ユズ

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ユズ(柚子、学名Citrus junos)はミカン属常緑小高木柑橘類の1つ。ホンユズとも呼ばれる。消費量・生産量ともに日本が最大である。

果実が小形で早熟性のハナユ(ハナユズ、一才ユズ、Citrus hanayu)とは別種である。日本では両方をユズと言い、混同している場合が多い。また、獅子柚子(鬼柚子)は果実の形状からユズの仲間として扱われることがあるが、分類上はザボンブンタンの仲間であり、別種である。

名称

日本では古くから「柚」、「由」、「柚仔」といった表記や、「いず」、「ゆのす」といった呼び方があった。学名のjunosは、四国・九州地方で使われた「ゆのす」に由来する[1]。柚子は中国での古い名だが、今の中国語で柚や柚子はブンタンを指している[1][2]

形態・生態

直立して大木になる[1]。果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。種子の多いものが多い。酸味は強く、香りもある。

ミカン属の中でもっとも耐寒性が強く、年平均気温12度から15度の涼しい気候を適地とする[1]。柑橘類に多いそうか病かいよう病への耐久があるため、ほとんど消毒の必要がなく、他の柑橘類より手が掛からないこと、無農薬栽培が比較的簡単にできることも特徴のひとつである。

成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年柿8年、ユズの大馬鹿18年」などと呼ばれることがある。このため、栽培に当たっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年掛かってしまうため、結実までの期間を短縮するため、カラタチへの接ぎ木により、数年で収穫可能にすることが多い。


原産地

本ユズは、中華人民共和国中央および西域、揚子江上流の原産であると言われる。日本の歴史書飛鳥時代奈良時代に栽培していたという記載がある[3]

花ユズは日本原産とも言われるが、詳しいことは判っていない。

分布・栽培

海外では、韓国最南部の済州島全羅南道高興郡など、中華人民共和国の一部地域で栽培されている。


現在の日本で栽培されるユズには主に3系統あり、本ユズとして「木頭系」・早期結実品種として「山根系」・無核(種無し)ユズとして「多田錦[4]」がある。「多田錦」は本ユズと比較して果実がやや小さく、香りが僅かに劣るとされているが、トゲが少なくて種もほとんどなく、果汁が多いので、本ユズよりも多田錦の方が栽培しやすい面がある(長いトゲは強風で果実を傷つけ、商品価値を下げてしまうため)。

なお、収穫時にその実をすべて収穫しないカキノキの「木守柿」の風習と同様に、ユズにも「木守柚」という風習がある地方もあるテンプレート:どこ

日本の主な産地

農林水産省の統計によると昭和40年代までは埼玉県が主な産地であったが、1970年以降は高知県徳島県などが主要な産地となっている。特に1990年以後から大幅に収穫量が伸びており、今日では四国地方(高知県、徳島県、愛媛県)の3県で国産ユズの8割近くを占める。また、四国山地を初め、九州山地、中国山地、紀伊山地といった山間部に産地が集中しているが、これは1965年頃から、それまでの主産業であった農耕馬生産、林業、木炭製造、和紙原料栽培の衰退やそれに伴う過疎化に対し、活性化策として産地形成されたものが多いためである。西日本の産地が大規模化する一方で、東日本の産地は相対的に規模縮小しており、関東地方全都県を合わせても300トン程度(鹿児島県の半分未満)に過ぎない。

  • 茨城県
  • 常陸太田市
  • 栃木県
  • 茂木町
  • 埼玉県
  • 毛呂山町、越生町、ときがわ町(旧都幾川村)
  • 東京都
  • 青梅市
  • 山梨県
  • 富士川町(旧増穂町)、上野原市(旧上野原町)
  • 静岡県
  • 川根本町(旧中川根町)
  • 岐阜県
  • 関市(旧上之保村)
  • 京都府
  • 京丹波町(旧瑞穂町)
  • 大阪府
  • 箕面市
  • 兵庫県
  • 神河町(旧神崎町)、姫路市(旧安富町)、養父市(旧八鹿町)など
  • 和歌山県 …国内生産量7-10位。2000年以降から生産量を伸ばしており、2015年は山口県、熊本県を凌ぎ、生産量7位となっている。古座川町平井地区はユズによる地域活性化で注目を浴びた。
  • 紀美野町(旧野上町)、古座川町、有田川町(旧清水町)、田辺市(旧龍神村)など
  • 島根県 …国内生産量7-10位。美都はユズの一大産地。
  • 益田市(旧美都町)、大田市、出雲市など
  • 岡山県
  • 井原市(旧芳井町)、美作市(旧作東町)、高梁市(旧成羽町)
  • 広島県 
  • 三次市(旧作木村)、安芸高田市(旧高宮町)
  • 山口県 …国内生産量は7-10位。※近年生産量を増やしている長門ゆずきち産地は含まない。
  • 萩市(旧川上村、旧旭村)
  • 徳島県 …国内生産量2位。古くから自生のユズが点在していた。スダチとともに加工品需要が大きく、また木頭ユズが知られる。
  • 那賀町(旧木頭村)、美馬市(旧木屋平村)、上勝町、つるぎ町(旧一宇村)など
  • 愛媛県 …国内生産量3位。県南部の鬼北、宇和に大規模な産地がある。
  • 鬼北町(旧日吉村、旧広野町)、松野町、西予市(城川町)、内子町など
  • 高知県 …国内生産量1位で、生産量1万トン以上。国内シェアの40%~50%を占め、四国山地一帯に産地が点在する。1960年代から林業や和紙原料製造に代わる山村集落の活性化策として産地が相次いで形成され、県を取り囲むようにユズ産地が展開する。馬路村、北川村などの商業的成功を受け、他自治体も追随するようになり、年々栽培面積を増やしている。
  • 香美市(旧物部村、旧香北町、旧土佐山田町)、安芸市、北川村、馬路村、高知市(旧土佐山村)、大豊町、四万十町(旧大正町)、四万十市(旧西土佐村)、三原村など
  • 福岡県
  • 八女市(旧矢部村)、上毛町(旧新吉富村)、東峰村(旧宝珠山村)
  • 熊本県 …国内生産量は7-10位。
  • 山都町(旧矢部町)、熊本市、八代市(旧泉村)など
  • 大分県 …国内生産量4-5位。院内や津江の産地が知られる。県内消費が多いため、出荷量は相対的に少ない。
  • 宇佐市(旧院内町)、日田市(旧中津江村、旧上津江村)、杵築市(旧山香町)など
  • 宮崎県 …国内生産量4-5位。九州山地の山間部はユズの一大産地となっている。
  • 西都市、小林市(旧須木村)、日之影町、西米良村など
  • 鹿児島県 …国内生産量は生産量6位。大隅半島の山間部が主産地となっている。
  • 曽於市(旧末吉町)、大崎町、伊佐市(旧大口市)など

