「可変電圧可変周波数制御」の版間の差分

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{{Otheruses|鉄道車両に搭載されているVVVFインバータ|インバータの可変速制御一般|VVVFインバータ制御}}  [[ファイル:Keihin-tohoku 209 series.jpg|200px|thumb|right|[[JR東日本209系電車]]]]
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[[ファイル:JRW 281 VVVF.jpg|200px|thumb|right|[[JR西日本281系電車]]のVVVFインバータ部]]
 
[[ファイル:JRE removed VVVF units.jpg|200px|thumb|right|山積されている使用済みのVVVF装置([[東京総合車両センター]])]]
 
'''可変電圧可変周波数制御'''(かへんでんあつかへんしゅうはすうせいぎょ)とは、[[インバータ]]装置などの交流電力を出力する[[電源回路|電力変換装置]]において、その出力交流電力の[[実効値|実効電圧]]と[[周波数]]を任意に制御する手法である。
 
 
 
日本では、[[鉄道車両]]の[[誘導電動機|交流モータ]]駆動方式として、可変電圧可変周波数を英語に直訳した語<ref>{{lang|en-short|variable voltage variable frequency}}</ref>の頭文字をとって、[[VVVFインバータ制御|'''VVVF制御''']](ブイブイブイエフせいぎょ、もしくは、スリーブイエフせいぎょ<ref>草思社「全国鉄道事情大研究」大阪都心部・奈良編 用語解説では「スリーブイエフと言う」と書かれている。</ref>)と呼ぶが、鉄道分野以外で一般に「[[電動機]]の可変速駆動制御」などと呼ばれるものに含まれる。家電分野ではインバータ・[[エア・コンディショナー|エアコン]]などに使われる。
 
 
 
なお、概要の項で示される通りVVVFは和製英語であり、英語圏では主にVFD<ref>{{lang-en-short|variable-frequency drive}}</ref>(鉄道車両などでは'''Traction inverter''')などと言われることが多い。
 
* [[半導体素子]]を用いた[[直流]]を[[交流]]に変換する装置は → [[インバータ]]
 
* [[直流電化]]区間で運転される鉄道車両の補助[[電源]]装置は → [[静止形インバータ]]
 
* 電圧-周波数比例モータ制御は → [[VVVFインバータ制御]]
 
* 鉄道関係(技術解説)は → [[電気車の速度制御]]
 
をそれぞれ参照の事。
 
 
 
== 概要 ==
 
電力変換装置の出力電力手法には可変電圧可変周波数制御のほかに、定電圧定周波数制御(CVCF制御)、可変電圧定周波数制御(VVCF制御)、定電圧可変周波数制御(CVVF制御)がある。
 
 
 
電気鉄道では交流電圧波形のピーク-ピークが架線電圧までは周波数と電圧を比例させ(VVVF制御領域)、架線[[電圧]]に到達後は誘導電動機ではスベリを増やして定出力とし、スベリ限界以降はトルクが速度の2乗に反比例する特性が基準になる(CVVF制御領域)。このVVVF制御された出力特性は弱界磁制御を行う直流直巻モータの特性に酷似している<ref>モータ単独特性は電圧-回転数=周波数比例</ref>。[[静止形インバータ]](SIV)はCVCFとされるが、定電圧制御を行うものはVVCFに帰還制御を施したとも言える。
 
 
 
この制御で得られる可変電圧可変周波数の電力は、[[交流電動機]]を可変速駆動する目的で使われる。そのため、電力変換装置に接続された交流電動機を可変速駆動する制御方式を指すことがある。
 
 
 
このような出力や電動機制御を実現する鉄道用インバータ装置をVVVFインバータと呼ぶ。VVVFは和製英語である。[[中華人民共和国|中国]]や[[大韓民国|韓国]]などでは、日本メーカの呼称の影響を受けてこう呼ぶ場合もある。
 
 
 
この技術は[[鉄道車両]]([[電車]]、[[電気機関車]])、[[自動車]]([[電気自動車]]、[[ハイブリッドカー]])、[[エレベーター]]といった輸送用機器や[[送風機|ファン]]、[[ポンプ]]、空調設備、[[圧延機]]などさまざまな産業用機器、さらには[[家庭用電気機械器具]]([[エア・コンディショナー|家庭用エアコン]]、[[冷蔵庫]]、[[洗濯機]]他)などで広く利用される。
 
 
 
「[[パルス振幅変調|PAM]]」、「[[パルス幅変調|PWM]]」というのは直流から任意の交流疑似正弦波波形を生成する方式に使用され、前者がパルス振幅を変えて交流波形を生成する(パルス振幅変調)もの、後者がパルス幅を変えて交流波形を生成する(パルス幅変調)方式でありPAMは電圧を昇圧(降圧)させる部分と交流に変換するインバータ部で構成される。
 
PAMは装置がやや複雑になるため今は鉄道車両では使われていない。PWMは多くのインバータ制御で使われており従来の多段合成変圧器を用いた正弦波インバータより小型高効率にすることが可能である。
 
 
 
大電力のVVVF制御に多用される方式である、「3レベルインバータ」は耐電圧の低い素子を使用するために電源の中間電圧レベルを供給する回路方式であるが、動作としてはPWMである。これに対して直流電源電圧をオン-オフする元々の単純な方式を「2レベルインバータ」と言う。高調波損失を抑えるという意味ではマルチレベルインバータの方が良いものの、高電圧用の半導体素子の開発に伴い2レベルインバータに回帰し始めた。
 
 
 
回生制動時には電力の通過方向が逆になり、実質コンバータとして働いている。
 
 
 
交流での回生制動を可能にする交直変換回路として整流部にPWM[[整流器|コンバータ]]が用いられるようになったが、それは力行・回生双方向性を持ち、力行時にはコンバータとして使用しつつ、回生時にはインバータとして使用する必要があるためである。
 
 
 
<!--2レベルインバータ主回路の場合+側UVW、-側UVWの出力素子が2個直列、これを3組並列にした回路であり各素子は電源電圧の1/2以上の耐圧素子が必要である。
 
また出力電圧は 全電圧-0Vの二段階となり正弦波に近い波形とするにはPWM周波数をかなり高めにしなければならない<ref>PWM周波数を高くすると流せる電流量が減少する</ref>。
 
 
 
3レベルインバータ主回路は各素子が2個直列になり これがさらに2組直列、これを3組並列にしたもので、上から1つ目、3つ目の中点を6本まとめて電源電圧の中間点へ接続する構成である。中間電圧を利用するため、全電圧-1/2-0Vの三段階の電圧が得られ、より正弦波に近い波形を得られる。(実際はもっとたくさんの素子を直列並列接続している)
 
