皇室の私事で行われるものは純然たる私的行為であり、皇室の信仰方法に基づいて行われても憲法上の疑義は生じず<ref name="i-129" />、費用も御手元金である[[内廷費]]で賄われている<ref name="i-129" />。
 
:[[天皇の退位等に関する皇室典範特例法]]に基づく退位の儀式や立皇嗣の礼も国事行為として位置づけられる<ref>{{Cite news|url=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27124710Q8A220C1MM0000/ | title=立皇嗣の礼を国事行為に 天皇陛下退位で政府 |date=2018-2-20|publisher=日本経済新聞|access date=2018-7-9}}</ref>。
 
:なお[[皇太子徳仁親王と小和田雅子の結婚の儀]]のように、[[皇太子]]の結婚関連儀式の一部が国事行為として扱われ<ref>{{Cite web |url=http://www.kunaicho.go.jp/about/seido/seido10.html |title=ご大喪・ご即位・ご結婚などの行事 |publisher=宮内庁 |accessdate=2016-03-10}}</ref>、事前の国会では国事行為扱いが適切かについて野党より質問があった<ref>{{Cite web |author= |date= |url=http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/126/0020/12604220020005c.html |title=衆議院会議録情報 第126回国会 内閣委員会議録 第5号 |work=国会会議録検索システム |publisher=[[国立国会図書館]] |accessdate=2016-03-10}}</ref>。
 
 
 
*; 国事行為の委任([[日本国憲法第4条]]第2項)
 
:[[国事行為臨時代行]]に対する国事に関する行為を委任して臨時に代行させる旨の[[勅書]]を交付する行為と、国事に関する行為の委任を解除する旨の勅書を交付する自体は、天皇の国事行為と考えられている。
 
:ただし、国事行為の委任については、国事行為に含まれないとする見方もある。
 
 
 
== 内閣の助言と承認 ==
 
=== 「助言」と「承認」の関係 ===
 
国事行為は'''内閣の助言と承認'''に基づかなければならず、内閣が国事行為の責任を負う([[日本国憲法第3条|第3条]])。条文の文言上は、国事行為に先立つ「助言」と、国事行為の事後の行為である「承認」の2つの行為が必要とも考えられる。しかし、およそ国事行為は内閣の意思に基づいて行われるとの趣旨であるとみて両者を統一的にとらえ「助言」と「承認」それぞれ別の[[閣議]]に基づく必要はないとみるのが一般的であり<ref name="i-149" />、実際上もそのような取扱いがされている。
 
 
 
=== 内閣の助言と承認の性質 ===
 
国事行為について天皇が国政に関する権能を有しないとすると、「内閣の助言と承認」は国事行為との関係でいかなる意味を有するのか、具体的には、「内閣の助言と承認」に従うというのは国事行為の実質的決定権の所在が内閣にある(場合も含む)と理解するのか、「内閣の助言と承認」自体も形式的なものなのかが、問題となる。
 
 
 
このような問題が生じるのは、国事行為の中にはその実質的決定権の所在について憲法上明文がないもの(国会の召集、衆議院の解散など)があったり、内閣以外に実質的決定権があったりする(内閣総理大臣の指名、国務大臣の任免)にも関わらず、条文上は内閣の助言と承認に従うことになっているためである。
 
 
 
; 本来的形式説([[小嶋和司]]など)
 
: 天皇の国事行為は本来的に形式的・儀礼的・名目的なもので、内閣の助言と承認についても実質的決定権を含むものではない。内閣総理大臣の任命の実質的決定権については国会にあり(日本国憲法第67条)、このことからみても、そもそも内閣の助言と承認には実質的決定権を含むものではない(実質的決定権の所在とは切り離されているものである)という。なお、内閣の助言と承認には実質的決定権は含まれないと考える場合、国会の召集や衆議院の解散など実質的決定権の所在について憲法上明文がないものについて、実質的決定権の所在の根拠を憲法第7条とは別の根拠に求めて確定する必要がある。例えば国会の召集権については内閣にあるものと考えられているが、内閣の助言と承認には実質的決定権を含まないとすると、歴史的にみて内閣に帰属してきたという沿革や日本国憲法第53条の類推などに実質的決定権の根拠を求めることになるが、ドイツのように自律召集制を採用している国もあり、これらの理由は内閣に召集の実質的決定権を認める根拠としては弱いとされる<ref>野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I(第4版)』 有斐閣、2006年、126頁 - 127頁</ref>。
 