人間との関わり

食材

ファイル:Soi yakizakana.JPG
ソイの塩焼き舞茸ユズ(右上)を添えて
ファイル:Yujacha.jpg
韓国の柚子茶

ユズの果汁は、日本料理等において調味料として、香味・酸味を加えるために用いられる。また、果肉部分だけでなく皮も七味唐辛子に加えられるなど、香辛料薬味として使用される。いずれも、青い状態・熟れた状態の両方とも用いられる。九州地方では、柚子胡椒と呼ばれる調味料としても使用される。これは柚子の皮に、皮が青い時は青唐辛子、黄色く熟している時は赤唐辛子とを混ぜて作るもので、緑色または赤色をしている。幽庵焼きにも用いられる。

熟したユズでも酸味が非常に強いため、普通は直接食用とすることはない。薬味としてではなくユズ自体を味わう調理例としては、保存食としてのゆべしの他、韓国柚子茶のように果皮ごと薄く輪切りにして砂糖蜂蜜に漬け込む方法などがある。ユズの果汁を砂糖と無発泡水で割ったレモネードのような飲み物もある。果汁はチューハイ等にも用いられ、ユズから作られたワインもある。

柚子の果実のうち果肉の部分をくりぬいて器状にしたものは「柚子釜」と呼ばれ、料理の盛りつけなどに用いられる。

近年ではスペインの著名なレストランであったエル・ブジが柚子を大々的に喧伝したのが発端となり、フランス料理を始めとした西洋料理にも柚子の使用が広まりつつある。

利用

独特の爽やかな香りのため、様々な香水に使用されている。最近、日本の植物から精油を精製する日本国内メーカーが増えており、果皮を圧搾することにより精油を採油している。その他、多彩な方法で利用されている。果汁搾汁後の残滓に含まれる精油が残滓を堆肥にする時の生物活性を低下させる要因になっていることから、精油を商品価値のある状態で取り除く方法として、超音波減圧水蒸気蒸留法が開発されている[5]

柚子湯

収穫時期の冬場に、果実全体または果皮を布袋にいれて湯船に浮かべる。薬効の成分は特定されていないが、血行を促進させることにより体温を上昇させ、風邪を引きにくくさせる効果があるとされている。

京都市右京区嵯峨水尾では、柚子の栽培農家9軒が、柚子風呂付きで鶏料理を提供している。

種子

ユズの種子油には、メラニンの生成抑制やアレルギー性皮膚炎の症状緩和の効果があるとする研究報告もなされてる[6]

季語

俳句においては秋の季語。これは実を指し、その花は夏の季語になる。また、柚子湯は冬の季語となる。

参考文献

  • 茂木透写真 『樹に咲く花 離弁花2』 高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年。ISBN 4-635-07004-2。
  • 吉岡照高「ユズ」、『週刊朝日百科植物の世界』31(ライム レモン オレンジ)、朝日新聞社、1994年11月13日発行。
  • 山田彬雄「ブンタン」、『週刊朝日百科植物の世界』31(ライム レモン オレンジ)、朝日新聞社、1994年11月13日発行。

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 吉岡照高「ユズ」、『週刊朝日百科植物の世界』31、3-214頁。
  2. 商務印書館・小学館・共同編集『中日事典』第2版、2003年、1824頁。
  3. 高知県農業振興部 (2012年11月2日). “ユズ”. こうち農業ネット. . 2012閲覧.
  4. 高知県農業振興部 (2012年10月26日). “多 田 錦 ”. こうち農業ネット. . 2012閲覧.
  5. 沢村正義、柏木丈拡「柚子搾汁後残滓のエココンシャスな精油抽出・処理技術の開発 (PDF) 」 、『高知大学国際・地域連携センター年報2008』、国立大学法人高知大学 国際・地域連携センター、2008年、 64-66頁、. 2012閲覧.
  6. 馬路村農協 高知大学 沢村正義名誉教授および溝渕俊二教授の研究

関連項目

外部リンク


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