欠点は構造上多数の素子が必要なため、素子の特性がそろっていないと動作不良を起こしやすくなる点があり、特に経年が経った装置では日常保守で注意が必要である。
 
(一般的説明ではないので取りあえず非表示) -->
 
IGBT以前では2レベルがほとんどであった。例外として、黎明期の[[ゲートターンオフサイリスタ|GTO]]素子は高耐圧なものがなかったために3レベルとしたインバータもある。[[東急6000系電車 (初代)|東急6000系電車(初代)]]などが該当する。また、[[JR東日本209系電車#920番台|JR東日本209系920番台電車]]では従来の大電流の平型GTOサイリスタに代わり、冷却装置に取付ける際の絶縁を考慮しなくて済む低耐圧モジュール型GTOを使用して、装置のコストダウンやメンテナンス性の向上を図っている。
 
 
 
一つのインバーターで複数の[[誘導電動機|非同期モーター (IM)]]を駆動することが行われているため、制御装置とモーターの関係が#C#Mで表記されている。例えば1つのインバータを持つ制御装置が4つの非同期モーターを駆動する場合、1C4Mとなる。[[永久磁石同期電動機|永久磁石同期モーター (PMSM)]]などの[[同期電動機|同期モーター (SM)]]の場合は、一つのモーター毎に一つのインバータが必要となるため個別駆動 (1C1M)のみとなる<ref>[https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2013/04/68_04pdf/a07.pdf 鉄道車両用 PMSM主回路システム] 東芝 2013年</ref>が、4つのインバータを持ち4つの同期モーターを制御する制御装置も登場しており、これが1C4Mと表記されることもある。なお、非同期モーターの場合であってもインバーターで空転再粘着制御が行われているため、粘着利用率だけを見る場合、軸毎に制御できる個別駆動の方が性能的に有利とされる<ref>[https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=3392&item_no=1&attribute_id=14&file_no=1 誘導機駆動鉄道車両の超過角運動量補償に基づく再粘着制御] P.46 原祟文 2011年</ref>。
 
 
 
== 沿革 ==
 
VVVF制御は、[[交流電動機]]([[誘導電動機]]、[[同期電動機]])を可変速駆動するための[[インバータ]]の制御技術である。特に[[かご形三相誘導電動機|かご形誘導電動機]]は構造が簡単なため、保守のコストが非常に少なく、電動機自体の価格も安い、という利点があることが古くから知られていたが、回転速度([[回転数]])が電源の[[周波数]]に依存するため、長らく可変速度を必要とするものでの使用は困難であった。
 
 
 
かご形誘導電動機の速度制御には、インバータ開発以前にも極数変換によるものがあったが、これは連続的な速度制御はできなかった。インバータの出力電圧と周波数を連続的に変化させる可変電圧可変周波数制御が、交流電動機の連続的な速度制御を実現した。これは、近年の[[半導体]]技術、特に[[パワーエレクトロニクス]]の進歩に伴い、高速・高耐圧・大容量の制御素子が開発されて実現可能となったものである。
 
 
 
[[1960年代]]後半頃から、[[ファン]]・[[ポンプ]]や抄紙機など産業用途での利用が始まり、[[1970年代]]後半から[[1980年代]]前半には[[鉄道]]や[[エレベーター|エレベータ]]、[[1990年代]]には[[冷蔵庫]]、[[エア・コンディショナー|エアコン]]など[[家庭用電気機械器具|家電機器]]でも利用されるようになった。
 
 
 
後に、汎用インバータも価格が下がり、[[送風機]]などでは風量や静圧調整のため[[プーリー]]交換やモータ交換をするよりインバータ制御で調整した方が安価になっている。
 
 
 
なお、[[無整流子電動機|ブラシレスDCモータ]]の可変速制御回路も回路的にはインバータと全く同じであるが、同期モータであるため『[[同期速度|すべり]]』がなく、正確に[[回転子]]の位置を[[フィードバック]]しないと同期がずれる『[[同期速度|脱調]]』を起こし、停止する。
 
 
 
== 使用される電動機 ==
 
主として[[かご形三相誘導電動機]]や[[巻線形三相誘導電動機]]の制御に使用される。[[2000年代]]後半に入り、駆動周波数と回転周波数がほぼ正確に一致し[[オープンループ制御]]が可能となる高効率な[[永久磁石同期電動機]](PMSM)や大容量な[[電磁石同期電動機]]が徐々に使用されつつある。ただしこれらは電動機1つにつき主制御器(インバータ)1台が必要な個別制御でなければまともに駆動できず、重量、設置面積(この2点は、同期電動機に積極的な[[東芝]]が1つの機器箱に2つの主制御器を収める2 in 1と呼ばれる手法で軽減している)、価格、主制御器の保守などの面で課題が残る。対する誘導電動機は2つ以上の電動機を一括制御することも1つの電動機を個別に制御することもできる。
 
 
 
[[同期電動機]]の採用例を以下に挙げる。
 
* [[フランス国鉄]] (SNCF) [[TGV]] - 電磁石同期電動機を採用していたが、新しいモデルではかご形三相誘導電動機に替わっている。
 
* [[東京地下鉄]](東京メトロ) [[営団02系電車|02系電車]] - [[営団01系電車|同01系電車]]での試験の後、02系の[[電機子チョッパ制御]]車を対象に永久磁石同期電動機を用いて更新改造を始めている。また、同社の[[東京メトロ16000系電車|16000系電車]]は永久磁石同期電動機を採用して新製・量産された日本初の例である。
 
* [[東日本旅客鉄道]](JR東日本) [[JR東日本E331系電車|E331系電車]] - [[JR東日本E993系電車|E993系電車]]で採用された駆動方式、[[ダイレクトドライブ]]との組み合わせで量産先行車として製造したが、ダイレクトドライブ方式が他の系列に波及することなく2011年1月に運用を離脱し、そのまま2014年4月に廃車。
 
* [[揚水発電]]における揚水用電動機の始動。なお揚水用電動機は発電時は[[同期発電機]]として使用される。
 
[[単相誘導電動機]]は以下の点で可変速運転、特に低周波数での運転に適さないこと、また同出力であれば三相誘導電動機の方が安価でありコスト面でもメリットがないことから、基本的には使用されない。
 
* 一定回転数以下になると、始動用スタータコイルを制御する遠心力スイッチが動作しなくなり始動動作を繰り返す。
 
* コンデンサ始動式では低電圧時十分な進相電流を流すことができず、ある点で突然始動するか過電流で異常停止する。
 
もっとも、単相誘導電動機を用いた既設機器を可変速運転したい需要があることも事実であり、あまり低い回転数で使えないことを条件に、ファン、ポンプ用途に限定して単相電源-単相出力のインバータが販売されている。
 