; 結果的形式説([[宮沢俊義]]など)
 
: 天皇の国事行為は本来的には必ずしも形式的・儀礼的・名目的なものではないが、内閣の助言と承認には実質的決定権が含まれており、内閣の助言と承認に基づいて行われることから、結果的に天皇の国事行為は形式的・儀礼的なものとなる。国事行為が本来的に形式的・名目的な行為であるなら、これに対して内閣の助言や承認を必要とすることは無意味であり、また、本来的形式説のように考えるのであれば4条と3条の規定は順序が逆になるはず(国事行為の性質が決まった上で内閣の助言と承認を要するという順序になっているはず)であるという。
 
: 宮沢俊義は内閣の助言と承認は内閣に実質的な決定の余地がある場合に限るとし、国会の指名に基づく内閣総理大臣の任命や内閣総理大臣の専権に属する国務大臣の任命については不要とみていた。しかし、日本国憲法第3条の「国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要」という文理解釈との整合性の点で問題があるとされ、結果的形式説からも近年はこのような立場はとられず、内閣の助言と承認はすべての国事行為に必要とされるが、内閣の助言と承認は国事行為の種類ごとに憲法・法律に規定に服しながら行われるのであり、内閣の実質的決定権の裁量には国事行為の種類によって広狭の幅があるものと解釈されている(例えば、衆議院解散については内閣に広い裁量が認められるが、内閣総理大臣の任命については国会の指名に基づくので内閣にはほとんど裁量の余地がないことになる)<ref>野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利著『憲法 I (第4版)』有斐閣、2006年、118頁 - 119頁</ref>。
 
 
 
=== 内閣の責任 ===
 
天皇の国事行為について内閣は責任を負う([[日本国憲法第3条]])。この[[日本国憲法第3条]]に定める国事行為についての内閣の責任及び[[日本国憲法第4条]]に定める政治的諸関係からの厳格な隔離の結果として天皇は政治的に無答責となる<ref>水島朝穂「天皇と民事裁判権」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年</ref>。この内閣の責任の性質は天皇の国事行為についての代位責任ではなく助言と承認を行ったことについての内閣の自己責任である<ref name="i-152">伊藤正己『憲法(新版)』弘文堂〈法律学講座双書〉、1990年、152頁</ref>。また、内閣の責任の相手方は[[国民]]であり直接的には国民を代表する国会に対して政治的責任を負う<ref name="i-152" />。
 
 
 
== 国事行為に関する天皇の実質的権能 ==
 
[[日本国憲法第4条]]は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と規定しているが、上記に掲げた日本国憲法上の「国事行為」には国会の召集や衆議院の解散など政治的機能に対して行うものがある。
 
 
 
この点につき、憲法草案の審議の過程では、天皇の意思が政治的決定に影響を及ぼすことも考えられ、第4条の趣旨につき、国事行為の他は国政に関する権能を有しないと解する見解もあった([[国務大臣]][[金森徳次郎]]の答弁)。このような解釈は第4条の文言からは無理とされており、国事行為を行う場合か否かを問わず国政に関する権能を有しないと解する見解が支配的である。
 
 
 
[[内閣法制局]]は[[衆議院]][[内閣委員会]]での答弁で以下の見解を示している<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/046/0388/04603130388009a.html 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月13日]</ref><ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/061/0020/06103140020007a.html 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月14日]</ref><ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/046/0388/04603190388011a.html 衆議院内閣委員会議事録 昭和39年3月19日]</ref>。
 
*国事行為に際しての内閣の助言と承認に対して、天皇はこれを拒否する権能、変える権能はない
 
*[[外遊|海外旅行]]は国事行為に含まれないので、内閣の助言と承認に拘束されることなく、理論上、終局的には天皇の意思によって決定することになる
 
*内閣の助言と承認事項が著しく国民のためにならず、天皇の良心に反する場合、天皇は国事行為について内閣に質問をし念を押すことができる
 
 
 
