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'''原子力潜水艦'''(げんしりょくせんすいかん)は、動力に[[原子炉]]を使用する[[潜水艦]]のことである。'''原潜'''(げんせん)と略されることもある。
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'''原子力潜水艦'''(げんしりょくせんすいかん)
  
== 概要 ==
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核推進潜水艦とも呼ばれる。原子動力機関を備えた潜水艦。一般に軽水炉を使用し,炉内で発生した熱によって加熱された1次冷却水は熱交換器で2次冷却水を蒸気とし,タービンを回して推進器を駆動する。従来型潜水艦は,水上ではディーゼルエンジン,水中では電池を動力としていたので,推進機関関係に大きな重量容積を要したばかりでなく,電池の容量の制限のため水中行動力はきわめて劣弱であった (たとえば 20knで 30分,3knで 48時間程度の航続時間) 。原子力機関は空気を必要とせず,水上水中一元機関で,水中でも大馬力を発生しうるので,高速でも大きな抵抗となる造波抵抗を生じない水中で高速の発揮が可能となる。また核燃料は戦略的な意味からは,ほとんど無限の航続力を提供する (たとえば水中 30knで数万時間の航続時間をもっているが,人間の耐久力上,一般に約2ヵ月連続潜航を限度としている) 。原子力潜水艦は水上になんらの目標を暴露することなく,隠密性と大きな航続力とを同時に併有することができるようになった。この特性を利用して,弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦は非脆弱な戦略ミサイル体系となっており,また魚雷および巡航ミサイル装備の原子力潜水艦は,単独で大きな戦果をあげる対艦船攻撃体系となっている。アメリカ,旧ソ連をはじめイギリス,フランスなどで数多く造られ,中国も数隻保有している。最初の原子力潜水艦は1955年1月に就航したアメリカの『ノーチラス』。中距離弾道ミサイルを搭載する[[ポセイドン潜水艦]],長距離弾道ミサイル「[[トライデント]]」を搭載し 80年代に就航したトライデント潜水艦と,対原子力潜水艦および水上艦艇攻撃用の攻撃 (戦術) 型潜水艦とがある。ロシア海軍には水中排水量2万 6500tという世界最大のタイフーン級弾道ミサイル原子力潜水艦もある ([[タイフーン級潜水艦]] ) 。
原子力潜水艦の構造は、もう一方の代表的な潜水艦の推進動力方式である[[ディーゼルエンジン]]を備えた'''[[通常動力型潜水艦]]'''と基本的な構造の点では同様である。すなわち、いずれも、船体は涙滴型や葉巻型をしており、船体上部前寄りにセイル、その側面か船体前部側面に潜舵を持ち、艦尾の[[スクリュー・プロペラ]]で推進する。原子力潜水艦と通常動力型潜水艦との大きな違いは、スクリューを回転させるためのエネルギーの発生源である。原子力潜水艦では原子力すなわち核分裂により生成される熱エネルギーで水を沸かしてタービンを回すことでスクリューを回転させるのに対し、通常動力型潜水艦ではディーゼル機関を作動させてスクリューを回している。その違いを反映し、原子力潜水艦は通常型潜水艦より複雑な構造となっており、船体も大型となる。また、その運用を比較すると、通常型潜水艦が沿岸域での運用を比較的得意とするのに対し、原子力潜水艦はより広い外洋域での運用を得意とする。ただし、これらの運用は専門化している訳ではない。
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{{テンプレート:20180815sk}}
潜水艦建造と原子力技術の双方を持つ国は限られており、日本やオーストリアなど技術はあっても原子力の軍事利用を禁止している国は導入できないため、原子力潜水艦保有国は[[2018年]]現在、[[アメリカ合衆国]]、[[ロシア]]、[[イギリス]]、[[フランス]]、[[中華人民共和国|中国]]、[[インド]]の6ヶ国のみである。インドを除く5カ国が、'''[[潜水艦#攻撃型潜水艦|攻撃型原子力潜水艦]]'''と'''[[潜水艦#弾道ミサイル潜水艦|弾道ミサイル原子力潜水艦]](=戦略ミサイル潜水艦)'''という2種の潜水艦を保有している。このうち攻撃型は、通常型潜水艦と同様に敵水上艦船や敵潜水艦を攻撃するため、場合によっては隠密裏に人員輸送を行なうために利用される。これに対し弾道ミサイル型は、通常型潜水艦では行なえない[[弾道ミサイル]]の発射プラットフォームとしての任務を担っている。このため、弾道ミサイル型は攻撃型より大きな船体となっている。
 