 
 
== スイッチング素子 ==
 
[[ファイル:PWM VFD Diagram.png|thumb|right|200px|整流後の直流から三相交流を作り出す回路]]<!-- 英語版しかないようなので、作れる方に翻訳をお願いできればと思います -->
 
可変電圧可変周波数制御では、[[サイリスタ]]や[[トランジスタ]]といったスイッチング素子6個からなるブリッジ回路を用いて電流のON/OFFを繰り返し、キャリア三角波と基準電圧波形を比較してスイッチング素子のON/OFFを繰り返し、パルス波によるPWM(Pulse Width Modulation)方式により、位相差が120度の三相交流を作り出すことで、誘導電動機の固定子巻線に、6パターンの電力が供給される。電圧を可変するにはパルス波の幅を変化させ、周波数を変化させるにはスイッチング周期を変えることで行う。パルス波によって作られる制御波形には、1つのパルス波によって交流の正弦波に近い波形を作り出す2レベル制御波形、1つのパルス波の上にもう1つのパルス波を上積して2段階のパルス波にすることにより、波形をより正弦波に近い形を作り出す3レベル制御波形がある。
 
 
 
電気鉄道の主電動機駆動用のスイッチング素子としては初期には[[サイリスタ|逆導通サイリスタ(RCT)]]が用いられていたが1990年代初頭からはスイッチング素子の駆動回路が簡素化できる[[ゲートターンオフサイリスタ]](GTOサイリスタ)が用いられるようになった。さらに1990年代終盤以降はスイッチング速度が速い[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ]](IGBT)が主として用いられている。IGBTの採用により、より正弦波に近い出力が得られ、IGBTを2段直列に接続することで、電圧を2段階で加圧して、2段階のパルス波を発生させることにより、さらにより正弦波に近い出力を得ることができる3レベルインバータが開発され、電力変換器の低損失化や波形ひずみの軽減ができるようになった。また、キャリア周波数を人間にとって耳障りな周波数よりも高い領域にすることでインバータ装置や電動機の低騒音化が実現できるようになった。2010年代以降は、従来の[[ケイ素]](Si)より[[絶縁破壊]][[電圧]]が高く機器を小型化できる[[炭化ケイ素]](SiC)を一部([[ショットキーバリアダイオード]])に使用したハイブリッド型ものや、さらにはSiCを全面的に用いた[[MOSFET]]が導入されつつある<ref>例:JR東日本[https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_51/tech-51-41-44.pdf E235系の主回路システムの紹介]</ref>。SiCとはゲルマニウムやシリコンと同じ半導体の素材であって、当然SiC-IGBTなどもあり得る。従ってIGBTなどの半導体素子そのものを指すには不適切であるが、SiCというスイッチング素子があるかのような表現が広く用いられている<ref>SiCに積極的な東芝も使用していた[https://www.jreast.co.jp/press/2014/20140701.pdf]</ref>。
 
 
 
SiC-MOSFETはSi-IGBTに比べ[[スイッチングロス|スイッチング損失]]が低く省電力である<ref name="jr-tr51-e235"/>。損失が減って発熱が減ることで、回生ブレーキの使える範囲も広くなる<ref name="jr-tr51-e235"/>。また、SiC-MOSFETはスイッチング速度が速く、時間当たり多くのオンオフが可能であり、これにより高速域でも高いパルスモードを使うことができ、モーターの[[高調波損失]]を低く抑えることが可能となる<ref name="jr-tr51-e235">[https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_51/tech-51-41-44.pdf JR EAST Technical Review-No.51 - E235系の主回路システムの紹介] P.42-43 JR東日本</ref>。
 
 
 
産業用や家電用のインバータに用いられることが多い素子であるバイポーラトランジスタは、電気鉄道用としては耐圧が不足する<ref>厳密には、低損失かつ高耐圧のものが製造できない状況である。</ref>ことからほとんど使用されていない。実績を上げると、バイポーラトランジスタの一種であるパワートランジスタを利用した電車として、JR東日本901系A編成(後の[[JR東日本209系電車|JR東日本209系]]900番台)や同[[JR東日本701系電車|701系]]、[[JR西日本207系電車|JR西日本207系]]0番台が挙げられる。
 
 
 
== 制御方式 ==
 
=== モーター特性に合わせた制御 ===
 
VVVFインバータ制御は交流モーターである誘導電動機や同期電動機の基本特性に合わせ、その回転数・周波数にほぼ比例した電圧を加える制御方式である。
 
 
 
従前は供給電源の周波数を自由に変えられる装置が簡単には構成できなかったため、電圧を何段階かに切り換えたり、巻線の結線を変え、あるいは回転子のコイルにスベリ周波数に見合った直列起動抵抗を挿入して最大トルクを得る様に調整するなど、電気特性的にはイレギュラーな[[三相誘導電動機|簡易的起動方法]]を採用して、起動後の定常運転状態では軽負荷で使っていた。商用周波数での起動の困難のために無用に大出力の電動機を採用していた。
 
 
 
[[ファイル:emf_3vf.gif|thumb|260px|right|電動機の1相誘起電圧と回転数]]
 
しかし、大電力用半導体素子の発達でインバーターとして自由な周波数と電圧を生成できる様になったことで、モーター特性に合わせた電力供給が実現されて定常運転出力にあった小型のモータを採用できるようになった。
 
 
 
今、鉄心の磁気飽和による最大磁束以下の ''Φ<sub>m</sub>'' に励磁された回転子が回転数 ''n'' で回転していた場合、固定子に巻かれたコイルには最大''Φ<sub>m</sub>'' のほぼ正弦波の磁束が鎖交する。コイル誘起電圧 <math>e</math> は磁束の変化率( = 微分値)×巻数 ''N'' である。すなわち、
 
鎖交磁束を
 
: <math>\phi e=\phi m\cdot \sin \theta \ </math>・・・・<math>\ (\theta = 2\pi nt)</math>
 
とする時、(Φに付くe,mは添数<!-- どなたかmath表記中の添数表記に改めてくだされ。書式が分からんもので -->)
 
 
 
<math>\sin (2\pi nt) \, </math> の時間微分(変化率)は、 <math>2\pi n\cdot \cos (2\pi nt)</math> であるから、
 
誘起電圧eは
 
: <math>e=2\pi Nn\cdot \cos (2\pi nt)</math>
 
となって、一定磁束なら誘起起電力''e''は回転数 ''n'' ,周波数 ''f'' に比例することが分かる。「[[#電圧/周波数 ( V/f ) 一定制御|''e/f'' が一定]]」とも言える。
 
 
 