なお、天皇の政治的無答責は「象徴」としての地位に内在するものではなく[[日本国憲法第3条]]に定める国事行為についての内閣の責任と[[日本国憲法第4条]]に定める政治的諸関係からの厳格な隔離から導き出されるものと解されている<ref>水島朝穂「天皇と民事裁判権」『別冊ジュリスト No.187 憲法判例百選II 第5版』、有斐閣、2007年</ref>。
 
 
 
== 国事行為の代行 ==
 
{{Main|国事行為臨時代行}}
 
[[皇室典範]]の定めるところによって[[摂政]]が置かれている場合、摂政は天皇の名においてその国事に関する行為を行う([[日本国憲法第5条]]前段)。また、天皇に精神もしくは身体の疾患または事故(海外訪問による日本国内不在を含む)で国事行為が遂行できない場合は、国事行為臨時代行に国事行為を委任できる([[日本国憲法第4条]]第2項)。国会における政府答弁では憲法第4条第2項に規定される「国事行為臨時代行への委任」も国事行為に含まれるとしている。
 
{{摂政就任順位}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
{{Reflist|2}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Wiktionary|国事行為}}
 
* [[天皇制]]
 
* [[主権在民]]
 
* [[立憲君主制]]
 
* [[大日本帝国憲法]]
 
*[[国王 (法人)]]
 
{{天皇項目}}
 
{{日本国憲法}}
 
  
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日本国憲法の6条,7条に規定され,天皇が国家機関として行う行為をいい,国政に関する権能とは区別される (4条1項) 。国家の象徴として,天皇は国家的事項 (国事) に関して一定の行為を行うが,それはもっぱら形式的,儀礼的,名目的なものである。具体的には内閣総理大臣・最高裁判所長官の任命,憲法改正・法律・政令・条約の公布,国会の召集,衆議院の解散,総選挙施行の公示,官吏の任免・全権委任状および大公使の信任状の認証,大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除および復権の認証,栄典の授与,批准書・外交文書の認証,外国の大公使の接授と大喪の礼などの儀式である。憲法は,国民主権を宣言し,天皇を統治権の総攬者の地位から象徴に移し (1条) ,立法,司法,行政の3権を国会,裁判所,内閣にゆだねて,天皇は憲法の定める国事に関する行為のみを行い,国政に関する権能を有しないとし (4条1項) ,さらに天皇の国事行為にはすべて内閣の助言と承認を必要とし,内閣がその責任を負うことが定められている (3条) 。
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{{テンプレート:20180815sk}}
 
{{デフォルトソート:こくしこうい}}
 
{{デフォルトソート:こくしこうい}}
 
[[Category:日本国憲法]]
 
[[Category:日本国憲法]]
 
[[Category:天皇制]]
 
[[Category:天皇制]]
 
[[Category:行為]]
 
[[Category:行為]]

2018/10/18/ (木) 15:53時点における最新版

国事行為(こくじこうい)

日本国憲法の6条,7条に規定され,天皇が国家機関として行う行為をいい,国政に関する権能とは区別される (4条1項) 。国家の象徴として,天皇は国家的事項 (国事) に関して一定の行為を行うが,それはもっぱら形式的,儀礼的,名目的なものである。具体的には内閣総理大臣・最高裁判所長官の任命,憲法改正・法律・政令・条約の公布,国会の召集,衆議院の解散,総選挙施行の公示,官吏の任免・全権委任状および大公使の信任状の認証,大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除および復権の認証,栄典の授与,批准書・外交文書の認証,外国の大公使の接授と大喪の礼などの儀式である。憲法は,国民主権を宣言し,天皇を統治権の総攬者の地位から象徴に移し (1条) ,立法,司法,行政の3権を国会,裁判所,内閣にゆだねて,天皇は憲法の定める国事に関する行為のみを行い,国政に関する権能を有しないとし (4条1項) ,さらに天皇の国事行為にはすべて内閣の助言と承認を必要とし,内閣がその責任を負うことが定められている (3条) 。



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