 
 
[[アメリカ海軍]]は21世紀に入って、弾道ミサイル搭載型を、[[巡航ミサイル]]の発射プラットフォームである'''[[巡航ミサイル潜水艦]]'''へと改造している。
 
 
 
== 特徴 ==
 
以下に原子力潜水艦の特徴を示す。
 
 
 
=== 原子力による駆動力の生成 ===
 
原子力潜水艦では、高温高圧の水蒸気を発生させる熱源として原子炉が利用され、その水蒸気によるエネルギーを利用してスクリューを回すための駆動力を得ている。その駆動力生成の形式は二つに大別される。
 
 
 
# 水蒸気により[[蒸気タービン]]を作動させ、その蒸気タービンにより(適当な減速装置を介在させて)スクリューを回転させる、という原子力機関を利用するもの。
 
# 水蒸気により駆動したタービンにより一旦発電し、その電力を電動機に供給してスクリューを回転させるもの。
 
 
 
いずれにしても、原子力潜水艦では推進動力の生成のために[[原子力]]を使用する。以下、特に断りのない限り主に前者について説明し、後者は原子力[[ターボ・エレクトリック方式]]として説明する。
 
 
 
=== 原子力による主機関 ===
 
[[File:Schema_Druckwasserreaktor_02.png|thumb|300px|加圧水型原子炉の構成概要]]
 
通常、原子炉の冷却系は安全のために複数設けられている。なお、原子炉自体の数は、[[原子力空母]]では1つの艦に原子炉を2基以上備えているのに対し、原子力潜水艦では1基、または多くても2基である。
 
 
 
原子力潜水艦の原子炉の形式は、現在までのところ[[加圧水型原子炉]](PWR)のみである。別の代表的な原子炉形式である[[沸騰水型原子炉]](BWR)が採用されたことはない。これは、潜水艦においては海洋状態や気象、艦の機動によって船体が揺れたり傾いたりする可能性があり、沸騰水型では冷却水が炉心を十分に冷やせない事態が懸念されるためである。なお、沸騰水型原子炉との比較の上で加圧水型原子炉では、いくつかの機械要素を追加しなくてはならない。例えば、蒸気発生器、加圧水を循環させる強力な循環ポンプおよびその高圧配管、ならびに2次冷却水のためのポンプおよび配管は加圧水型原子炉にのみ必要となる。このため、加圧水型原子炉では構造が複雑となるものの、利点も生じる。つまり、1次冷却水系統と2次冷却水系統が分離されているため、2次系にある蒸気タービンや復水器といった補機類の点検整備が[[放射線]]の危険から離れた位置で行なうことが可能となるのである。ただし、1次冷却水が何らかの形で漏洩した場合はこの限りではなく、特に蒸気発生器は複雑で脆弱な配管構造を持ち、放射能漏れ事故の原因となる。実際、信頼性の低い初期の原子力潜水艦においては、これらの構造がしばしば事故の原因となった。
 
 
 
原子力潜水艦中における原子炉は、鉛等が組み込まれた専用の耐圧隔壁で仕切られた原子炉区画の内部に設置されている。これは、人体に有害な放射線を遮蔽して船内の他の領域を安全に保つためである。原子炉区画は艦の後ろ寄りに設けられていることが多く、艦の主要な部分を占める前部とタービンや操舵機などのある後部を結ぶために、鉛などで防護された狭い通路が原子炉区画の上部や側面を貫いている<ref>岩狭源清著『中国原潜技術&漢級侵犯事件』 [[軍事研究 (雑誌)|軍事研究]]2005年4月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー2005年4月1日発行 ISSN 0533-6716</ref>。
 
 
 