モーターの端子電圧 = 供給電圧はこれ:誘起起電力'''e'''に巻線抵抗などのインピーダンス電圧降下分を加えたもので平衡するから、それをインバータで生成する方式がVVVFインバータ制御と言われるものである。常に最大トルク付近や最大効率を追えるので、使用する交流モーターを従前よりかなり小型化でき細かな制御ができるようになった。そのためエアコンなど家電製品でもインバータ方式( = VVVF方式)が主流になりつつある。
 
 
 
=== 電圧/周波数 ( V/f ) 一定制御 ===
 
設定されているシーケンスで[[電圧]]/[[周波数]]を連動させて制御する。
 
 
 
特徴
 
* 制御回路が単純で安価である。
 
* 外乱による変化に対応しにくい。
 
用途
 
* ファン・ブロワ・圧縮機・ポンプなど、2乗低減トルク負荷の部分負荷時の省エネルギー用。
 
 
 
=== (回転部センサ付き)トルクベクトル制御 ===
 
回転部に回転数[[センサ]]( パルス発信器など)・回転子位置センサ(ホール素子など)を取り付け、その計測結果に基づいて電圧・周波数・位相などを適切に制御し、目的とする回転数・トルクを得る。
 
 
 
特徴
 
* 精密なトルク・回転数・位置制御が出来る。
 
* センサの保守が煩雑である。
 
用途
 
* [[マシニングセンタ]]・押出機・巻取機・[[鉄道車両]]・[[エレベーター|エレベータ]]など、大きな始動トルクと正確な制御が必要な負荷用。
 
 
 
=== (回転部)センサレス・トルクベクトル制御 ===
 
回転部のセンサを省略し、代わりに各[[巻線]]の[[電流]]の大きさと位相で、[[トルク]]と回転数を推定し、それに基づいて電圧・周波数を変化させ、目的のトルク・回転数を得る。
 
 
 
特徴
 
* センサの保守が必要ない。
 
* 鉄道車両等の、電動機の外形寸法に制約のある用途では、センサがなくなった分だけ大型の電動機を用いることができ、大出力化が可能になる。
 
* トルク・回転数推定のための、高速な演算回路が必要である。
 
* 制御回路に[[電動機]]・負荷の特性が正しく設定されていないと、制御が乱れる。
 
用途
 
* [[クレーン]]・ハイブリッドカーなど、大きな始動トルクが必要な負荷用。
 
* タンクレス給水用ポンプなど急速起動が必要な用途。
 
** その後、鉄道車両の主電動機にもセンサレス制御が用いられるようになってきている。
 
 
 
== 日本の鉄道におけるVVVFインバータの利用 ==
 
=== 歴史 ===
 
世界で初めて営業運転に投入されたVVVFインバータ制御車両は、電車では1977年に就役した[[ヘルシンキ地下鉄M100系電車]]、機関車では1979年に就役した西ドイツ国鉄(現・[[ドイツ鉄道]])[[西ドイツ国鉄120型電気機関車|120型電気機関車]]と言われている。当時はVVVFインバータ制御がほとんど普及していなかったが、1990年代より採用が拡大した。
 
 
 
====国鉄・JRにおける取り組み====
 
[[画像:JNR-207-EMU.jpg|210px|thumb|right|国鉄(→JR東日本)[[国鉄207系電車|207系900番台]]]]
 
旧[[日本国有鉄道]]における無整流子電動機駆動方式の開発としては、[[1972年]](昭和47年)12月に[[国鉄791系電車|クモヤ791形]]交流[[試験車|試験電車]]を用いて、[[同期電動機]]と(サイリスタモーター)と[[電源回路|サイクロコンバータ]]を用いての試験が実施されている。試験にあたっては勾配条件などを考慮して[[日豊本線]]の[[柳ヶ浦駅|柳ヶ浦]] - [[杵築駅|杵築]]間約30kmの区間で行われた<ref name="Fan1986-5">交友社「鉄道ファン」1986年5月号記事「国鉄のVVVF車両開発」記事から。</ref> 。[[日立製作所]]と[[富士電機ホールディングス|富士電機]]製の機器が使用され、試験の結果は良好だったが機器の大きさや重量面において大きな問題が残された。
 
 
 
その後、[[1979年]](昭和54年)から翌[[1980年]](昭和55年)にかけて[[青函トンネル]]用[[電気機関車]]を想定した悪条件下での走行時における信頼性確保や保守性の向上のため、サイリスタコンバータと[[パルス幅変調|PWMインバータ]]、大出力の650kW出力誘導電動機2台が試作製造され、試験台試験(台上試験)を実施している。装置は日立・[[三菱電機|三菱]]・[[東芝]]3社のもので、[[半導体素子|素子]]には[[サイリスタ|逆導通サイリスタ(RCT)]]が採用された。試験結果は良好であったが、青函トンネル開業時期の遅れと国鉄の財政悪化などから採用は見送られた<ref name="Fan1986-5"/>。なお、ここまでの試験は無整流子電動機への取り組みであり、厳密にはVVVFインバータ制御とは直接関係しない。
 
 
 
いよいよ、[[1984年]](昭和59年)には将来の[[北陸新幹線]]など、次世代新幹線への採用も視野に入れたVVVFインバータ制御の試験として、在来線用システムとしての[[ゲートターンオフサイリスタ|GTOサイリスタ]]素子を使用したVVVFインバータ装置と誘導電動機など機器一式を用意し、試験台試験(台上試験)を実施した。この試験結果を受け、実際に装置一式を車両に艤装して走行試験を実施することになった。
 
 
 
試験車となったのは[[廃車 (鉄道)|廃車]]となる[[国鉄101系電車|101系]]2両で、装置一式(GTOサイリスタ素子を使用したVVVFインバータ装置など)を床上艤装し、[[1985年]](昭和60年)12月から[[1986年]](昭和61年)1月までの期間を2回に分けて試験が実施された。試験車は[[東海旅客鉄道浜松工場|国鉄浜松工場]]で構内走行試験後、[[東海道本線]][[静岡駅|静岡]] - [[豊橋駅|豊橋]]間で本線走行試験を実施した。なお、試験を2回に分けたのは、国鉄では在来線用の[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]から高速走行をする[[新幹線車両]]まで多様な車両が必要なことから、主電動機には特性の異なる4種類8台の誘導電動機(いずれも150kW出力)が用意され、これらの試験を実施するためであった<ref name="Fan1986-5"/>。
 
 
 
その後、[[国鉄分割民営化|国鉄の分割民営化]]を控えた1986年(昭和61年)秋に落成した[[国鉄207系電車|207系900番台]]でVVVFインバータ制御が正式採用した試作車が完成した。その207系900番台はJR東日本に引き継がれたが、東日本を含むJR各社でのVVVFインバータ制御の本格的な採用は私鉄にやや遅れ、1990年以降となる。
 
;JR各社のVVVFインバータ制御量産形式の第一号(在来線)
 
*[[北海道旅客鉄道]](JR北海道)
 
** [[JR北海道785系電車|785系電車]](1990年、JRグループ初のVVVFインバータ制御電車)
 
*[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)
 
** [[JR東日本209系電車|209系電車]](1993年)
 
*[[東海旅客鉄道]](JR東海)
 
** [[JR東海383系電車|383系電車]](1994年)
 
*[[西日本旅客鉄道]](JR西日本)
 
** [[JR西日本207系電車|207系電車]](1991年)
 
*[[四国旅客鉄道]](JR四国)
 
** [[JR四国7000系電車|7000系電車]](1990年)
 
*[[九州旅客鉄道]](JR九州)
 
** [[JR九州813系電車|813系電車]](1994年)
 
*[[日本貨物鉄道]](JR貨物)
 
** [[JR貨物EF200形電気機関車|EF200形電機]](1992年)
 
新幹線では、1990年に[[東海道新幹線]]の[[新幹線300系電車|300系電車]]の試作車が作られ、1992年から量産が開始された。その後、各新幹線の車両はVVVFインバータ制御へ移行している。2013年に[[新幹線200系電車|200系電車]]が引退したため、営業運転中の新幹線車両は全てVVVF制御となった。
 
 
 
====私鉄・公営交通における取り組み====
 
[[画像:Kumamoto8202 1.jpg|210px|thumb|right|[[熊本市交通局]][[熊本市交通局8200形電車|8200形]]]]
 
[[画像:OsakaSubway20Series01.jpg|210px|thumb|right|[[大阪市交通局]][[大阪市交通局20系電車|20系(2代)]]]]
 
一方で、旧国鉄での開発と並行し、各電機メーカーで[[1975年]](昭和50年)頃から[[大手私鉄]]・[[公営交通]]と手を組んだ開発が盛んとなり、特に[[日立製作所]]、[[東洋電機製造]]、[[三菱電機]]、[[東芝]]が下記のとおり相次いで現車試験を実施している。
 
 
 
[[1978年]](昭和53年)11月に、[[帝都高速度交通営団]](現・[[東京地下鉄]] = 東京メトロ)[[東京メトロ千代田線|千代田線]]において[[営団6000系電車|6000系1次試作車]]に日立製作所製のVVVFインバータ装置(逆導通サイリスタ(RCT)素子を使用)と130kW出力の[[かご形三相誘導電動機]]を搭載した現車試験が実施された。これが日本国内における最初のVVVFインバータ装置を搭載しての走行試験である。
 
 
 
その後、1980年(昭和55年)春には日立製作所水戸工場で[[東京急行電鉄]]から譲渡された[[東急3000系電車 (初代)|デハ3550形]]にVVVFインバータ装置(逆導通サイリスタ(RCT)素子を使用)を搭載して構内走行試験が実施されている。また、同年6月には東洋電機製造が[[相模鉄道]]の[[相鉄6000系電車|6000系]]にVVVFインバータ装置(逆導通サイリスタ(RCT)素子を使用)を搭載して同線で現車試験を実施した。
 
 
 
また、[[1981年]](昭和56年)7月から翌[[1982年]](昭和57年)4月にかけて、[[大阪市交通局]][[大阪市交通局1100形電車|100形]]に世界で初めて[[ゲートターンオフサイリスタ|GTOサイリスタ]]を使用したVVVFインバータ装置の試験が実施された。メーカーは三菱・日立・東芝3社の装置が使用された<ref>「大阪市高速電気軌道第7号線京橋〜鶴見緑地間 リニアモータ地下鉄建設記録」 - 大阪市交通局(1990年)<!--同文献にメーカーの記載はないが、現在は全車が中央線で運用しているアルミ製20系(4ケタ)車両のIGBT改造前は3社の装置が使われていた。--></ref>。
 
 
 
====実用化====
 
営業用車両としては、[[1982年]]に[[熊本市交通局8200形電車]]が日本初となる(1983年の[[ローレル賞]]受賞)。このインバータは[[サイリスタ|逆導通サイリスタ(RCT)]]を用いたものであったが、一般的な[[ゲートターンオフサイリスタ]](GTO)素子による初のVVVFインバータ搭載車両は、[[1984年]]に登場した[[大阪市営地下鉄]]の[[大阪市交通局20系電車|20系電車]](2代目)となる(高速鉄道としては日本初。しかし、試験が長引いたため、営業開始日順となる下表では4番目にある。また両車は後に[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ]](IGBT)素子に交換されている)。
 
 
 
架線電圧1500Vでの初のVVVFインバータ制御車両は[[東急6000系電車 (初代)|東急6000系電車]]のVVVF改造車である。1983年にデハ6202に[[日立製作所]]製2500V耐圧型GTO素子VVVFインバータ2台(電気回路はそれぞれ直列つなぎ)を搭載して各種試験を経て、1984年[[7月25日]]から[[東急大井町線|大井町線]]で営業運転が開始された。その後、[[1985年]]にはデハ6302に[[東芝]]製VVVFインバータを、デハ6002に[[東洋電機製造]]製VVVFインバータを、1983年に改造された6202に4500V耐圧型GTO素子VVVFインバータを同時に改造した。
 
 
 
新車としては1984年の近鉄1250系電車1251編成(現・[[近鉄1420系電車]]1421編成)が最初だが、本格的な量産は、1986年の[[新京成電鉄8800形電車]]や[[東急9000系電車]]、[[近鉄3200系電車]]、[[近鉄7000系電車]](1987年の[[ローレル賞]]受賞及び鉄道車両初のグッドデザイン賞受賞)辺りからで、これをきっかけに多くの大手私鉄や地下鉄にインバータ車両の試験導入を経て本格的な導入が開始された。
 
 
 
IGBT素子を利用したインバータ搭載車両は[[1992年]]の[[営団06系電車|営団(現:東京メトロ)06系電車]]・[[営団07系電車|07系電車]]が初となる。また[[JR西日本207系電車]]0番台と[[JR東日本701系電車]]、及び[[JR東日本209系電車|JR東日本901系電車]]A編成(後に209系電車900番台に改造されたが装置は[[三菱電機]]製のGTOに取り替えられた)ではパワートランジスタ(PTr)素子を使用したインバータが採用されている。
 
 
 
1990年代以降、日本での新造電車は路面電車から[[新幹線]]に至るまでVVVFインバータ制御が主体となった。[[営団6000系電車|東京メトロ6000系電車]]や[[小田急8000形電車]]など、既存のチョッパ・抵抗制御車の電気機器をVVVFインバータに交換改造したり、果ては[[伊予鉄道3000系電車]]や[[国鉄119系電車|えちぜん鉄道MC7000形]]、[[名古屋市交通局5000形電車]]のように中古車両の譲渡に際して、電気機器をVVVFインバータに交換改造した例も出現している。一方、実用初期に製作された車両は、新造から20年以上経過したことから、半導体素子の経年劣化による制御装置の交換や、一部には廃車・解体された車両も出ている。
 