=== 長期間の連続潜航 ===
 
原子炉の動作には[[酸素]]を必要としないために長期間の連続潜航が可能である。また、原子炉の核[[燃料棒]]の交換も数年から十数年に一度で済む。このため、ディーゼル燃料を消費する通常型潜水艦のような航続距離の制約や頻繁な燃料補給の手間は無い。[[蒸気タービン]]の[[軸受]]や[[減速機]]用の[[潤滑油]]は定期的な補給が必要となるが、他の燃料に比べ、その頻度は少ない。原子力潜水艦では、艦内の人員の呼吸に必要な酸素も豊富な電力で海水から[[電気分解]]によって作り出すことができ、呼吸により排出される[[二酸化炭素]]も化学的に吸着除去される。
 
 
 
これらの特徴から、原子力潜水艦では、機能維持および人員生存のための浮上は原理的には数か月間に一度で十分である。ただし、長期間の連続潜航が原理的に可能であっても、実際には長くても2か月程度の連続潜航しか行わない。これは、新鮮な食料の補給、艦外からの整備などが必要であること、および乗組員の心理面への影響が考慮されるためである。
 
 
 
アメリカ海軍では戦略ミサイル原潜のクルーは、ブルーとゴールドの2組を用意しており、ひとつのグループが70日間の航海を終えて帰港すると、約1ヶ月ほど艦の整備などを行い、その後もうひとつのグループが70日間の航海に出て行く。そして、航海を終えた方のグループは、しばしの休暇の後訓練をおこなう、というローテーションを繰り返す。
 
 
 
=== 水中機動 ===
 
原子力機関は最大出力でも燃料消費をそれほど考慮する必要が無いため、高速航走を長時間継続することで、大洋の辺地まで遠征することが可能である。[[原子炉#冷却材の種類による分類|溶融金属冷却原子炉]]を採用したロシアのアルファ型などは最高速度は40[[ノット]]を超えるといわれ、アメリカ海軍の実験潜水艦「[[アルバコア (AGSS-569)|アルバコア]]」の様に、30ノット以上を発揮することも不可能ではないが、費用便益比において現実的ではなく、同様の機軸を実現した例は他にはない。ただ、高速での航行はタービン音や外部装置の引き起こす渦流などが大きくなり、容易に探知されるので、それほど頻繁に行われるものではない。十分な探知能力を持たない紛争地域への急行などでは、絶大な力を発揮する。戦術運用では無く、定位置付近でのミサイル基地としての役割や通常パトロール的な敵艦の追尾などに適する。
 
 
 
=== 騒音問題 ===
 
原子力潜水艦の欠点は、[[電動機]]推進時([[原動機|エンジン]]は停止)の[[ディーゼル・エレクトリック方式]]の潜水艦に比べ、静粛性が劣ることである。
 
 
 
原子力機関は他の動力に比べ頻繁な停止・再起動が難しいことから、一度起動した後は事故が発生しない限り定期検査まで起動させたまま出力を調整するにとどめるのが基本である。また作動中は冷却水循環[[ポンプ]]を止めることが出来ないため、[[加圧水型原子炉]]ではこのポンプも大きな騒音発生源となっている。なお、アメリカ海軍の最新原子力潜水艦では、低出力時には[[冷却材]]の[[対流|自然循環]]のみによる運転が可能とされており、[[ポンプ]]の運転が不要といわれている。
 
 
 
ギアド・タービン方式特有の弱点を克服するため、蒸気タービンで発電機を動かし、電動モーターでスクリューを駆動する原子力[[ターボ・エレクトリック方式]]による推進システムが採用された例がいくつかある。例えば、[[フランス海軍]]の原子力潜水艦はすべてこの方式を採用しており、他にも[[アメリカ海軍]]が2度(「[[タリビー (SSN-597)|タリビー]]」、「[[グレナード・P・リプスコム (SSN-685)|グレナード・P・リプスコム]]」)試用している。ただ、この方式は、蒸気タービン方式(ギアド・タービン方式)に比べて出力/重量比・効率・整備性が悪く、水中速力も劣る。そのため、この方式を常用するのは、現在ではフランス海軍のみにとどまっている。この方式は短時間であれば原子炉を低出力に維持した状態で内蔵の蓄電池によって航行する事も可能で、蓄電池を介して電力が供給されるので電動機の出力応答性も優れる。また、タービンと推進器を伝達軸で連結する必要がない為、水密区画に伝達軸を通す為の穴を開ける必要がないので、[[ダメージコントロール]]や機器配置の自由度に優れる一面もある。なお、近年では交流電動機やパワーエレクトロニクスの導入により整備性や効率、出力に関しても以前よりは改善されつつある。フランスがこの方式を採用し続ける理由はギアド・タービン方式よりも運用上の利点が大きいと判断していると推測される。
 