 
 
これらの改造や新車の導入により、営業用車両が全てVVVFインバータ制御になった鉄道事業者も出てきており、2012年9月には[[京王電鉄]]が[[大手私鉄]]初となる全営業車両のVVVFインバータ制御化を達成している。
 
 
 
2010年代では、[[炭化ケイ素|SiC]]をダイオードやトランジスタに使用したVVVFが開発・実用化され、従来のIGBTよりもコンパクトかつ、より省電力化されたインバータが登場している。新製車では[[JR東日本E235系電車]]に初導入されたのを皮切りに、[[神戸電鉄6500系電車]]や[[JR西日本323系電車]]、[[西鉄9000形電車]]で採用されたほか、既存車やPTr-VVVF車、さらには初期のGTOを使用した車両の駆動装置の更新にも使用され、[[営団05系電車|東京メトロ05系北綾瀬支線用改造車]]、[[小田急1000形電車|小田急1000形更新車]]、[[京都市交通局10系電車|京都市交通局10系更新車]]、[[新京成電鉄8800形電車|新京成電鉄8800形更新車]]、[[北神急行電鉄7000系電車|北神急行電鉄7000系更新車(7000-A系)]]、[[西武6000系電車|西武6000系更新車]]、[[JR九州811系電車#番台区分#リニューアル車(1500番台)|JR九州811系リニューアル車]]で使用された。
 
 
 
==== 初期のVVVF制御車両一覧 ====
 
日本初の[[熊本市交通局8200形電車]](1982年)から1986年までに登場のVVVF制御車両一覧。
 
{| class="wikitable" border="1"
 
!鉄道事業者!!形式!!電気方式!!style="width:10em;"|営業開始日!!両数!!備考
 
|-
 
|[[熊本市交通局]]||[[熊本市交通局8200形電車|8200形電車]]||直流600V||1982年8月2日||2||[[路面電車]]、1電動機、三菱RCT素子 現在はIGBT素子に交換
 
|-
 
|[[東京急行電鉄]]||[[東急6000系電車 (初代)|6000系電車(初代)]](廃系列)||直流1500V||1984年7月25日||3||実用化試験車として形式内の一部を改造。1電動機 日立・東芝・東洋GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|[[近畿日本鉄道]]||1250系電車(現・[[近鉄1420系電車|1420系電車]])||直流1500V||1984年10月||2||直流1500Vとしては日本初の本格的VVVF車 三菱GTOサイリスタ素子。1250系→1251系→1420系と正式形式名を2度変更している。
 
|-
 
|[[大阪市交通局]]||[[大阪市交通局20系電車|20系電車(2代)]]||直流750V||1984年12月24日||*96||[[第三軌条方式|第三軌条式]]地下鉄および編成された鉄道車両としては日本初のVVVF車([[大阪市営地下鉄中央線]]・[[大阪市営地下鉄谷町線|谷町線]](現在は撤退)・[[近鉄けいはんな線|近鉄東大阪線→けいはんな線]]専用)。<br />三菱・日立・東芝GTOサイリスタ素子 現在は日立IGBT素子に交換。
 
|-
 
|[[西武鉄道]]||[[西武8500系電車|8500系電車]]||直流750V||1985年4月25日||*12||[[新交通システム]]初のVVVF車([[西武山口線|山口線用]]) 現在はIGBT素子に交換
 
|-
 
|[[札幌市交通局]]||[[札幌市交通局8500形電車|8500形電車]]||直流600V||1985年5月13日||2||路面電車、RCT素子。改良型の[[札幌市交通局8510形電車|8510形]]・[[札幌市交通局8520形電車|8520形]]もRCT素子。現在でもRCT素子を使用している車両はこの系列のみ。
 
|-
 
|[[阪急電鉄]]||[[阪急2200系電車|2200系電車]](形式消滅)||直流1500V||1985年||2||形式内の一部(2720・2721)、VVVF試験車、東芝GTOサイリスタ素子。[[阪神・淡路大震災]]の後2720は電装解除(2721は被災し廃車)、後に[[阪急6000系電車|6000系]]に編入
 
|-         
 
|[[新京成電鉄]]||[[新京成電鉄8800形電車|8800形電車]]||直流1500V||1986年2月26日||*96||直流1500Vとしては世界で初めて長編成を組み、[[関東地方]]初の本格的VVVF車。三菱GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|近畿日本鉄道||[[近鉄3200系電車|3200系電車]]||直流1500V||1986年3月1日||*42||三菱GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|東京急行電鉄||[[東急9000系電車|9000系電車]]||直流1500V||1986年3月9日||*117||日立GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|[[小田急電鉄]]||[[小田急2600形電車|2600形電車]](廃系列)||直流1500V||1986年3月17日||1||形式内の一部、改造
 
|-
 
|近畿日本鉄道||[[近鉄6400系電車|6400系電車]]||直流1500V||1986年3月||*66||[[近鉄南大阪線|南大阪線]]専用 日立GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|[[東京急行電鉄]]||[[東急7600系電車|7600系電車]](廃系列)||直流1500V||1986年5月1日||*9||改造 東洋GTOサイリスタ素子
 
|-
 
|[[北大阪急行電鉄]]||[[北大阪急行電鉄8000形電車|8000形電車]]||直流750V||1986年7月1日||*70||第三軌条地下鉄(自社線・[[大阪市営地下鉄御堂筋線]]) 東芝GTOサイリスタ素子。残存車はIGBTに交換
 
|-
 
|東大阪生駒電鉄<br />→近畿日本鉄道||[[近鉄7000系電車|7000系電車]]||直流750V||1986年10月1日||*54||第三軌条地下鉄([[近鉄けいはんな線|近鉄東大阪線→けいはんな線]]・[[大阪市営地下鉄中央線]]専用)。<br />三菱・日立GTOサイリスタ素子。量産先行車4両は近鉄子会社の東大阪生駒電鉄により1984年7月製造。7108Fの一部車両のみ日立IGBTに交換
 
|-
 
|[[日本国有鉄道|日本国有鉄道(国鉄)]]||[[国鉄207系電車|207系電車900番台]](廃系列)||直流1500V||1986年11月||*10||国鉄としては唯一。<br />なお、JR化後に[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]が[[JR西日本207系電車|同名の系列]]を造っている(互換性は全くなく外見も全く異なる)ため、「廃形式」ではなく「廃区分番台」とされることもある。
 
|-
 
|阪急電鉄||[[阪急7300系電車|7300系電車]]||直流1500V||1986年||1||形式内の一部(<nowiki>#</nowiki>7310)。[[阪急京都本線|京都線]]用 東洋GTOサイリスタ素子 後に登場する8300系の初期3編成と酷似した制御装置である。
 
|}
 
全車両がVVVF制御(車輌数に「*」が付いているもの)の形式には、両数に付随車を含む。一部車両がVVVF制御の形式には、両数に付随車を含まない。
 
 
 
=== 利点 ===
 
* 従来の抵抗制御やチョッパ制御に比べて、エネルギー使用効率の向上([[省エネルギー]])が可能。一例として、JR東日本の209系電車では、「[[国鉄103系電車|103系電車]]に比べ47%の消費電力」と喧伝されている。
 
* 回転数の制御が事実上無段階で可能であるため、加速・減速時の衝動を軽減できる。
 
* 従来の制御方式と比較してきめ細やかなトルク制御が可能であり、粘着力の向上とそれによる動力軸数の減少、あるいは実効出力の高い交流電動機の使用と相まって[[起動加速度|加減速性能]]、更には[[最高速度#日本の最高速度(鉄道)|高速性能]]の向上が可能である。
 
** したがって、[[動力車|電動車]]と[[付随車]]の比率([[MT比]])を小さくできるため、電動車1両あたりの製造コストが若干上昇したとしても、編成全体では低コスト化が可能である。
 
** 電動車比率の低下は、省メンテナンス化にもつながる。
 
** なお実用化初期の段階では変調の度に軽微なトルク変動が発生する例が多かったため、粘着性能が[[電機子チョッパ制御]]より劣るという評価も見られた。実際にこの段階で製造された装置を使用している車両は、降雨時などに[[空転]]・[[滑走]]が起きやすい。
 
* 実際の回転数が目標回転数から外れた場合にはトルクが低下するという誘導電動機の特徴から、空転時の再粘着性にも優れる。
 
* 全体的な省メンテナンス化
 
** 誘導電動機は直流電動機のような消耗品の[[ブラシ]]がないため、定期的なブラシの交換が不要。
 
** 前述のようにMT比の低下による全体の省メンテナンス化。
 
** [[非常ブレーキ]]使用時以外は、高速域から低速域までの減速を[[電気ブレーキ]]・[[回生ブレーキ]]優先で行えるようになり、ブレーキパッド・ライニングの交換周期を大幅に延長でき、メンテナンスコストが低減できる。
 
*** 三菱電機の技術では、回転磁界を逆転させることで停止寸前のブレーキ力を得ており、[[純電気ブレーキ]]という商品名で呼んでいる。
 
*** 日立製作所の技術では、電動機に直流電流を流すことで停止寸前のブレーキ力を得ており、全電気ブレーキという商品名で呼んでいる。
 
* またVVVFやVVCFでは、短時間であれば連続定格出力の150%といった過負荷での使用も可能であり、鉄道用主電動機のような間欠運転が前提の用途であれば、同サイズの電動機でさらなる大出力化が可能である。
 
 
 
=== 欠点 ===
 
* VVVFインバータに限らず、多くのパワーエレクトロニクス機器の問題として、[[高調波]]による電磁[[ノイズ]]を発することが挙げられ、鉄道では[[自動列車制御装置|ATC]]等、微小な信号電流を扱う装置に影響を与える懸念がある。([[名古屋鉄道]]や[[都営地下鉄]][[都営地下鉄新宿線|新宿線]]においてVVVFインバータ搭載車の投入が遅れたのは[[誘導障害]]対策が大きな要因)。このため、実際の路線への導入に当たり、パワーエレクトロニクス機器の発するノイズが信号機器に悪影響を与えないよう、車両と信号機器を組み合わせて確認試験を実施し、問題のないことを確認している。特に[[JR]]や大手私鉄ではVVVFインバータの導入にあたって試作車を製造、または在来車を改造して試験車とするなどして、入念な試験が繰り返された。また発車時・停車時に発生する音が耳障り<ref>著しい大音量による騒音ではなく、環境音より高い周波数の音であることによる</ref>であることが挙げられる。詳細は[[誘導障害]]を参照のこと。
 
* VVVFインバータ装置搭載の車両に乗車しながら[[AMラジオ]]を聴取すると、ラジオにインバータ音そのままのノイズが盛大に入ることもある。
 
** これを補償するため、運行地域のラジオ放送の電波を増幅して室内に送り込む装置が搭載される場合がある。
 
** [[1990年代]]以降に出た新型の[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]素子では、[[ゲートターンオフサイリスタ|GTO]]素子と比べて動作周波数が向上したため、この2つの問題を解決できた。その後はインバータの出力波形を調整することで、さらなる高周波ノイズの低減に努めている。
 
* VVVF制御では、インバータの設定とモーターを含めた従動側の応答性がマッチしていない場合、トルクの不安定化や発振による異音の発生などが起きることがあり、使いこなすために高い技術力を求められる。
 
* 数多くの半導体を使用しているため、装置の製造から年月が経つと製造終了などで保守部品が手に入りにくくなる。このため経年劣化による故障が目立つようになると、インバータ装置を丸ごと交換しなければいけなくなる。2004年頃から初期のRCT素子やGTO素子を使用した装置がIGBT素子やSiC素子を使用した装置などへ更新される例が多くなっている。もっとも、この場合は技術の進歩によるメリットも得られる。また、鉄道事業者とメーカー間において、最初から将来のインバータ装置交換も条項に入れた納入契約が結ばれる場合も多い。
 
 
 
=== インバータの駆動音 ===
 
[[File:Keikyu2165Shinagawa.jpg|210px|thumb|right|[[京浜急行電鉄]][[京急2100形電車|2100形]]]]
 
VVVFインバータ制御車両最大の特徴ともいえる、発車時・停車時に発生する何度も高低が変化するような音([[磁励音]])は、パルスモードが変化しているために発生するものである。車両発進時には、「ピーー」というような音や「ビーー」や「キーーン」という音で起動するが、その後は自動車がトランスミッションで変速するときのエンジン音のような音がする。これらの音は主にモーターから発せられ、インバータ装置自体からも「ジーー」とモーター音に合わせてスイッチング音が聞こえる場合がある。
 
 
 