 
 
加えて、原子力潜水艦特有の問題とも云えないが、原子力によって大きな推進力が得られても、それに応じ[[スクリュー・プロペラ]]で生じる騒音も大きくなるという問題もある。また高速回転する蒸気タービンの軸出力で低回転のスクリューを回すため、減速装置として減速ギヤを介在させる必要があり、(ギアド・タービン方式)この減速ギヤが大きな騒音発生源となる。そのため、[[ウォータージェット推進|ポンプジェット]]方式による推進方式を採用する潜水艦も一部にある。[[ポンプジェット]]は高速で航行する[[魚雷]]や[[テクノスーパーライナー]]や[[フェリー|高速フェリー]]、[[ミサイル艇]]等の[[高速艇]]等に使用されてきた実績があり高速性、静粛性において優れていたものの、推進効率に関しては従来のスクリューよりも劣る。このため、通常動力型潜水艦では実験的に使用された段階に留まっていたが、原子力潜水艦ではこの利点を生かせることから採用している例がいくつかある。
 
 
 
=== 他の問題点 ===
 
開発・建造・維持運用に非常に費用がかかり、用途廃止となったあとの原子炉・[[核燃料]]の処理の問題、[[炉心溶融|メルトダウン]]や放射能漏れの危険性などがある。
 
 
 
アメリカ海軍では新造艦の原子炉に濃縮度20~30%程度の[[高濃縮ウラン]]を用いた[[燃料棒]]を使用することで燃料の寿命を艦の寿命と等しくし、実質的に燃料交換を不要にして、原子炉の維持費の大きな部分を占める燃料棒の交換費用を無くし稼動率の向上と[[放射性廃棄物]]の減少をはかっている。ただ、この高濃縮ウランの使用が原子力潜水艦の危険性をさらに高めたという指摘がある<ref>[http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=392 原子力資料情報室]</ref>。
 
 
 
== 通常型潜水艦の特徴 ==
 
{{Main|通常動力型潜水艦}}
 
原子力動力との対比のために通常動力での潜水艦(通常型潜水艦)の特徴を以下に示す。なお以下の通常型潜水艦には[[非大気依存推進|AIP]]動力潜水艦は含まれないものとする。
 
 
 
通常型潜水艦は、水中では[[蓄電池]]を動力とし、この充電のために適宜、浅深度を航走して[[シュノーケル (潜水艦)|シュノーケル]]から[[空気]]を取り入れ、[[内燃機関]]である[[ディーゼルエンジン]]で発電機を動かさなければならない。通常型潜水艦は通常の潜水航行では充電したバッテリーとモーターしか使えないため、バッテリーを消耗すると潜水航行できなくなる(連続潜航時間の制約)。また、内燃機関の燃料が尽きればそれ以上の航海は不可能である(連続航海日数の制約)。通常型潜水艦の連続潜航時間および連続航海期間を延長する努力は長年にわたって行われてきたが、単に「潜ることが'''できる'''艦 (submersible ship)」ではなく「潜ることが'''専門の'''艦」、すなわち潜航状態を常態とする艦が達成されたのは、原子力機関の長所を生かした原子力潜水艦が登場してからのことである。
 
 
 
潜航中の通常動力潜水艦の動力は蓄電池に蓄えられた電力のみで、これによる水中速力は最大でも20数ノットが限界であり、また、その速度で航行した場合には、短時間で蓄電池の電力を使い切ってしまう。
 
 
 
== 代表的な艦種 ==
 
原子力潜水艦は、当初、[[第二次世界大戦]]までの潜水艦の延長線上において[[魚雷]]を用いた水上艦への攻撃を主な任務とした。だが、水中性能の向上にともなって、潜水艦を水上や空中から探知することが困難になり、脅威の度合いが増すにつれて、潜水艦を潜水艦で「狩る」水中戦の重要度が増すこととなった。こうして、遅くとも1960年代末以降には、潜水艦に対する最も有効な兵器は潜水艦であるとの認識が一般化した。このような艦種は攻撃型原子力潜水艦(SSN)と呼ばれることが多い。
 
 
 
またその特性上、秘匿性が非常に高いことを活かし、[[核戦略]]の一端を担う海中ミサイル基地とでも言うべき艦種も登場した。こうした潜水艦を[[潜水艦#弾道ミサイル潜水艦|弾道ミサイル原子力潜水艦、戦略ミサイル原子力潜水艦(戦略原潜)]]などと呼ぶ。初期のポラリス原潜では、[[核弾頭]]1発を搭載した長射程の[[潜水艦発射弾道ミサイル]](SLBM)16基を装備していたが、[[MIRV]]技術の進歩により、現在では、1発あたり10 - 14発の核弾頭を搭載した多弾頭式の弾道ミサイルを16 - 24基搭載するまでになっている。弾道ミサイル原潜は[[大陸間弾道ミサイル]](ICBM)の[[ミサイルサイロ|固定サイロ]]よりも発見され難いという特徴があるため、先制攻撃の手段としてではなく攻撃を受けたあとの反撃手段・第二次攻撃手段としての意味合いが強い。こうした潜水艦の登場は冷戦を背景にしたものである。アメリカ海軍の[[ジョージ・ワシントン級原子力潜水艦|ジョージ・ワシントン級]](1番艦は[[1959年]]就役)を嚆矢として、まずアメリカ・[[ソビエト連邦|ソ連]]、次いでイギリス・フランスが弾道ミサイル原潜を保有するようになると、攻撃型原子力潜水艦の重要な任務には、味方弾道ミサイル原潜の護衛、または敵方弾道ミサイル原潜の捜索・追尾・攻撃が加わった。
 
 
 
その後に、弾道ミサイル原潜を原型に対地攻撃や対艦攻撃用の[[巡航ミサイル]]を装備した型も造られ、このような艦種は巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)などと呼ばれることとなった。これは、[[ロシア海軍|旧ソ連海軍]]において、仮想敵たるアメリカ海軍の[[空母打撃群|空母戦闘群(現 空母打撃群)]]への対抗上の観点から特に大きく発展した。
 
 
 
== 歴史 ==
 
[[1940年]]代、ウラン核分裂反応の軍事利用に関する研究がなされた過程で、核エネルギーを利用した潜水艦の構想が[[ナチス・ドイツ]]等で考えられていた。
 
 
 
戦後、[[ドイツ]]の原潜構想を知ったアメリカ海軍の[[ハイマン・G・リッコーヴァー]]大佐は、その革新性に着目し、原潜開発を上層部に訴えた。当時の軍事的な核利用は爆弾が中心であり、巨大な[[原子力発電]]プラントを潜水艦に搭載することなど夢のまた夢と考えられていたため、リッコーヴァー大佐の提案はまともに取り上げられなかった。しかし、リッコーヴァー大佐が[[チェスター・ニミッツ]][[提督]]に直訴までして実現を訴え続けた結果、最終的にはその熱意が認められ、合衆国海軍原子力部が設立され、リッコーヴァーはその長に就任した。大佐は熱心かつ強力に原潜開発を推進した<ref>[[アメリカ合衆国大統領]]の[[ジミー・カーター]]は海軍在職時リッコーヴァーの指揮下原潜実用化に携わった。</ref>。
 
 
 
こうして、リッコーヴァーの指揮の下、世界最初の原子力潜水艦「[[ノーチラス (原子力潜水艦)|ノーチラス]]」([[1954年]]竣工、1955年初航行)が開発された。このことからリッコーヴァーは「原潜の父」と呼ばれている。ノーチラスは世界ではじめて[[北極]]の氷の下を潜航して横断したことでも知られる。この後、米海軍は1950年代後半から、量産型の攻撃型原子力潜水艦として「スケート」級<ref>「スケート」は、潜水艦としては世界最初に北極点に達し、その氷を割って浮上したことで知られる。</ref>に始まるSSNなどを建造・就役させた<ref>多田智彦、「圧倒的な強さを保持する米原潜戦力」『軍事研究』(株)ジャパン・ミリタリーレビュー、2017年5月号、208-221頁、ISSN 0533-6716</ref>。
 