これらの音は多種多様であり、同じメーカー・機種のインバータを搭載していても中のプログラムや設定が異なるとまったく違う音を立てる。[[ゲートターンオフサイリスタ|GTO]]では[[近畿日本鉄道|近鉄]]のGTO-VVVFインバータ車のほとんどが<ref>[[近鉄1420系電車|1420系]](1421Fを除く)、[[近鉄1220系電車|1220系]]、[[近鉄1020系電車|1020系]]、[[近鉄5200系電車|5200系]]、[[近鉄6400系電車|6400系]]、[[近鉄7000系電車|7000系]]などが該当。</ref>、また[[小田急1000形電車|小田急1000形]]の一部や[[新京成8800形電車|新京成8800形]]、[[JR東日本209系電車#910番台|JR東日本209系910番台]]、[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]]では[[JR西日本223系電車#2000番台|JR西日本223系2000番台]]1次車の[[東芝]]製制御装置車、また近鉄[[近鉄50000系電車|50000系]]や[[近鉄22600系電車|22600系]]阪神直通対応車のようにプログラムの更新により音が以前と全く変わった[[車両]]も存在する。
 
 
 
GTO素子を使用したインバータでは[[発車]]時・[[停車]]時の音を耳障りと感じる人も多いが、IGBT[[半導体素子|素子]]では、スイッチング周波数を高くできるため、耳障りな音色を改善できるようになった。GTOが主流だった頃も、1990年代からは音を間延びさせたりパルスパターンを減少させるなどの工夫を凝らしていた<ref>上の「東急2000系」または「JR西日本223系」参照。東急2000系は東急9000系と同じメーカーのものだが、1990年代のものである前者の音よりも間延びしていてパルスパターンも減っている。</ref>。
 
 
 
なお[[シーメンス]]製のGTO素子を用いたインバータ制御装置を搭載した車両の一部では、音階のような音が主[[電動機]]とインバータ制御装置より発せられる<ref>シーメンス・ジャパン・レールシステムズの担当者によれば、一種の「遊び心」で、ソフトウエアにより周波数を段階的に引き上げる独自技術で音階をつけたという。([http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111120mog00m040012000c.html 京急電鉄:「歌う電車」近く姿消す]毎日jp、2011年11月20日、2011年11月20日閲覧。)</ref>。このことからシーメンス製のインバータ制御装置は「ドレミファインバータ」や「歌う電車」とも呼ばれる。([[京急2100形電車]]や、[[JR東日本E501系電車]]等)
 
 
 
{{Multi-listen start}}
 
{{Multi-listen item|filename=JRE209 0vvvf.ogg|title=JR東日本209系0番台|description= [[JR東日本209系電車#0番台|JR東日本209系0番台]]の発車・停止時の磁励音。|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=JRW207_1000andJRW223_0vvvf.ogg |title=JR西日本223系0番台|description= [[JR西日本223系電車#0番台|JR西日本223系0番台]]の発車時の磁励音。[[JR西日本207系電車#1000番台|JR西日本207系1000番台]]などにも使われているGTOの音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=Sotetsu 8000 sound.ogg|title=相鉄8000系|description= [[相鉄8000系電車|相鉄8000系]]の発車・停止時の磁励音。日立製作所製GTOの音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=IC_A_002.ogg |title=東急9000系|description= [[東急9000系電車|東急9000系]]の発車・停止時の磁励音。GTO-VVVF黎明期に近い86年の音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=Tkk2000.ogg |title=東急2000系|description= [[東急2000系電車|東急2000系]]の発車・停止時の磁励音。改良された92年の音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=IC_A_008.ogg |title=東急5000系|description= [[東急5000系電車|東急5000系]]の発車・停止時の磁励音。日立製作所では最新のIGBTの音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=keikyu2100.ogg |title=京急2100形|description= [[京急2100形電車|京急2100形]]の発車・停止時の磁励音。シーメンス製の独特なGTOの音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=Keikyun1000.ogg|title=京急 新1000形|description= [[京急1000形電車_(2代)#製造時のバリエーション|京急 新1000形(1・2次車)]]の発車・停止時の磁励音。同社の2100形とは若干異なる音|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=Tokyo Metropolitan Government Bureau of Transportation 5300 vvvf.ogg|title=都営地下鉄5300形|description= [[東京都交通局5300形電車|都営地下鉄5300形]]の発車・停止時の磁励音。|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen item|filename=Jrw321 toyo.ogg|title=JR西日本321系|description= [[JR西日本321系電車|JR西日本321系]]の発車・停止時の磁励音。|format=[[Ogg]]}}
 
{{Multi-listen end}}
 
 
 
=== 備考 ===
 
現在、[[電車]]用の[[電源回路#交流入力交流出力電源|直接形交流電力変換器]]は大電力の製品が[[実用]]化されていないため、[[交流電化]]区間に用いられる電車であっても、一旦直流に変換(整流)を行ってから、VVVFインバータを用いる制御(コンバータ・インバータ方式)を行う必要がある。小電力であれば「マトリクスコンバータ」などとして製品化されている。
 
 
 
== おもなメーカー ==
 
* [[三菱電機]]
 
* [[日立製作所]]
 
* [[東芝]]
 
* [[東洋電機製造]]
 
* [[富士電機機器制御|富士電機]]
 
* [[安川電機]]
 
* [[ボンバルディア]]([[アドトランツ]])
 
* [[シーメンス]]
 
* [[アルストム]]
 
* [[ABB]]
 
* [[CAF (企業)|CAF]]
 
* [[AEG]]
 
* [[ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー|ウェスティングハウス]]
 
* フォスロ・キーぺ
 
* [[シュコダ・トランスポーテーション|シュコダ・エレクトリック]]
 
* Holec(現イートン)
 
* UTDC
 
* [[フォイト]]
 
* [[現代ロテム]]
 
* [[中国中車株洲電力機車|株洲中車時代電気]]
 
* [[宇進産電]]
 
* [[タウォンシス]]
 
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{脚注ヘルプ}}
 
<div class="references-small"><references/></div>
 
 
 
== 関連項目 ==
 
* [[パワーエレクトロニクス]]
 
* [[電源回路]]
 
* [[チョッパ制御]]
 
* [[サイリスタ位相制御]]
 
* [[インバータ]]→インバータ一般
 
* [[VVVFインバータ制御]]→電圧-周波数比例モータ制御
 
* [[電気車の速度制御]]
 
* [[三相交流]]
 
* [[磁励音]]
 
* [[赤い電車 (曲)|赤い電車]] - [[日本]]の[[ロックバンド]]、[[くるり]]のシングル。[[曲]]自体が[[電車]]をモチーフに作られており、曲中にVVVFの音が取り入れられている。
 
 
 
{{電動機}}
 
 
 
{{DEFAULTSORT:かへんてんあつかへんしゆうはすうせいきよ}}
 
[[Category:電動機]]
 
[[Category:パワーエレクトロニクス]]
 
[[Category:鉄道車両の制御方式]]
 
[[Category:電力変換]]
 
[[Category:オートメーション]]
 

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