 
 
また、世界初の戦略ミサイル原潜は同じくアメリカが開発した「[[ジョージ・ワシントン (原子力潜水艦)|ジョージ・ワシントン]]」で[[1959年]]に竣工した。「ジョージ・ワシントン」は、アメリカ海軍のラボーン少将指揮の下で、搭載する[[ポラリス (ミサイル)|ポラリス・ミサイル]]を含めてわずか4年という短期間で開発された<ref>世界初の戦略ミサイル原潜「[[ジョージ・ワシントン (原子力潜水艦)|ジョージ・ワシントン]]」に用いられたのが、マネジメント手法として今日でも知られるPERT([[Program Evaluation and Review Technique]])である。</ref>
 
 
 
== 日本の原潜保有の議論 ==
 
1958年、[[大日本帝国海軍|帝国海軍]]時代より通常動力潜水艦の建造実績を積み重ねてきた[[川崎重工業]]は、原子力潜水艦を建造した場合のコスト、必要な設備等について81ページのレポートをまとめ、後年これが明らかとなった。このレポートによれば、当時の試算では後の攻撃型原子力潜水艦に相当する艦1隻を建造するためには通常動力艦10隻分の資金を要すると結論されたと言う<ref name="sankei-198606">谷三郎 第5章『精鋭・日本自衛艦隊 : 世界が瞠目する“海軍"の実力』(世界大戦文庫スペシャル)サンケイ出版 1986年6月</ref>。
 
 
 
1960年3月11日、衆議院内閣委員会において当時の[[中曽根康弘]][[科学技術庁長官]]は、アメリカが豊富な原子力推進艦艇の建造実績をもって商業原子力船「[[サヴァンナ (原子力貨物船)|サヴァンナ]]」を建造していることと比較して「日本は原子力潜水艦なんかを作る力も意思もありません。従ってやはり商業採算ベースに合うということが非常に大事」と答弁しており、商業化によってコストの問題が解決されない限りは「(原子力潜水艦を建造する、しないという)政治力が働く余地がない」としていた<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/034/0388/03403110388015a.html 第034回国会 内閣委員会 第15号 昭和三十五年三月十一日(金曜日)]</ref>。作家の谷三郎は、1986年に出版された著書で「ソ連海軍力の伸長が続けば1990年代には必要性が高まる一方、日本には建造する能力があり、1950年代よりは通常動力艦と比べたコストを5倍程度まで低減させることが可能」であると主張していた<ref name="sankei-198606" />。
 
 
 
2004年の「[[防衛計画の大綱]]」の策定時に、防衛庁(当時)の「防衛力の在り方検討会議」に於いて、原子力潜水艦の保有の可否が検討されていた<ref>「原潜保有 政府が検討 16年防衛大綱 中国に対抗も断念」([[産経新聞]] 2011年2月17日)]</ref>。
 
 
 
== 原潜一覧 ==
 
2017年現在、原子力潜水艦を運用している国とその型(現用のみ)を下に挙げる。
 
 
 
略語は以下のとおり
 
; SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
 
; SSGN(巡航ミサイル原子力潜水艦)
 
; SSN(攻撃型原子力潜水艦)
 
 
 
{{col|
 
{{navy|USA}}
 
;SSBNおよびSSGN
 
* [[オハイオ級原子力潜水艦|オハイオ級]]
 
;SSN
 
* [[ロサンゼルス級原子力潜水艦|ロサンゼルス級]]
 
* [[シーウルフ級原子力潜水艦|シーウルフ級]]
 
* [[バージニア級原子力潜水艦|バージニア級]]
 
|
 
{{navy|UK}}
 
;SSBN
 
* [[ヴァンガード級原子力潜水艦|ヴァンガード級]]
 
;SSN
 
* [[スウィフトシュア級原子力潜水艦|スウィフトシュア級]]
 
* [[トラファルガー級原子力潜水艦|トラファルガー級]]
 
* [[アスチュート級原子力潜水艦|アスチュート級]]
 
 
 
{{navy|FRA}}
 
;SSBN
 
* [[ル・トリオンファン級原子力潜水艦|ル・トリオンファン級]]
 
* [[ランフレクシブル級原子力潜水艦|ランフレクシブル級]]
 
;SSN
 
* [[リュビ級原子力潜水艦|リュビ級]]
 
|
 
{{navy|RUS}}
 
;SSBN
 
* [[デルタ型原子力潜水艦|667B型(デルタ型)]]
 
* [[タイフーン型原子力潜水艦|941型(タイフーン型)]]
 
* [[ボレイ型原子力潜水艦|955型(ボレイ型)]]
 
;SSGN
 
* [[オスカー型原子力潜水艦|949型(オスカー型)]]
 
;SSN
 
* [[ヴィクター型原子力潜水艦|671型(ヴィクター型)]]
 
* [[シエラ型原子力潜水艦|945型(シエラ型)]]
 
* [[アクラ型原子力潜水艦|971型(アクラ型)]]
 
* [[ヤーセン型原子力潜水艦|885型(ヤーセン型)]]
 
|
 
{{navy|CHN}}
 
;SSBN
 
* [[092型原子力潜水艦|092型(夏級)]]
 
* [[094型原子力潜水艦|094型(晋級)]]
 
;SSN
 
* [[091型原子力潜水艦|091型(漢級)]]
 
* [[093型原子力潜水艦|093型(商級)]]
 
 
 
{{navy|IND}}
 
;SSBN
 
* [[:en:Arihant-class submarine|アリハント級]]
 
;SSN
 
* [[アクラ型原子力潜水艦|チャクラ]]
 
}}
 
 
 
== 脚注 ==
 
{{Reflist}}
 
 
 
== 関連項目 ==
 
{{Commonscat|Nuclear submarines}}
 
*[[原子力船]]
 
 
 
{{艦艇}}
 
{{Normdaten}}
 
  
 
{{DEFAULTSORT:けんしりよくせんすいかん}}
 
{{DEFAULTSORT:けんしりよくせんすいかん}}

2018/10/10/ (水) 23:00時点における最新版

原子力潜水艦(げんしりょくせんすいかん)

核推進潜水艦とも呼ばれる。原子動力機関を備えた潜水艦。一般に軽水炉を使用し,炉内で発生した熱によって加熱された1次冷却水は熱交換器で2次冷却水を蒸気とし,タービンを回して推進器を駆動する。従来型潜水艦は,水上ではディーゼルエンジン,水中では電池を動力としていたので,推進機関関係に大きな重量容積を要したばかりでなく,電池の容量の制限のため水中行動力はきわめて劣弱であった (たとえば 20knで 30分,3knで 48時間程度の航続時間) 。原子力機関は空気を必要とせず,水上水中一元機関で,水中でも大馬力を発生しうるので,高速でも大きな抵抗となる造波抵抗を生じない水中で高速の発揮が可能となる。また核燃料は戦略的な意味からは,ほとんど無限の航続力を提供する (たとえば水中 30knで数万時間の航続時間をもっているが,人間の耐久力上,一般に約2ヵ月連続潜航を限度としている) 。原子力潜水艦は水上になんらの目標を暴露することなく,隠密性と大きな航続力とを同時に併有することができるようになった。この特性を利用して,弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦は非脆弱な戦略ミサイル体系となっており,また魚雷および巡航ミサイル装備の原子力潜水艦は,単独で大きな戦果をあげる対艦船攻撃体系となっている。アメリカ,旧ソ連をはじめイギリス,フランスなどで数多く造られ,中国も数隻保有している。最初の原子力潜水艦は1955年1月に就航したアメリカの『ノーチラス』。中距離弾道ミサイルを搭載するポセイドン潜水艦,長距離弾道ミサイル「トライデント」を搭載し 80年代に就航したトライデント潜水艦と,対原子力潜水艦および水上艦艇攻撃用の攻撃 (戦術) 型潜水艦とがある。ロシア海軍には水中排水量2万 6500tという世界最大のタイフーン級弾道ミサイル原子力潜水艦もある (タイフーン級潜水艦 ) 。



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